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研究者のご紹介

新型肺炎とマクロ政策(20)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2020年4月15日


はじめに

 本稿では、4月14日の国務院常務会議と「ASEAN+3新型肺炎対策特別サミット」における李克強総理の発言の概要を紹介する。

4月14日 国務院常務会議
(1)企業支援政策

党中央・国務院の手配に基づき、今年に入り疫病防御の供給保障、企業の困難緩和と業務・生産再開のために、遅滞なく一連の政策措置を打ち出した。

①減税・費用引下げ方面

小型・零細企業と個人工商事業者に対し、増値税を減免し、一部製品の輸出税還付率を引き上げ、交通・輸送とレストラン・旅館等の企業の損失繰延年限を延長し、企業の社会保険料を段階的に減免し、住宅公的積立金の納付を緩和し、有料道路の通行料徴収を免じ、企業の電気・ガス使用料を引き下げる等の措置を採用した。これに、昨年の減税・費用引下げ政策の後年度効果を加えると、企業のために負担を1.6兆元減じることができる。

同時に、決められた手順に従い、今年度の地方政府特別債限度額1.29兆元を前倒しで下達した。

②金融支援方面

3回の預金準備率引下げ、再貸出・再割引を通じて、金融機関に3.55兆元の低コスト資金を提供し、企業向けの低金利の貸出に用いた。このほか、3月末までに既に約8800億元の企業向け貸出の元本・利息について延期を実行した。

③今後の方向性

これまでの有効な政策を拡大実施する基礎の上に、多くの措置を併せ打ち出して積極的財政政策の実施を強化し、かつ早急に決められた手順に従い、再び一定規模の地方政府特別債を前倒しで下達する。

実体経済とりわけ中小・零細企業への金融支援の一層強化を検討する。

製造業とサービス業の家賃・雇用等のコスト圧力緩和を支援する。

困窮層の最低ラインの保障を強化する。

(2)大学卒業生の就業促進

大学卒業生は国家の未来であり、祖国建設の新たに生み出されたパワーである。

今年の卒業生数はさらに史上最高となり、疫病の影響を受け、雇用情勢はより峻厳さを増している。

①企業の安定、ポストの開拓、卒業生の吸収・就業への支援を強化しなければならない。

起業債務保証支援を強化し、大衆による起業・万人によるイノベーションを大いに推進し、新業態の発展と柔軟な就業を牽引する。

②科学研究助手のポストを開発し、末端の教師・医療関係者の陣容を充実しなければならない。

市場化の方法をより多く採用し、政府が政策支援を与え、コミュニティの各サービス需要に対応した卒業生の起業・就業を奨励する。

③就業サービスを強化しなければならない。

教育ローンの償還期限延長、失業保険基金の活用等の政策を検討し、困窮家庭でまだ就業していない卒業生等に対し傾斜的に支援を与え、湖北の大学卒業生の就業に対して特別支援政策を実施する。

(3)老朽化した住宅団地の改造

都市の老朽化した住宅団地の改造を推進することは、庶民の居住条件を改善し、内需を拡大する重要措置である。

今年、各地方は都市の老朽化した住宅団地3.9万カ所、住民700万世帯近くに及ぶ改造を計画し、数は昨年の2倍に増えている。重点は2000年末までに建てた住宅団地である。

各地方は、責任負担を統一的に企画し、庶民の希望に基づき、住宅団地付属設備と都市インフラを重点的に改造・整備し、コミュニティの高齢者ケア・保育・医療等の公共サービス水準を高めなければならない。

政府と庶民・社会(民間)のパワーにより、合理的に改造資金を共に負担するメカニズムを確立し、中央財政は補助を与え、地方政府特別債を傾斜配分し、改造・運営への社会(民間)資本の参加を奨励する。

(4)西部大開発

西部大開発を深く推進し、企業の長期発展への期待を安定させるため、今年の年末に期限が到来する、西部地域に設立された国家奨励産業の企業に対し企業所得税の課税を15%軽減する政策の期限を延長する。

同時に、政策を享受するハードルを引き下げ、奨励産業のプロジェクトの当年度の本業収入が、企業収入総額に占める比率の制限を、70%から60%に引き下げる。

4月14日 「ASEAN+3新型肺炎対策特別サミット」における李克強総理の発言

経済に関連した部分は、以下のとおりである。

「現在、疫病は既に200余りの国家・地域に波及しており、世界人民の生命の安全と健康は重大な脅威を受けており、世界経済は深刻な衝撃に遭遇し、供給・需要両サイドが同時に収縮し、金融市場は大幅に動揺し、貿易・投資は顕著に低下している。

社会のガバナンスの危機、人道の危機のリスクが上昇し、食糧危機の懸念が浮上している。疫病の情勢は予想よりずっと峻厳であり、すべての国家に対して重大な試練となっている。

先般挙行されたG20特別サミットにおいて、習近平主席は、国際社会が自信を確固とし、団結して対応し、国際協力を全面的に強化するよう提唱した。

ASEAN+3(10+3)は近隣であり、我々は各部門がすべて揃い、優位性を互いに補う産業チェーンと分業体系を有しており、協力して危機に対応した貴重な経験と応急メカニズムを有している。

