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No.26
NGOの現在:国際協力活動の現状と課題
エグゼクティブ・サマリー

    日本のNGO活動
    1. 対象とする国・地域により、日本のNGOが活動を開始した時期や団体数に相違が見られるものの、事業分野や活動内容について顕著な相違はみとめられない。緊急救援から出発したNGOも少なくないが、全体として社会開発分野が中心になっている。事業分野として最も多いのは「教育」であり、これに「保健医療」、「子供」、「環境保全」、「女性」、「農村開発」が続く。

    2. 1990年代に入り団体数は増えているものの、これを支える会員の数は伸び悩んでいる。全体の9割が法人格をもたない任意団体で、一般財源である会費や寄付収入が伸びないために、政府系補助金等への依存が高まっている。国際NGOをはじめとする少数の団体を除けば、組織も財政基盤も脆弱であり、活動面でもさまざまな問題を抱えている。

    資金をめぐる問題
    3. NGO活動を制約している最大の要因は資金である。免税措置が整備され、個人のみならず企業や団体からの潤沢な寄付を享受している欧米のNGOとは異なり、法制整備が遅れている日本では安定的な財源となる民間助成は期待できない。その結果、多くのNGOは事業遂行にあたり財源確保に奔走せねばならず、仮に現地のニーズがあっても、これには十分に応えられない現状である。

    4. 財政難に苦慮するNGOが多い中、公的助成は活動を活性化する上で重要な意味をもっている。現地の開発活動に従事する相当数のNGOが、なんらかの政府系補助金を受けている。しかしながら補助金への依存度が高くなるほど、NGO活動は補助金の動向に左右されやすい。また単年度で運用される公的助成の仕組み、あるいは煩瑣な受給手続など、NGO側には改善の要望も強い。

    組織をめぐる問題
    5. 資金的な制約は人材の確保にも影響を及ぼしている。NGO活動はボランティアが基本とは言え、継続的な組織運営、専門的な事業実施のためには有給の専従スタッフがどうしても必要になる。NGO活動に対する関心の高まりを背景にスタッフの志望者も増えてはいるが、財政上、十分な人件費を割けない現状では有為な人材の確保は必ずしも容易ではない。

    6. 人材の問題は、現地での事業や組織の運営とも無関係ではない。限られた資金で、効率よく現地のニーズに応えていくためには、有能なスタッフが不可欠だからである。ただし、そのリクルートには当該地域の社会・経済事情への配慮も必要であり、また人員配置は現地での事業体制とも深く関わっている。日本人スタッフと現地人スタッフの役割分担、さらにはリーダーシップを含めた組織の在り方が見直されつつある。

    事業展開
    7. 現地での活動開始に先立ち、多くのNGOは活動地域の選定を含む事前調査を実施して、事業の方針やその内容を決定する。その方法はさまざまであり、時間的余裕や資金しだいで、情報や資料の収集にとどまる場合もあれば、調査ミッション派遣など周到な現地調査を行う場合もある。準備段階で設定された目的や方法が活動当初の指針にはなるものの、それが以後の活動全般を規定するわけではない。

    8. NGOはその活動において、現地の状況や住民のニーズに機動的かつ柔軟に対応している。緊急救援がその典型であるが、開発活動においても特定分野から開始して、これに新たな分野の事業が加わることは決してまれではない。運営方式も多様化しつつあり、当該NGO自身がこれを担うだけでなく、他のNGOとの協力・協調が図られるケースもでてきた。

    現地化
    9. NGO活動は、依然として日本人スタッフ主体で運営されている。現地事務所にも日本人の担当者が配置され、連絡・調整業務にあたっているのが現状である。しかしながら現地経験を重ねるにつれて、NGO側にも活動の担い手が如何にあるべきかの認識が生まれ、意図的に組織運営を現地人スタッフに移管する動きがではじめた。

    10. 実態として、サポーティング・スタッフを含む現地人スタッフの数が日本人のそれを上回る状況は、すでに以前からみられたものの、近年はこの傾向がさらに強まっている。また組織としても現地で法人格を取得(現地法人化)するNGOもあらわれており、これによって政府との折衝、あるいは資金調達といった活動に改善がみられた。こうした人と組織両面での現地化は、今後のNGO活動の展開とも大いに関わっている。

    ネットワーク化
    11. 複数の国・地域を対象に活動を展開しているNGOの中には、これまでの本部と出先といった関係ではなく、出先がそれぞれの地域で主体的に活動し、本部はそれらのつなぎ役に徹する方針で組織作りを行っているものもある。これは新しい形のネットワークであり、援助側だけ、被援助側だけのネットワークとは異なる成果をもたらすことが期待されている。

    12. 従来、援助国と被援助国それぞれで形成されてきた分野別、地域別ネットワークの中には機能不全に陥っているものも少なくない。ひとつの原因は、ネットワーク化のメリットに対するメンバーの期待と、その実績のギャップであろう。NGO活動の歴史が浅い日本では、ネットワーク化の動きそのものが鈍いのが現状であるが、そこにはこうした思惑の違いが横たわっている。

    13. 情報収集能力等の問題を抱える日本のNGOには、カウンターパートとなる現地NGOあるいは国際NGOがもつネットワークに加わり、これを活用する方法もある。また、新たなネットワークの在り方として、個別事業ごとに異なるカウンターパートを設定する方式、あるいは1つの事業の中で複数の現地NGOや住民組織をネットワーク化していく方式も期待できる。