egyptShell Egypt N.V. シェル・エジプト N.V.

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

シェルのエジプトにおける事業は、地中海のGemsaと紅海のHurghadaの2つ採掘権における開発で、1911年に始まった。シェルは、同国で最大のマーケティング及び販売会社だった。上流部門ではAnglo Egyptian Oil Fields Company (AEO)(シェル50%、ブリティシュペトロリウム50%)が主たる石油生産会社であった。現在、シェル・エジプトが海洋掘削オペレーションを実施しており、中近東及び地中海で最も深い油田が開発されている。

1960年代に、AEO及びエジプトのシェル社は完全に国有化され、事業はEl Nasr Petroleum Company、Misr Petroleum Company、General Petroleum Company (GPC)の3つの国内企業によって代替された。1974年、Deminix及びBPとのパートナシップで、シェル社はエジプトの採掘産業に戻った。1979年に、シェル・エジプト(その後Shell Winning)、2つの採掘権(Badr El DinとSitra)を得て採掘を再開した。80年代初めに開始した掘削によってBadr El DinとSitra油田が発見され、Badr El Din Petroleum Company (Bapetco)の設立に結びついた。2001年初めにシェルはガス販売市場へ参入し、2つの新しい地域ガス販売社に投資した。

現在シェルは、北東地中海(NEMED)及び北西Damietta地域に、3つの陸上油田と2つの海洋油田の採掘を行っており、またWestern Desertの4つの開発リースに関心を示している。新しい油田はNEAGリースの東部で2008年に発見され、直ちに操業が開始された。他の発見はBadr El Din リースでなされた。2008年には、North West Demiatta Extensionの採掘権の10%が売却された。

国内の所在地

6 Hassan El Sheriey St., Off El Nozha St. Heliopolis, Cairo; Tel: 02-22904111; Fax: 02-22901121

製品・サービス

シェル・エジプトの事業領域は、川上の原油・天然ガス採掘から川下の販売まで広がっている。

川下では、Shell Marketing Egypt (SME)が小売店を通じてサービスと製品を販売している。1999年、同社は新規のガス販売業に乗り出した。Natgasの株を購入するとともに、Fayum Gasを設立して、これら2つの会社で産業向け・家庭向けの需要家に直接ガスを輸送している。

従業員数

世界中で100を超える国及び地域に102,000人の従業員を雇用している。エジプトに関する詳細なデータはない。

財務情報

市場シェア

石油セクターはエジプトの経済成長の主要因であり、2007-2008年にはGDPの15%を占めている。石油とガスは、エジプトの一次エネルギー需要の94%をカバーしている。2008年6月において、エジプトの石油埋蔵量は42億バレルで、アフリカの石油埋蔵量の3.5%に相当する。2007年のエジプト石油生産は71万バレル/日(tbpd)であった。

シェルは、エジプトにおいて10万バレル/日を生産している。それはすべてWestern Desertの陸上油田からのものである。シェルの市場シェアは14%である。

事業目的

「シェル・グループの目的は、石油、ガス、石油製品、化学品及び他のビジネスに、安全に、責任を持って、効率的に従事することであり、また、また移り変わる顧客の要求や増大する世界のエネルギー需要を満たすために、他のエネルギー源の開発に参加することである。我々は競争的な環境において、高いパフォーマンスと、強く長期的に成長するポジションを維持することを求める。」

ビジネスモデル

会社の基本戦略は「上流部門に力を入れることで下流部門の利潤を高める」ことである。戦略は、業界リーダーとしての地位を強化し、既存資産を堅固なものにし、強い財政規律に基づいた長期的な投資によって成長を追求する。

川上のビジネスでは、同社は、技術とノウハウが資源に価値を加える分野で新しいプロジェクトを展開することに集中する。川下のビジネスでは、既存資産から産み出される収益に軸足を置きながら、アジアの急成長している新興マーケットへ運用資産を移動することである。

技術と革新はこれまで通り戦略の核心である。また、技術的専門性がビジネスの成長の決定的な要因と考えている。

世界的不況により、シェルはプロジェクトのうち、特に非従来型の石油資源に係るものを幾つか延期した。しかしながら、長期的な戦略は維持されている。具体的には、シェルが強いパフォーマンスを維持し、かつ継続的な投資を支援することができるようなインフラストラクチャーや専門知識、潜在成長力を持っているコア諸国での事業を維持していくこと;技術と規模があり、バリューチェーンに沿った垂直統合が可能な新しい石油・ガスプロジェクトへの集中;統合されたガス資源の開発、非従来型の石油やガス資源の開発の継続である。

これらテーマの全てについては、原油価格の上昇、新技術の応用による原油回収量の増幅を通じて、より高い潜在性を提供するポートフォリオの機会を追求する。

会社はさらに積極的な探査を追求し続け、そのためにより広い範囲を探査対象としている。重点は大規模な採掘が期待される地域と、これまであまり探索されていないが大きなポテンシャルが見込まれる地域である。シェルは、資産ポートフォリオを改善するため組織的な成長に投資し、買収、売却、アセット・スワップを行う。

