nigeriaDangote Sugar Refinery Plc (DSR) ダンゴート製糖社

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

ダンゴート製糖(DANGOTE SUGAR REFINERY PLC: DSR)は、Dangote Industries Limitedの製糖部門として2000年3月に設立された。Apapa港にある製糖工場は2001年に稼働、当時の加工能力は年間60万トンであった。2007年12月、DSR社は1,500トンの砂糖をガーナに輸出した。

DSRはナイジェリア株式市場(NSE)に上場されている。2007年11-12月に100億株が公開され、ダンゴートグループ(ダンゴートインダストリーズ社)は所有株式の25%を売却。同社の株式は2007年3月8日に1株18ナイラの値をつけた。

DSRの設備容量は年間144万平方トン近くに達しており、現在の設備稼働率は約75%である。

DSRはAfrica Investors’ Index seriesで、the Best African Initial Public Offer for 2007を授与された。2007年11月にDSRは、President's Merit Award for Best Quoted Company of the Year in the Food and Beverages Sectorを受賞した。Standards Organization of Nigeriaは同社にNIS ISO 9001:2000 International Quality Management Awardを授与しているほか、2008年にも再び、President's Merit Award for Best Quoted Company of the Year in the Food and Beverages Sectorを受賞した。2009年にはマドリードの有名なBusiness Initiative Directionsから、2009 International Quality Award in the Gold Categoryを授与されている。

国内の所在地

Modandola House, 42 44 Warehouse Road, Apapa, Lagos, Fax: 234 1 271 4466

製品・サービス

DSRは砂糖の精製と販売を行っている。同社はブラジルから原料糖を輸入し、ビタミンA強化白砂糖に精製したあと、Dangote Sugarの商標名で最終製品をナイジェリア全土で販売している。顧客は2つのカテゴリーに分類される。主にナイジェリアの優良会社から成る大口の産業的使用者が、売上収益の約18%を占めている。例えば、Nestle Nigeria Plc、Cadbury Nigeria Plc、Seven-Up Bottling Company Plc、Nigerian Bottling Company Plc (NBC)などである。もう一方のカテゴリーは小売市場(家庭用と零細企業)に供給する販売会社である。この顧客グループは卸売りの白砂糖を売買しており、ダンゴート製糖の売上収益の82%近くを占めている。

従業員数

694名。

財務情報

(百万ナイジェリアナイラ) 2005年1月 2006年1月 2007年1月 2008年1月
収入 36,576.2 58,494.7 83,767.9 80,649.4
総収入 36,576.2 58,494.7 83,767.9 80,649.4
売上原価 25,803.5 44,458.6 63,623.6 48,184.1
粗利益 10,772.6 14,036.1 20,144.3 32,465.3
販売費、一般経費、経理費の総額 2,167.5 2,433.4 3,091.4 3,207.5
その他の営業経費 -- -- -149.8 -174.4
その他の営業経費の総額 2,167.5 2,433.4 2,941.5 3,033.1
営業利益 8,605.1 11,602.7 17,202.8 29,432.2
支払利子 -1,290.0 -2,223.4 -894.7 -2.1
利子所得と投資所得 -- -- 349.0 1,196.5
金融収支 -1,290.0 -2,223.4 -545.7 1,194.5
その他の営業外所得(営業外費用) 56.0 0.3 -- --
異常項目を除くEBT 7,371.1 9,379.7 16,657.1 30,626.6
その他の異常項目の総額 -- -- -- 34.1
保険決済 -- -- -- 34.1
異常項目を含むEBT 7,371.1 9,379.7 16,657.1 30,660.7
法人所得税費用 -- -- -- 9,182.2
継続的議場活動からの収益 7,371.1 9,379.7 16,657.1 21,478.6
純利益 7,371.1 9,379.7 16,657.1 21,478.6
異常項目を含む1株当たり純利益 7,371.1 9,379.7 16,657.1 21,478.6
異常項目を含まない1株当たり純利益 7,371.1 9,379.7 16,657.1 21,478.6

市場シェア

DSRはサブサハラ・アフリカ最大の製糖所であり、年間生産量175万トンのAl Khaleelに次いで世界第二の規模を誇る。ナイジェリアの砂糖市場でのシェアは約80%である。

事業目的

「株主の長期的利益を最大化するとともに、国内およびアフリカ地域の市場でトップのポジションを確立することに専念し、国際的な低コストの総合製糖会社になることである。」

ビジネスモデル

DSRは国内市場シェアを維持、拡大するだけでなく、サブサハラ・アフリカ近隣諸国の市場を獲得するため、ビタミンA強化白砂糖を製造する世界有数の製糖所のひとつとして、国内市場と国際市場において明確な競争上の優位性を追究している。

