財政部長記者会見

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2020年6月2日


はじめに

劉昆財政部長は、全人代期間恒例の記者会見を5月22日に行った。本稿では、そのポイントを紹介する。

1.加算と減算
(1)加算

財政赤字の対GDP比率を3.6%以上(前年比0.8ポイント上昇)とし、1兆元の財政資金を増やした。また、1兆元の疫病対策特別国債を発行し、国有資本経営予算等から1兆元近い資金を繰り入れた。

このほか、地方政府特別債の規模を1.6兆元増やした。

今年の一般予算収入は18兆元よりやや高く、昨年より低いと見込まれる。支出は24兆7000億元余りに達し、昨年より高い。この結果収支ギャップは6.76兆元である。

(2)減算

昨年の減税・費用引下げは2.36兆元であった。制度を継続し、今年さらに一連の減税・費用引下げ措置を打ち出し、今年の減税・費用引下げの新たな増加規模は2兆5000億元余りに達する。

構造面では、

①中央を圧縮し、地方を増やした。

今年の中央レベル財政支出はマイナス成長であるが、地方への移転支出は12.8%増、資金を9500億元増やした。

②中央レベルは、一般性支出を圧縮し、重点を保障した。

裁量的・不要不急の支出を50%超圧縮し、節約した資金を、疫病防御、3大堅塁攻略戦支援に用いた。脱貧困堅塁攻略、義務教育、基本的な高齢者ケア、都市・農村最低生活保障等の方面の重点支出を増やすのみで、減らさなかった。

③直接、末端・民生に交付した。

上級への移転支出を細分化して末端へと交付し、細分化して民生プロジェクトに交付した。

2.地方財政

地方財政の収支ギャップは、8000~9000億元であり、一部の地方は基本民生・給与・運営の保障がかなり大きなプレッシャーに直面している。ここ数カ月、中央財政は地方財政への移転支出資金の交付速度を加速させると同時に、地方財政資金留保率を高め、地方財政の困難を緩和してきた。

地方の財政力の保障を強化するため、今年の財政赤字の増加分は全部地方に交付し、中央財政が発行する疫病対策特別国債の収入も、全部地方インフラ建設と疫病対策関係支出に用いる。

今年の一般予算では、中央財政の地方への移転支出は12.8%増加しており、これは近年では最高である。中央財政は特殊移転支出を特別に設け、地方末端の運営支援に用いて、基本民生を保障し、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障する)任務を実施する。

中央財政はまた、均衡性移転支出、県レベル基本財力奨励補助金を10%増やした。

3.政府の倹約

政府が倹約する目的は、人民大衆に好い暮らしをさせたいからであり、これは長期の方針・政策であり、決して短期的な対応措置ではない。

近年確かに、「公費接待、公費海外出張、公用車購入・整備」経費等の一般性支出を連年圧縮しているが、まだ節約の余地はある。政府が倹約することと、政権の正常な運営を保障することは、矛盾しない。今年中央レベルは、不要不急・裁量的な支出を50%超縮減するが、給与等の義務的支出・機関の正常な運営は保障する。大風呂敷の浪費・業績効果のないものにはカネを払わず、法規に基づき問責する。

政府の支出管理において、我々は一般性支出とりわけ「公費接待、公費海外出張、公用車購入・整備」経費の圧縮に力を入れるよう要求した。我々は、会議・コンサルティング・フォーラム等の方面の支出を厳しく抑制し、政府の庁舎・公会堂・招待所等の新規建設・拡張建設を厳禁するよう要求する。現在、不要不急な支出を厳格に抑制し、支払うカネは真に必要なものに充て、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)政策・「6つの保障」任務をしっかり行い、民生の最低ラインをしっかり保障しなければならない。