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研究者のご紹介

新型肺炎とマクロ政策(21)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年4月20日


はじめに

本稿では、1-3月期のGDP成長率等の公表を受け、今後の経済対策を網羅的に議論した、4月17日の党中央政治局会議の概要を中心に紹介する。

4月15日 国務院金融安定発展委員会
(1)当面の内外経済・金融情勢

党中央・国務院の堅固で有力な指導の下、国内の疫病防御は顕著な成果を得て、業務・生産再開が着実に推進され、経済の活力は徐々に上昇している。国際上、金融市場の動揺は安定を回復し、経済動向は疫病の衝撃が十分顕著である。現在、外部リスクが内部リスクより大きく、マクロのリスクがミクロのリスクより大きい。このような情勢下、カギはカウンターシクリカルな調節の程度にある。自身の事柄に着実にしっかり取り組み、総量と構造から同時に着手して、供給・需要の両サイドで力を発揮し、実体経済とりわけ中小・零細企業の発展を支援する各政策措置を実施に移す。

(2)資本市場の投資家保護強化

資本市場の発展は、市場化・法治化の原則を堅持し、法に基づく信義誠実な経営が最も基本の市場紀律でなければならない。最近一時期、いくらかの上場企業が法律・ルールを無視し、財務内容を偽る等の投資家の利益を侵害する悪質な行為に及んでいる。監督管理部門は、法に基づき、投資家保護を強化し、上場会社の質を高め、真実・正確・完備・タイムリーな情報公開を確保し、仲介機関の責任をしっかり果たさせ、虚偽・詐欺等の行為を重く処分し、良好な市場環境を断固擁護して、実体経済への資本市場のサービスと投資家の機能を更に好く発揮させなければならない。

4月16日 新型肺炎対策領導小組会議

疫病防御と経済社会発展を統一的に企画・推進し、各地方の好い経験・方法を早急に整理・総括し、常態化した防御の下で業務・生産の全面的再開を推進する措置を整備しなければならない。

精確な防御と経済社会秩序の回復を推進する政策の結合点をしっかり探り、地域間の人員と要素の正常な流動、各種の経済活動の正常な展開を促進し、経済社会の発展のために、良好な大環境を作り上げる。

武漢市は、引き続き早急に、しっかり、詳細に防御活動に取り組み、全力で重症患者をしっかり治療し、コミュニティの防御措置を最適化し、その他地域との協調を強化して、正常な医療サービスの全面回復を加速し、経済社会秩序を着実に回復しなければならない。

4月17日 党中央政治局会議

内外新型肺炎疫病防御情勢を分析し、常態化した疫病防御に早急にしっかりと詳細に取り組むことを検討・手配した。当面の経済情勢を分析し、当面の経済政策を手配した。経済に関する部分の概要は、以下のとおりである1

4月15日、習近平総書記は中央政治局常務委員会会議を主催し、疫病防御と現在の経済情勢の報告を聴取し、当面の疫病防御と経済政策を検討し、中央政治局会議に関係意見の審議を提起することを決定した。

(1)経済の現状認識

今年の1-3月期は極めて尋常ではなかった。突如やって来た新型肺炎疫病は、わが国の経済社会の発展に未曾有の衝撃をもたらした。党中央の堅固な指導の下、全国人民は心を合わせ一致団結し、頑強に闘い、常態化した疫病防御の中で、経済社会の運営は徐々に正常に向かい、生産生活秩序は急速に回復している。わが国経済は巨大な強靭性を示し、業務・生産再開は徐々に正常な水準に接近し、あるいは達しており、疫病への対応は多くの新産業・新業態の急速な発展を生み出し推進している。

(2)当面の経済政策の基本方針

現在、経済発展が直面している試練は未曾有のものであり、困難・リスク・不確定性を十分推し量り、緊迫感を増強し、経済社会発展の各政策にしっかり取り組まなければならない。

習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、「4つの意識」2を増強し、「4つの自信」3を確固として、「2つの擁護」4をやりとげ、小康社会の全面実現の目標・任務をしっかりとらえ、疫病防御と経済社会発展政策を統一的に企画・推進しなければならない。

疫病防御が常態化した前提の下、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展理念を堅持し、サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持し、改革開放を動力として質の高い発展を推進することを堅持しなければならない。

3大堅塁攻略戦を断固しっかり戦い、「雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想」を安定させる政策を強化5庶民の雇用を維持し、基本民生を維持し、市場主体を維持し、食糧・エネルギー安全を維持し、産業チェーン・サプライチェーンの安定を維持し、末端の運営を維持し6、内需拡大戦略を断固実施し、経済発展と社会の安定・大局を擁護し、脱貧困堅塁攻略の目標・任務の達成を確保し、小康社会を全面的に実現しなければならない7

