kenyaMumias Sugar (MSC) ムミアス砂糖会社

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

1967年にケニア政府は、ブッカー農業技術サービス社(Booker Agriculture and Technical Services)に、ムミアス(Mumias)におけるサトウキビ栽培事業のフィージビリティー調査を委託し、その後パイロット・プロジェクトを開始するよう依頼した。当時ムミアスは、農民がほそぼそと自給用の食用作物を育て、残りの土地は放牧用に使われているだけの未開発地域で、土地の利用は不十分なものだった。相対的な遠隔さと貧弱なコミュニケーションが、活発な市場経済の発展を妨げていた。

Nucleus農場と現地農民の双方からのサトウキビ供給に依存した工場を建設することで、ムミアスに収益力のある砂糖スキームを確立するのは可能と思われた。政府は調査結果を承認し、プロジェクトを実行するための機関として1971年7月1日にムミアス砂糖会社(Mumias Sugar Company: MSC)を設立した。政府が過半数の株((71%)を保持し、英国連邦開発公社(Commonwealth Development Corporation)が17%、ケニア商業金融会社(Kenya Commercial Finance Company)が5%、ブッカーマコンネル(Booker McConnel)が4%、東アフリカ開発銀行(East African Development Bank )が3%を分担出資することになった。

1979年にMSCは、1時間当たりのサトウキビ加工能力を300トンまで拡張した。これは、新たに新工場を建設するに等しい拡張であった。

1997年には工場の合理化を実行し、1日あたりのサトウキビ加工能力が7,000トンまで増加し、サッカロース抽出の効率は82%から現在の86%まで上がった。

2000年には全国的な流通販売ネットワークが確立され、ケニア電力・照明会社(Kenya Power and lighting Company)に年間10 000MWhの電力を販売する契約が結ばれた。

2001年には私企業から公社に転換され、ナイロビ証券取引所に上場された。ブッカーテイト(Booker Tate)との経営委託契約は2003年に失効した。
2006年には4000万USドルの発電設備を導入するためインドのAvant Garde Engineers and Consultants (Pty) Ltd と協定を結んだ。これにより発電能力を35MWまで引き上げ、最大25MWを国に販売できるようになる。

国内の所在地

Mumias District, Western Province, Telkom Landline: +254 56 641620, 641621; Telkom Wireless: +254 20 2037174/94, 20 8028344/5, 20 8006013; Safaricom E1 link: 0711 094 000; Cell: +254 722 203891-5, 734 600334/5; Fax: +254 56 641234

製品・サービス

砂糖の製造と販売。原料であるサトウキビの主たる供給源は、400 km²以上の耕作地を有する5万以上の登録裁培者。また、生産性の高いパーム油のハイブリッド品種の生産実験を行っており、加えて電力を販売している。

従業員数

正規社員1,606人、契約社員129人。

財務情報

2008年の総収入は143億500万ケニアシリング(Ksh)であり、前年の128億6500万Kshを11%上回った。サトウキビ加工量は前年実績を14%上回る240万8141トン(2007年は211万8563トン)。製造された砂糖は26万5263トンで、前年を22%上回った(2007年は21万7200トン)。EU向け2000トンを含む2万5000トンの砂糖が輸出された。

2008年の税引き前利益は15億8900万Kshで、前年を17%下回った。税引き後利益は対前年12.9%減の12億1383万7000 Ksh(2007年は 13億9361万1000 Ksh)。

Nucleus農場と契約栽培者からそれぞれ、20万7038トンと220万164トンのサトウキビが供給された。このうち6万7977トンがNzoia砂糖地区からであった。Nucleus農場では2,773ヘクタール、契約栽培者においては2万8407ヘクタールの畑から収穫された。単位収量は、Nucleusが1ヘクタール当たり74.7トン、契約農家が72.1トンであった。

ここ5年間の加工されたサトウキビと砂糖生産

ケニアの主要工場における現在の砂糖生産量:
工場 砂糖生産(トン) 工場別比率
Nzoia 67,000 13.19%
Sony 79,000 15.55%
Chemelil 43,000 8.46%
Muhoroni 26,000 5.12%
West Kenya 23,000 4.53%
Mumias Sugar 270,000 53.15%
合計 508,000 100%

市場シェア

全国の指定流通業者を通じてケニア国内の砂糖の60%を供給している。また、国内最大の製造加工業者である。

事業目的

砂糖及びエネルギー分野での卓越した製造加工業者であること。

ビジネスモデル

2008年に2008-2012年期間における戦略計画を立案した。その戦略には以下が含まれている:

  • パック入り砂糖の数量を増加させることによるブランドの向上
  • 製品種の増強
  • 製品とパッケージの品質の改良による競争力の維持
  • 健康改善効果を高めるため栄養素を付加した糖分強化製品を研究開発する
  • 黒砂糖市場への参入
  • 流通網の合理化、経営効率の強化
  • 地域別経営戦略の導入
  • 経費の削減と無駄の排除
  • より良いサトウキビ農業を確立するための収穫高の向上
  • 発電事業やエタノール生産への多角化
  • スワジランド、マラウィ、ザンビア、ジンバブエといったCOMESA所属の南部アフリカ諸国製造業者との戦略的提携
  • 新しいグリーンフィールド事業への拡大
  • 小規模砂糖業者の吸収統合

また、生産コストを削減するため生産効率の向上をめざし、工場と製造工程の近代化に積極的に投資している。トンあたりの生産コストは31,000シリングから27,000シリングに低下した。

