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データ・リソース

southafricaNetcare Group ネットケア

JSE上場年

2006年

売上高

217億3,500万ランド(2008年)

病院数

108(南アフリカ52、英国56)

会社概要と沿革

ネットケアは私立病院の運営をはじめ、緊急医療、緊急移送サービスなど幅広い医療サービスを提供する医療企業で、近年の中間層台頭に伴う医療ニーズ拡大を背景に急成長している。2008年の収益は前年比17%増の217億3,500万ランドで、2004年からの4年間では3.2倍となった。営業利益は前年比13%増の33億7,000万ランドで、2004年から3.6倍に拡大した。

1996年にヨハネスブルグ証券取引所に上場した当初は6つの病院を経営するに過ぎなかったが、その後、病院の買収を進め現在では南ア国内で52の私立病院、英国で56の救急病院を経営し、両国内で最大の私立病院ネットワークを誇る。同社は収益の48%を南ア国内の事業から、残りの52%を英国事業から得ている。

ネットケアは2001年に英国に進出した。経験が浅い英国市場での事業リスクを回避するため同社は収入が確保される政府との連携を試み、英国国民保健サービス(National Health Service, NHS)と一定数の手術を請け負う契約を結んだ。NHSと同社との契約内容について、業界関係者からはネットケアが提案した費用での契約手術件数の達成は不可能との批判もあったが、同社は契約を遂行することで英国市場での信頼を築いていった。2006年には英国の私立病院チェーンであるジェネラル・ヘルスケアグループ(GHG)の株式50.1%を取得し、英国での病院経営に乗り出した。

アフリカ諸国での拡大機会探る

ネットケアが海外での展開に目を向け始めた背景には、独占禁止法の規定により南ア国内の医療企業間での合併が難しいことや、病院の設立地域や数が限られているなどの事情がある。このため、経済成長に伴い医療ニーズの拡大するアフリカ諸国での事業拡大の機会を探っている。

ネットケアは90年代にもアフリカ諸国での事業拡大を試みたが、失敗した経験を持つ。
内戦終結後のルワンダに進出し病院の改築事業を行ったが、費用回収が進まず何百万ランドもの損失をだし2年で撤退を決めた。ネットケアはこの時の失敗は進出のタイミングが早過ぎたためだと見ており、現在は政治情勢も安定し経済成長もみられるとアフリカ進出に前向きだ。

しかし、アフリカでの事業拡大についてはリスクが高いとして二の足を踏む競合他社もある。平均所得が低く支払い能力のある患者は依然として少ないため、費用回収のリスクが高いというのが理由だ。これに対してネットケアは、官民連携により「低価格の私立病院」を実現させることでそのリスクが回避できるという。従来アフリカにおいては、私立病院では公立病院より質の高いサービスが提供される分、治療費用も高く設定されている。そのため費用回収のリスクも高い。それを政府と提携することで、医療の質を落とさずに低価格でサービスを提供することが可能だというのが、ネットケアの見解だ。

官民連携で投資リスクを回避

ネットケアはこの官民連携モデルを利用した病院建設を、2009年3月レソトの首都マセルで開始した。総工費1億ドルで、アフリカでは最大の官民連携パートナーシップ(PPP)事業だ。この事業でネットケアは同社が最大株主(40%)となるコンソーシアムを結成し、レソト政府と18年間の契約でベッド数390台の公共病院の設計、建築、機器の調達、医療サービス、病院経営を請け負う。南部アフリカ開発銀行(DBSA)が7億ランドの融資を行うほか、レソト政府が4億ランドの建設費用を負担、病院開設後には国際金融公社(IFC)が5年間の運営費用として620万ドルを供与する。さらに、レソト政府は契約期間の18年間は毎月一定の金額を病院に支払う取り決めとなっている。この政府の毎月の支払いから運営費用と融資返済額を差し引いた残りがネットケアの利益となる。

ネットケアは政府との連携により、単独で進出するよりはるかに低いリスクで海外での事業を展開できるとする。政府や国際機関からの融資により初期投資費用も最小限に抑えることができた。また、その他のメリットとして、

(1) 18年間はレソト政府からの収入が保証されること
(2) 病院内に民間ベッドとしてネットケア専用のベッド35台を設けたことで高所得者向けに高度な医療サービスを提供できる

ことを挙げている。

一方、レソト政府にとってのメリットは、

(1) 民間企業との連携により医療体制の改善や経営の効率化などを学ぶことで公共医療サービスの質が向上すること
(2) 開発機関からの融資により多額の病院建設コストを一括ではなく長期間で分割して支払えること

などがある。

拡大するサブサハラ医療市場

ネットケアによると、南ア国内での好調な業績も海外での事業展開が可能となった要因だという。南ア国内では、

(1) 近年の経済成長で中間層の民間医療保険加入者が拡大していること
(2) ジェネリック薬の普及により低価格の医療サービス提供が可能になったことから、私立病院の利用者が増加している。

ネットケアは、私立病院の年間利用者数を約850万~900万人と見積もっており、延べ数だと人口の半数は年間に最低1回は私立病院を利用すると試算している。南ア民間医療保険カウンシルの08/09年度報告書によると、2008年の民間保険加入者数は677万7,164人と全人口の14%程度に過ぎないが、05年以降は年率6%で増加している。また、保険加入者の増加率6%に対して、加入者のヘルスケアへの支出は2007年の571億ランドから2008年には13.6%増の649億ランドと拡大しており、医療への支出単価が増えていることを示している。さらに、ネットケアによると所得向上に伴い民間医療保険に加入していない人の利用も増えており市場は着実に拡大しているとする。2008年の家計消費支出の内訳をみると、医療サービスへの支出は前年比9.7%増の484億9,400万ランド(2000年価格、実質値)となっており、2003年と比較すると13.1%増となっている。

サブサハラ域内の医療市場も拡大している。世界銀行(2007年)によると、サブサハラ域内の医療支出は、2005年の167億ドルから2016年には350億ドルに倍増すると推計される。この需要を満たすためには250億~300億ドルの投資が必要で、うち110億~200億ドルは民間部門からの投資になるとみている。

ネットケア以外の医療企業にも、サブサハラ域内での事業展開の動きがみられる。南アのレンメッドヘルスは、2009年中にモザンビークでの病院経営を開始する計画だ。同社が経営するヨハネスブルク市内の病院には、高度医療を求めてモザンビークを含めた周辺国から来院する高所得者が増加しており、これを受けて国外への進出を決めた。インド最大の病院チェーンであるアポロホスピタルズは、2009年8月に英企業と合弁でモーリシャスにベッド数220台の病院を設立した。同社が力を入れるメディカル・ツーリズム市場を狙ったもので、医療旅行者の目的地のひとつとして同地はアフリカ域内からの医療旅行者にとっても魅力的だとしている。同社はナイジェリアでの病院建設も検討するなど積極的にアフリカ展開を進めている。

(情報ソース)