文字サイズ

標準
国・テーマ インデックス
データ・リソース

southafricaBlue Financial Services Limited ブルー・ファイナンシャルサービス

設立年

2001年

営業収入

2億8,600万ランド(2008年)

営業利益

1億1,890万ランド(2008年)

従業員数

3,000人

会社概要と沿革

ブルー・ファイナンシャルサービス(以下、ブルー)は、低所得者向けに小額の無担保融資を提供するマイクロファイナンス企業だ。2001年の設立以来着実にビジネスを拡大させ、2006年にはヨハネスブルグ証券取引所の新興企業向け市場であるAltX(Alternative Exchange)に上場した。同社の2009年2月末の貸付高は前年同月末比200%増の14億5,000万ランド、営業収入は178%増の2億8,600万ランド、収益は92%増の1億1,890万ランドと好調だ。東南部アフリカを中心に13ヵ国で300店舗を展開し、顧客は40万人に上る。

小額無担保により低所得者の資金アクセスを促すマイクロファイナンスは、貧困削減のためのツールとして援助機関やNGOが運営に関わり援助的な側面を持つ場合もある。しかし、ブルーのデーヴ・ヴァン・ニーケーク社長は、「当社はアフリカで慈善事業をするつもりはない。ビジネスとして責任を持って低所得者にプロフェッショナルな金融サービスを提供する。事業資金は援助機関からではなく民間の市場から調達したい」とし、あくまで事業としてマイクロファイナンスの可能性を追求する。

顧客層と商品の見直しで他社と差別化

ブルーが顧客として狙うのは、定職はあるが就業または起業したばかりで所得が小額である低所得者層だ。つまり、従来のマイクロファイナンス機関が対象とする「貧困層」と、その対極にいる銀行口座を保有する「中・高所得者層」との中間に位置する人々である。南アの顧客の9割は政府職員や教員、警察官など公務員で、その他の国でも9割が給与からの天引きが可能な公的部門の被雇用者だ。

ヴァン・ニーケーク社長はブルーを立ち上げる前に、マイクロファイナンス機関で働いた経験を持つ。その際、返済不履行による債務を抱え経営破綻に追い込まれる同業者をみてきた。失敗しやすい要因として同氏は、

(1) 返済の見込みの低い最貧困層だけを対象としていること
(2) 単一の融資プランしか提供していないこと
(3) 運営資金を援助機関に頼っていること

を挙げ、それでは持続可能なビジネスはできないと指摘する。これに対してブルーは、職のある顧客を対象に多様な融資プランを用意し、運営資金も多様な民間ファンドから調達している。

ブルーの顧客の債務不履行率は4%程度にとどまっているが、これは返済方法を給与からの天引きにしていることに加え、多様な融資プランを提供していることが理由だという。ブルーの融資プランには、教育、携帯電話購入、家の改装用品購入、起業など用途別のプランが用意されている。ブルーは顧客に直接融資する代わりに、教育ローンであれば学校に、家の改装用品であれば顧客にブルーが提携する日曜大工店のプリペイドカードを現金の代わりに渡し、当初の目的以外の用途に使われることがないよう管理している。これはローンに不慣れな顧客が現金を手にして当初の予定外の出費をしたり、他の金融機関からのローン返済に充てたりといったリスクを回避する上でも有効だ。

アフリカ域内開拓が収益向上のカギ

ブルーは経営戦略として、「迅速なアフリカ市場開拓」を掲げる。現在は南アでのビジネスが約45%、残りをその他のアフリカ諸国13カ国が占める。南ア国外への市場開拓にこだわる理由には、

(1) 市場としてのポテンシャルが高いこと
(2) 経営効率を上げるためには規模の経済性が必要なこと

がある。同社はアフリカ市場のポテンシャルについて、「9億人の人口のうち公務員は9,000万人で、ブルーはその中の0.5%未満しか取り込んでいない。現時点での潜在顧客は1,400万人に上る」と試算しており、開拓の余地は大きいとする。

経営効率については、「スタッフは顧客の信用調査のために道路事情の悪い農村に出向いたり、顧客とのコミュニケーションに多大な時間を割いたりと、労働集約型の経営にならざるを得ない。経営コストを少しでも削減するためには、マーケティングや人材育成、法務など各店舗で共通する業務を本社に集約化させ、ひとつの機能を多くの店舗で共有することで、規模の経済性を作用させる必要がある」とする。