疫病防御の観点から言えば、我々は運命を共にしており、経済発展擁護の観点から言えば、我々はステークホルダーである。当面の情勢下、我々は運命共同体意識を増強し、共同の意志・パワーを凝集して、より大きな決意と行動をもって、密接に協調し、東アジア諸国が困難を共に切り抜け、事あるときは互いに助け合うというシグナルを発し、地域と国際社会の自信を奮い立たせ、東アジア地域の早急な疫病戦勝を勝ち取らねばならない。

突如やって来た疫病に対し、中国政府は常に人民を中心とし、人民の生命の安全と身体の健康を第一とすることを堅持し、自信を確固とし、同じ舟で助け合い、科学的に対策を打ち、精確に施策を実施することを堅持し、公開・透明を堅持している。

全国上下と広範な人民大衆の非常に困難な努力を経て、現在中国国内の疫病防御は、重大な段階的成果を得て、経済社会の秩序は急速に回復している。我々は大規模で段階的な減税・費用引下げ政策を打ち出し、企業の負担を軽減し、消費の増大を牽引し、新業態の発展を促進した。我々は断固として改革開放を拡大し、財政金融政策の調節を強化し、経済・社会の発展を推進する。

次の段階では、我々はカギとなる部分・リスクポイントに対して引き続き疫病防御をしっかり実施し、再流行の防止に努力し、油断はしない。我々は、最も困難なとき、地域の諸国が我々に真心のこもった援助をしてくれたことを忘れない。疫病を前にして、世界各国は運命を共にしており、苦楽は相関しており、どの国家も独りよがりはできない。

私は10+3の疫病対策協力について、いくつか提唱したい。

(1.は略)
2.経済発展の回復に努力し、地域経済の一体化を推進する。

我々は、10+3諸国の相互補完性が強く、経済・貿易の往来が密接であり、産業構造が完全に整い、利益が深く融合しているという優位性を発揮し、関税をさらに減免し、障壁を取り除き、貿易を円滑にし、投資を促進し、相互に市場を開放して、できるだけ速やかに東アジア経済の成長を回復しなければならない。

防御の要請を確保する前提の下、重要・急要のビジネス・物流・生産・技術サービスの人員の往来について「優先入国レーン」の開設を積極的に考慮することを建議する。中国と韓国・シンガポールは、バイのルートを通じて、これについて積極的に模索を進めており、この取極めが徐々にその他の需要がある国家へと広がっていくことを希望している。これは、疫病防御を疎かにしないと同時に、必要な人流・物流を維持し、産業チェーン・サプライチェーンを安定することに資するものである。

我々は、10+3産業チェーン・サプライチェーン協力強化の共同研究を展開し、脆弱部分を強化し、プレッシャーへの抵抗能力を増強しなければならない。健康医療・スマート製造・ビッグデータ・5G等の分野で協力を展開し、新たな経済成長スポットを作り上げる。我々はさらに、東アジア包括的経済連携(RCEP)の期限どおりの締結を勝ち取り、中日韓FTA交渉を加速し、よりハイレベルの地域経済の一体化を実現しなければならない。

3.密接な政策協調に力を入れ、各種のリスク・試練を防御する。

10+3メカニズムは、かつてアジア金融危機と国際金融危機に対応するため、積極的な役割を発揮した。疫病が金融市場にもたらす衝撃に対して、我々は金融リスク・試練に対応できるという自信があり、この地域のために安定したパワーを提供する。

地域の貿易・投資における自国通貨の使用を一層拡大し、通貨スワップのネットワークを整備する。チェンマイイニシアチブのマルチ化・AMRO等のメカニズムの役割を発揮し、危機対応への準備をしっかり行う。

世界銀行・アジア開発銀行・アジアインフラ投資銀行等のマルチ金融機関が緊急行動を開始し、市場の流動性の充足を維持することを支援する。中国は、アジア開発銀行の貧困減少・地域協力中国ファンドから1000万ドルを指定して、地域の疫病対策プロジェクトに専門的に使用する用意がある。アジアインフラ投資銀行が初期の規模として50億ドルの復興基金の設立を提案することを歓迎する。

東アジア地域は、世界の食糧の主たる生産地域の1つであり、人口は世界の4分の1を越え、かつ地域の諸国の多くが発展途上国であり、食糧安全の保障は極めて重要である。10+3のコメ緊急備蓄等のメカニズムの役割を好く発揮し、各国の協力を強化し、この地域の食糧供給と市場の安全を保障し、食糧危機の出現を防止しなければならない。

ウイルスは人類共同の敵である。疫病に対して一致団結し、共に試練に立ち向かうことは大義である。力を合わせ協力し、心を合わせ協力することは正道である。中国人民は、断固として東アジア人民、世界人民と共に立ち、共に困難を担い、共に困難を克服する。我々は、必ず疫病の共同で戦勝し、地域経済の活力を回復し、世界の繁栄・安定の実現を推進できると信じている。