(3)安定重視

安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持しなければならない8

安定は大局であり、疫病を再流行させないことを確保し、経済の基盤をしっかり安定させ、民生の最低ラインをしっかり保障しなければならない。

安定の基礎の上に、積極・進取の精神で、常態化した疫病防御の中で業務・生産再開、本格生産を全面的に推進し、正常な経済社会秩序を回復し、新たな成長スポットを壮大に育成し、発展の主動権をしっかり把握しなければならない。

(4)マクロ政策

更に大きなマクロ政策の程度9もって疫病の影響をヘッジしなければならない。

積極的財政政策はより積極的に成果を出し、財政赤字の対GDP比率を高め、疫病対策特別国債を発行し10、地方政府特別債券を増やし、資金の使用効率を高め、経済を安定させるカギとなる役割を真に発揮しなければならない11

穏健な金融政策は更に柔軟・適度にし、預金準備率引下げ・金利引下げ・再貸出等の手段を運用し、流動性の合理的充足を維持し、貸出市場金利の低下を誘導し、実体経済とりわけ中小・零細企業に資金を用いなければならない12

(5)内需拡大

積極的に内需を拡大しなければならない。

①消費の潜在力を発揮させなければならない。

業務・生産再開、商店・マーケットの再開をしっかり行い、個人消費を拡大し、公共消費を適切に増やさなければならない。

②有効な投資を積極的に拡大しなければならない。

老朽化した住宅団地の改造を実施し、伝統的なインフラと新しいタイプのインフラへの投資を強化し、伝統産業の改造・グレードアップを促進し、戦略的新興産業への投資を拡大しなければならない。

③民間投資の積極性を動員しなければならない。

④企業の輸出の国内販売への転換を支援しなければならない。

⑤中小企業の難関克服への支援に力を入れなければならない。

各政策の実施を加速し、減税・費用引下げを推進し、資金調達コストと家賃を引き下げ、中小企業の生存・発展能力を高めなければならない。

⑥わが国の産業チェーン・サプライチェーンの安定性・競争力を維持し、産業チェーンが協同して業務・生産再開、本格生産を促進しなければならない。

⑦民生保障政策を確実にしっかり実施しなければならない。

脱貧困堅塁攻略を強化し、業務・生産再開において貧困地域の労働力を優先的に使用し、期限どおり脱貧困堅塁攻略の任務の全面達成を確保しなければならない。

⑧重点業種・重点層の雇用対策にしっかり取り組み、大学卒業生の就職を重点中の重点としなければならない。

⑨社会保障を整備しなければならない。

最低生活保障をしっかり行い、物価臨時補助を遅滞なく給付し、大衆の基本生活を確保しなければならない。

⑩わが国の食糧安全は十分保障されており、農業生産と重要副食品の供給保障・価格安定にしっかり取り組み、農業の基礎を打ち固めなければならない。

⑪汚染対策堅塁攻略戦を、引き続きしっかり戦わなければならない。

⑫「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、不動産市場の平穏で健全な発展を促進しなければならない13

(6)改革開放

時機を失せず改革を推進し、改革の方法をうまく用いて発展中の問題を解決し、生産要素を市場により配分する体制メカニズムを整備しなければならない。

対外開放を断固拡大し、国際物流の円滑さを保障し、防疫物資輸出の品質検査を厳格にし、「一帯一路」共同建設の質の高い発展を推進しなければならない。

  1. なお、各部分の内容の理解を助けるため、適宜小見出しをつけている。
  2. 政治意識・大局意識・核心意識・一致意識。特に、習近平を「革新」とする意識と、党中央に「一致」する意識が重要とされる。
  3. 中国の特色ある社会主義の道・理論・制度・文化への自信。
  4. 習近平の全党・党中央の核心としての地位の擁護と、党中央の権威と集中・統一的な指導の擁護
  5. 以下、太字は筆者。3月27日会議の「全面的実施」から「強化」に改められた。
  6. 従来の「6つ(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想)の安定」に「6つの維持」が追加された。
  7. 3月27日会議は、「『小康社会の全面的実現』の目標・任務の達成」であったが、「目標・任務の達成」が削除され、定性的な表現になった。
  8. 同じ表現が2回繰り返されている。
  9. 3月27日の会議の「マクロ政策の調節・実施の強化」から表現が強まった。
  10. 3月27日会議は「特別国債」であったが、「疫病対策」の限定が加わった。
  11. 3月27日会議ではなかった表現であり、財政政策の役割がより強まっている。
  12. 3月27日会議に比べ、金融政策の手段と資金の方向性の記述が加わった。
  13. 2019年12月の中央経済工作会議で言及されていた「地価・住宅価格・予想の安定」という表現は、ここでは盛り込まれていない。