調査研究

研究会一覧 2022年度

政党の起源と機能について(2022_1_40_001)

概要

 自由で公正な競争選挙を通じた政権交代が行われるという意味での「民主主義体制」を支える重要な政治制度が、「政党」である。「政党が民主主義を作り出したのであり、近代民主政治は政党なしでは考えられない」(シャットスナイダー)とする見解が一般的である。では、政党はいかなる「機能(functions)」を有しており、その「起源(origins)」は何か。また、本当に政党抜きの民主主義体制は考えられないのか。本研究課題は、こうした問題に関する先行研究を輪読し、その内容を起源および機能という観点から体系的にレビューすることを通じて、既存研究が取りこぼしてきた論点を明確にし、もって本格的な研究会を設置する基礎を打ち立てることを目的とする。  具体的には、先行研究を以下のような観点から輪読していく。まず政党の起源について、民主主義に先立つ非民主主義体制時代における独裁者と政党の関係を中心に、イデオロギー闘争を伴う政治権力闘争を重視して考察していくことで、ここ15年ほどの間に発達した独裁体制の政治制度に関する研究成果と、政党研究の知見とを接合するための基礎を構築する。  次に、政党の機能については、これまでの様々に提示されてきた諸機能に加えて、新たに「政治的対立の抑制」機能があるのではないかという仮説を申請者は立てている。すなわち、政党執行部による陣笠議員に対する「党内規律」を通じた対立の抑制機能を有すると考える。これは、「選挙」という政治制度が社会内部の対立を促進しうる一方で、その選挙のもつ対立促進効果を、政党という制度が抑制するのではないかという豊田の個人研究会の成果に基づく仮説である。   これらを予備的仮説として、最新の先行研究を、政党が比較的強いメキシコ(豊田)、マレーシア(谷口)および政党が弱いか不在であるフィリピン(渡辺)、ペルー(磯田)の経験に妥当するか否かに着目しつつ、輪読していく。  最終的には、①政党の誕生を従属変数として、その起源を独裁体制時代の政治過程に求めると同時に、②政党を独立変数として、民主化時代の政治的対立の分極化の抑制を従属変数とする、本格的な研究会の立ち上げを考えている。アプローチとしては各国毎の歴史分析が主となるだろう。

期間

2022年4月~2023年3月

研究代表者

豊田 紳

研究成果

基礎理論研究会成果報告書, アジア経済