株主・所有権益

主たる株主

  • Permanent Secretary, Treasury -102,000,000 20.00
  • Kenya Commercial Bank Limited -15,500,000 3.04
  • The Jubilee Insurance Company Limited - 9,562,834 1.88
  • Kanouti Trustees - 7,478,701 1.47
  • Barclays (Kenya) Nominees Limited A/C 1853 - 4,341,531 0.85
  • Kenya Commercial Bank Nominees A/C 769G - 4,045,127 0.79
  • Barclays (Kenya) Nominees Limited A/C 1256 - 3,926,479 0.77
  • Barclays (Kenya) Nominees Limited Non-Resident A/C 9318 - 3,649,900 0.72
  • Kenya commercial Bank Nominees Limited A/C 744A - 3,049,648 0.60
  • Insurance Company of East Africa Limited – Pooled - 2,255,405 0.44
  • Others - 354,190,375 69.45

政府との関係・社会貢献

国産砂糖には、利益を加えた後(工場渡し価格)に課税され、輸入砂糖には原価と保険に対して課税される。国内製造業者は投入財としてサトウキビ、労働、ディーゼルなど70%の非課税分を含んでいるため、販売時点では100%の付加価値税(VAT)の請求ができない。一方輸入業者は100%還付の請求ができる。付加価値税の請求が出来ないので、国内にて生産される砂糖の原価がそれだけ高くなる。 また、付加価値税はSugar Development Levy (SDL)にも課税される。

2009年には付加価値税、法人税、SDL課税、及びその他の税金合わせて32億Shs以上を納税した(2008年は34億Shs)。 2009年の4億1700万Shsの税金払い戻しは発電プロジェクトに対する150%の投資控除から行われた。

政府はCOMESA(東南部アフリカ共同市場)緊急輸入制限措置延長のための勧告の一部として、砂糖公社の競争力を高めるため民営化しつつある。

Sugar (Imports, Exports and By-product) Regulations 2008 (LN 114 of 2008)が砂糖の輸入規制を図るため制定されているが、輸入品との競争は深刻である。2008年には農業大臣が、砂糖の輸入・輸出双方を、地域及び国際貿易議定書に反して禁止した。

生物燃料法:

ケニアはサトウキビからのエタノール生産に大きな将来性を有しているが、産業の発展を促す税制上の優遇措置や法的な枠組みを欠いている。ケニアにおいて、ガソリンと混和するためのエタノールの必要量は6000万リットルであるが、そのうちMumiasは糖蜜から2700万リットルを製造することができる。これを実現するためにはエネルギー政策の見直しが必要で、経営陣はこの点に関して政府と連携していくものと思われる。

COMESA緊急輸入制限措置:

ケニアは東アフリカ共同体関税同盟(East African Community Customs Union、COMESA、Cotonou Partnership Agreement (ACP-EU)、およびWTO協定の加盟国である。ケニアは、国産砂糖の価格競争力を向上させるプログラムを実施するためCOMESA貿易協定に緊急輸入制限措置の適用を申請、認可を受けてこのプログラムは2004年3月から2008年2月までの4年間実施された。

その結果、砂糖産業は著しい成長を達成したが、国内市場を輸入砂糖に開放する準備が整わず、緊急輸入制限措置の4年間再延長を申請する必要があると、2007年に判断された。

ケニアの要求にCOMESAの閣僚協議会は条件付きで同意、緊急輸入制限措置が延長された。その条件とは、ケニアが下記の措置を早急に実施するというものである。

i) 向こう2年間に国有製粉業者の迅速な民営化を行い、産業に対する国のコントロールの完全排除を達成する。
ii) ケニアのサトウキビ栽培者に所得補填を支払う根拠として、重量ではなくサッカロース含有量をベースにした価格・支払い制度を実施すること。
iii) 関税の段階的削減と並行して、砂糖輸入割当数量の着実な増加。

以上が導入されれば、緊急輸入制限措置下の輸入割当数量は今後毎年拡大され、割当数量を上回る輸入量に課せられる関税も毎年引き下げられることになる。

労働規則:

新しい労働法によって多くの課題が発生し、雇用者に対し直接的な財務面での影響を及ぼすことになる。すなわち、
  • 産休を60日間から90日間に拡大(年休を除く)
  • 父親の育児休暇14日間
  • 臨時工を含む全社員対象の保険
  • 負傷による賃金補償を最大96ヵ月まで拡大

製品開発

商品開発には特に以下が含まれる;- パック入り砂糖を増加するための近代的包装工場が新たに認可され、2009年9月30日までに完成する。

  • 製糖工場で作られるバガスから熱と電力を作り出す熱電併給システムプロジェクトが完成して稼動を始めており、発電量が12MWから38MWまで増加した。これにより国の送電網への電力供給を3MWから26MWへと高めた。
  • 熱電併給システム工場での操業から得られる余分な水を使って水瓶詰工場を設立する可能性について調査している。
  • Tana and Athi River Development Authority (TARDA)と共同で行うタナ川流域での統合砂糖プロジェクトに関し、フィージビリティー調査が終了して法的準備が整ったことから、プロジェクトの資金源と事業パートナーを選定中。
  • ムミアスでのエタノール工場設立に関する企業化調査が終了。現在は事業具体化に向けて検討中。
  • 日本カーボンファイナンス会社との10年間の協定(2009-2019)を締結。これにより、初電源をより環境に優しいバガスに切り替えることで「炭素クレジット」を受け取れるようになる。