kenyaUnilever Tea Kenya (UTKL) ユニリーバ紅茶ケニア

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

ユニリーバ紅茶ケニア(UTKL: Unilever Tea Kenya Ltd)は英国=オランダのコングロマリットであるユニリーバの子会社で、主に輸出用に紅茶を生産している。

UTKLはBrooke Bond Kenya(BBK)として創業された。当時カルカッタのブルックボンドを担当していたTom Rutterは、1914年にケニアのサファリで狩猟を楽しんだ際、この国が茶の栽培にとって理想的であることに気付いた。1922年にBBK営業所がモンバサに開かれ、1924年にはLimuruで約400ヘクタールの土地を取得、Mabroukie紅茶工場を建てた。

1925年、Kenya Tea Company Limitedが100万株を登記。1927年には、BBKによってケニア初の本格的な紅茶工場がKerengaに完成した。1970年代になるとBBKは、茶農園、工場、ホテルに進出。 2004年に社名をUnilever Tea Kenya Ltd. に変更した。

1920年から1939年にかけてBrooke Bondは、ケニア紅茶の生産、販売、流通にかかわるすべての主要部門を傘下に収めた。1947年から1960年にかけ、Brook Bondは、高収量品種、紅茶の品質を向上させるための加工技術、摘み取り技術に関する研究を進めて、品質と労働生産性を高めることに成功した。同社がKerichoに設立したTea Research Instituteが、これらの研究を行った。

UTKLは現在ケニアで最も大きい企業の1つ。外貨獲得高は1972年の25万ケニアシリング(Ksh)から、現在では55億Kshにまで増えた。総土地資産は16223エーカー。20の茶農園と、年間平均3200万kgの紅茶の製造している8工場をもつ。

2009年1月、Brooke Bondが持ち株比率を97.65%に引き上げた後、Unilever Teaはナイロビ証券取引所の上場を取り下げた。これは、全ての上場会社は最低25%の現地所有がなくてはならないという要求を満たさなくなったからである。

ユニリーバは405億ユーロの世界売り上げを有し、世界約100カ国で174000人を雇用している。ユニリーバは取引高の約半分を、アジア、アフリカ、中東欧、ラテンアメリカの開発途上国、新興経済国で達成している。

国内の所在地

Nakuru Kericho Highway, Kericho, Kenya: Phone: (25) 229-951

製品・サービス

欧州、米国、パキスタン、日本、中東、オーストラリア向けに、紅茶、緑茶、スペシャリティー紅茶を生育、加工、包装して輸出。

従業員数

20,000人を雇用する、一社ではケニア最大の民間部門雇用者。

財務情報

2008年6月30日までの半期、UTKLは前年同期における1200万Kshと比べ売り上げが18%低下した。2008年前半6カ月の税引後利益は150万Kshであった。在庫は2008年前半12%増加したが、売掛金は44%上昇した。

市場シェア

ケニアはアフリカの最大の紅茶生産国で、紅茶は国の主要な輸出用作物。UTKLは世界で3番目に大きな紅茶会社である。ケニア最大の紅茶生産者であり、ケニアの茶生産者にとっては最大の民間の買い手である。

ケニアは2008年に3億4500万kgの茶を生産した。リプトンとユニリーバの2社が主要輸出業者。2007年第1四半期には1720万kg、2008年同期には1480万kgを買い付けている。

事業目的

「わが社の長期的目標は、株主利益率において、消費財企業上位3社のなかに入ることである」

ビジネスモデル

魅力的で競争上優位にある市場、すなわち、活気に満ちた発展途上の新興市場に資源を集中的に投下した。継続して収益性と生産性を高めていく。基本方針は「One Unilever」プログラムの下での組織の簡素化、集中と選択を通したブランド・ポートフォリオの強化、それにサプライチェーンの合理化である。

新興国戦略としては、さまざまな所得水準にある新興国の消費者に対して商品を浸透させ、消費量を増やし、消費者の所得向上にあわせて変化するニーズのなかで、より高い付加価値製品へとシフトしていく。 商品とブランドを維持発展させ、同時に新たな成長の機会のある国々で新たにブランドと商品を確立し、積極的に投資していく。

2008年には事業管轄地域を再編して、これまで西欧地域と一体に管轄されていた中東欧での事業を、アジア・アフリカ事業と一体化していくことにした。 これは開発途上地域に戦略的重点をおくことの表れである。

