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データ・リソース

kenyaGrundfos Lifelink (Kenya) Limited グルンドフォス・ライフリンク

設立

2008年10月

売上高

1,879.2万ケニア・シリング(2009年ジェトロ推計[※1])

※1 今までに納入した現場では、全て既存の井戸を活用しているため、計算式は以下の通り。システム1式×付加価値税×納入数=270万Ksh×16%×6ヵ所=1,879.2万Ksh

収益

不明

従業員数

7人

会社概要と沿革

グルンドフォス・ライフリンク社(以下、GL社)は、デンマークに本拠を持つGrundfos A/S社[※2]の傘下企業。ミレニアム開発目標の達成に向けて、水供給の分野で貢献するため、2008年に設立された。デンマーク政府機関、「開発途上国のための工業化基金(Industrialization Fund for Developing Countries:IFU)」から590万デンマーク・クローネの出資[※3]を受けている。IFUの出資比率は明らかでないが、GL社によれば、マイナーシェアに留まる。太陽光発電パネルと携帯電話を利用した送金システムを組み合わせることで、コミュニティでの水供給に、環境負荷が小さく、透明性が高く、維持管理コストを最小化したシステムを導入している。システム1式の納入にかかるコスト(既存の井戸を利用)は約270万ケニア・シリング(Ksh、付加価値税(VAT)別)。営業開始以来、2009年3月の初納入を始めとして、4ヵ所に納入実績があり、2009年内に、更に2ヵ所での導入が決まっている。企業自らが、BOP市場をターゲットとしていることを公言している。

※2 Grundofos社は、ポンプメーカーとして、世界45カ国に進出、1万8,500人以上の従業員を雇用している。日本にも静岡県に拠点を持つ。
※3 投資総額は、1,320万デンマーク・クローネ。

参入経緯

参入動機は、多くの途上国で水供給システムの維持管理が欠如した状態であるがゆえに、十分な水の利用ができない状況に対し、世界的なポンプメーカーとして、その解決に役立つという社会的責任、そして、維持管理の問題を安価な手段で解決できれば、大きなビジネスチャンスにもなるとの考えからである。同社がケニアに進出したのは、ケニアの金融インフラが比較的整っていたこと、域内ハブとしての立地条件、デンマークとの二国間関係が良好であること、といった複数の条件を考慮した結果である。但し、親会社グルンドフォス社はケニアに子企業を設置する以前から、地元代理店「デービス・アンド・シャトリフ(Davis and Shirtliff)」を通じて、45年以上に渡り、ケニア国内で水道ポンプなどを販売してきた。

ビジネスモデル

いわゆるイノベーションは、いくつかの形に類型化が可能である。GL社の場合、同社が提供するのは、複数の既存技術の新しい組み合わせによる問題解決である。組み合わせるのは、太陽光パネル、利用者を特定するマイクロチップ、携帯電話を活用した送金システムの3点である。これらの組み合わせにより、半乾燥地帯などのコミュニティを対象に、維持管理が安価で、持続可能な水供給システムを提供する。水供給システムは、太陽光パネルを動力源とする。太陽光パネルは、深井戸からの水の汲み上げや、貯水タンクからの水供給の制御などの動力源となる。マイクロチップは、ボタン状の小型キーホルダーのようなカギの中に組み込まれ、中のPIN番号を通じて利用者を特定する。利用者は、そのカギを機械にかざして暗証番号と購入量を入れる(銀行ATMのイメージ)。すると、機械から水の供給が開始される(ガソリンスタンド給油のイメージ)。料金は事前に携帯電話を活用した送金システムで入金したクレジットから利用分だけ自動的に決済される。利用者が携帯電話送金システムを通じて支払った料金は、コミュニティが持つ銀行口座に自動的に集金され、システム導入にかかる費用の返済や、維持管理サービスの費用に当てられる。

システムの導入に際し、導入するコミュニティから見た想定される資金手当ての方法は、以下の3種類がある。

1. 商業ローンの活用:商業銀行やマイクロクレジット機関から融資を受けるもの。
2. 援助機関やコミュニティ基金の活用:機材導入など一部を援助に頼るが、維持管理費などは、コミュニティ側が負担するもの。
3. 援助への全面依存:全てを援助に頼るもの。

