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研究者のご紹介

新型肺炎とマクロ政策(30)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年6月9日


はじめに

本稿では、農業・農村部長の記者会見と、李克強総理が開催した一連の会議の概要を紹介する。

5月22日 農業・農村部長記者会見

食糧安全問題について、次のように語った。

「食糧はずっと皆さんの関心のある問題であり、とりわけ今年世界の新型肺炎の疫病が蔓延し、いくらかの国家は食糧備蓄を増やし、いくらかの国家は食糧輸出を制限している。このため、わが国に食糧危機が発生するのでないかと心配する人もいる。この問題について、私は、中国で食糧危機は発生しないと肯定的に語ることができる。

食糧は年々豊作であり、在庫は比較的充実しており、必要とする食糧は絶対安全である。

わが国は既に連続十数年食糧は豊作であり、昨年生産量は6億6384万トンであり、しかも連続5年6.5億トン以上を維持している。これは、わが国が既にこれだけの生産能力を有していることを物語っている。

現在1人当り食糧の占有量は、FAO(国連食糧農業機関)が公表している食糧安全基準ラインをはるかに上回っている。籾米と小麦の自給率は100%に達し、現在の在庫は1年の生産量を超えており、全国人民の1年分を供給できる1。したがって、我々は食糧安全について自信満々である。皆さんは根拠のない報道に耳を貸す必要はない。

当然、食糧生産については、いかなる時も、とりわけ世界に疫病が蔓延し、経済が下振れている背景の下では、気を緩めてはならない。習近平総書記は、リスクの試練に直面しているときこそ、より農業をしっかり安定させ、より食糧と重要な副食品の安全を確保しなければならないと語っている。今年、中央は新型肺炎の疫病の影響に対応し、一連の非伝統的措置を採用して食糧生産を安定させた。たとえば、春季耕作・生産ガイドラインを公布し、食糧生産任務を下達し、一連の政策措置を打ち出した。我々は、防疫と春季耕作・生産の2つを間違えずにやり遂げた。

現在の生産調整情況から見ると、農業生産の情勢は総体としてなお良好であり、春の種まきは既に9割完成し、面積はある程度増加し、9.1億ムー(1ムーは15分の1ha)以上と予想され、しかも種は豊作期のものである。早稲は今年470万ムー増加し、総量は7100万ムーに達し、回復的な伸びを実現した。とりわけ夏小麦は今年の成長が例年より好く、ムー当り穂数・穂粒数と今後予想される千粒当りの重さも、総体として良好であり、豊作が見込まれると言ってよい。

今後、我々は、なお手を緩めず、今年の食糧生産にしっかり取り組む。

①防災・減災にしっかり取り組み、草地の夜蛾のような重大な病虫害・気象災害を防止しなければならない。

②籾の最低買付価格の引上げと即時買付を含む政策実施にしっかり取り組み、農民の作付の積極性を保護する。

③食糧備蓄を末端まで徹底し、今年は8000万ムーのハイレベルの農地建設を達成しなければならない。

総じて言えば、今年の食糧生産は手を緩めてはならないが、食糧生産量を6.5億トンで安定させることを全力で確保し、小康の年の食糧豊作を実現しなければならない」。

5月29日 国務院常務会議

「政府活動報告」重点任務の分担を確定し、政策・活動の実施に早急に取り組み、年間の経済社会発展の目標・任務を達成するよう要求した。

会議は、「政府活動報告」で提起された45方面51項目の重点任務を逐一国務院関係部門に割り振った。会議は、次のように強調した。

(1)各レベル政府は、党中央・国務院の政策決定・手配を貫徹しなければならない。

疫病防御と経済社会発展を統一的に推進し、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策をしっかり実施し、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)任務を実施することを軸に、困難を緩和し、市場の活力を奮い立たせる規模の大きい政策の実施に早急にしっかり取り組み、交付すべきカネはできるだけ速やかに交付し、発行すべき債券は早急に発行し、打ち出すべき関連措置は早急に打ち出さなければならない。

資金が末端に直接達し、有効な使用を確保する特殊なメカニズムを確立しなければならない。財政・社会保障部門は、特別勘定を設け、資金を直接中小・零細企業、個人工商事業者と困窮大衆に直接交付し、中間での滞留を回避しなければならない。

財政部の地方監督管理部局、人民銀行の国庫管理部局、審計署等の機関は、各自の機能に立脚し、監督管理を強化し、監督管理の合成力を形成し、偽帳簿・中身のすり替え等の行為を発見した場合には、一緒になって調査・処分しなければならない。

減税・費用引下げ、段階的な電力価格引下げ、貸出の元本償還・利払い猶予、民間航空発展基金と港湾建設料の期限猶予・減免等の各政策も確実に実現し、割り引いてはならない。

