文字サイズ

標準
国・テーマ インデックス
データ・リソース

kenyaSiliverbird (K) Limited シルバーバード

設立

2008年10月

売上高

非開示

収益

不明

従業員数

150人(グループ全体では1,000人)

会社概要と沿革

シルバーバード社(Silverbird (K) Limited)は、ナイジェリアに出自を持つ総合メディア・不動産企業のケニアにおける子会社である[※1]。現在、本社は、モーリシャスに置き、取締役の国籍は、ナイジェリア、南アフリカ共和国(以下、南ア)、ガーナ、ザンビアが占める。本社はモーリシャスだが、会計や調達などのバックオフィスはケニアに設置している。ビジネスを展開する国は、ナイジェリア、ガーナ(2008年11月進出)、ケニア。これに加えて、ザンビアにも進出に向けて土地を確保(2009年初頭)した。従業員数は、グループ全体で約1,000人[※2]。ケニアでは150人ほどを雇用するが、その多くは一時雇用者である。正社員はグループ全体でも60名ほどに留まる。ナイジェリアでは、ラジオ放送(リズムFM)やテレビ放送(シルバーバードテレビジョン)、映画館運営などの他、ショッピングモールも運営する。同社のスクリーン数は6都市に51。アフリカ域内で映画館を主軸に据えた企業としては、スター・キンコル(Ster Kinekor、南ア、スクリーン数約600)、ニュー・メトロ(Nu-Metro、同、約230)に次ぐ、3番手にあたる。ケニア国内での市場シェアは、76%。国内の主な競合相手は、フォックスグループ[※3](Fox Theatres (E.A.) Ltd)と、モンバサにある独立系映画館が主な競合相手である。

※1 設立者は、80年代初頭に米国ブラックミュージック音楽協会(Black Music Association of America)で取締役を務めたナイジェリア人(2009年3月13日付ビジネスデイリー紙)。
※2 1,000人には、ナイジェリアでのショッピングモール運営にかかるスタッフなどを含む。
※3 ナイロビのショッピングセンター(サリットセンター)内など、国内6館を運営。

参入経緯

ケニアへは、南アの出版社Avusa Ltd傘下のニュー・メトロがケニアから撤退するのを受けて、2008年10月にその資産を買収して進出した[※4]。この買収により、ナイロビ市内4ヵ所、キスム市内1ヵ所のショッピングモールに併設する映画館の運営を開始した。ニュー・メトロにとっては、十分に期待した利益を得られなかった模様だ。ケニアの映画業界は、いったん底打ちして反転した矢先に2007年末の選挙とその後の混乱を受けて、再び客足が遠のいたところであったため、ニュー・メトロには不運なタイミングであった。シルバーバード社は、ケニアではまだ赤字だが、近く黒字転換を見込める状態である。ナイジェリアとガーナでは黒字を確保、ザンビアでは開設直後(2012年)から黒字転換を見込む。

※4 買収額の総額は明らかでない。しかし、同時期に、ニュー・メトロはナイジェリアからも撤退しており、ケニアとナイジェリアで併せて3,700万ドルとの報道がある。ナイジェリア資産を買収したのは「Capital Alliance Private Equity」(2009年3月13日ビジネスデイリー紙)。

ビジネスモデル

シルバーバード社が目指すのは、映画館運営と映画配給を主軸に据えた、世界標準の汎アフリカ・エンターテイメント企業である。映画館運営にあたっては、一部に本や音楽CD、ゲーム機などの販売店舗も併設している。ニュー・メトロも同様の戦略を採っていたが、シルバーバード社では、アップル社のIT関連製品も扱う。映画配給では、ケニアにおけるワーナーブラザーズ、21センチュリー・フォックス、ディズニーの配給元でもある。本や音楽CDなどのメディアストアでは、ウェブ上で無料会員クラブを導入している。会員クラブは、子供やビジネスパーソンなどの対象別、ジャズや詩のようにテーマ別に分けられており、各会員の関心に応じたニュースレターの発行や、講演会などの各種イベントを実施、割引特典の供与などの手法で、顧客の囲い込みを図っている。同社が成功と評するクラシック音楽の場合でも、会員数は200名規模と限定的だ。しかし、新譜発売の案内などに対して、購入比率は高いと言い、効果的なマーケティング手段と認識されている。

