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研究者のご紹介

下半期の経済政策(3)

中国経済レポート

 

新領域研究センター 田中 修

2019年8月26日


人民銀行は8月2日、下半期政策テレビ会議を開催し、上半期の政策を総括するとともに、当面の国内・国際経済金融情勢を分析し、下半期の重点政策を検討・手配した。本稿では、会議の概要を紹介する。

1.上半期の総括  

2019年に入り、複雑・峻厳な内外経済情勢に対して、人民銀行系統組織は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとして、「4つの意識」を一層増強し、「4つの自信」を確固とし、「2つの擁護」を断固としてしっかり実施し、党中央・国務院の政策決定・手配を断固として貫徹実施し、全系統組織における党の建設を一層強化し、実体経済への金融サービス、金融リスクの防止・解消、金融改革の深化を統一的に企画・推進し、金融開放を不断に拡大した。

各政策は堅実な歩みを踏み出し、経済社会の持続的で健全発展の大局のために、良好なマネー・金融環境を提供した。

(1)穏健な金融政策は適度な緩和・引締めを維持し、事前調整・微調整とカウンターシクリカルなコントロールを強化した  

適時に預金準備率を引き下げ、「3ランク・2優遇」の預金準備の政策枠組を整備し、再割引・中期貸借ファシリティー・常備貸借ファシリティーの限度額を増やし、公開市場操作を柔軟に展開し、流動性の合理的な充足を維持した。  

6月末のM2は8.5%増であり、前年同期比0.5ポイント高まった。社会資金調達規模残高は10.9%増であり、前年同期比1.1ポイント高まった。6月の貸出加重平均金利は5.66%であり、前年同期比0.28ポイント低下した。  

中央銀行手形互換操作を創設・展開し、永続債をブレークスルーとし、銀行が多くのルートでTier1自己資本を補充し、資本の制約を緩和し、貸出能力を高めることを推進し、政策の伝達・説明・円滑化を強化し、市場の予想を積極的に誘導・安定させた。

(2)民営、小型・零細企業への金融支援を引き続き強化した  

金融政策合成力を確実に発揮させ、インクルーシブ・ファイナンスへの方向を定めた預金準備率引下げの支援範囲を拡大し、小型・零細企業への貸出考課基準を緩和し、包摂的な小型・零細企業への貸出の伸びは22.5%に達し、前年末比7.3ポイント高まり、同期の全貸出の伸びより9.5ポイント高かった。  

民営、小型・零細企業への貸出金利は、総体として比較的低い水準を維持し、貸出平均金利は6.82%であり、前年同期比0.58ポイント低下した。民営、小型・零細企業の資金調達難・資金調達コスト高は顕著に緩和した。

(3)重大金融リスクの防止・解消は、積極的な成果を得た  

法規に全面的に基づくことを堅持し、預金保険基金を運用し、買収・引継方式を採用し、包商銀行の深刻な信用リスクを果断に率先して管理を引き継ぎ、かつ専業的に効率よく処理し、システミック金融リスクとモラルハザード防止の度合をしっかり把握し、預金者とその他顧客の合法権益を最大限度保護し、かつ硬直的な払戻しを断固として打破し、市場紀律を厳格化した。一部中小金融機関の流動性リスクを適切に処理・解消した。  

輸入性リスクと金融市場リスクの変動に適切に対応し、債券デフォルトの迅速な処理メカニズムの確立を推進し、一部重点金融持株グループのリスク処理を適切に推進し、金融リスクは全体として収斂し、総体としてコントロール可能である。

(4)重点分野の体制メカニズムの改革が一層深化された  

金利の市場化改革を引き続き推進し、中央銀行金利の健全な波及メカニズムを整備し、貸出市場のオファードレート(LPR――最優遇貸出金利)を積極的に育成し、中央銀行の価格タイプのコントロール手段を一層豊富にした。  

マクロプルーデンス管理の枠組を整備し、システム上重要な金融機関と金融持株会社の監督管理を推進した。中央と地方の金融監督管理の協調を強化し、地方の金融監督管理とリスク処理の現地責任を徹底した。

(5)金融の対外開放拡大の成果が顕著になった  

銀行業・証券業・保険業の市場参入を大幅に開放し、外資企業の信用情報収集・信用格付け・銀行カード・非銀行決済への参入を開放した。

中国株式・債券市場が主要な国際指数に組み込まれ、上海・ロンドンの株式相互取引制度の実施を推進し、人民元建原油国際先物取引を推進し、人民元の国際化とクロスボーダー使用に新たな進展があり、「一帯一路」建設への金融支援を強化した。

(6)金融のサービス・管理水準が引き続き向上した  

金融サプライサイド構造改革等経済・金融のホットスポット・重点問題を引き続きフォロー・検討し、金融業の総合統計を全面的に推進し、完全な資産管理商品の統計体系を初歩的に確立した。企業の銀行口座の行政許可・審査を全面的に取り消した。インターネットの安全と情報化の協調を強化し、清算システムを平穏に運営した。

