tanzaniaKuehne + Nagel (KN)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

Kuehne + Nagelは、スイスSchwyz州のSchindellegiに本社を置く世界有数の運輸ロジスティックス会社である。世界最大の非船舶一般輸送業者であるため、世界の主要な船会社に対し強力な買い付け能力を発揮している。同グループは国や言語に合わせてKühne & NagelまたはKuehne & Nagelの名称を使い分けている。ドイツ語圏、フランス、トルコではKühne & Nagelと記されるが、それ以外の国ではüがueに置き換わりKuehne & Nagelと記される。

1890年にドイツのブレーメンでAugust KühneとFriedrich Nagelが、綿と連結貨物を中心とした運送・委託事業に乗り出し、20世紀半ばまではドイツの港湾でほぼ独占的地位にあった。1950年代初期にAlfred Kühneが国際展開を始め、最初の海外オフィスがカナダに設立されたあと、ベネルクス諸国と中東にオフィスが開かれた。1960年代半ばにKlaus-Michael Kühneが祖父と父の足跡を継ぎ、同社のネットワークとサービス・製品範囲を拡大した。

1951年末にWerner Kühneが南アフリカに移民した後、アフリカオフィスが開設された。1950年代と60年代の戦後経済ブームの時代、貨物輸送は世界中で飛躍的に増加した。KNは、新たな貿易ルートのうまみを得るには現地駐在員を置くことが不可欠であると気付き、操業拠点を結ぶ世界的ネットワークの構築を開始した。道路、鉄道、海運と同様に、空輸業も重視されるようになった。

1981年、英国のコングロマリットLonrho Plcが、KNの株式50%を9000万ドイツマルクで取得した。取得後、Klaus-Michael KühneとLonrhoトップであったRoland W. (Tiny) Rowlandが組織全体の共同経営者になった。KNの半分をロンロ社に売却した主な理由は、海運船舶の拡大に失敗してKühne家が大損失を被ったためである。1992年にKNはロンロの持ち分を買い戻した。

1994年5月、KNはチューリッヒとフランクフルト株式市場に上場した。大手化学メーカーのE.I. de Pont de Nemours & Co.のヨーロッパ、中東、アフリカにおける物流を請け負う契約をはじめとして、魅力的なロジスティックス関連契約を得たことで、売上と所得が激増した。

KNタンザニアは、国際顧客と国内顧客に対し運輸サービス全般を提供している。タンザニアの商業センターであるダルエスサラームの事務所が、事業活動のコーディネートを行っている。

国内の所在地

Plot 29c, Nyerere Road, Dar es Salaam, Tanzania; Phone +255-22-2860410-4; Fax
+255-22-2865037

製品・サービス

世界100ヶ国以上に900のオフィスが存在する。事業内容は、海運(世界第1位)、空輸(世界第4位)、道路&鉄道ロジスティックス、契約ロジスティックス(世界第3位)であり、世界中で700万平方メートル以上の倉庫スペースを確保している。

Kuehne + Nagel Tanzania Airfreightは、タンザニアのダルエスサラームとアルーシャにある2大空港に60名以上のスタッフを常駐させており、国内と国外の顧客にサービスを提供している。下請け業者との緊密な提携のもと、南アフリカからタンザニアに向けて専門の個別宅配サービスを行っている。KNタンザニアは国境にスタッフを常駐させている。海運専門スタッフがダルエスサラームとタンガに配属されており、東アフリカの南部交通ルートの最重要エントリーポイントをカバーしている。ダルエスサラームに置かれた人道援助・救済部門は、長期プロジェクトと緊急事態に対する運輸的ソリューションを提供する。また、ダルエスサラームをはじめ世界37ヶ所の戦略地点に、専用のプロジェクトオフィスが置かれている。

従業員数

世界55,000 名、タンザニア120 名

財務情報

主要財務データ
100万スイスフラン 2004* 2005* 2006* 2007* 2008
出来高 11,563 14,049 18,194 20,975 21,599
粗利益 2,323 2769 5,253 6,014 6,253
出来高に対する比率% 20.1 19.7 28.9 28.7 29.0
EBITDA 478 575 857 1,019 1,020
粗利益に対する比率% 20.6 20.8 16.3 16.9 16.3
EBIT 322 443 602 693 736
粗利益に対する比率% 13.9 16.0 11.5 11.5 11.8
EBT 344 459 603 708 764
粗利益に対する比率% 14.8 16.6 11.5 11.8 12.2
年間の純利益 239 324 459 536 585
粗利益に対する比率% 10.3 11.7 8.7 8.9 9.4
営業キャッシュフロー 488 575 857 1,043 1,015
粗利益に対する比率% 21.0 20.8 16.3 17.3 16.2
1日当たりの平均取引量 47,545 118,095 161,664 195,916 331,536

