Vivendi
アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。
会社概要と沿革
Vivendiは世界的に通信業界をリードするプロバイダーである。ビデオゲームおよび音楽では世界1位、テレコミュニケーションではフランス第2位、モロッコ第1位、有料放送テレビではフランス第1位。
1853年、ナポレオン3世の勅令により水道会社Compagnie Générale des Eaux (CGE)が設立され、1854年にリヨンの公衆に供給する水道利権を得てから何世紀以上も主に水道事業に従事していた。1976年に同社は数々の企業を買収して事業分野を拡大。1998年にCGEからVivendiへ改名し、翌年、不動産および建設部門を売却した。更に同年、Maroc Telecomへの出資に踏み切った。
2001年、モロッコ政府主催オークションでMaroc Telecomの持株35%を得て、Maroc Telecomの共同経営におけるモロッコ王国の戦略的パートナーとなった。2004年、Maroc Telecom 株を更に16%買収することについてモロッコ政府の合意を得たと発表。
Maroc Telecomは、2006年までモロッコ市場における固定電話サービスの独占業者であり、インターネット、データサービスでも第一のプロバイダーであった。2005年に市場が開放されてから、新しく2社が固定電話サービスの利権を得て2007年より営業を開始している。
2007年12月、Caisse de Dépôt et de Gestion du Marocとの株式交換取引を行い、Vivendiは更に2%のMaroc Telecom 株を取得。
国内の所在地
Avenue Anakhil Hay Riad - Rabat – Maroc;
Telephone: +212 537 71 90 00
Telefax: +212 537 71 48 60
製品・サービス
Maroc Telecomは固定電話、携帯電話のテレコミュニケーション、およびインターネット接続プロバイダーである。主な固定回線サービスとして提供しているのは、電話サービス、国内・海外オペレーターとの相互接続サービス、専門業者およびインターネット・プロバイダー、その他通信業者向けのデータ通信、インターネットサービス(インターネット接続、ホスティングなどの関連サービス)、ADSL回線テレビである。
2006年9月、Maroc Telecomは固定客獲得と新規顧客開拓のため、同社の国内固定回線電話への通話を無制限に利用できる固定電話かけ放題サービス「Phony」を新たに開始した。
Maroc Telecomが法人客向けに提供しているデータ通信サービスは、X25、フレームリレー、デジタル専用回線、アナログ専用回線、IP-PN網などである。Maroc Telecomは、販売契約を結ぶ地方再販業者または国内小売業者45,000店以上の幅広い直接・間接販売網を持っている。
Maroc Telecomは、デジタルネットワークおよび高速データ処理が可能な都市間光ファイバー通信基盤を扱っている。インターネット利用者のニーズを満たす国際的なインターネット回線容量は、2006年末の12.1 Gbits/sから2008年末には25.1 Gbits/sの2倍に増加している。オフシェア活動に必要とする国際的な回線容量と、モロッコ国内でのブロードバンド・インターネットのニーズ増加に対応するため、2007年7月にMaroc Telecomはアシラ・マルセーユ間に、容量320 Gbits/sまで増量可能な40 Gbits/sの海底ケーブルネットワークAtlas Offshoreを設置した。
携帯電話サービスにおいては、受信人口と受信地域の拡大に力を入れている。2008年度末Maroc Telecomは、2G基地5400局以上(2007年度5000局)、3G基地1100局以上(2007年400局)維持し、国内人口のカバー率は97%以上となった。2008年12月31日、後払い契約をしている顧客を対象としたローミングサービスについて、214ヵ国のオペレーターと合計466件の契約を結んだ。更にMaroc Telecomは、プリペイド契約をしている顧客に対しても54ヵ国89社のオペレーター、MMSおよびGPRSローミングについては75ヵ国116社のオペレーター、3Gサービスについては11カ国12社のオペレーターを介したローミングサービスを提供している。
従業員数
合計 44,243名、モロッコ国内13,411名
財務情報
事業分野別収入
地域別収入
市場シェア
Maroc Telecomはモロッコ最大の固定電話、携帯電話のテレコミュニケーションオペレーター、およびインターネット接続プロバイダーで、携帯電話顧客数1440万人、固定電話顧客数130万人を有する。2008年末、国内における携帯電話通信の普及率は74%で、Maroc Telecomは63.4%の市場シェアを占める。
事業目的
「競合企業をしのぐことを目標とする。歴史的な強みを足場に、競争力強化および全てのサービスの品質を保証するために努力する。」
