zambiaFirst Quantum Minerals

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

First Quantum Minerals Ltd.は、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーに拠点を置き、鉱物の探査、開発、採掘を行っている企業である。同社の普通株は、カナダのトロント証券取引所(銘柄FM)、イギリスのロンドン証券取引所(銘柄FQM)で上場されており、S&P/TSX 60インデックスにも挙げられている。

ザンビアのほかにも、コンゴ民主共和国で露天掘りFrontier銅鉱の95%を所有・運営しており、65%を所有するKolwezi銅・コバルト尾鉱プロジェクトを現在開発中である。モーリタニアでは80%所有のGuelb Moghrein銅・金鉱を経営、さらにフィンランドのニッケル・銅PGEプロジェクトを100%所有している。

2008年にFirst Quantumは、国際的な鉱山会社への成長に向けて重要な前進を果たした。この年Frontier鉱床がフル操業に入り、Kansanshi鉱山の生産能力が拡大、Guelb Moghrein鉱山も好調であったので、銅生産は前年比47%増の334,415トンに達した。加えて、スカンジナビアのKevitsaプロジェクトを獲得したことは、地理的側面と商品ラインの両国面で、多角化戦略の重要な一歩となった。

2001年にはPhelps Dodge Corporationの子会社Cyprus AmaxからKansanshi株の80%を購入した(取引価格総額は2750万USドル)。2002年、Kansanshiを2段階に分けて開発することを決め、第一段階である16年間のフィージビリティ調査が完成した。鉱山寿命は約30年と想定されることから、第二段階は14年間を予定している。

国内の所在地

P.O. Box 230022
Ndola, Zambia
電話: +260 2 651 555
ファックス: +260 2 651 553

製品・サービス

LME(Aグレード) の陰極銅、精鉱銅、金、硫酸の製造。

従業員数

ザンビアにおける2008年度末時点の総従業員数は 2,475人。

財務情報

2008年の生産量は銅が334,400トン、金が121,800オンスで、収益は17億USドルであった。

市場シェア

2008年におけるザンビアの銅生産は569,000トンあり、そのうちFirst Quantumによる銅の生産量合計が215,314トンであった。同社の2008年第1四半期におけるシェアは37.8%であった。

事業目的

国際的に低コストの鉱山会社を構築する。

ビジネスモデル

First Quantumは低コストプロジェクトの実現をめざしている。2008年後半の銅価格の急落をうけて同社は、企業のコアとなる活動と財源を保護し、事業コストの在り方を改善するため、慎重な方策を求めて経営に関するすべての項目の再検討に取り組んだ。その結果、各鉱山の運営計画を調整し、供給契約の再交渉、サプライヤーズクレジット条件の改定、運転資金管理の厳格化、探査活動・資本支出の延期を実行した。

Kansanshi、Frontier、Guelb Moghreinにおけるブラウンフィールド拡大事業、および開発済のKolweziやKevitsaにおける新規プロジェクトを軸とする低コストの生産者として、市況が好転した際には速やかに追加的事業に乗り出せるという優位なポジションにFirst Quantumはいる。また同社はGuelb MoghreinとKansanshiでの金の回収事業が拡充するにしたがい、金生産者としてのポジションが高まっていく。

コスト構造を最適化するために、すべての事業局面にわたって変革が実行されており、主要プロセスにおける投入財価格も低下している。とくに、2008年央にはディーゼルと硫黄の価格が大きく低下した。

同社の成功は、資産獲得において機会を逸せず、集中的で、かつ保守的であることに多くを負っている。

First Quantumは短期ヘッジプログラムを開始した。今後銅価格がさら低下する可能性に対応するため、2009年7月までの5ヵ月間、72,500トンの銅ヘッジを行った。