市場主体と困窮大衆に遍く恩恵を与え、政策の「真水」を公平に享受させる。

(2)改革開放をより強力に推進する。

難題の解決にせよ、発展の促進にせよ、いずれも改革から方法を考えて出口を見つけ、不合理な各種規制を打破し、市場の活力と社会の創造力をより大きく発揮させなければならない。

「行政の簡素化・権限の委譲、管理と緩和の結合、サービスの最適化」改革を深化させ、市場化・法治化・国際化されたビジネス環境を作り上げ、公平な競争促進を重要な政府活動として位置づけなければならない。

疫病防御において主動的に企業にサービスした好い方法を普及させ、防御に必要ない規制措置を廃止する。

より強力に自主開放し、外資を吸収する肥沃な土地を育成し、世界の大市場に向かう。

(3)責任感と緊迫感を増強する。

政策実施にしっかり取り組み、客観的ルールを尊重し、形式主義を強く戒め、見掛け倒しになってはならない。

国務院各部門・各関係単位は、「政府活動報告」の任務分担に基づき、責任者・スケジュール表を確定し、達成すべき段階的成果・最終成果を明確にし、日常的なフォロー・督励をしっかり行わなければならない。

任務の主管部門と協力部門は、大局に立脚し、協同・協調しなければならず、責任を押し付け合ってはならない。

国務院弁公庁は、定期的な照合と督励を行い、進度が遅く、仕事がいい加減で、成果が明らかでないものについては、特別監査を行い、不作為・でたらめな作為に対して断固問責・責任追及し、人民の監督を受けさせ、確実に人民に受益させなければならない。

当面の情勢の複雑性・峻厳性を十分推し量り、グローバルな疫病と経済情勢の変化を密接にフォローし、政策実施において遭遇した問題の理解・解決を重視し、適時政策を整備し、政策をしっかり準備し、需要に基づき適時必要な新措置を打ち出し、経済の基盤をしっかり安定させ、経済成長の実現を推進し、年間の経済社会発展の目標・任務を達成しなければならない。

6月1日 新たに増えた財政資金の恩恵を直接企業・人民に及ぼす政策ビデオ座談会

李克強総理は、山東省視察において、ビデオを通じて座談会を開催し、新たに増えた財政資金の恩恵を直接企業・人民に及ぼす政策をしっかり行うよう検討・手配した。

会議では、山東省書記・代省長、安徽省・貴州省・陝西省の各省長、済南市・沂源県と関連企業の責任者が発言した。李克強総理の発言は、以下のとおりである。

全人代が承認した政府活動報告は、「6つの安定」「6つの保障」を軸に、財政赤字の増加、疫病対策特別国債発行の計2兆元を確定した。これは、困難を緩和し、市場の活力を奮い立たせる規模の大きい政策の重要内容であり、主として雇用の保障・基本民生の保障・市場主体の保障に用いられる。

特殊な時期に採用された特殊な政策として、資金の使用を末端まで行き渡らせ、直接市・県の末端に交付し、直接企業・国民に恩恵を及ぼし、企業支援をより重視し、市場のパワーを発揮させて経済の基盤をしっかり安定させることをより重視することは、マクロ・コントロール方式の刷新である。

今回、疫病の衝撃がより大きく、より顕著なのは中小・零細企業、個人工商事業者であり、出稼ぎ農民、非正規雇用者、一般サービス業従業員等の低所得層であり、貧困家庭、失業者、最低生活保障と臨時救済の対象者等の困窮大衆であり、数億人に及ぶ。新たに増えた財政資金は、主として彼らのために用いる。

特殊移転支出メカニズムを確立・整備し、省レベルで滞留させてはならず、市・県の末端にできるだけ速やかに資金を回し、支出を手配しなければならない。

財政等の部門は、雇用の保障・基本民生の保障・市場主体の保障への要求に基づき、財政支援政策を明確にし、資金の使用範囲を確定しなければならない。

市・県は実施主体として、支援が必要な困難な企業・人員を早急に掘り起こして、実名台帳を確立し、資金が精確に達することを確保しなければならない。

貴重な資金をうまく用い、厳格な監督管理メカニズムを確立しなければならない。

財政系統組織は、疫病対策特別国債の使用台帳を確立し、1つ1つの資金の流れが明確で、帳簿が調査可能であることを確保しなければならない。

各レベルの国庫は、点対点で直接資金を交付し、実名台帳と照合させなければならない。

審計署等の部門は、新たに増やした財政資金の使用を会計検査の重点としなければならない。

各方面は、いずれも眼を大きく見開き、監督管理の合成力を形成しなければならない。財政・経済紀律を厳格にし、偽帳簿・資金の流用等の行為に対しては、1件発見するごとに1件処理しなければならない。

これは1つの改革であり、部門の利益に抵触するものであるが、人民の利益のために抵触せざるを得ないものであり、決して人民と利益を争ってはならない。

このほか、より大規模に社会保険料を減免し、金融が合理的に利益を移譲する措置も、できるだけ速やかに企業に直接達するメカニズムを確立しなければならない。

地方政府の管轄地の責任を徹底しなければならない。

省レベル政府は支出構造を調整し、より多くの財政力を末端に降ろさなければならない。

市・県は、上からの移転支出と自前の財源を統一して、科学的に財政支出を手配し、公共財政の属性を強化し、民生を要として、保障すべきものは全て保障するよう努力しなければならない。