ビジネスモデル
Vivendiの戦略は、テレコミュニケーションおよびエンターテイメント界のニーズ、技術力、クリエーティブチーム、主要ブランドに対する投資を行うことにより、コンテンツ、サービスの開発、配信を通して、テレコミュニケーションおよびエンターテイメント業界での優位なポジションを強化することを目的としている。Vivendiグループの事業は各事業体が共通してデジタル化や新技術の分野に参加しており、デジタルクオリティ、クリエイティブ・コンテンツへの加入契約・アクセスを顧客に提供している主要ブランド(アクティビジョン・ブリザード、UMG、SFR、Maroc Telecom、Canal+など)のレバレッジで、最終消費者のターゲットを明確にしている。これにより、豊富なノウハウと最新技術提供でVivnediは競争を優勢にし、加入契約者、ブランド、配信プラットフォーム、製品開発、著作権の管理について多くの評価を得ている。
Vivendiは、加入契約ベースの経済モデルで功績を得ようと試みている。つまりグループの評価は主に加入契約者の取得、加入契約による収入、契約者の固定による。このビジネスモデルは循環し、予測可能な収入源であるため、Vivendiにとって有利である。Vivendiグループは、更にハイレベルな顧客対応と共に、モビリティと高速サービスの需要増加に対応する革新的な新サービスを提供することが可能である。
高速通信の発達に伴うコンテンツのデジタル化とオンライン消費者コミュニティの発展は、成長勢力のある事業分野を認識するためにVivendiが期待する大きなチャレンジとチャンスが生まれる。
投資プロジェクトは、1株ごとの調整後純利益に影響する成長を促す能力、利益を得るために必要なグループ全体の能力、使用総資本利益率と資本加重平均コスト、投資に対する中期・長期の利益、徹底的なリスク評価など、多基準分析をベースに選択されている。
投資はVivendiの投資委員会から経営役員会へ、また重要な投資は監査役員会の戦略委員会から監査役会へ通され、評価される。行った投資の全ては、実績を分析・評価する「買収後監査」も通さなければならない。2008年も引き続き、当グループは業績と事業実績の向上に力を入れ、各市場および成長分野での事業を強化するために投資を続行する。
株主・所有権益
Maroc Telecomは53%をVivendiが子会社として所有 、30%をモロッコ王国が所有、17%が公開されている。
主な株主
グループ名 | 資本分配率(%) | 議決権(%) |
---|---|---|
Capital Research and Management(キャピタル) | 4.91 | 4.91 |
Natixis (Ixis Corporate & Investment Bank) (ナティクシス) | 4.30 | 4.30 |
CDC-Caisse des Dépôts et Consignations(フランス貯金信託公庫) | 3.71 | 3.71 |
Groupe Crédit Agricole(フランス農業銀行) | 3.58 | 3.58 |
Natixis Asset Management(ナティクシス資産運用) | 3.43 | 3.43 |
Paris International Investment | 2.97 | 2.97 |
PEG Vivendi | 1.25 | 1.25 |
Prudencial Plc | 0.94 | 0.94 |
BNP Paribas(BNPパリバ) | 0.72 | 0.72 |
UBS Investment Bank(UBS証券) | 0.71 | 0.71 |
ADIA (Abu Dhabi Investment Authority)(アブダビ投資庁) | 0.66 | 0.66 |
Crédit Suisse Securities (Europe) Limited | 0.58 | 0.58 |
Rothschild - Asset Management(ロスチャイルド‐資産運用) | 0.54 | 0.54 |
Groupama Asset Management | 0.53 | 0.53 |
HBOS Plc | 0.51 | 0.51 |
Merrill Lynch(メリルリンチ) | 0.50 | 0.50 |
FIPAR International (CDG Maroc)* | 0.50 | 0.50 |
RCAR (Régime collectif d’allocation de retraite) – CDG Maroc | 0.50 | 0.50 |
Société Générale(ソシエテジェネラル) | 0.49 | 0.49 |
AQR Capital Management | 0.49 | 0.49 |
Fonds de réserve pour les retraités(フランス国民年金基金) | 0.47 | 0.47 |
SRM Advisers (Monaco) S.A.M. | 0.43 | 0.43 |
