mauritiusMauritius Commercial Bank (MCB) モーリシャス商業銀行

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

モーリシャス商業銀行(MCB)は、モーリシャスで最も古くまた最大の金融機関である。島全域の42支店と4000以上ある店頭端末のネットワークを運営している。

1838年、James BlythやWilliam Hollier Griffithsなどの英国商人、貿易商が、島で唯一の銀行であり入植者たちを優遇していたモーリシャス銀行と競争するために、Banque Commerciale de l’îsle Mauriceを設立した。

1839年にヴィクトリア女王はThe Mauritius Commercial Bankの名のもとに20年の勅許を与えた。その勅許は1955年8月18日に銀行が有限責任会社になるまで20年ごとに更新された。設立から100年間はさまざまな出来事での厳しい財政難に直面した。商業銀行10行との熾烈な競争、2回の世界大戦や自然災害、国家的財政危機などにも関わらずThe Mauritius Commercial Bank Limitedは活動を拡大することに成功し、その資産を3倍にした。1920年には初めての支店をCurepipeに開設した。

1991年から1999年にかけてMCBは、子会社であるBanque Française Commerciale Océan Indien (BFOI)を通して、パリ、レユニオン島、マヨット島、セイシェルでビジネスを開始する。またマダガスカルにおいても現地の法人子会社であるUnion Commercial Bankを通して、モザンビークにおいてはUnião Comercial de Bancosと呼ばれる別の現地法人子会社を通してビジネスを開始した。

2003年初頭、MCBはフランスの金融グループであるソシエテ・ジェネラルと、BFCOIの経営に関して対等なパートナーシップを含む合弁事業契約をまとめた。しかし、セイシェルの資産は協定に含まれず、その銀行運営は今ではMCB (Seychelles)のもとで経営されている。地域内での独自のネットワークを構築するという方針のもとで、グループはインドを含む数カ国で小規模の事業を行い、タンザニアとモルディブでも利益を上げている。

活動拡大に成功したことはMCBの国際的水準に大きな影響を与えた。世界的な銀行のトップ1000、またサブサハラ・アフリカ銀行トップ18(バンカー誌「2009年世界銀行トップ1000」)にランクされるような銀行となり、年刊誌Eco AustralのSpécial 100 premières Entreprises de l’Océan Indienによるとインド洋の地方銀行のなかで最高収益を誇った。2008年10月よりアメリカンエキスプレスカードを発行することが許可された、唯一の現地銀行である。また、サブサハラ・アフリカとインド洋の地域全体において最初にSWIFT(国際銀行間金融通信協会)メンバーコンセントレーターになった。

ムーディーズのMCBに対する預金評価は国の上限のBaa2/P-2で安定しており、金融力評価はDであった。

国内の所在地

9-15 Sir William Newton Street, Port Louis, Mauritius
Tel: (230) 202 5000; Fax: (230) 208 7054

製品・サービス

MCBはさまざまな金融と金融サービスを、個人と法人の顧客に提供している。それらは以下のサービスを含む。貯蓄、定期預金、為替、外貨預金、クレジットカード、デビットカード、銀行保証、貸金庫、機密レポート作成、保管サービス、テレフォンバンキング、インターネットバンキング。車、教育、住宅、個人、その他のローン。プライベートバンキング、リースサービス、夜間金庫、投資、フリート管理、給与計算業務、株式登録機関、秘書サービス、債券回収。さらに、多様な貿易金融商品、海外支払サービス、旅行サービス(外国紙幣、トラベラーズチェック、ビジネスクレジットカード)。

従業員数

2,233名。

財務情報

市場シェア

MCBの国内市場シェアは全体で50%。市場調達資本は2009年6月30日現在で315億モーリシャスルピーになり、モーリシャス証券取引所で最大である。信用供給と現地通貨預金に関しては40%以上のシェアを誇る。

事業目的

「近隣地域および広範な地域において、顧客に選ばれる金融サービス企業であること」

ビジネスモデル

「MCBは商品の多様化と地域発展の両面戦略をとり、ここ4年の間、経営体制、プロセスおよび人材管理の再編成に努めている。

MCBは顧客ニーズにこたえるための変化と革新に適応できうるリーダーの伝統を有している。我々の目標、任務、企業価値はこのスタンスを維持するように設定されている。将来的な成功は、ますます洗練されていくグローバルな顧客に対して、より効率的に、より早く、より低廉な価格で包括的なサービスを顧客に届けられるかどうかの能力にかかっていることを理解している。その目的に向かって銀行は人的と技術的な資源に投資している。

競争戦略の軸は、さらなる商品差別化と営業地域の多様化である。経済停滞という背景において国内市場の成長が限られていることを考慮し、グループは国内の銀行サービスにおいてその市場存在を強化する一方で、二面性を持った多様化のプログラムに着手した。多様化戦略の1つ目は、ノンバンキング金融サービスを通じて国内活動のさらなる拡大を図ることである。我々の目標は、総合的な金融サービスを提供する単一の窓口として貢献することである。その過程でカスタマー・ロイヤルティが強固になることを期待している。2つ目の多様化戦略は、海外市場においての我々の存在を強化してそれを深めることであり、これまでに外国における我が社の子会社が増えていることから分かるように、海外市場は興味深い投資の機会を提供してくれている。