シェルは統合的ガスプロジェクトの価値を最大限にするために、探査・生産・販売にわたる自社のプレゼンスを利用して、液化天然ガスにおける業界リーダーとしての地位の強化を目指している。技術の利用はその戦略の中心であり、潜在性や新規性に力点を置いて、研究開発と新技術のテストへの投資を増やし続ける。

株主・所有権益

エジプトのシェル会社(SENVとShell Egypt Deepwater B.V)は、ロイヤルダッチ・シェル/シェル・グループの完全子会社である。

シェル・エジプトはエジプトのガス販売会社Natgasの資本18%を所有している。

採掘権

資産名: North East Mediteranian Deep
所有権: Shell Egypt NV (SENV)-82%、Petronas 18% (Previously SENV 75%、Exxon Mobil 25%
事業会社: SENV
 
資産名: Matruh on/offshore Concession
所有権: SENV 80%、Energy Africa 20%
事業会社: SENV
 
資産名: North East Abu Gharadig
所有権: SENV 52%、Apache 48%
事業会社: Bapetco (JV of Shell)
 
資産名: Rosetta Development lease
所有権: BG 40%; EDISON 20%、SENV 20.4%、SAAG 19.6%、Size: 113 km2
事業会社: Rashpetco
 
資産名: Badr El Din
所有権: SAENV 67%、 SAAG 33%
事業会社: Badr Petroleum Company (Bapetco)
 
資産名: Obaiyed
所有権: SENV 51%、Shell Austria A.G. 49%
事業会社: Bapetco
 
資産名: Northwest DEMIATTA
所有権: SENV 61%、E.ON Ruhrgas 29%、GdF Suez 10%
事業会社: SENV
 
資産名: SITRA DEVELOPMENT LEASE
所有権: SENV 67%; SAAG 33%
事業会社: Bapetco

政府との関係・社会貢献

石油部門への海外投資を促進するために、エジプトは2000年に改革を始めた。これらの中には、プロジェクトの100%所有権、エジプトでの稼得利益の海外送金や資本の引き上げの権利、政府による価格統制の緩和、また流通部門への民間部門の参入許可を含んでいる。さらに、3年間にわたるエネルギー補助金の段階的な廃止をうたった新産業エネルギー政策が、2007年8月に導入された。また政府は、深海域への投資勧誘のため、外国企業により国内市場へ供給されたガスへの支払い額を引上げることに昨年同意した。2009年1月、この部門への投資促進のためエジプトの政府は、自由貿易区のエネルギー集約的企業にたいする免税終了の決定から石油精製工場を除外することを決定した。

石油とガスの採掘権は、エジプト政府とEgyptian General Petroleum Corporation (EGPC)及び外国の石油会社の間で設定された協定に基づいて承認されている。採掘権協定は、国家非常事態の場合に生産のすべてあるいは一部分を要求するエジプト政府の権利を認めており、そのような場合や採掘権協定の違反の場合に適用される手続きと規則を備えている。

EGPCは1962年にエジプトの政府によって設立され、エジプトの石油産業のすべてのセクターに対する全面的な責任を負っており、原油及び他の石油生成物の輸出入に関する独占権を有している。エジプトへの全ての外国投資はEGPCとの合弁企業によって維持され、政府によって監督される。

Egyptian Natural Gas Holding Company (EGAS)は、国外からの採掘投資、LNGタンカーの利用、生産、インフラストラクチャーを管理する。EGASの会長であるMahmoud Latifは以前にシェル・エジプト(Badr El-Din)の会長であった。

シェル・エジプトは、EPGCとともにBapetco社の資本の50%を有する。同社は、エジプトで採掘した全原油とガスを、2つの国有会社であるEgyptian Natural Gas Holding CompanyとEgyptian General Petroleum Corporationに売却している。

1988年に、シェルとEGPCは最初のガス約款に署名した。1996年には、EGPCとシェルがObaiyed油田のガス売買約定(GSA)に署名した。また、Shell Gas B.V.の子会社であるFayum Gas Companyが、EGPCに代わってFayum Governorateに天然ガスを配達することを認める採掘権協定を、シェルはEGPCと結んだ。

Shell Gas B.V.は2001年1月に、National Gas Company(NATGAS)の株式18%を取得した。NATGAS(エジプトの合資会社)は、天然ガス輸送配送網に係る研究、融資、設計、構築、運営、管理の20年間の権利を与えられた。

製品開発

2009年5月に、シェル・エジプトは2009年の第4四半期に北西Damiettaのオフショア油田で掘削を開始すると言明した。また、2009年6月に、発見されたオフショアのガスを使用して液化天然ガスを輸出することを希望することを発表した。
同社は選択肢ションの一つとして、エジプトLNG生産に海上液化ターミナルを導入することを検討している。さらに2009年10月には、エジプトのWestern Desert油田に3億3700万ドルを投資する予定。