対象市場は、人口の35%相当と推計している中間層である。性別と年齢別では、25~60歳までの女性がエンターテイメントへの支出に敏感なので重要視している。その他、銀行従業員や経営層などの熟練労働者、国際機関などの専門家なども重要な顧客である。長期休暇シーズンは里帰りする在外ケニア人の来館も来客数を押し上げる。これらの中で、一番重視するのは、国内中間層であり、その対象は増加している。南アでは、映画一本鑑賞するのに約2.5ドルだが、ケニアでは約6ドルかかる。ガーナは約5.5ドル、ザンビアは約5ドル、ナイジェリアでは約10ドル程度。それにもかかわらず、映画鑑賞できる顧客が増えている。ナイジェリアだけは、少し特別で、プレミアムシートで一人50ドルを支払って鑑賞する顧客層がいる。プレミアムシートでは、スナックやシャンパンの無料サービスがある。特別な扱いを受けるステータス感がナイジェリア人の間では人気がある。

ナイジェリアからケニアに本拠地を移転した理由は、本社がナイジェリアにあると国際的な信用(金融面を含む)が得られないためである。ケニアへのバックオフィス機能の設置は、各国への移動が容易なこと、比較的、金融部門が整っていること、人材が優秀なこと、欧米の調達先パートナーにとってもアクセスし易いことが決め手となっている。ケニアにバックオフィスを移転したことで、グループ全体では、利益を10%程度改善する効果があったと見ている。運営上、ガーナとザンビアには、ケニア人スタッフを派遣して運営にあたらせており、今後もケニア人の活用を進めていくことを取締役会で決定している。

ビジネス拡大に向けての課題

映画配給に関しては、配給元とは言え、どこでいつ何を上映するかの決定権はない。自社が展開する映画館でも、映画制作会社の意向が強く働く。上映用複写テープは、通常、映画制作会社からケニアに3本送られる。内、1本がシルバーバード社向けである。そのため、人気作品も運営する映画館での同時上映ができず、時期をずらしての上映となる。これは、機会喪失を意味する。グローバル化が進み、ケニアやアフリカ各国においても、世界で封切られた作品を同時期に観たいとの要望は強い。

広い意味で、海賊版対策も必要。なぜなら、インド映画の製作会社には、海賊版対策への保証も含め、1本あたり1万ドル程度を支払う必要がある(ハリウッド映画は5,000ドル程度)からである。インド系ケニア人は裕福で、家族(大人数)で連れ立って鑑賞する傾向がある。インド映画は、その調達コストゆえに収益分岐点が高い。上映ラインナップには、常時インド映画も必要だが、収益率は高くない(需要側からは、インド映画は、限られた数の富裕層(インド系ケニア人)には訴求力がある。しかし、ハリウッド映画の方が、やはりその他の層も含めて一般に訴求力が高く、多くの観客を見込める)。

ナイジェリアでビジネスすること自体が難しい。シルバーバード社が展開する国の中では、ナイジェリアは最もビジネスが難しいが、同時に最も収益が上がる国でもある。ナイジェリアでは、港での輸入貨物の通関も2~3ヵ月かかることがザラにある。通関手続きがスムーズな南アのダーバン港とは比較にならないほど遅い。ケニアのモンバサ港であっても通関は2~3週間で済む。本やCDなど販売グッズの品揃えにも大きく影響する。賃貸コストも大きな壁。一般に、ナイジェリアの賃料はケニアの3倍[※5]。港からの物流コストに始まり、賃料に至るまで、ほぼ全ての面でコストが高い。映画館を併設するショッピングモールの建設・運営を始めたのは、自ら投資する方が(賃貸交渉にかかる時間も含めて)結果的に安くつくと判断したからである。

ケニアでは、ニュー・メトロからのブランド転換に時間がかかっている。ニュー・メトロに利権を持っていたステークホルダーとの交渉が長引き、まだ完全にブランドを移行できていない。移行完了が、金融機関からの融資審査など、資金流動性に影響する。

