zimbabweDelta Corporation デルタ・コーポレーション

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

デルタ・コーポレーションは、ジンバブエ全土で運営している広範囲の製品ラインに投資して、その経営を行う持ち株会社である。同社は、ジンバブエ最初のビール会社として1898年に設立された。その後ビール以外の事業へと拡大、現在の主な活動は、ラガービールとソルガムビールの醸造、炭酸ソフトドリンクと炭酸なしソフトドリンク、スーパーマーケット、家具小売り、観光、アグロ・インダストリーなどである。デルタはジンバブエ証券取引所に上場しており、時価総額の点ではトップ上場会社の一つである。デルタは、ローデシア醸造会社として1946年に証券取引所に最初に上場した。その後1978年に名称をデルタ・コーポレーションに変更した。

ローデシア醸造会社はSABキャッスル醸造会社と競合し、1952年にこれを買収するのだが、この競争のなかでデルタが設立された。2001年にペルハムズ、ジムサン(現在はアフリカン・サン)、OKが分離している。

その2009年のアニュアルレポートにおいて、同会社は以下のことを強調している。

「2009年3月31日までの当年度ラガービール総生産量は前年に対して46%減であり、伝統的ビール(ソルガムビール)生産量は前年を36%下回る水準であった。第2四半期の後半から第3四半期にかけて事業規模が縮小したが、梱包資材とトウモロコシの輸入回復により第4四半期における販売実績は力強く回復した。2009年3月31日までのスパークリング飲料は前年を53%下回っていた。工場稼働率は比較的安定しているが、供給チェーン問題とりわけ砂糖および二酸化炭素の供給力の不足はネガティブな影響を及ぼした。アリストン茶農場での労働力不足と電力供給不足は事業運営にネガティブな影響を及ぼし続けていた。茶の生産量は前年の92%であった。マカダミアナッツの収穫は、国際価格が軟調ではあったが、300%程度上昇した。家畜価格は維持されたが、牛の価格は経済の流動資産制限によって大きく悪影響を受けている。鶏肉生産は、エサ不足や不経済な投入原価のため中断した。

製品需要そのものは一般的に堅調に推移していたが、多くの理由で販売量につながっていない。たとえば、消費者が購買のため現金を引き出すことができなかった時期が何度か存在した。価格統制によって販売の存続が不可能になったこともある。水と電力の供給途絶は生産をストップした。そのため、輸入品が相当の供給ギャップを埋めることになった。ピーク時には、ビールや炭酸ソフトドリンクの輸入品が大きなシェアを持った。2009年3月末までに市場が正常な状態に戻ったことで、輸入品のシェアは低下した。」

国内の所在地

Sable House, Northridge Close, Borrowdale, Harare;
Telephone: +263-4-883865/883872
Telefax: +263-4-883864

製品・サービス

デルタ・コーポレーションはジンバブエで飲料の製造と物流に携わっている。デルタは、ラガービール(キャッスル・ラガー、キャッスル・ミルクスタウト、ゴールデン・ピルセナー、ライオン・ラガー、カーリング・ブラックラベル、ザムベジ・ラガー、ザムベジ・ライトラガー、ボーリンジャー・ラガー、イーグル・ラガー);伝統的ソルガムビール(チブク、ルファロ);飲料(コカコーラ、コカコーラライト、ファンタ、スパーレッタ、スプライト、シュウェップス)、ジュースと果実ドリンク、およびインスタントティーとコーヒーを提供している。同社はまた大麦麦芽製造事業にも携わっている。さらにデルタは、PET、注射薬、ブロー成形プラスチック製品、ガラス容器、およびワイン、蒸留酒を製造している。さらに、同社は農業生産者として、果物および野菜の配給元とする事業を運営している。

従業員数

13,000名

財務情報

市場シェア

デルタ・コーポレーションは、ビール市場で90%のシェア、およびソフトドリンク市場で85%のシェアを持つ、ジンバブエで最大のビールと飲料メーカーである。

事業目的

「我々は、ジンバブエにおいて清涼飲料市場のすべての分野で首位を占める総合飲料事業者であり、今後もそうあることを望む」

ビジネスモデル

「傑出した顧客サービスと、常にビジネスの健全性に注意を払うことによって、持続可能なペースで実質的に事業の価値を成長させること。そうすることにより、我々はすべての株主のために付加価値創造の増強に取り組む。」

「昨年は非常に困難な年であった。経済悪化の加速は景気低迷の10年に輪をかけることとなり、多くの会社を倒産に追いやった。したがって、崇高な野心は控えなければならず、繁栄よりもむしろ生き残りの観点から業績を評価しなければならない。直近の事業の重点は、輸入品と競争できる価格設定ができるように、投入材価格を適切に保つよう徹底し、事業構成の見直しに着手し、生産回復の達成を徹底することである。また、当グループは非中核分野での投資を処分しようと考えている。」

「2008年6月までの第1四半期は、政策変更がインターバンク市場での為替レート変動を先導して、すべての財・サービスが価格高騰のスパイラルを経験した。すべての財・サービスの価格を凍結する政府令が出されて生産者価格がコントロールされる一方、投入材コストは非公式な為替レート市場に従って高騰し続けた。このことは、価値を保持するために生産と流通双方を縮小するための劇的な行動を必要とした。」

「第2四半期で経験した小刻みなストップ・アンド・ゴーのオペレーションは、第3四半期でも続いた。小切手/電子支払いから現金/バーター取引へと移行、最終的にはすべての製品カテゴリにわたって完全な米ドル計算となった。12月の初頭までには20ヵ所の外貨サイトを用いての運営を余儀なくされた。市場で入手可能な製品は減り、ラガービールとスパークリング飲料のカテゴリの両方において競合会社の製品の食い込みを許した。」