このためブルーはシステム整備に多大な費用を投資した。アフリカでは地上通信網が未整備の国が多く、複数国で運営する場合システムを利用した経営管理が難しい。これを解決するため同社は、他社に先駆けて衛星通信を使った仮想専用線(VPN: Virtual Private Network)で企業内システムを構築した。デジタル方式で常時接続が可能な衛星通信により、安定したシステム運営を図っている。例えばナイジェリアの店舗に顧客が訪れた場合、現地のスタッフがその場で顧客情報をシステムに入力し、それをもとに同時並行で南アフリカの専門スタッフが融資審査を行うという仕組みだ。

徹底した市場調査でリスク回避

新規市場開拓にはリスクも伴う。ヴァン・ニーケーク社長は、「リスクとチャンスは背中合わせだ。インフラ未整備はビジネス運営上のリスクとなるが、一方で、道路事情が悪いために街へのアクセスがなく金融機関を利用できない人々はブルーの潜在的な顧客でもある」と述べる。

ブルーは新規市場参入にあたっては現地調査に最低でも1年半から2年はかける。約20人のスタッフでチームを作り、進出先の法規制、政治経済情勢、ビジネス阻害要因、事業提携先の選定、事業計画の策定、行政手続、資本調達、政府との交渉などを徹底して行う。電話、メール、書面でのやり取りは最小限にとどめ、何度も現場に足を運ぶことが大切だとする。そのためビジネス間接費用のかなりの割合を移動費が占める。

マイクロファイナンスやクレジットに関する規制や法律がない国に進出する場合、準備期間はさらに長くなる。そのような国では、政府と一緒になって法制度を作ることから始めることになる。これには時間を要するが、競合他社より先に進出することで、ブルーが持つ基準がその国の基準となり、同社の運営にあった法制度作りができるため、初期投資は大きくても長期的には先行利益につながるとする。ヴァン・ニーケーク社長は、「早く市場に進出して基準を作ることが大切。競合他社より先に種を植える」と強調する。

事前に入念な準備をしても進出後に予期せぬトラブルは発生する。例えばケニアの場合は、2007年末の大統領選挙に伴う政情不安により1ヵ月の休業を余儀なくされた。マラウイでは、総選挙のキャンペーン中に立候補者である大臣の一人が「マイクロファイナンスは貧しい人々を苦しめている」として公務員の給与からの天引きシステムを差し止める命令を発し、ブルーは一時的に貸出金の回収ができなくなった。

このようなトラブルへの対策として、メディアを活用したマイクロファイナンスへの理解促進も重要だという。ブルーは、08年3月から09年2月末までの1年間に事業を展開しているアフリカ諸国において533件のプレス掲載記事、250件の屋外広告、6,500回のラジオ広告を行い、テレビやイベントのスポンサーも請け負った。タンザニアではブルーのロゴ入りのバイクを地元の警察に寄贈した。また顧客の教育を目的に発行する「ミスター・ブルー」のコミックブックは、店舗で配布すると同時になくなるほどの人気だ。

新規市場への参入に際しても広告は有効なツールになる。ローンやクレジットを知らない潜在顧客に分かりやすくアピールすると同時に、ブルーが狙う就業したばかりの上昇志向の強い若者が好むような宣伝文句で顧客を惹きつける。ヴァン・ニーケーク社長は、「ブルーは現在展開している13ヵ国に加え、アンゴラ、モザンビーク、ガーナ、エジプトへの拡大を計画している。これらの国々でもメディアを利用してブルーのブランドをいち早く浸透させることが成功につながる」と主張する。

国名 設立年 店舗数
南アフリカ 2002年 178
ボツワナ 2002年 12
ザンビア 2005年 20
ウガンダ 2006年 16
タンザニア 2007年 10
レソト 2007年 4
マラウイ 2007年 5
ケニア 2007年 6
ナミビア 2007年 15
スワジランド 2008年 2
ルワンダ 2008年 1
ナイジェリア 2008年 30
カメルーン 2009年 1

(情報ソース)

  • 2009年8月12日Corporate Financial Manager, Pieter Potgieter氏インタビュー
  • 2009年9月2日Chief Executive Officer, Dave van Niekerk氏ヒアリング (Omega Investment Research主催、Microfinance-An International Conference Focused on Africaセミナー会場にて)
  • ブルー・ファイナンシャル・サービス  http://www.blue.co.za/
  • National Credit Regulator (NCR)  http://www.ncr.org.za/