付加価値の源泉の進化:「良い仕事」、「悪い仕事」?

2015年3月19日 (木曜)
国連大学 ウ・タント国際会議場
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主催:ジェトロ・アジア経済研究所、世界銀行、朝日新聞社

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主催者挨拶

宮本聡  日本貿易振興機構副理事長

ジェトロ・アジア経済研究所は、1960年代からアジア国際産業連関表を作成しており、同表は世界に対して貢献してきている知的財産である。この国際産業連関表を基に、国際貿易をモノやサービスの流れではなく、それらの生産過程で加えられた「価値」の流れとして捉えようという全く新しい「国際付加価値連鎖」の研究を実施し、先駆的な役割を果たしてきた。

アジア諸国は、輸出主導型の経済発展と言われるように、グローバル・バリュー・チェーン(GVC)に積極的に参加することによって経済成長を遂げてきた。今後、各国は産業のアップグレードを図り、付加価値の高い仕事、すなわち「良い仕事:Good-jobs」を担っていかないと持続的な成長ができず、「中所得国の罠」に陥るのではないかと言われている。また、貿易自由化により製造業の発展が注目されるが、運輸・サービス産業など他の産業も含めてトータルに見ていく必要があり、開発政策にも変化が求められている。

本シンポジウムでは、国際貿易における付加価値の観点から、グローバル化が発展途上国の経済発展にもたらす影響と開発政策のあり方、さらには日本にもたらす影響について検討を行い、日本の成長戦略への対応について再考する一助となることを期待する。

宮本 聡 (日本貿易振興機構 副理事長)

宮本聡
日本貿易振興機構副理事長

塚越保祐  世界銀行東京事務所駐日特別代表

世界銀行は極度の貧困を2030年までに撲滅し、中所得国を含め所得の下位40%の人々も繁栄を共有できるようにすることという2つの目標を掲げている。これらを達成するために最も重要な課題の一つが途上国における雇用創出の促進である。

基調講演者マーティン・ラマは「仕事」(世界開発報告2013)の執筆チームの長を務める。同報告書は「良い仕事は何か」を開発の観点から総合的に検討し政策担当者への提言を行っている。雇用機会の拡大は万国共通の目標といえるが、どの仕事が経済と社会の発展に重要な効果をもたらすかは、各国の特徴に注目しながら見極める必要がある。各国の状況の違いを配慮したうえで、開発の成果を最大化できる仕事のタイプを特定し、さらに民間セクターによる雇用の創出を阻んでいる市場や機構制度の欠陥を正していくことが当該国政府の課題であり、我々、国際開発金融機関の支援の焦点となる分野といえる。

本日のシンポジウムでは経済発展における「良い仕事」、「悪い仕事」は何であるか活発な議論が展開されることを期待する。その際、仕事は単にその仕事がもたらす経済的付加価値や個人の利害を超えた重要性を持つことを認識することが大切である。

塚越 保祐(世界銀行東京事務所 駐日特別代表)

塚越保祐
世界銀行東京事務所駐日特別代表

橋本仁
朝日新聞東京本社ゼネラルマネージャー兼東京本社報道局長

この国際シンポジウムも今回で10回目、その時々の社会情勢、世界情勢に合わせ多岐にわたるテーマを取り上げてきた。今回のテーマもまさに今日的なテーマと考える。

グローバル化が進む中、今日ほど仕事の「質」が問われる時代はない。多くの先進国で製造業を中心とする比較的高い給与を得られる仕事が失われているのではないか、そのことが中間層を細らせているのではないかとの議論が聞かれる。中間層が細れば、民主主義の基盤が弱くなる。一方で、途上国では賃金の低い仕事ばかりを先進国から押し付けられているのではないかという懸念がある。グローバル企業の下請け業者が違法な働かせ方をしているのではないかとの問題も時折明らかになっている。こうした課題にどう取り組めば良いか、本日の議論に期待している。

橋本 仁 朝日新聞東京本社ゼネラルマネージャー兼東京本社報道局長

橋本仁
朝日新聞東京本社ゼネラルマネージャー
兼東京本社報道局長

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