「米ドル取引の比率を増やしたので、存続可能な事業を経営するための足場がえられた。燃料調達能力が改善して直接流通ができるようになった。再び競争的な価格で販売することができるようになったのである。330ml缶のラガーおよびスパークリング飲料ブランド販売を再開した。市場ニーズを満たすためSABMillerの国際ブランド、すなわちペロニ、ミラー・ジェヌインドラウト、レッズの輸入を開始した。同様に炭酸飲料製品を輸入した。」

「2009年3月までの第4四半期は、数量およびマーケットシェアを回復するための経営努力を行った。製品不足が続いたが、これは原材料供給チェーンと製造能力の制約からきていた。この状況を緩和するため、南アフリカおよびボツワナの提携醸造会社から製品輸入を行った。」

「外貨税制度の導入は、輸入ビールとの競争の発生率を劇的に減少させるとともに、外国の醸造者からの製品を調達できるわが社の立場を強くした。」

「経済解説において、王国株式仲買人(KSB)は、デルタが「規模の経済を利用することにより市場でその地位を活用できるようになる。規模の経済によって、製品コストを下げ続け、当市場における高い参入障壁を築くことになって、市場における優位性を確固たるものとすることができるのである。ブランド名、物流の強さおよびマーケットにおける優位は、デルタに明らかな競争優位を与える。デルタには、強固な物流ネットワークがあり、それによりグループは同国の大部分をカバーできる。我々の意見では、醸造産業への参入の高資本コストは、中期的長期的に競合相手による重大な脅威からラガービジネスの優位な地位を保護する。多数の競合相手は市場に参入してくるが、長くは続かない。」

株主・所有権益

デルタ株の36%がSABMillerに、28%がオールド・ミューチャルに所有されている。

政府との関係・社会貢献

デルタ・コーポレーションCEOであるジョー・ムツィワは、ジンバブエ準備銀行総裁(RBZ)のギデオン・ゴノと緊密な関係を持つ。ゴノは、ジンバブエが経済的苦境に陥った元凶のひとりとして知られる人物である。ゴノは、SABMillerからデルタの支配を力づくで手に入れるための入札において、ムツィワと緊密な連携を形成した。ルワに拠点をもつデルタの子会社メガ・パク社は、ビジネスマンに廉価な資金を提供するRBZのBasic Commodities Supply Side Intervention (BACOSSI)計画の受益者で、当計画の外貨の最大金額である100万米ドルを受けとっている。

2009年6月に政府は、シュウェップス・ジンバブエ社(SZL)およびシュウェップス輸出会社(SEL)を、その従業員とデルタ・コーポレーションが、コカコーラ・セントラル・アフリカ社およびオランダ・コカコーラ・ホールディングス社から買収することを認可した。青年開発・現地化・エンパワーメント大臣のセイバー・カスクウレは、同国の現地化・経済エンパワーメント法に規定されている通り、51%の株式現地化要件を満たしていることから、SZLとSELの現地化取り決めを認可したと語った。

声明においてカスクウレは、政府は、SZLとSELの従業員およびデルタ・コーポレーションによる株式保有によって、広範な現地化が実現したことに満足していると語った。「新しい株主たちは、SZLおよびSELの事業継続と、ジンバブエにおけるコカコーラ社とのフランチャイズ関係の継続を保証するだけの、ボトリング事業の経営経験があることを示した」「この取引により地元のブランド、地元の原料サプライヤーおよび下流産業が事業を継続でき、ひいては雇用が守られる」と言っている。

コメント:

2社の南アフリカ企業が、2003年の販売契約をもとにSZLの機材の所有権を主張していることから、この取引にはもう少し時間がかかるかも知れない。ビジネスマンのムツムワ・マウェレにより以前所有され、現在は清算中のサザン・アスベスト・セールス(SAS)社とペター・トレーディング社は、彼らがSZL機材の合法的な所有者であるので、SZLとSELの合併は不可能だと主張している。

製品開発

デルタは生産設備を刷新するため1億5000万米ドルを投資して、2009年3月までの会計年度では220万ヘクトリットルであった年間生産量を、2014年には1000万ヘクトリットル(26420万ガロン)に引き上げようと計画している。ブルームバーグのデータによるとデルタの市場価値は4億1100万米ドルであるが、デルタはアリストンホールディングスに株を売却する計画である。また、澱粉・グリコース事業を処分し、包装部門の持ち株比率を引き下げたい意向である。

デルタ・ベバリッジは現在、サザートン醸造工場に1500万米ドルの新しいボトリングラインを設置中である。この種の装置では世界のベストメーカーの一つとされるドイツのKrones AGから機材を購入したが、これは、ラベル剥がし、ボトル洗浄、日付コード入りラベリングを含めて、全工程を処理できるよう設計された多目的技術を有している。

同グループは改修用にSABMillerから1200万米ドルを受け取った。SABMillerは地元のオペレーションに400万米ドルをすでに注入している。

SABMillerは、デルタに貸していた1%強の発行済み株式を4米ドルのレントで受取っており、さらに1200万米ドルの現金で4000万株がSABMillerに発行された。SABMillerは、現在の連合政府が存続することを条件に、ジンバブエの関連会社に1500万米ドルまで注入することをプレッジしていた。この投資は、鉱業部門以外では最大規模のものとなった。