DSRの目的を達成するための戦略計画には、「既存の精製能力を110万トン増加して計250万トンに拡大し、2009年までに世界最大の製糖所になること」、「現在Dangote Industries Limitedが所有している国内製糖メーカーSavannah Sugar Company Limitedを買収し、生産量を増加させて原料糖の輸入コストを抑制すること」、「世界の砂糖市場の好調な動きをとらえ、他のアフリカ諸国に対する製品輸出を拡大するとともに、アルジェリアに生産拠点を構えること」、「コストを削減し、収益性を向上させるために業務効率をさらに改善すること」、「産業顧客ベースを拡大するとともに、小売消費者に対する新しい梱包ラインを導入し、地域市場の機会を最大化すること」、「運送費と運転資金管理を改善するため、船舶を購入すること」、「大規模購入者や大量購入者にマーケティングの重点を置くこと」が含まれる。

株主・所有権益

DSRはDangote Industries Limitedの子会社である。

政府との関係・社会貢献

ナイジェリアの工業部門大分類によると、製糖業は「砂糖・ココア菓子のサブセクター」に入る。世界で最も成長可能性が高い農業関連産業のひとつであるという戦略的ポジションにも関わらず、ナイジェリアの製糖業は国内経済において軽視されている。製糖業は成長と開発に失敗しており、既存の産業プレーヤーは生活必需品に対する需要拡大に応えることができていない。

政府はかつて国有であった製糖会社を民営化することにより、市場を自由化して国内生産を増加させる意識的な方策を講じているが、業界分析によると、このビジネスセクターはわずか数社が独占しており、国内経済で拡大する年間消費量に追いつくだけでやっとの状態である。ナイジェリアでは、国立食品医薬品規制局(NAFDAC)とナイジェリア標準機構(SON)の2団体が砂糖の規制に関与している。NAFDACの重要な規制によると、すべての砂糖および砂糖製品に対し、25,000 IU/kgの割合でビタミンAを添加することが2005年に定められた。

ダンゴートはナイジェリア政界の長老と非常に密接な関係を結んでいる。退陣後、オバサンジョ前大統領の影響力はいくらか弱まってはいるが、同氏は現在でも政治的保護力を有する強大なビジネスマンである。

製品開発

DSRは現行の50kg製品に加え、小袋の砂糖を含む新製品を導入し、収入を増加させる計画である。また準備金の一部を使って、事業を多角化するためサトウキビ圧搾機とサトウキビ農場を購入し、輸入原料の世界的な価格変動の影響を減じようとしている。

既存の市場を維持しながらアフリカ西海岸の近隣市場をコントロールする戦略に従い、DSRは西アフリカと北アフリカの市場に積極的な拡大策を適用している。

追加情報

2001年から精製工場を稼動

DSRは、ナイジェリア財閥大手Dangoteグループ[※1]の傘下企業として、2000年から操業を開始した。翌01年から、ラゴス州アパパ港近くに設立したナイジェリア最大規模の自社工場にて砂糖精製を開始している。DSRは07年にナイジェリア株式市場に上場しており、現在は株式の69%をDangote Industries Ltdが、31%を個人投資家などが保有する。従業員数は、約800人で、9割が砂糖精製の作業員として工場に勤務する。同社は従業員のスキルアップのため、スーダンのKenana 砂糖精製会社におけるマネージメントプログラムや、メイズ・サトウキビを加工した食品原料を製造する英国Tate & Lyleにおける技術プログラムなどの研修を整備している。研修にはインセンティブが用意されており、好業績を残した従業員は、子息への奨学金制度やストック・オプション制度を受けることができる。なお、同グループは、ヌマン市(北東部アダマワ州)に位置するサバンナ砂糖会社(年間生産能力:2,000トン))が民営化された際に買収している。同社は1万人を雇用し、6,330ヘクタールのサトウキビ・プランテーション農場も運営している。1ヘクタールあたりの粗糖生産量は40~50トンで、2012年までに2万ヘクタールまで農場を拡張する計画だ。

ナイジェリア政府は国内製造業育成支援のため、精製糖の輸入関税を高く設定している[※2]。Dangoteグループは既に1978年から精製糖の輸入販売を行っていたが、2001年まで、砂糖精製事業は手がけてこなかった。しかし01年から、ブラジルから輸入した粗糖をDSRの工場で精製するという事業に同グループは着手したのである。

