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研究者のご紹介

2019年も株高・通貨レアル安

ブラジル経済動向レポート(2019年12月)

地域研究センター 近田 亮平

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貿易収支:12月の貿易収支(速報値)は、輸出額がUS$181.55億(前月比+3.2%、前年同月比▲6.2%)、輸入額がUS$125.55億(同▲11.4%、同▲2.8%)で、貿易収支はUS$56.00億(同+63.4%、同▲12.9%)の黒字額を計上した(グラフ1)。この結果、2019年の輸出額がUS$2,240.18億(前年比▲6.4%)、輸入額がUS$1,773.44億(同▲2.1%)で、貿易黒字額はUS$466.74億(同▲19.6%)だった。

輸出に関しては、一次産品がUS$100.50億(一日平均額で前年同月比▲1.7%)、半製品がUS$20.69億(同▲25.0%)、完成品がUS$60.37億(同▲17.7%)だった。主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$55.29億、同▲0.8%)、2位が米国(US$26.06億、同+0.3%)、3位がアルゼンチン(US$7.09億、同▲4.2%)、4位が日本(US$6.44億、同+48.3%)、5位がオランダ(US$5.16億)で、日本への輸出額増加が顕著だった。輸出品目に関して、増加率ではアルミニウム(同+8,929.4%、US$0.37億)が突出し、減少率ではセルロース(同▲45.8%、US$4.70億)、航空機用エンジン・タービン(同▲41.8%、US$1.07億)、プラスチックポリマー(同▲41.7%、US$0.89億)が40%超で大きかった。輸出額(「その他」を除く)では、原油(US$27.20億、同+41.1%)、鉄鉱石(US$14.89億、同▲22.6%)、大豆(US$12.58億、同▲23.8%)の一次産品3品目がUS$10億以上の取引額を計上した。

一方の輸入は、資本財がUS$15.96億(一日平均額で前年同月比▲1.7%)、原料・中間財がUS$73.30億(同▲7.4%)、耐久消費財がUS$4.77億(同+53.1%)、非・半耐久消費財がUS$14.47億(同+3.0%)、基礎燃料がUS$8.92億(同▲4.3%)、精製燃料がUS$7.74億(同▲43.5%)だった。主要輸入元は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$26.57億、同+15.9%)、2位が米国(US$21.19億、同▲24.0%)、3位がアルゼンチン(US$9.05億、同▲10.9%)、4位がドイツ(US$7.26億)、5位がインド(US$3.14億)であった。

グラフ1 2019年の貿易収支の推移

グラフ1 2019年の貿易収支の推移

(出所)経済省 (注)軸の「B」は「10億」。


物価:発表された11月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.51%(前月比+0.41%p、前年同月比+0.72%p)だった。年初累計は3.12%(前年同期比▲0.47%p)で前年同期比は6カ月連続でマイナスとなるも、その幅は縮小した。また、直近12カ月(年率)は3.27%(前月比+0.73%p)で3カ月ぶりに前月比がプラスに転じた。

分野別では、飲食料品分野が0.72%(前月比+0.67%p、前年同月比+0.33%p)と伸びが大きく、ジャガイモ(10月▲9.06%→11月▲14.27%)、タマネギ(同▲20.84%→▲12.48%)、トマト(▲12.71%)などは値下がりしたが、消費量の多い牛肉(同1.77%→8.09%)の値上がりが影響した。また、賭博料金(24.35%)が大幅に引き上げられたため個人消費分野(同0.20%→1.24%)が最大の伸びを記録し、電気料金(同▲3.22%→2.15%)が改定された住宅分野(同▲0.61%→0.71%)も前月のマイナスからプラスに転じた。一方、家財分野(同▲0.09%→▲0.36%)と通信分野(同▲0.01%→▲0.02%)が前月に続いて下落し、その他の分野は落ち着いた数値であった。

金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は11日、5.00%だったSelicを0.50%p引き下げて4.50%にすることを全会一致で決定した。Selicは4回連続で引き下げられ、10月に開催された前回のCopomに続きSelic創設(1996年)以来の最低値を再び更新した。ブラジル経済に関して、為替相場でドル高レアル安傾向が進んだにもかかわらず物価が落ち着いて推移するなか、2019年第3四半期GDPをはじめ(前月レポート参照)金利低下に後押しされ景気回復の兆しが最近見られている。そのため景気を更に浮揚させるべく、2月に開催される次回のCopomでSelicが再度引き下げられる可能性もある。ただし、中央銀行はSelic引き下げのサイクルは終わりに近づいているとの声明を発表している。