各地域には、それぞれの担当地域の現地に根ざした営業で利益をあげることに対し責任がもたされている。顧客との関係を築いて発展させること、地元のサプライチェーンを開発して顧客サービスと資産の収益性を向上させること、ブランド力を高めて効果的なイノベーションを実現することを通じて、各市場で優位にたつことをめざす。

また、「生活の活力」(Vitality to Life)をもたらす付加価値をもった製品を消費者に提供する。消費者に信頼され、選ばれる、魅力的なブランドを創造して育成していくために革新的なコミュニケーションキャンペーンを実施し、製品カテゴリー全体で新たな製品コンセプトを開発する。高い品質を維持しながら、コストと資産ベースでの採算性を最適化する。

UTKLの所有構造の変更によって、より高いレベルの効率性をする。生産性と収益を向上させていくためのグループ内シナジー効果が期待できる。

株主・所有権益

UKTLはユニリーバの子会社であり、Brooke Bondが少数株を買い取ったことで上場を取り下げた。Capital Markets Authorityの承認をえてナイロビ証券取引所から自発的に撤退することを株主が決定したものである。Brooke Bondは持ち高比率を97.65%まで増加させるため、UTKL575万の株式に対し1株当たり62Ksh(0.79USドル)を支払うことにした。

UTKLの全額出資子会社にはMabroukie Tea、Coffee EstatesLimited、KenyaTea Blenders Limited、Brooke Bond Mombassa Limited、The Buret Tea Company Limited、KitcoLimitedがある。また、緑茶を生産するLimuru Tea Company Limitedの52%株式を持つ。

政府との関係・社会貢献

2007年に、ナイロビ証券取引所上場企業における外国所有権(個人又は法人)の制限が75%から60%まで引き下げられた。これによって主要なケニア企業(Barclays Bank、Total Kenyaなど)は、新規の外国人投資家の参入を受けられるようになった。

2008年に政府は、監督機関であるTea Board of Kenyaに、農場からティーカップにいたる産業の総合管理権を与えるとの決定を行った。またTea (Licensing, Regulation and Trade) Regulations 2008は、Tea Board of Kenyaに対して紅茶栽培者、生産者、包装業者、バイヤー、輸出業者、輸入業者、倉庫業者の認可と規制権限を与えた。

Tea Board of Kenyaによる認可は毎年更新可能だが、一定の条件を満たさない場合は、大臣との協議のもとで認可の取り消し、停止、あるいは認可条件の変更が行われる。企業は、毎月毎年の実績を報告するよう求められている。

ケニア政府は紅茶産業の競争力を向上させるために多くの方策を講じている。 2007年にキバキ大統領は「ケニアビジョン2030」を発表したが、その目標は、ケニアを2030年までに中所得工業国に転換することである。2つの部門戦略が紅茶産業にも関係している。ひとつは、2008年に発表されたStrategy for Revitalizing Agriculture (SRA) 2004-14で、これは、農業部門を収益力のある商業指向の競争力があるセクターに変えることをめざしている。

もうひとつは2003-2008 National Export Strategyで、これは、既存の輸出市場を維持発展させるとともに新しい市場を開拓し、伝統的輸出品に依存することなく輸出多角化を進め、市場参入を促して競争力を高めていくなど、ケニアの輸出実績を向上していくことをめざしている。 紅茶とコーヒー産業は14の重点部門に入っている。

ケニアは紅茶加工業と包装業のために手厚い奨励策をもっており、VATの免除、10年間の法人税、所得税、源泉徴収税の免除などを含んでいる。ケニアの輸出加工区は、輸出指向の投資家に追加奨励策を提供している。その一方でケニアは税率が高く、投入財、生産、サービスにさまざまな税金が課せられている。紅茶や紅茶製品にかかる輸入税は、1999年の15%から、現在は25%に上がっている。

ユニリーバは、KenyaTea Development Agency(KTDA)、イギリスの国際開発省、オランダのWageningen University、ETC East Africa、ケニアのTea Research Foundation of Kenyaと連携して、紅茶栽培分野での小農育成に貢献している。

生産者がKTDAの4工場に拠点を置くフィールド学校では現地指導が提供されている。簿記や安全衛生のコースのほか、収量を上げるための実地指導が行われている。 2006年3月に始まって2008年12月に終了した3年のプロジェクトでは、生産者の紅茶収穫高を平均で5~15%向上させた。