株主・所有権益

ザンビアにおけるFirst Quantumの資産には、80%所有のKansanshi鉱山(露天掘り銅/鉱)がある。残り20%はZambia Consolidated Copper Mines-Investment Holdings(ZCCM-IH)がザンビア政府に代わって所有している。このほかに100%所有のFishtie銅プロジェクト、100%所有のBwana Mkubwa SX/EW施設と硫酸工場を所有する。さらに戦略的投資としてMopani Copper Mines社の16.9%を所有しているが、同社はNkana地下銅山・コバルト精製所、Mufulira地下銅山鉱・製錬・精製施設の運営会社である。さらにEquinox Minerals Ltd.の16.32%をもつが、同社はLumwana銅山を運用する株式公開企業である。

政府との関係・社会貢献

First Quantumは、ザンビアの子会社を通して、現事業に関する開発契約をザンビア政府と取り交わしている。契約に書かれてある税保証を政府が守らなかったときは、それによって生じたいかなる損失、(利息を含め)損害とコストを、全額あるいは公正な補償を受ける明示的な権利、国際調停に訴えることのできる権利が与えられている。さらに国際仲裁を求める権利を持つ。また、合意された額を超えて税金が課せられる場合は、その分を回収できるという法的解釈をえている。同社が2008年7月にザンビア歳入庁(Zambian Revenue Authority: ZRA)から受けとった書簡では、「銅およびコバルトの価格がトリガー価格を超過した場合は、一律25%のwindfall taxを支払うよう直ちに要請される」と確認されている。これは、1ポンドあたり3ドルを超えた場合は50%、1ポンドあたり3.5ドルを超えた場合は75%というwindfall taxの規定に反している。歳入庁書簡は「これは暫定的処置であり、納税年度末には必要な調整がなされることを期待する」としている。

政府は鉱山会社に関する課税体系の変更を発表した。2009年1月30日、ザンビアの財務大臣は2009年予算を公表。そのなかで鉱業課税体制について;windfall taxの廃止、資本控除を100%に回復、鉱業収益に対するヘッジングによる損失の相殺は2008-09年度では禁止(この禁止措置は2009-10年度以降以降解除されている)といった変更があった。2009年の変更は、4月1日付けで有効となった。

しかしながら、可変的利潤税、濃縮物輸出税、30%法人所得税、高いロイヤリティなど2008年に実施された多くの変更事項が効力を持ったままになっており、これらはFirst Quantumが政府と結んだ開発契約にある規定を上回っている。これらの問題を完全に解決するための仲裁、ないしは訴訟といった代替的方策を探るため、同社は政府との交渉を求めているが、交渉の時期も結果も明らかになっていない。

製品開発

2008年度第2四半期に硫化物の回収拡大に着手し、第4四半期にいたるまで投入量設計の改善を行ったことで、銅の生産は22%増加の62,014トンになった。この拡大により年間1200万トンを超える鉱石の処理が可能となったため2007年度第4四半期実績を上回り、硫化物鉱石の処理能力は61%の増加、銅の濃縮生産では47%の増加となった。

Kansanshiの高圧浸出システム(high pressure leach system: HPL)は、2007年後半に稼動して以来、着実に改善している。HPLの性能向上に必要な各種ポンプ材を導入したことが、HPLの有用性を高めた。このHPLにより約11,200トンの濃縮銅をカソード生産に回せるようになり、その結果、2007年実績を245%上回った。

2007年を通じて鉱山設備に追加投資したことで、鉱石生産、処理施設が改良・拡大され、鉱石の処理能力は2007年度から28%増加の1500万トン以上となった。

酸化物鉱石と硫化物鉱石いずれともカットオフ・グレードを上げることで、採掘材料の量は40%削減されている。これにより採掘と処理の単位原価をどちらも大幅に削減した。最近では年間処理量35,000トンの電解採取用タンクハウスを導入し、年間処理量400万トントンの濃縮設備を拡充し、HPL施設を備えたことで、Kansanshiの処理の柔軟性は大幅に高まっている。