経済情勢座談会

中国経済レポート

新領域研究センター 田中 修

2019年10月17日


はじめに

李克強総理は10月14日、西安で「一部省政府主要責任者経済情勢座談会」を開催した。会議では、陝西省の書記・省長、河南省・湖北省・広東省の各省長が現地の経済情勢と今後の政策についての計画、関連対策建議について発言した1。本稿では、李克強総理の発言の概要を紹介する(新華社西安電、2019年10月14日)。

今年に入り、国際環境は更に複雑・峻厳さを増し2、世界の経済成長は鈍化し、国内経済も多重の試練と国難に直面している。各地方・各部門は、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、党中央・国務院の手配を真剣に貫徹し、「雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想」を安定させる政策をしっかり力を入れて実施し、経済運営は総体として平穏であり、構造調整は徐々に推進され、民生福祉は不断に改善された。

しかし、現在の経済下振れ圧力は引き続き増大し、実体経済の困難が際立ち、内需が疲弊し、一部の食品価格が受給関係の変化により上昇しており、一部地方は発展動力が不足していることをも見て取らねばならない3

今後の経済政策をしっかり行うには、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、緊迫感・責任感を増強し、精力を集中して自身の事柄にしっかり取り組み、発展という第一の重要任務にしっかり取り組み、安定成長と経済運営を合理的区間に維持することをより際立てて位置づけなければならない。一層改革・開放に向けてイノベーションを図るには動力が必要であり、国内市場の需要を開拓することから潜在力を発掘し、民生改善を目標として新たな有効投資と消費需要を育成し、経済発展の強靭性を増強しなければならない。経済の下振れ圧力に耐え抜き、雇用の安定的な伸びを促進し、物価の基本的安定を維持し4民生保障政策を着実にしっかり実施し、年間の主要目標・任務の完成を確保し、来年の経済の平穏な成長のために基礎を打ち固めなければならない。

(1)最低ラインを守るという考え方を増強し、経済運営を合理的区間に維持することを軸に、既に打ち出した減税・費用引下げ、資金調達コスト引下げ等の各政策をしっかり実施し、マクロ政策のアンチシクリカルな調節手段を柔軟に運用し、政策をしっかり協調・連動させ、事前調整・微調整を強化しなければならない。

地方政府特別債券の役割を発揮させ、民間投資を牽引し、脆弱部分の補強・構造調整・民生優遇の重大プロジェクト建設を加速し、有効な投資を拡大する。

中西部への産業引継・移転を支援する。

大衆の需要と内需拡大を軸に、市場の新たな情勢に適応し、重点を際立たせ、新たな商品・サービス消費の成長スポットを育成・開拓し、都市・農村のオンライン・オフライン市場を活性化する。

(2)改革を用いて市場化・法治化・国際化したビジネス環境を建設することを堅持しなければならない。

企業の投資・興業の障害・難点を一層整理し、先進水準を目標として、引き続き「行政の簡素化・権限の委譲、開放と管理の結合、サービスの最適化」改革を強化する。

産業イノベーションの発展水準を高めることに力を入れ、工業ネットワークを積極的に発展させ、市場需要に焦点を絞り大中小企業が「起業・イノベーション」を協同で展開することを推進し、製造業企業のグレードアップ・改造を促進し、新たな動力エネルギーの成長空間を開拓する。

ハイレベルの対外開放を推進し、多元化した国際貿易・投資協力を展開し、互恵・ウインウインを実現する。

(3)民生の実務を着実にしっかり実施しなければならない。

雇用優先政策を細分化して実施し、大学卒業生、退役軍人、転職従業員、都市・農村の就業困難者等の層の雇用対策を統一的に企画し、しっかり実施する。

年金の期限どおりの全額支給を確保し、出稼ぎ農民の賃金未払い問題をしっかり解決する。

秋・冬の農業生産にしっかり取り組む。

市場の需給をしっかりリンクさせ、農産副食品の供給、生活必需品価格の基本的安定維持に努力し、困窮者・被災者層の基本生活を保障する。

安全生産の責任制を実施し、重大・特大事故の発生を有効に防止する。

  1. 座談会には、ほかに肖捷国務院秘書長、何立峰国家発展・改革委員会主任が参加した。
  2. 太字は筆者。
  3. 7月15日の経済情勢座談会では「世界経済の成長動力が減退し、貿易投資が鈍化し、保護主義が台頭し、国内経済に影響を与える要因と困難・試練が多く、下振れ圧力が増大していることをも見て取らねばならない」という表現であり、今回は認識が一層厳しくなっている。
  4. 9月の消費者物価上昇率が抑制目標上限の3%に達したため、これまでの「6つの安定」加え、新たに「物価の基本的安定」がマクロ政策目標に加えられた。