nigeriaMulti-Pro Enterprises Ltd

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

Multi-Pro Enterprises社(以下、マルチプロ)は、その即席麺Indomi Noodle(以下、インドミ)をナイジェリアで販売する企業だ。シンガポールに本社があり、世界6カ国に進出しているインド系企業Tolaramグループ[※1]から100%出資を受けている。現在従業員は1,200名、うちインド人は18名、営業部隊のナイジェリア人が300名だ。

1995年、マルチプロはナイジェリアでの設立と同時に、インドミ の輸入販売とナイジェリアの麺市場の調査を開始した。その後、Dufil グループ[※2](株主:インドネシア系Salim グループ(インドミ麺の製造を行うPT Indofood Sukses Makmurの最大株主) 50%、Tolaramグループ:50%)が1996年に設立され、同グループ傘下のDe United Foods Industriesが1997年にオグン州オタにて、同じく傘下の Dufil Prima Foods Ltdが2004年にリバース州ポートハーコート市チョバ地区にてインドミの生産を開始した現在、ナイジェリアは麺類の輸入が禁止されており、同国で製造することが義務付けられている。今では2工場合わせて日産120,000カートン(40袋/カートン)の即席麺Indomi Noodle(以下、インドミ)を製造している。

現在、同社がナイジェリア市場に投入している商品は6種類ある。1袋あたり70gで約35ナイラの製品3種類(チキン味、チキン・ペッパースープ味、オニオン・チキン味と、1袋あたり120gで45ナイラの製品3種類(チキン味、ペッパー・チキン味、 チキン・スーヤ味だ。

マルチプロは、支所をラゴス州(3カ所)、首都アブジャ、ポートハーコート市、カノ市、カドゥナ市、イバダン市など国内9箇所に構え、国全体に販売網を構築している。同社ジテシュ・パムナニ財務部長によると、「ナイジェリアの麺市場はここ数年、毎年15%の伸びを見せている。売上は、2008年に220億ナイラ、2009年は340~350億ナイラに達する見込み。」とのこと。インドミはナイジェリアの麺市場で60~70%のマーケットシェアを占めていると言う。アフリカ地域でインドミを製造している国はナイジェリアのみで、ガーナ向けには同社がナイジェリアから輸出している。ベニンやトーゴといった隣国でもインドミが販売されているのを見かけるが、直接輸出している訳ではなく、卸業者経由で輸出されている。

※1 Tolaramグループは、ナイジェリアにはマルチプロの他に、石油化学製品、家電、自動車、繊維製品などの製造・販売を手掛ける傘下企業を持つ。
※2 Dufilグループは、インドミ製品のパッケージを製造するInsignia Print Technology を傘下に持つ。

念入りなマーケティング調査を実施

即席麺Indomi Noodle(以下、インドミ)は、わずか10年強でナイジェリアの食文化を変えるほど現地に浸透した。パムナニ部長は、ナイジェリアにおけるインドミ・ブランド浸透の成功の秘訣をナイジェリア人向けの味付けと、高品質・低価格の実現だと分析する。ナイジェリア人向けの味付けを開発するにあたり、同社は専門の調査会社に依頼し、一般ナイジェリア人家庭を訪ねて、浸透しそうな味付けを調査している。なお、インドミの製造者であるDe United Foods Industriesと Dufil Prima Foods Ltdがそれぞれ2006年12月と07年2月に 品質保証に関する国際規格ISO 9001:2000認証[※3]を取得するなど、グループを挙げて高品質な製品づくりを実践している。2008年3月には、ナイジェリア国家食品医薬品管理局より品質管理が行き届いている優良企業として表彰されている。その一方で、商品が低所得者にも手が届きやすい価格設定(1袋当たり、約35~45ナイラ)であることも、人気の大きな要因だ。ナイジェリアの主食であるヤム芋やキャッサバを利用した料理よりも手間がかからないことも受けがいい。外国人駐在員の子供が多く通うラゴスの某学校では、ナイジェリア人生徒がランチとしてよく持ってくるのは、調理されたインドミ麺とゆで卵のセットだという。同社はマーケティングに重きを置いており、売上の10%程のコストを費やしている。

※3 この認証についての補足。

麺文化の創出と拡大へ

ただ、ナイジェリアでのビジネス展開は容易ではないようだ。同部長は、ナイジェリアには麺を食べるという文化がなかったので、ローカル・マーケットでインドミの作り方デモンストレーションを行ったり、無料サンプルを配ったりするなどして、「麺文化」を創りだす事に相当労力を費やしたと語る。初めのうちは、麺を見たナイジェリア人が、食べのものではなく「虫」だと勘違いした例もある。在庫と現金管理を毎日行うのも容易ではない。また、同国でビジネスを展開する上で、販売ルート確保が何よりも困難な点であるという。今でも、300人の営業部隊がインドミの車両広告が張られているバンを利用して国中を駆け巡っている。街中の看板広告や警官用スタンドにもIndomie広告をかなりの頻度で見かける。また、ブランド浸透のために、イスラム教が広く普及しているナイジェリア北部地域にて、ラマダン明けにモスクで調理済みのインドミを無料配布するなど、クリスマスや大きなイベント毎にこのような試みを実践している。最近では、ナイジェリア系UAC Foodsが展開するファーストフード店’Mr. Biggsと連携し、新商品を1つのメニューとして提供している。

若年層を囲い込む戦略も

また、若年層の囲い込み戦略にも余念が無い。インドミ・ファンクラブを設置し、月に1度ラゴスにてパーティーを開いている。対象は5~12歳の小学生のみで、ダンボール1箱(インドミ20袋入り)を購入すると誰もが参加可能という仕組みで、インドミのロゴが入ったTシャツ、文房具などが配布される。また、同社プロモーションキット、ウェブサイトではナイジェリア市場向けに開発された5種類のアニメ・キャラクターが見られるようになっており、パソコン用壁紙のダウンロードも可能だ。現時点ではキャラクターグッズの販売は行っていないが、将来的に実施した場合、即席麺とは別の収入源となるかも知れない。また、栄養学修士課程の奨学金を補助したりや、オグン州オタにIndomie Football clubを設立して有能選手の発掘も手掛けたりするなど幅広くCSR活動も行っている。

ナイジェリア系製造大手Honeywell社や、同国財閥大手Dangoteグループも競合相手として即席麺の製造販売を行っている。Flour Mills of Nigeria社も即席麺製造の立ち上げについて言及するなど、ナイジェリアの即席麺市場は、いわゆる「儲かる」市場として大きな関心を集めている。