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データ・リソース

southafricaXstrata plc エクストラータ

設立年

1926年

営業収入

279億5,200万ドル(2008年)

営業利益

46億9,800万ドル(2008年)

従業員数

3万8,512人(他に鉱山契約労働者2万4,246人)

会社概要と沿革

スイスの資源大手エクストラータは、これまで南アフリカでクロム鉱業を手がけてきた企業だ。2000年に入って石炭、亜鉛部門でも鉱山買収を進め、現在は石炭で5ヵ所、亜鉛で15ヵ所の鉱山を操業している。これらの鉱山では、周辺コミュニティから数百人から数千人の労働者を雇用し、関連サービスを調達する。このため、周辺コミュニティは事業環境の大きな要素のひとつであり、同社は企業の社会的責任(CSR)活動を通じてコミュニティとの関係構築に努めている。

鉱山の寿命を見据えたコミュニティ開発

エクストラータが南アフリカで実施するCSR活動は、2つの側面によって動機付けられる。1つ目は同社の理念であり、2つ目は南アの鉱業憲章に基づく法的な必要性だ。

同社の理念には、周辺コミュニティの鉱業への経済的依存を、時間を経るにつれて相対的に軽減していくことが掲げられている。鉱山の操業開始当初は大規模な雇用が創出され、周辺地域でも労働者向けの食堂や雑貨店などのビジネスが発展する。ところが、鉱山の寿命は数十年に過ぎないため、閉山後に街がゴーストタウン化してしまうケースが後を絶たない。同社ではこの事態を避けるため、鉱山の操業開始から鉱山の寿命に合わせたタイムスパンを用いて、地域コミュニティが自立できるようにするための能力向上を図り、将来は鉱山に頼らなくても自立できるよう計画を立てる。例えば、鉱山での労働者数は操業開始時がピークだが、その後、数年おきに数百人単位で雇用が減少していく。その段階に合わせて、人材育成の対象人数や育成のスピードを調整する。鉱山での雇用がなくなっても次の職に就けるよう、従業員に対して建設会社など中小企業の立ち上げ支援や技術訓練などを実施している。

一方、法的な必要性に基づく取り組みには、黒人企業からの優先的調達、雇用均等、スキル開発などが含まれる。法律上、鉱業ライセンス申請時にはCSRの実施計画と財務計画の提出が義務付けられており、その内容は地域開発の方針に則していることが求められる。操業開始後も、実際の活動内容について毎年チェックを受ける。ただし、これは同社がこれまで行ってきたCSR活動と重複する部分が多く、特別な取り組みが必要ということはない。

NGOの選定には細心の注意

同社コミュニケーション・マネージャーのソンゲゾ・ジビ氏によると、CSR活動をする上で、連携するNGOの選定には細心の注意が必要だという。鉱山の創業を開始すると、すぐさまNGOからの電話が殺到し、パートナーとしての提携を持ちかけられる。NGO同士の競争は激化している。他のNGOの批判をすることで自分達の優位性を唱えるNGOも多いという。このような中、強固なCSR方針を持たない企業は、NGOの格好のターゲットになってしまうようだ。会社の方針がないままCSR活動の主導権をNGOに渡してしまったため、CSR活動経費の35~40%をNGOの維持費(管理費、人件費など)として取られてしまったという失敗例はよく聞かれるという。こうした事態を避けるため、エクストラータはNGOとパートナーを組み共同でプログラムを実施することはあっても、主導権はあくまで自社が掌握する。NGOに支払える余分な経費があれば、プログラムの持続性を高めるための投資に回したいという方針があるからだ。

アフリカのNGO組織が、一般的に十分に発達していないという問題もある。高い理念を掲げるNGOであっても、プログラム実施の段階になって、実は運営能力がないことが判明することもあるという。そのため、NGOの選定には時間をかけてでも慎重に成らざるを得ない。また、自社で主導権を持つために、CSR活動の対象は特定の分野に絞り、できるだけ会社の自前の施設で提供できる分野を探す。例えば、人材育成においては建機の運転技術を教えるなど、自社の活動に身近なところから始める。

