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nigeriaMultichoice Nigeria Ltd

会社概要と沿革

Multichoice Nigeria社は、ナイジェリアの有料衛星放送事業者だ。1994年に、有料衛星放送番組を提供する南ア資本Multhichoice社とナイジェリア人個人投資家アデフンミ・オグンサンヤ氏(現Multichoice Nigeria社会長)との合弁会社(出資比率は未公開)として、ラゴスに設立された。支店網はナイジェリア全土に広がっており、国内9ヵ所[※1]に支社を持つ。雇用者数は、国内全体で約450人、うち本社に約200人。同社は非上場であるため、財務状況は非公開だ。同社は、1996年に「DStv」というブランドでの有料衛星放送サービスをナイジェリアで初めて開始して以降、これまでに100万ドル以上の投資をしてきた。09年10月現在の契約者数は40万件強と、03年の3倍に達している。衛星放送市場において、同社は6割もの高いマーケットシェアを占める。なお、同社はナイジェリア国営放送局NTA(Nigerian Television Authority:ナイジェリア・テレビ局)や同国の民間放送局AIT(Africa Independent Television:アフリカ独立テレビ局)と契約し、DStv内プログラムにて無料で番組配信している。

※1 支店設置州・都市は、ラゴス州(本社とは別)、イバダン市、ジョス市、アブジャ市、ポートハーコート市、カノ市、マイドゥグリ市、エヌグ市、カドゥナ市の9カ所。今後、ラゴス州にさらに新たな支店を設置予定。

多様な価格帯の商品を用意

現在、Multichoice Nigeria社が用意する加入オプションは、「プレミアム(月額9,500ナイラ、視聴71チャンネル)」、「コンパクト(4,500ナイラ、45チャンネル)」、「ファミリー(2,500ナイラ、35チャンネル)」、「アクセス(1,500ナイラ、29チャンネル)」の合計4つである。

同社が、1996年のサービス開始当初、用意した商品は「プレミアム(当時は月額9,000ナイラ)」のみであった。しかし、その後新規加入者を増やすために、2004年に低価格商品である「コンパクト」と「ファミリー」の販売を開始した。さらに2008年の同社CEO交替後に、より低所得層向けサービスを拡充する方向性が強まり、2009年9月に最安値商品である「アクセス」の提供を開始した。

Multichoice Nigeria社は、2009年末までに加入者数を60万件にまで伸ばすことを目標としている。このため、最も価格競争力が高い「アクセス」を、新聞・ラジオ等のメディアを通して大々的に宣伝中だ。販促キャンペーンとして、DStv衛星放送受信機一式と「アクセス」3ヶ月間無料視聴権(4,500ナイラ分)を、24,900ナイラでセット販売している。同社のセグン・ファヨセ広報部長によれば、国内人口の約9割(約1億3,500万人)は、1人当たり所得が月166ドル(約24,800ナイラ)程度と考えられるという。この層にとって「アクセス」の価格(1,500ナイラ)は所得の6%程度という計算となるため、手が届く価格設定と同社は見なしているのかもしれない。[※2]

また、通常のテレビ衛星放送とは別に、携帯電話向けの配信サービスにも着手した。2008年に、南ア系携帯電話サービス会社MTN Nigeria社と連携し、携帯電話TV向け衛星放送番組配信サービス「DStv from MTN」を開始したのだ。これは、携帯電話を通じて10チャンネルを視聴できるという画期的なサービスである。

Multichoice Nigeria社は、加入者の利便性を高めるためのサービスや工夫を設けている。その1つが、24時間の修理サービスだ。ナイジェリアでは、雨季には大雨に打たれてアンテナの向きが変わったり、部品が壊れたりするなどの現象が多発することを踏まえて導入した。また、支払方法は、年間一括払いと、月末払いの2通りからの選択性としている。このうち年間一括払いの場合には1年間の視聴料金が11ヵ月分に値引きされる仕組みである。料金の支払いは、同社サービスデスクやディーラーショップに加えて、提携する国内の主要商業銀行窓口でも受け付けている。

※2 しかしながらファヨセ広報部長によると、加入者が最も多く増えているのは、「ファミリー」だという。この理由は、ナイジェリアのドラマや映画を放映するチャンネル『African Magic』が含まれる商品のなかでは、同商品が最も低価格だからだと考えられる。

抱える問題は電力不足と不正受信

ファヨセ広報部長によると、ビジネスを展開する上での障害としてまずは挙げられるのは、電力不足である。ナイジェリアでの電力不足は深刻で、首都アブジャでは1日のうち約半日、ラゴスや北部最大都市カノでは1日に数時間ほどの電力供給しかなく、オフィスビル、アパート、ホテル、レストランでは自家発電機が必需品となっているのが実情だ。たとえテレビがあっても、電力がなければテレビ放送を視聴することはできないため、同社にとって深刻な問題だといえる。また、同社の衛星放送を不正受信する企業・家庭が跡を絶たない点も大きな問題だ。受信波の無断受信者の他に、1件の契約のみで、複数家庭間で視聴を共有する個人契約者や、全ての部屋のテレビで放送を視聴できるようにするホテルは多いという。

衛星放送市場では高いシェアを誇る同社に、2006年に強力なライバル企業が出現した。Multichoice Nigeria社の元顧問弁護士が独立して設立し、既に3割のマーケットシェアを獲得しているというHiTV社である。HiTV社は、2007年から「プレミアム(6,000ナイラ、31チャンネル)」、「クラシック(3,500ナイラ、28チャンネル)」など、Multichoice Nigeria社のものと類似した価格帯とチャンネル数のサービスを提供している。ナイジェリア人が好むサッカーやナイジェリア製の映画・ドラマ・音楽の専門チャンネルを提供していることが同社の強みで、Multichoice Nigeria社の脅威となりつつある。なお、内政の動向が加入者数の減少を招くこともあるようだ。例えば、ナイジャーデルタ地帯の治安悪化により、それまでMultichoice Nigeria社の契約者だった石油メジャーの従業員が一時的に引き上げた際に、多くの視聴契約が解約されたという。

テレビを通じた独自のCSR活動を展開

Multichoice Nigeria社は、CSR活動にも積極的だ。2004年以降、教育省、ナイジェリアのNGOスクールネット、NEPAD(アフリカ開発のための新パートナーシップ)のe-Schoolプログラムに協力している。これまでに6州50校以上の公立中学校に発電機とDStvアンテナ、受信器を寄付し、ドキュメンタリーやニュースなどの8チャンネルの無料視聴権を与えている。そのほか、2008年に鎌状赤血球症基金ナイジェリアと提携し、同疾病の予防番組を製作したり、セミナーやワークショップ開催、新聞や雑誌への広告掲載を通じた予防支援を展開した。