HERMES Equity (BT Pension Scheme Trustees Limited | 0.43 | 0.43 |
TPG-Axon | 0.37 | 0.37 |
Veolia Environnement(ヴェオリア・延ヴァイロメント)貯蓄計画 | 0.24 | 0.24 |
国庫株 | 0.01 | 0.00 |
その他株 | 66.23 | 66.24 |
合計 | 100.00 | 100.00 |
Maroc Telecomは53%をVivendiが子会社として所有 、30%をモロッコ王国が所有、17%が公開されている。
政府との関係・社会貢献
モロッコ政府はMaroc Telecomの株式資本14.9%の公開を行い、Maroc Telecomの民営化を継続。2004年12月13日、パリ証券市場、カサブランカ証券市場への同時公開により、株式の売り出しは成功。2006年、モロッコ王国はMaroc Telecom の株式資本0.1%を市場に売却。2007年7月2日、同国はMaroc Telecom 資本4%をカサブランカ証券市場に売却。国内、海外の機関投資家により買い取られた。これらの売却後、モロッコ王国のMaroc Telecomに対する資本分配と議決権は30%に減少し、自由変動相場による資本は15%から19%に増加した。
Agence Nationale de Réglementation des Télécommunications (ANRT) は、テレコミュニケーション分野に関する研究と規制法令を作成し、オペレーターが実施規制を順守しているかどうか調査している。NARTは、2004年から2008年の期間でテレコミュニケーション分野自由化に関する方針を発行した。この自由化プロセスにおいてMaroc Telecomに関する変化は次の通りである。Maroc Telecomは2008年の固定電話料金を月々35ディラハムと100ディラハムに設定した。2007年6月1日、ANRTと他社オペレーターの契約によりナンバーポータビリティが開始された。
Maroc Telecomは、ユニバーサルサービス提供の義務を守っている。ユニバーサルサービスに基づき、モロッコでテレコミュニケーションサービスについて義務付けられているのは、規定の品質で手ごろな価格な電話サービス、付加価値サービス、公共テレフォニーネットワークのオペレーターに関する詳細契約書に定められた内容と性能の基準(インターネットアクセスのサービスを含む)、緊急通話のルーティング、および印刷または電子フォームでのインフォメーションサービスとガイダンスに関する規定である。Maroc Telecomは、「pay-or-play」の原則に従い、税金と接続費を除いた歳入の2%をユニバーサルサービスへ運用する義務があり、全額または一部をユニバーサルサービス基金へ献金するか、ユニバーサルサービス経営委員会の承認するプログラムを開発するかのどちらか、または両方を選択することができる。
製品開発
Maroc Telecomは、2008年より、モロッコ国内主要都市での携帯電話3Gサービスを展開しており、3G+携帯電話の高速インターネットに加え、革新的で魅力的な新しいサービスを開始している。ユニバーサルサービス基金制度プログラム協定に従い、28億ディラハムの予算の投資し、2011年までに更に7,338都市での携帯電話受信エリア拡大を実施。(プログラム協定内容の80%)多くの人々がインターネットにモバイルアクセスできる、契約、加入、請求書のいらないプリペイド・インターネット3G+サービスを開始。フル検索機能、メッセージ、ナビゲーション、ダウンロード機能などのインターネット接続が楽しめるサービスを提供。更にMaroc Telecomは、Forfaits Particuliers(「個人加入」)の契約した顧客に対し、ヨーロッパ、北米の固定電話への通話を国内通話料金で利用できるプランを提供。
Maroc Telecom は13億の投資プログラムを決定。その資金のほとんどは、モロッコ政府の提供による。このプログラムは、主にモロッコの固定電話および携帯電話ネットワーク、更にフランスや西サハラを通してモーリタニアへの新しい光ファイバーの改善、近代化も含まれる。Maroc Telecom の発表によると、「投資プログラムにより、テレコミュニケーション基盤の拡大と近代化に専念し、主に3つの目的を果たす。」第一の目的は、国内での「次世代ネットワーク(NGN)の利用し、最適トラフィックを管理する能力およびサービス品質を確保する能力を高め、最適な条件のもとで無制限通話プラン、IPTV、ブロードバンド・インターネットを展開するために、固定電話サービスおよび携帯電話サービス分野での収束サービスを展開することである。」
第2の目的は、モロッコ・ヨーロッパ間の海底ケーブルAtlas Offshoreを利用した国際的な通信容量の強化。第3の目的は、テレコミュニケーション・アクセス・プログラム(PACTE)の一環として、国内の郊外地域、山岳地帯での受信エリアを拡大する。2011年までに、7,300の郊外地域でテレコミュニケーションネットワークが追加される予定。