DSRは、03年:52万トン、04年:65万トン、05年:87万トン、06年:89.7万トン、07年:90.7万トンと順調に精製糖の増産を果たした[※3]。当初は年間60万トンだった生産能力は、現在年間144万トンまで上がっており、これはサブサハラアフリカでは最大規模、世界でも2番目の規模となっている。DSRは、将来的には生産能力を年間250万トンまで拡大させたい意向だ。

DSRは、いち早く砂糖市場に乗り出し全国の販売網を整えたことから、国内マーケットシェアの80%を獲得することに成功した[※4]。現在DSRは、ラゴス、首都アブジャ、北部中心地カノ市、ヌマン市、北西部ソコト市、アダマワ州の北に位置するボルノ州州都マイドゥグリに保管倉庫を持つ。精製された砂糖は、50kgごとに袋詰めされ、全体の75%が問屋を通じて国内マーケットなどに流通し、残りの25%が国内大手菓子・飲料メーカー向けに販売される。DSRの顧客である大手菓子・飲料メーカーには、Nigerian Bottling Company(コカコーラ)、セブン・アップ、ネスレ、キャドバリーなどがある[※5]。また、DangoteグループのDansaブランドのフルーツジュースでも、DSRの精製糖が利用されている。

粗糖価格高騰の影響を受け、09年は減益か

しかし、DSRは09年に入ってから苦戦しているのが実情だ。その理由の1つは、国際的な食料価格高騰だ。09年は、ナイラ安ドル高という為替変動の影響を受けたことも手伝い、原料である粗糖の輸入価格が高くなった。この粗糖価格高騰の影響で、06年は、50kgあたり4,000ナイラで販売されていた精製糖が、09年10月には7,200ナイラにまで跳ね上がり、売上への影響が出ている。

さらに金融危機の影響もあり、09年のDSRの財務状況は、1~9月の売上が594億4,000万ナイラ(前年同期比7.64%減)に留まっている。また、税引後利益も1~9月で158億6,100万ナイラ(同35.88%減)と、前年同期に比べると大幅に縮小している。南アフリカ共和国(以下、南ア)系スタンビックIBTC銀行は、DSRの09年の収入は804億4,900万ナイラ(前年比0.25%減)となると予測している。インド人であるDSR社長ソナニ氏も、09年は景気後退のため業績が悪化している点を認めている。

なお、ソナニ社長は、ナイジェリアにおけるビジネス展開の課題としては、道路や電力不足といったインフラの未整備を指摘する。鉄道インフラが整備されていないナイジェリアでは、トラックを利用した運送に頼らざるをえず、道路状況が悪いために車両故障などの追加コストがかかるという。電力不足対策としては、DSRの工場でガスタービンなどを利用して16メガワットの電力を自社発電しているとのことだ。

攻めの姿勢で事業展開へ

DSR資料によれば、ナイジェリアの1人あたりの年間砂糖消費量は7.5~8.0kgである。これは、ガーナ:9.0kg、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体):9.1kg、セネガル:15.4kg、南ア:32.0kgと比較すると少ない。ただ、ここ最近の数年間で、ナイジェリアの1人あたり砂糖消費量は2~3% 増えてきているとされ、ナイジェリアにおける精製糖の市場規模は、年間480万トンに達するという推計もある。

今後の方針として、DSRは250g, 500g, 1kgなどに小分けした小売用パッケージ商品も開発していく予定である。様々な価格帯の商品を用意することで、これまでDSRの商品を買わなかった層の掘り起こしを図っていく考えだ。

さらに、DSRは国外市場への進出も視野に入れている。07年12月にはガーナ向けに精製糖1,500トンを初めて輸出した。また、アルジェリアにおいては精製糖製造工場を建設中だ。DSRが、北アフリカ市場への展開を本格的に考えている証拠だといえるだろう。

※1 砂糖精製の他に、食品(スパゲッティ・即席麺・小麦粉・塩)、セメント、港湾管理、鉄鋼、通信、石油ガス分野など多岐にわたる事業を展開
※2 輸入関税率は、粗糖が5%である一方で、精製糖は20%。
※3 03年から06年までの4年間で、DSRの収益は年平均57.45%増と非常に高記録を残した。
※4 DSRの他にナイジェリアで砂糖を製造・販売する企業としては、ナイジェリア財閥大手BUAグループが挙げられる。同グループは、ラゴス州ティンカン地区にて年間60万トンの砂糖を製造している。
※5 07年のメーカー向けの販売では、Nigerian Bottling Company、セブン・アップ、Sumal Foods社(ビスケット、クッキー、ガムなどのナイジェリア系菓子製造メーカー)の3社向けの精製糖販売が、売上全体の半分を占めた。