市場シェア

データなし。

事業目的

「地球規模で統合的なロジスティックスサービスを提供すること。」

ビジネスモデル

「高価値の統合的なロジスティックスサービスを提供するというKNグループの戦略は、同社の将来的な発展を左右する重要性がある。ロジスティックスサービスをアウトソーシングする傾向が続いている。国際的な競争におけるコストプレッシャーの激化により、貿易・産業に従事する会社は自社の中核業務に集中せざるを得ない。ロジスティックスサービスに対する需要が高まっており、これはコスト節減の可能性と経営効率の向上をめざし、グローバルなサプライチェーンの調整と最適化を要請している。わが社にとってこれは、きわめて有望な新しいビジネスチャンスである。」

このような背景があるため、KNのビジネスモデルは、「シングル・ソリューションの提供者になること」、「価値連鎖の管理と顧客価値の拡大を通じた成長」、「国際的な拡大の継続」、「貿易レーンのバランスをターゲット化」、「すべての事業単位で市場平均を上回る確実な業績を維持」、「ヨーロッパの陸送事業の拡大」、「抱き合わせ販売によるビジネス機会の最大化」に重点を置いている。

KNグループの総合的なロジスティックス・ビジネスモデルと、世界的なネットワークは、大きな優位性につながっている。この企業戦略の有効性は2008年の業績に反映されている。景気の悪化をかんがみて、2008年終盤には厳格なコスト管理、全事業単位のプロセスと生産性のさらなる最適化など、特別な措置が講じられた。

長年にわたり、KNでは管理職の人材開発が優先事項とされている。2008年には世界中から集まった40名の若い応募者を対象に、ハイポテンシャル(HIPO)プログラムによる2年間の集中研修を開始した。応募者の選別のさい、女性参加者の比率を大幅に増加させる努力が行われた。現在の女性の比率は3分の1であり、目標範囲に収まっている。

KNの情報技術の中心的要素は、費用対効果の高い事業目的の支援と革新的なITソリューションの実現である。2009年の特別課題として、効率の増加にさらに重点が置かれる。2008年にはそのための準備が行われた。例えば、情報技術の全レベルで主要なコスト要因の特定と最適化が行われている。ロジスティックスとは対照的に、中央集計される主な数字に基づいて、事業効率の持続的な改善をもたらすため新しいシステムが開発された。新システムが無事に導入された後、2009年にはその他の事業単位にも同様の手順が採用される。

またKNは、自社開発された単一ITシステムにおいて、全事業プロセスの標準化と最適化を行う戦略を追究している。これにより、全従業員が作業の効率化に要するデータにリアルタイムでアクセスすることが可能になるため、顧客や供給業者とデータや情報を効率良く交換することができる。運送会社との連絡は、インターネットプラットフォームであるINTTRA経由で処理されている。現在、すべてのデータの70%(コンテナ予約データを除く情報が送信される)がKNと運輸会社のあいだで電子的に交換されている。

顧客の多様なニーズに応えるため、この数年間、KNはさまざまなニッチプロダクトを専門としており、市場で広く受け入れられるようになっている。

株主・所有権益

Kuehne Holding AG 55.8%、Free float 42.6%、自己株式1.6%

重要な系列会社とジョイントベンチャー

政府との関係・社会貢献

2000年以降、ダルエスサラーム経由のスループットは63%増加し、トランスシップは150%増加した。1995-2003年に、船舶のターンアラウンドタイムが4.1日から2.0日に短縮した。待ち時間は0.5日から0.2日に短縮し、サービスタイムは3.6日から1.8日に短縮した。輸入コンテナの総滞留時間は42日から12.9日に短縮した。1998-2003年に、コンテナターミナルのクレーン生産性は1時間当たり12回から23.2回に増加した。

しかし、コンテナターミナルでの処理能力の増加は、港湾でのコンテナのクリアリングの改善につながっていない。発送前検査が、ハイテクなスキャン装置を使用した仕向地検査に置き換わった2004年下半期には、状況が悪化した。仕向地検査が導入される前と比べて、港湾エリアからコンテナをクリアリングするまでに2-3週間も余分にかかるようになった、と輸入業者とクリアリング業者は報告している。

タンザニアは、港湾、海運、陸送、鉄道、道路輸送、ターミナル、倉庫、配送センターを統合した完全なロジスティックスというコリドール・コンセプトの実現には、程遠い。主に鉄道輸送の不備により、統合的なモーダル接続やマルチモーダル輸送はほとんど存在しない。タンザニアの政府と産業界はこの弱点を認識しており、コリドール開発のプロセスを進めている。

製品開発

特記事項なし。