我々の競争戦略の要点は、子会社と関連会社のグループ利益に対する貢献を大幅に増加させることである。最終的には、戦略がうまくいって揺るぎのないものになることがグループ内に好循環を導き、その結果すばらしい人材実現の育成やさらなる株主の評価を上げることで、顧客により高品質のサービスを提供できると強く信じている。そのカギはもちろん、適正なバランスを打ち出すことであり、それに関してMCBは証として167年の業績を持っている。

経済状態の悪化のために用心深く事業を続ける一方で、前年度に、MCBは様々なレベルでのビジネス開発に着手した。その例として、「銀行の銀行」戦略に着実な進展があり、グループはサブサハラ・アフリカにおける最初の「SWIFTメンバーコンセントレーター」となったほか、銀行のカード処理のニーズを踏まえた新しい子会社の設立、信用状の再発行拠点の設立といった重要な成果を得た。

別の段階で、収入源を多角化させるための戦略に沿って、MCBは近年、債務不履行のリスクを避けたい顧客への信用保険サービスを提供するために、地方の保険会社と合弁事業を結んだ。」

株主・所有権益

政府との関係・社会貢献

モーリシャスは金融部門を強化するため、政策と法改正に取り組んでいる。改革の結果、モーリシャス中央銀行(BOM)と金融サービス委員会(FSC)の2つが監督機関となった。BOMは銀行部門の規制、ライセンス管理、監督を担当する。BOMは、銀行監督機関オフショアグループ(OGBS)と東アフリカ銀行監督機関グループの一部である。FSCは非銀行金融機関の規制調整、ライセンス監理および監督を行う。

国際的な金融センターとしてのモーリシャスの評判を高めるために、マネーロンダリングとテロ資金調達に関する新しい法的枠組みとして、2002年に金融情報とマネーロンダリング防止(FIAML)法およびその規則が、2003年にマネーロンダリング防止(雑則)法が、2002年に買収防止法とテロ資金防止法が採択された。

モーリシャスは2004年の銀行業務法(BA)と2004年のモーリシャス中央銀行法(BOMA)(両法案とも2004年から施行)の採用によって、中央銀行と銀行業務に関連した法的枠組みの改革にかなりの進歩がみられた。銀行業務法では一つのライセンスで銀行業務を行えるように改正され、国内銀行と海外投資銀行(以前はそれぞれ1類、2類銀行)とのはっきりとした区別を排除した(2005年6月施行)。

海外銀行は全額出資子会社か支店のどちらかを設立することや、国内銀行と合弁事業をすることができるようになった。海外法人支店によって銀行免許が申請されると、その銀行は少なくとも5年間は銀行業務を行っている“信頼できる国際的な銀行”でなければならず、また海外の監督機関による監督を受ける。どの支店も親会社の金融機関に任命された人物に管理されねばならず、またBOMの認証を受けねばならない。金融機関が子会社(もしくは海外金融グループの関連会社)である場合には、BOMは取締役会の40%が社外取締役によって構成されていることを求める可能性がある。

2008年から2009年の間、金融機関の安定性の維持や、経営環境の緊急事態への対応を目的とした法律や制度の変更が実施され、国内金融部門はその様々な影響を受けた。これは、2009年第2四半期からバーゼルII枠組みの標準的アプローチを完全実施するというBOMの決断と関連しており、その背景には新しい枠組みへ移動するための準備が銀行で行われていたことがある。

金融安定の維持を図るために、モーリシャス中央銀行法は2009年7月に修正された。中央銀行、金融サービス委員会、財務省から構成される金融安定化委員会を設立し、金融システムの健全性を図る定期的な審査の下地を作るためである。

競争委員会は、2009年前半に主に競争抑止的な制限協定を禁止するために設立された。地方納付と決済システムもまた2009年6月に始まり、中央銀行がリアルタイムでのオンラインシステムによる貿易決済を行うことが可能となっている。

国家予算(2009年7月から12月)で発表された後、銀行に影響を及ぼす様々な政策が2009年金融法のもとに宣言された。例えば、公共財政の強化と成長促進政策のサポートを目的として、利益の多い銀行に特別に課される税率は、財政年度である2009年7月1日と2010年1月1日より営業収入の1%と帳簿上の利益の3.4%へと2倍に上乗せされた。加えて、銀行を含めた黒字企業は自社の帳簿上の利益の2%を政府が認定する社会的活動に支出するか、もしくは社会投資に使用されるように当局へ資金を投入することが必要となる。なお、財政年度と暦年を一致させるため政府が決定した後に、2010年1月から適宜税年度を改正する。

製品開発

顧客満足を高めたポートルイス本店(PLMB)の再設計の成功を踏まえ、全支店のネットワークの再構築が進行中であり、5支店の改造が2008年と2009年度に完了した。さらなる快適な環境作りとMCBブランドの強化に加え、新支店のコンセプトは、顧客の銀行への親近感を高めることである。銀行サービスを気楽に便利に利用できることを目標に、特別なサービスを提供する地域や、セルフサービスのロビーの設置、顧客を適当な窓口に案内する係員の配置、行列の管理がなかでも重要である。

MCBはATMを146カ所に増設すること、大きい支店のロビーに「現金のみ」のATMを設置するといったような技術的な進歩、より迅速に現金を引き出す機能の提供、さらにモーリシャスのCaudanとFlic en Flac支店で初の外国為替ATMを始めることなどによってサービスの選択肢を増やした。外国為替ATMは、顧客が外貨をモーリシャスルピーに両替することができ、その結果顧客が外国為替のカウンターやホールに列を作って並ぶ必要はなくなり、原則24時間年中無休で提供できるようになった。