※5 面談時に以下の参考価格に言及。ケニアの場合、1平方メートルあたり賃料は、月額16~20ドル。一方、ナイジェリアは50~100ドル。

将来展望

映画館は、将来的にはデジタル化が避けられない。映像品質そのものは、高画質テレビに劣るため、究極的には、デジタル化の次に3Dデジタルへの移行が業界として進む方向である。まずは、シルバーバード社もケニア国内で観客数の少ない映画館を閉鎖しつつ、観客数の多い映画館ではデジタル化を進める。

メディアストアの展開も加速していく。既にケニアではジョモ・ケニヤッタ国際空港内に店舗を開設済みで、今後アフリカ域内の空港に順次進出を検討中である。ストアでは、メディア機器の取り扱い品目を増やし、企業とのタイアップも強化していきたい。韓国LGなどは非常に積極的。映画で登場した携帯電話や電子機器などを映画鑑賞後に即座に買い求める消費行動もみられるため、家電メーカーにとっても重要な販売網となり得る。

店舗の魅力を高める努力も継続していく。現在、ナイジェリア同様、ケニアでもラジオ局とテレビ局の展開を予定して放送免許の申請中である。ラジオ局の免許取得後は、ショッピングモール内にDJスペースを設け、来場者からお気に入りの曲のリクエストを受け付けるなどして、集客効果を高める予定である。また、お酒を提供するバースペースの設置も検討中。ナイジェリアでは、バースペースの設置が好評である。その他、携帯電話の販売、コーヒーショップ、アイスクリームなどへと多品種展開を図る。

特徴

シルバーバード社は、アフリカでは、南アが先行する映画館を軸にしたエンターテイメント・メディア事業を南ア以外で展開しつつ、国横断的な系列化に取り組む稀有な企業である。その事業運営では、極めて合理的な経営判断に基づいていることが観察できる。

まずケニアへの進出動機としては、ニュー・メトロの撤退ありきであった。面談時、シルバーバード社は、ニュー・メトロとの買収交渉で大きく価格引下げに成功したことを認めており、既存施設の買収により初期費用を大きく抑えることに成功した。一方、ナイジェリアでは、賃貸料を巡る交渉にかかる費用や賃料の絶対水準の高さを勘案して、映画館を併設するショッピングモールの建設まで参入した。

直接利益を生まない事務機能の移転も合理性を貫く。モーリシャスに本社を置くのは、税金対策とみて間違いない。バックオフィスをケニアに置くのは、物流・人材・金融・パートナーからの信用などを考慮した結果である。設立者を含め、取締役にはケニア人はいない(今後、採用予定)。そこには取締役がそれぞれの出自に拘らず、ビジネスに徹する様子が伺える。いずれもコスト低減を最優先した結果であろう。

店舗価値向上にも真摯に取り組む。ナイジェリアで映画館建設に際し、ショッピングモール併設にしたのは、映画館単館よりも集客効果が見込めるからであろう。映画館でもメディアストアの併設や、ラジオDJブースの設置は、集客力を高める効果がある。来館者の視点から、わざわざ出かけてきた機会を最大限利用して、居心地よく支出できる空間創出にも注力している。これが、バーや喫茶スペースの設置につながっている。

顧客戦略としては、万人受けするハリウッド映画を主力としながらも、常時インド映画も上映し、少数ながら消費力のある顧客を取りこぼししてない点も指摘できる。

これまで、映画は人気のある娯楽であったが、もっぱら多くて数館を運営する独立事業者が乱立割拠する状態だったと言える。映画業界としては、海賊版ビデオやDVDとの競合にも晒されてきた。何より映画館に来場できる消費者が少なかった。事業環境を考えると、小規模では設備更新もままならない。顧客層の中心となる中間層が増加する中で、国横断的に規模拡大を進めることで、設備投資が可能になっている側面もあると推察される。

(参考情報)
シルバーバード・アフリカ・ホールディングス社面談(Mr.Anthony Starfield-Ward, CEO)2009年11月17日実施
シルバーバード社ウェブサイト(2009年10月13日アクセス) http://www.silverbird.co.ke/