各レベル政府は、減税・費用引下げ政策を実施し、財政収支の矛盾が大きいからといって、みだりに費用を徴収し、企業の負担を増やしてはならない。

未曾有の困難・試練に対して、各レベル政府は習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹し、政府活動報告が確定した各政策を着実に推進し、常態化した疫病防御にしっかり取り組み、「6つの安定」政策をしっかり必死し、「6つの保障」任務を実施して、経済の基盤をしっかり安定させ、経済成長を実現し、年間の経済社会発展の目標・任務を達成しなければならない。

6月2日 専門家・学者座談会

習近平総書記が主催し、主として、医療・衛生関係の専門家が集められた。

6月3日 全国大学卒業生就業・起業対策テレビ電話会議

李克強総理が主催した。李克強総理の指示と、会議の概要は以下のとおりである。

(1)李克強総理の指示

大学卒業生の就業・起業は、千万の家庭の幸福に関わり、財産の創造・質の高い発展に関わるものである。今年の大学卒業生の就職は峻厳な情勢に直面しており、任務は更に非常に困難となっている。

各地方・各部門は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、党中央・国務院の政策決定・手配を貫徹し、雇用優先政策を全面的に強化し、各レベルでの責任を徹底させ、大学卒業生の就職という重点中の重点に、しっかりきめ細やかに取り組まなければならない。

企業の安定により雇用を安定させる各措置を早急に実施し、より多くの市場化された方法を採用して卒業生の就職ルートを開拓しなければならない。

「行政の簡素化・権限の委譲、管理と緩和の結合、サービスの最適化」改革を引き続き深化させ、「イノベーション・起業」への支援を強化し、新産業・新業態のより大きな発展を推進し、卒業生の起業と柔軟な就職のために、より広いプラットホームを構築する。

職業訓練と就業実習を着実にしっかり実施し、疫病が深刻な地域と就職が困難な卒業生に傾斜して支援を増やし、一時的に未就職の卒業生のために切れ目のない就業サービスを提供する。

あらゆる手を尽くして大学卒業生の就職動向の総体としての平穏を維持し、経済の発展と社会の大局の安定を促進する。

(2)会議の概要

今年の雇用情勢は複雑・峻厳であり、雇用優先政策を全面的に強化し、全方位で就業への支援・サービスを増やし、雇用の大局の安定を確実に擁護しなければならない。

大学卒業生の就職を雇用安定政策の重点中の重点とし、各種募集活動を積極的にしっかり組織化し、企業が募集規模を拡大するよう誘導し、新たに増やす投資を大学卒業生の就職の牽引力が強いプロジェクト・分野に傾斜させて支援し、国有企業・事業単位が大学卒業生の募集ポストを増やすことを奨励しなければならない。

的確な職業技能訓練を提供し、雇用実習規模を拡大し、多くの措置を併せ用いて就業・起業能力を引き上げなければならない。

戸籍地・求職地・学籍地の間の政策・サービスの協同を強化し、大学卒業生の就職における重点・難点と際立った問題の解決に力を入れ、湖北の卒業生、貧困家庭卒業生等の各種就職困難な卒業生の就業支援を強化しなければならない。

大学卒業生の就職を重点中の重点とし、大学離籍前のカギとなる時期をしっかりとらえ、「百日ラストスパート」キャンペーンを展開し、党と政府が関心を払っていることを大学卒業生に伝達しなければならない。

あらゆる手段を尽くして雇用を安定・拡大し、税・費用の減免、起業融資、補助等の政策支援を通じてイノベーション・起業を支援し、末端での就業プロジェクトをしっかり実施し、卒業生が都市・農村のコミュニティで就業・起業し、軍営で功を立てて事業を成すよう誘導しなければならない。

大学教育のサプライサイド改革を推進し、専門科目構造の調整を深化させ、職業教育を大いに発展させ、質の高い募集拡大任務を達成し、学生の実践能力とイノベーション意識を高め、就職の構造的矛盾を打開しなければならない。

登録された貧困家庭の卒業生への就職支援を強化しなければならない。

就職管理・サービス・指導を強化し、卒業生が正確な就業観を樹立し、就職への自信を強めるよう誘導しなければならない。

6月4日 中央新型肺炎対策領導小組会議

各地方は、常態化した防御の経験・方法を真剣に総括し、国内生産生活秩序の回復、国際人員往来の増加可能性の情況に応じて、防御措置を段階的に動態調整し、精確に最適化して実施しなければならない。

国務院防御連携メカニズムは、指導を強化し、観光・文化・スポーツ等の業種の業務・事業再開拡大を推進しなければならない。

  1. 太字は筆者。