経済をめぐる楽観と低調
ブラジル経済動向レポート(2017年1月)
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貿易収支:1月の貿易収支は、輸出額がUS$149.11億(前月比▲6.5%、前年同月比+32.6%)、輸入額がUS$121.87億(同+18.1%、同+18.1%)であった。この結果、貿易収支はUS$27.25億(同+197.7%、同+195.3%)となり、1月として2006年(US$2,835)に次ぐ黒字額を記録した。
輸出に関しては、一次産品がUS$67.87億(1日平均額の前年同月比+30.0%)、半製品がUS$25.97億(同+27.5%)、完成品がUS$51.23億(同+7.4%)であった。主要輸出先は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$30.27億、同+74.3%)、2位が米国(US$18.28億、同+18.5%)、3位がアルゼンチン(US$10.36億、同+14.1%)、4位がオランダ(US$6.81億)、5位がインド(US$4.17億)であった。輸出品目に関して、増加率では燃料油(同+271.2%、US$1.64億)とオレンジ・ジュース(同+251.2%、US$1.14億)が200%超を、減少率ではトウモロコシ(同▲69.7%、US$2.44億)と綿(同▲67.7%、US$0.49億)が60%超を記録した。輸出額では(「その他」を除く)、原油(US$17.64億、同+97.7%)と鉄鉱石(US$16.20億、同+124.5%)がUS$10億以上の取引額を計上した。
一方の輸入は、資本財がUS$12.74億(1日平均額の前年同月比▲40.1%)、原料・中間財がUS$80.34億(同+22.8%)、耐久消費財がUS$3.22億(同+14.8%)、非・半耐久消費財がUS$14.75億(同+0.5%)、基礎燃料がUS$4.78億(同▲39.8%)、精製燃料がUS$6.00億(同+336.8%)だった。主要輸入元は、1位が中国(香港とマカオを含む)(US$23.32億、同▲9.3%)、2位が米国(US$21.35億、同▲32.3%)、3位がドイツ(US$7.38億)、4位がアルゼンチン(US$6.80億、同+27.1%)、5位が韓国(US$4.48億、同+43.6%)であった。
物価:発表された2016年12月のIPCA(広範囲消費者物価指数)は0.30%(前月比+0.12%p、前年同月比▲0.66%p)で、この結果2016年の物価上昇率は6.29%(前年比▲4.38%p)となり、2015年と異なり政府目標4.50%の上限6.50%を下回った(グラフ1と2)。
12月の食料品(前月比+0.28%p、前年同月比▲1.42%p)に関しては、ジャガイモ(11月▲8.28%→12月▲16.12%)やフェイジョン豆(carioca:同▲17.52%→▲13.77%、mulatinho:同▲0.81%→▲4.39%)など、値下がりした品目が多かった。一方の非食料品では、年末で旅行や娯楽の需要が高まり燃料費も値上がりした運輸交通分野(同0.28%→1.11%)、および、価格が4.80%上昇したタバコの影響から個人消費分野(同0.47%→1.01%)が1%超の高い伸びとなった。しかし、住宅分野(同0.30%→▲0.59%)と家財分野(同▲0.16%→▲0.31%)がマイナスを記録するなど、その他の分野では低い数値だった。
2016年通年では、食料品(前年比▲3.41%p)に関して、日常的に食されているフェイジョン豆(2015年21.45%→2016年56.56%)とキャッサバ芋の粉(同8.62%→46.58%)が50%前後も値上がりするなど、日々の食卓への影響が大きかった。非食料品に関しては、健康・個人ケア分野(同9.23%→11.04%)、教育分野(同9.25%→8.86%)、個人消費分野(同9.50%→8.00%)の値上がりが顕著だった一方、通信分野(同2.11%→1.27%)や住宅分野(同18.31%→2.85%)は低い伸びにとどまった。
(出所)IBGE
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(出所)IBGE (注)政府の目標値(4.5%)の上下幅は±2%p。
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金利:政策金利のSelic(短期金利誘導目標)を決定するCopom(通貨政策委員会)は11日、Selicを0.75%p引き下げることを全会一致で決定した(グラフ3)。Selicの引き下げは3回連続で予想通りだったが、0.75%pの引き下げ幅は大半の予測より大きかったため、市場では驚きとともに好感を持って受け止められた。最近のブラジルでは、雇用(グラフ4)や鉱工業指数(2016年は前年比▲6.6%)は依然低調だが、年間IPCAが政府目標の上限(6.5%)だけでなく2014年(6.41%)も下回り、物価が落ち着いて推移していることから、経済の先行きに対して楽観的な観測が一部で出てきている。このような状況の変化から、景気回復を後押しする金利の更なる引き下げが可能になったと判断され、Selicが予想より大きく引き下げられたと考えられる。
(出所)ブラジル中央銀行
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為替市場:1月のドル・レアル為替相場は、ブラジル経済の先行きに対する楽観的な見方が強まり、月を通して緩やかにドル安レアル高が進行した。月のはじめ、株式相場が上昇したことに加え、石油油公社Petrobrasが海外市場でUS$40億の資金調達を行った関連から、ドル売りレアル買いが進んだ。月の半ばは、Selicの予想以上の引き下げがブラジル経済の景気回復にとってプラスになるとの見方から、レアルが買われる一方、米国のトランプ大統領就任を前に経済政策をはじめとする先行き不透明感が増し、ドルは売られる展開となった。そして、実際にスタートしたトランプ政権がTPP脱退やNAFTA見直しなどの経済政策を打ち出し、これらがブラジルの貿易に有利に働くとの見方からレアル高が進んだ。さらに、米国の2016年第4四半期GDPが予想より低かったため、このことがドル売りレアル買いを加速させた。このような為替相場に対して、Ilan中央銀行総裁が介入を行う可能性に言及したためドルが若干値を戻したものの、月末は前月末比▲4.05%ものドル安レアル高となるUS$1=R$3.1264(買値)で1月の取引を終えた。
株式市場:1月のブラジルの株式相場(Bovespa指数)は、昨年末に発表された9月~11月の失業者が、数(1,213万人)と率(11.9%)ともに過去(現在の算出方法を開始した2012年以降)最悪になったことを受け、下落して始まった。なお、1月末に発表された10月~12月の同指標は更に悪く、失業者数が1,234万人、失業率は12.0%を記録した(グラフ4)。
しかし、海外の主要株式相場が年明けの取引を開始すると、コモディティや金融関連の株を外国人投資家が買う動きが活発化し、Bovespaは大幅に上昇。月の半ばも、Selicが0.75%pと大半の予測より大きく引き下げられたため、市場では驚きとともに好感を持って受け止められ、株価は上昇した。その後、石油公社Petrobrasをめぐる汚職疑惑(Lava Jato)を最高裁で担当していたTeori裁判官が飛行機事故で死亡したため、汚職疑惑の審議に遅れが出るとの見方から下落する場面もあった。月末に向けては、米国のトランプ大統領就任への期待感、および、発足したトランプ大統領がメキシコとの貿易関係の見直しを明言するなど、ブラジルにとって短期的に国際情勢が有利に変化するとの楽観的な観測から、25日に2011年4月と同水準の66,191pまで上昇した。月末は若干値を下げたものの、終値は64,671pで前月末比+7.38%ものプラスで1月の取引を終了した。
(出所)IBGE (注)失業率は左軸、実質月平均所得は右軸。
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