2.下半期の政策  

2019年下半期の政策をしっかり行うことの意義は重大であり、人民銀行系統組織は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、党中央・国務院の政策決定・手配を全面貫徹し、金融政策・金融行政への党の集中・統一的指導を堅持し、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展理念を堅持し、サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持し、改革開放を堅持しなければならない。「強固・増強・向上・円滑」の方針をしっかり軸として、「雇用の安定・金融の安定・対外貿易の安定・外資の安定・投資の安定・予想の安定」のための各政策をしっかり力を入れて実施し、金融サプライサイド構造改革を深く推進し、経済・金融の持続的で健全な発展を促進しなければならない。  

当面の複雑・峻厳な情勢下、人民銀行系統の各レベルの指導幹部は、「四つの自信」を確固とし、全局的観念を樹立し、情勢を理性的にながめ、中国の発展の前途が光明に輝いていることに強い自信をもつとともに、その道は曲折しており、困難が少なくないことをも十分認識し、党の指導と中国の特色ある社会主義制度の優位性を発揮し、不動心を維持し、足に力を入れてしっかりと立たなければならない。  

改革の深化・開放の拡大を動揺させないことを堅持し、主要な矛盾をしっかり把握して危機をうまくチャンスに変えなければならない。サプライサイド構造改革の推進に力を入れ、金融機関のコーポレートガバナンスを全力で推進し、様々なレベルの資本市場システムの建設を加速し、インクルーシブ・ファイナンスを大いに発展させなければならない。

法規に基づき金融機関のリスクを適切に処理し、中央の要求に基づき、金融機関・地方政府・金融監督管理部門の責任を徹底させ、ハイリスクの金融機関の処理では合併を多くして破産を少なくすることを堅持し、慎重・周到な金融文化の形成を促進しなければならない。数量と質を併せて重視することを堅持し、専業化・特色化した金融機関の発展を奨励すると同時に、構造の最適化と質の向上をより重視しなければならない。  

下半期は、以下の政策を重点的にしっかり行わなければならない。

①穏健な金融政策の実施を堅持し、適度な緩和・引締めを維持し、適時事前調整・微調整を行わなければならない  

多様な金融政策手段を柔軟に運用し、適時適度にカウンターシクリカルな調節を進め、流動性の合理的な充足を維持し、M2・社会資金調達規模の伸びがGDP名目成長率に釣り合うよう誘導する。

②政策の協調的組合せを強化し、金融政策の実体経済への伝達メカニズムの円滑化を加速し、市場のミクロ主体の活力を一層奮い立たせる  

小型・零細企業への金融サービスの改善にたゆまずしっかり取り組むことを堅持し、民営、小型・零細企業への金融サービス総合改革を深化させ、小型・零細企業への貸出件数の増加・貸出の拡大・貸出コストの適度な引下げの実現を確保し、質の高い民営企業が債券による資金調達規模を拡大することを支援する。  

貧困への金融支援と農村振興への金融サービス政策の実施を強化し、質の高い持続可能な脱貧困の実現を促進する。

③重大リスクの防止・解消の堅塁攻略戦を断固としてしっかり戦う  

重大リスクの防止・解消の堅塁攻略戦3年アクションプランの手配・要求に基づき、貫徹実施に真剣にしっかり取り組む。  

各種リスクの隠れた弊害を適切に処理・解消し、システミック金融リスクを発生させない最低ラインをしっかり守り、広範な人民大衆の合法権益を最大限度保護する。

安定成長の基礎の上にリスクを防止し、「正門を開け、裏口を閉ざす」ことを堅持し、高圧の態勢と厳格な取締りの局面を維持すると同時に、小型で特色ある金融機関が法規に則り業務を展開することを奨励する。  

「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、不動産の長期有効な管理メカニズムを実施し、「都市の実情に応じた施策」の基本原則に基づき、不動産市場の資金管理・コントロールを引き続き強化する。

④リード・総指揮の役割を発揮し、金融サプライサイド構造改革を一層深化させる  

金利市場化改革を引き続き深化させ、企業の資金調達実質コストの低下を有効に促進する。マクロプルーデンス管理の枠組の健全な評価システムを整備する。  

中央・地方の金融監督管理の協調を強化し、地方の金融監督管理体制メカニズムを整備する。金融業の立法のトップダウン設計を強化する。

⑤金融の対外開放を拡大する  

市場参入を引き続き緩和し、人民元資本項目の開放を着実に推進し、人民元のクロスボーダー使用を推進する。

⑥金融のサービス・管理水準を不断に高める  

金融業総合統計、支払機関の監督管理、情報ネットワークの安全、新版人民元の発行、国庫監督管理、信用情報収集、個人情報保護、反マネーロンダリング監督管理、金融消費権益保護等各方面の施策をしっかり実施する。

⑦勢いに応じて金融科学技術を有利に導き、フォロー・調査研究を強化し、新たな試練を積極的に出迎えなければならない  

わが国の法定デジタル通貨(DC/EP)の研究開発の歩みを早急に推進し、内外の仮想通貨の発展傾向をフォロー・研究し、インターネット金融のリスク対策を引き続き強化する。

⑧中央銀行の政策の宣伝・説明を引き続き強化する  

社会の関心に遅滞なく対応し、様々なレベルの専門家諮問制度を整備し、市場の予想を安定化・誘導する。