southafricaTiger Brands Limited タイガーブランズ

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

設立年

1921年

JSE上場

1944年

従業員数

1万417名

年間総売上高

204億3,040万ランド(2009年9月末期)

会社概要と沿革

タイガーブランズは南アフリカ最大の総合食品メーカーで、缶詰、冷凍食品、レトルト食品、調味料、菓子類、ベビー食品などを中心に約30種類のブランドを展開している。同社の事業は、

(1) 国内食品
(2) ヘルスケア用品
(3) 冷凍シーフード食品
(4) 輸出

の4部門から成る。09年の総売上高は204億3,040万ランドで、2007年の162億990万ランドから26%増と好調に伸びた。

高いブランド浸透力

同社商品は南アフリカ市場で圧倒的なシェアを占める。豆缶詰、野菜缶詰、トマトソース、ジャムは市場シェア6割以上、ピーナツバター、パスタは約4割を誇る。2008年のブランド好感度調査では、食品部門のトップテンに同社商品のタスティック(コメ、1位)、エース(メイズ粉、3位)、クー(缶詰、4位)、アルバニー(食パン、7位)の4つがランクインした。

このうち缶詰の「クー」ブランドは1940年の発売以来、あらゆる人種や所得層の消費者を取り込み、各家庭に深く浸透している。「クー」ブランド名では豆のほか果実、野菜、ピクルス、シチューなど50種類以上の缶詰商品が販売されている。消費者を飽きさせないため、定期的に缶のデザインを変更し新たな商品を投入しているが、販売当初から「The best you can do」のキャッチコピーは変えていない。同社のマイケル・フレミング財務部長は、「消費者を飽きさせず興味を引くためには継続した商品開発が必要。一方で一貫したブランドイメージの確保も信頼を得る上で重要な要素になる。両者のバランスを取りながらマーケティングを行っている」としている。

コンスタントにブランド構築に投資

同社は徹底してブランド構築への投資を行っている。広告、マーケティングなどブランドへの投資コストは、たとえ売り上げが不調な年であっても優先して確保している。そのため、消費者の置かれている状況に機敏に対応できるマーケティング体制を築いている。08年に発生した世界金融危機の影響で消費者の節約志向が高まったときには、「Partnering with mom in difficult times」とストレートなキャッチコピーを打ち出した。家計を切り盛りする消費者の心を捉えるには現実的でシンプル、かつ自分の状況と関連付けられるコピーが効果的だとする。

人気ブランドの買収による事業拡大も戦略のひとつだ。09年にはマヨネーズブランド「クロス・アンド・ブラックウェル」をネスレから買収した。フレミング氏は「新たなブランドを構築するには多大なコストと労力がかかる。トップブランドを買収する方が効率的であることも多い」とする。この理由として同氏は消費者が保守的で一度愛用した商品を手放さない傾向が強いことを指摘する。消費者は数十年前からある商品に信頼を置き、なかでも経済的に余裕がない低所得者層の消費者は新しいものに手をだして失敗したくないという心理が働き、従来家庭で使っているブランドを使い続けるという。そのため同社は先述の「クー」ブランドのようにブランド名は変えずに、同じブランド名で新たな商品を投入する方法をとることが多い。

売れ筋商品に変化

ここ数年の売れ筋商品の変化にも注目している。フレミング氏は売れ筋商品に影響を与える要因として、

(1) 生活環境の変化
(2) 所得向上
(3) 女性の労働時間の延長

を挙げている。

生活環境の変化は、スーパーマーケットの農村部への進出によりもたらされた。これまで農村部の多くの家庭では手作りの調味料、伝統的な主食のメイズが主流だったが、スーパーで手軽に買い物できるようになったため、調味料ではドレッシングやマヨネーズ、穀物類ではライスやパスタなどの売り上げが伸びている。

所得向上により売り上げを伸ばしているのは、ベビーフードや栄養食品、スナック菓子だ。経済的な余裕が出たことで、子供や健康のためにかける費用が増加し、より質の高いオーガニックや栄養食品への関心が高まっているほか、嗜好品のチョコレートやキャンディなども売り上げを伸ばしている。一世帯当たりの幼児数が減っていることもベビーフードの売り上げを拡大させている。

また、女性の労働市場への参加が進み家事に割く時間が減ったことで、手軽に用意できる食品が売れている。スナック感覚で栄養が摂れるシリアルバーや、牛乳や水と混ぜるだけで作れるインスタントメイズなどは、南アフリカ市場にはこれまでなかったことから、開拓の余地は大きいとされる。

アフリカ進出に本腰

近年、同社は他のアフリカ諸国でのビジネス展開にも目を向け始めた。国内の小売店がアフリカ諸国進出を加速させていることが理由だ。同社商品を多く扱うスーパーマーケットのショップライトもアフリカ15カ国で72店舗を展開しており、タイガーブランズの商品もショップライトを通じて各国で販売されている。

これまで、南アフリカ以外で販売される商品については国内で取引を完了させ流通は小売店任せだったが、今後は自社が主導的にアフリカ展開を進める計画だ。アンゴラやザンビアを中心にアフリカ市場での売り上げが急速に伸びており、無視できない状況になっている。今後はアフリカの主要国に地域拠点を設置し、そこを通じて流通する体制に移行させていく。インフラが未整備のアフリカでは南アフリカを拠点にして物流を展開させるのと、市場に近い地域ハブで流通を行うのとでは、リードタイムに大きな差がでてくる。08年には西アフリカ拠点としてカメルーンの製菓メーカー・チョコカム、09年には東アフリカ拠点としてケニアの日用品メーカー・ハコインダストリーを買収した。

タイガーブランズは買収のポイントとして、

(1) その国の市場でトップのブランドであること
(2) 現地に製造施設があること
(3) 市場への独自の流通網・アクセスを持っていること

をあげている。地域拠点をプラットフォームにして販売体制を強化させる計画だが、こうした投資による利益が得られるまでには6~8年のタイムスパンを想定している。

(情報ソース)

  • 2009年10月1日Chief Financial Officer, Michael Fleming氏インタビュー
  • タイガーブランズ  http://www.tigerbrands.com