コミュニティの声を聞く

CSR活動では周辺コミュニティとの協力も欠かせない。コミュニティの住民の理解なしでは、事業が成り立たないためだ。プロジェクトを指揮するマネージャーは必ず地元のコミュニティから雇う。CSR活動が軌道に乗るまでには最低でも一年はかかる。同社はまず、コミュニティを代表するマネージャーを通じてコミュニティのニーズを汲み取り、プログラムの計画を立てる。この過程ではコミュニティから実にさまざまな要望があがってくる。これらの要求の中身をひとつひとつ精査し、必要性と優先順位を判断していく。要望書に目を通すだけでなく、現場に足を運ぶことも大切だという。要望が現実に沿ったものかを見極めるのも、同社の責任のひとつだからだ。例として、ある学校が生徒用のパソコン調達を要望してきたので実際にその学校を訪れてみると、教室には電気が通っていないことが分かったことがあるという。

コミュニティはあらゆる問題を抱えており、CSR活動には困難がつきものだ。その困難を乗り越えるためには、地元住民が、会社もコミュニティのメンバーの一員なのだという意識を持つことが重要だ。また、エクストラータの経営陣側も、コミュニティが自分達の顧客だという意識があれば、同社会が抱える貧困や犯罪、HIV/AIDS感染などの問題から目をそむけて、鉱山だけは警護しようという発想にはならないはずだとジビ氏はいう。さらに、CSR活動は従業員を対象とするだけでは不十分だ。最たる例は、HIV/AIDS対策である。従業員が教育を受けていても、周りの理解がなければ、パートナーから感染することもある。そうなると、従業員に投資したコストまでもが無駄になってしまう。

このため、会社の活動をどのようにコミュニティに理解させるかという点も重要である。たいていの場合、コミュニティは保守的な社会だ。多くのNGOがしているように、ただコミュニティを訪問して説明して回るだけでは効果はない。なぜなら、説明する側にコミュニティ出身の人間はいるか、説明者は周りからの尊敬を集めている年配の人物かなどがポイントになるからだ。CSR活動を形だけで済ませようとしてもなかなかうまくいかないとジビ氏は力説する。コミュニティの住民に対しては、丁寧に、根気強く、基礎的なことから説明していく必要がある。会社がどれだけ支出して、何を改善しようとしているのか、それはコミュニティにどれだけの利益をもたらすのかということを伝えなければならない。HIV教育であれば、説明を始める前にコミュニティの知識レベルを測定することから始める。こうした準備のひとつひとつがCSR活動の根幹を支えているという。

HIV検査の実施を促すことも容易ではない。従業員はHIV陽性だと解雇されるという恐怖を抱えているためだ。また、HIV感染に対する偏見も根強いためコミュニティ内で感染の噂が広がることへの懸念もある。このため、HIV陽性でも解雇されないことや結果の機密性が守られるということを理解してもらうために、労働組合や地域コミュニティに働きかけて信頼関係を築く必要がある。同社は主な対策として、

(1) 社内報でHIV陽性の従業員を積極的に広報する
(2) 検査実施の際には看護師やスタッフを従業員とは異なるコミュニティから派遣する
(3) 検査は匿名で実施し全体の統計のためにはバーコードを利用する

などしている。陽性でも解雇されないこと、出身コミュニティに情報が漏れないこと、検査結果は本人にしか通知されずバーコードを使った識別では名前が分かることはないということを徹底して説明する。一週間に1回30分のセッションを数ヶ月間繰り返す。

土地問題への対応

コミュニティとの関係において、エクストラータがこれまでで一番頭を悩ませたのが、鉱山の操業開始による周辺住民の移転の問題だという。アフリカでは、土地が財産であるという考え以上に、生活文化や精神との大きな結び付きがあるためだ。土地には先祖代々の霊と精神が漂うと信じられ、その土地を手放すためには親戚一同の合意が必要となる。墓地の場合、住民の思い入れはさらに深い。会社がその事情を知らずに最初から補償金を提示して、住民と揉めるケースもある。土地は、コミュニティの住民にとって非常に繊細な問題であるということを会社は認識し、少しずつ両者間の信頼関係を築くしか方法はないようだ。関係が構築できてからようやく会社は補償金の交渉に入ることができ、移転費用や補償金だけでなく先祖供養の儀式のための費用や墓地確保のための費用などを提示する。同社はこのプロセスを終えるまでに、3年ほどの長い時間を要したこともあるという。

(情報ソース)

  • 2009年8月26日Communications Manager, Songezo Zibi氏インタビュー
  • エクストラータ・ホームページ  http://www.xstrata.com