これまで納入されたプロジェクトの場合、資金手当て方法は、全て上記2に当てはまる。水の利用料金は、それぞれのプロジェクト現場での水量や利用者数などの条件次第だが、20リットルあたり2~3ケニア・シリング程度。これは一般的な水料金から比べると、遥かに安価である[※4]。完全な商業導入の場合、資機材は5年程度で代金回収を完了して、コミュニティの資産となる設計をする。機材の保守管理は、原則、1年に1回の点検でよい。しかし、もし異常が発生すれば、自動的にSMSを介して、GL社に通知され、修理工が現地に派遣される。派遣されるのは、長年、親会社グルンドフォス社の代理店を務めている地元企業「デービス・アンド・シャトリフ」の修理工である。

※4 水供給会社から購入する場合(複数家庭が共同で水を購入する。後部に水タンクを持つトラックが来て、家庭用貯水タンクに水を供給する)、通常期で20リットル当り、5~10Ksh程度。干ばつなど、水不足になると値上がる。

ビジネス拡大の上での課題

水の扱いを規定する「2002年水法(Water Act 2002)」が十分でなく、法的枠組みに曖昧さが残るため、調整コストがかかる。また、井戸がどこでどれだけ掘られたか、公式な記録がない。需要側では、消費者によっては雨が降れば雨水を使うため、天候により水需要(が変動し、売上に響くリスクを常に抱える。また、人間の飲料水には課金制度が受け入れられても、家畜の飲用には受け入れられない傾向があるなど、初期想定から異なる事態に直面することがある。

将来展望

まずは、ケニアでの拡大を目指す。しかし、将来的には近隣諸国、さらにアジアなど、他地域でも同様のビジネス展開を図りたいと考えている。ケニアでは、携帯電話を活用した送金システムを組み合わせたが、携帯電話を活用した送金サービスの存在は、新規参入への前提条件とは捉えていない。進出地での各種条件を考慮にいれながら、柔軟にモデルを組み立てる意向である。

特徴

太陽光発電パネルと携帯電話を利用した送金システムを組み合わせることで、水の利用権を巡る汚職やトラブルを回避しつつ、メインテナンスにかかるコストも省力化した、画期的な企業である。GL社によると、このサービス形態は世界初だという。BOP市場へのアプローチとしても、筆者が知り得る限りにおいては、同様のモデルは従来にない。

重要な教訓は、GL社は新規参入企業であるが、45年に渡る地元代理店との良好な関係があってこその参入である点だ。同社も、対象市場への調査に当たり、地元代理店が持つローカルナレッジが果たした役割の大きさを面談時に認めている。地元代理店からの示唆があったために、GL社は、コミュニティにおいて、個人識別の要諦をなすカギは「女性の方が管理に適している」といった細かい点にも理解を有する。また、システムの維持管理も親会社グルンドフォスの長年の代理店に委託している。アウトソースの活用で、GL社自体は、従業員7人という身軽さを保っている。BOP市場参入に必要な地元知識と固定費を持たないという意味で、親会社が築いた強力な地元企業との提携を十二分に活用していると言えよう。

ビジネスコンセプトは、非常に良く出来ている。但し、ビジネスとしての持続性は未知数である。特にコミュニティが援助に頼らずに、課金制度のある水システムを導入する可能性があるのかについては疑問が残る。純粋ビジネスとして考える場合、コミュニティの利用人数・利用量にもよるが、導入費用に対して、コスト回収ができるのかは判断できない。水のコストは、諸条件によりプロジェクトごとに違うが、機材導入費用に対し、面談時に伝えられた一般的なコストは5年で費用を回収するには安すぎるように思われる。同社の想定では、起業家が融資などを活用しながら、自費でシステムを導入して資金回収するモデルも考えられている。しかし、現在までに導入されたのは全て援助機関が資機材導入を支援しており、援助機関の支援なしには導入が進まない可能性もあろう。

(情報源)
グルンドフォス・ライフリンク社面談(Mr.Lars Laursen, GM)2009年11月11日実施
グルンドフォス・ライフリンク社ウェブサイト(2009年11月18日アクセス)
( http://net.grundfos.com/doc/webnet/lifelink/int/index.html )
「開発途上国のための工業化基金」ウェブサイト(2009年11月18日アクセス)
( http://www.ifu.dk/en )と( http://www.ifu.dk/globalsite.aspx?ObjectId=0D3166EB-86C0-4545-AD5F-3CC85E535183 )