減税・費用引下げ・貿易の安定

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2019年11月14日


はじめに

7-9月期GDP成長率の発表を受け、李克強総理は10月23日、国務院常務会議を開催し、減税・費用引下げ政策の障害除去と対外貿易安定政策を決定した。本稿では、会議の概要を紹介する。

1.国務院第6次大監査情況

中央経済工作会議と政府活動報告の手配実施を軸に、最近国務院は16の省(区・市)で監査を展開した。監査は重点を際立たせ、方式を刷新し、3分の2以上の人員・時間を、秘密裡に、通知せず、立ち会いを求めず、直接調査する方法を用いた。総じて見ると、今年に入り、各地方は党中央・国務院の手配を真剣に貫徹し、積極的成果を上げている。

今後、監査で発見された問題を関係地方・部門に振り分け、重点問題について公開・督励し、地方・部門が問題を逐一全面的に改善することを推進し、末端での不満が際立っている「減税・費用引下げのボーナス効果を侵蝕し、権力を濫用してビジネス環境を破壊し、行政が怠惰である」という問題を断固として是正し、内需拡大・雇用安定等の政策実施に影響を与える障害を早急に取り除き、いい加減にその場をごまかし、形式主義に陥ることを強く戒めなければならない。

地方の好い経験を普及させ、収集した意見・建議を真剣に検討し、政策の整備を推進しなければならない。

2.対外貿易の安定化策

今年に入り、各地方・関係部門は外部環境の変化に積極的に対応し、対外貿易安定化策をしっかり実施し、対外貿易の運営は総体として平穏である。

新たな情勢・新たな試練に対して、既に決定した各政策をしっかり実施すると同時に、

①輸出税還付・貿易融資・信用保険等の政策を一層整備しなければならない。

クロスボーダーEコマース(EC)小売輸入政策への総合保税区の全面適用を段階的に実現する。差別化した政策を実行し、中西部・東北地方が加工貿易の移転受入を支援する。

②ハイレベルの自由貿易地域ネットワークの構築を推進しなければならない。

「行政の簡素化・権限の委譲、開放と管理の結合、サービスの最適化」改革を深化させ、経済開放区・保税区等の遊休地の有効利用を促進し、貿易の円滑化レベルを高める。対外貿易の転換・高度化基地、貿易促進プラットホーム等の建設を加速する。

③対外貿易の新業態を育成しなければならない。

クロスボーダーECの総合試験区を増設し、クロスボーダーEC小売輸出に係る所得税査定・徴収弁法を早急に打ち出す。市場からの調達貿易テスト、貿易総合サービス企業の発展を支援する新たな措置を模索する。保税による修理・再製造に先行テストを加速する。

④国内需要に適応した農産品・日用消費財と設備・部品等の輸入を増やさなければならない。

いくらかの輸入促進イノベーションモデル地区を育成する。第2回中国国際輸入博覧会をしっかり開催する。

対外貿易・外資政策を統一的にしっかり企画し、合理的均衡水準における人民元レートの基本的安定と合理的な外貨準備を維持することによって、対外開放を一層拡大し対外貿易・外資を安定させるため、外貨管理を最適化し、クロスボーダー貿易・投資の円滑化を促進する12条措置を確定する。これには、

①貿易・外貨収支円滑化テストを拡大し、

②小型・零細クロスボーダーECに関する資金受払手を簡素化し、

③貨物貿易外為業務の報告方式を最適化し、

④企業がすぐに検証待機口座を開設するかどうかを自主的に選択し、

⑤企業の出先機関による貨物貿易外貨収支リストの登録を円滑化し、

⑥プロジェクト請負企業が国外資金を集中管理することを認め、

⑦非投資型外資企業が資本金を国内株式に投資することを認め、

⑧資本取引収入の支払を円滑化するテストを拡大し、

⑨企業の外債登記を銀行処理に委譲し、

⑩外債の登記廃止を試み、

⑪資本取引外貨口座の開設数制限を廃止し、一部資本取引の外貨資金の決済使用を円滑化し、

⑫銀行の不良債権と貿易融資等のクロスボーダー譲渡テストを展開する、ことが含まれる。

同時に、クロスボーダー資本流動のリスク防止を重視し、金融の安定を維持する。