為替市場:12月のドル・レアル為替相場は、11月とは異なりドル安レアル高の展開となった。その要因の一つとして、継続的に中央銀行が実施してきたドル売りレアル買いの為替介入が挙げられ、その結果、政府のドル建て外貨準備高は9月以降大幅に減少することとなった(グラフ2)。

また、月初めに発表された2019年第3四半期GDP(前月の同レポート参照)と10月の鉱工業生産指数が予想を上回る数値だったこと、政策金利が米国で据え置かれた一方、最近の経済指標で景気回復の兆しが見えるブラジルで再び引き下げられ、海外からブラジルへの資金流入が増加するとの期待感が高まったこと、9-11月の失業率が11.2%で2カ月連続(7-9月11.8%、8-10月11.6%)で低下しブラジル経済の回復を示すものだったことなどから、レアルを買う動きが強まった。さらに、米国の11月の雇用統計や個人消費支出が堅調だったこと、米中の通商協議が進展して第一段階の合意に至り世界経済の見通しに楽観的な見方が広がったことに加え、米国でTrump大統領の弾劾決議を下院が可決したことも材料視された。その結果、月末にドルは月内対レアル最安値のUS$1=R$ 4.0301(買値)を記録し、前月末比で▲4.58%下落して2019年の取引を終えた。

ただし2019年の為替市場では、ブラジルでの年金改革法案や政策金利引き下げのなかでの景気の動向、米中の通商協議と世界経済への影響に対する懸念、隣国アルゼンチンの大統領選挙などを要因として、株式市場で進んだ株高と異なり通貨レアルは年央と年末を除き概ね売られる展開となった。その結果、レアルは1994年の通貨創設以来の最安値を11月に記録し、年末はドルが前年末比で4.02%上昇して一年を終了した(グラフ3)。

グラフ2 月末のドル建て外貨準備高の推移(2013年以降)

グラフ2 月末のドル建て外貨準備高の推移(2013年以降)

(出所)ブラジル中央銀行  (注)軸の「B」は「10億」。水色の棒グラフは年末の残高。


グラフ3 2019年のレアル対ドル為替相場の推移

グラフ3 2019年のレアル対ドル為替相場の推移

(出所)ブラジル中央銀行


株式市場:12月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、ほぼ右肩上がりで上昇する展開となった。株高の国内要因として、2019年第3四半期GDPが前期比0.6%と事前予測より良かったことや10月の鉱工業生産指数が前月比0.8%で3カ月連続のプラスになるなど、月のはじめに発表された経済指標で景気回復の兆しが見られたことが挙げられる。月の半ばには、政策金利(Selic)が史上最低値を再度更新するかたちで引き下げられたこと、格付け会社のS&P社がブラジルのソブリン格付けの見通しを引き上げたこと、税制改革法案に関して上院で特別委員会の設置が合意されたことに加え、Guedes経済大臣が同法案成立への意欲を改めて示したことなどが好感された。月末向けては、11月の正規雇用数(新規雇用数マイナス失業者数)が9.9万人で8カ月連続のプラスだったことや、回復基調にあるブラジル経済への信頼感からクリスマス商戦が好調だったことが材料視された。

また海外要因として、米国での堅調な11月の雇用統計の発表や中国との通商協議をめぐる楽観的な見方、米中の通商協議が第一段階の合意に至り両国間の貿易摩擦が収束へ向かうとの期待、クリスマス休暇前で取引薄となる中での米国株の最高値更新などが挙げられる。その結果、株価は26日に117,203pの史上最高値を記録した。月末は若干値を下げたものの、前月末比+6.85%の上昇となる115,645pで2019年の取引を終了した。

なお2019年の株式相場は、5月までは伸び悩んだがブラジル経済の回復への期待感や米中の通商協議の進展などから、特に年末にかけて史上最高値を更新しながら続伸した。そして、前年末比で2016年の38.93%、2017年の26.86%、2018年の15.03%に続き、2019年も31.58%上昇して一年の取引を終えた(グラフ4)。

グラフ4 2019年の株式相場(Bovespa指数)の推移

グラフ4 2019年の株式相場(Bovespa指数)の推移

(出所)サンパウロ株式市場