congoAnvil Mining Limited

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

会社概要と沿革

Anvil Mining Limited (Anvil社) は銅生産会社で、全株式をトロント証券取引所 (普通株) とオーストラリア証券取引所 (CDIとして) に上場している。Anvil社は、事業会社法 (ノースウエスト・テリトリー) に準じて Dikulushi Resources Limited という名前で2004年1月8日に設立された。2004年3月12日に社名を Anvil Mining Limited に変更した。主たる資産はDRC、ザンビア、フィリピンにあり、依然としてDRCはAnvil社の探査にとって最も重要な国である。Anvil社はDRC内の Kinsevere、Dikulushi、Mutoshi の3ヵ所で操業している。

2008年度の探査プログラムはDRC内のKinsevereの銅・コバルトプロジェクトに的を絞った。KinsevereはDRC国内ではAnvil社最大の投資先となった。このプロジェクトは、大規模露天掘り、大型重液分離プラント、2台の電気アーク炉、溶媒抽出及び電解採取 (SX-EW) 方法で年間60,000トン相当の銅を処理する設備が対象となった。Kinsevereのプラントは2009年3月に運転を再開した。第3四半期末までの銅の目標生産量は、8,900トンであったが、2009年は世界の銅市場価格が下落したため、その開発は中断された。

世界金融危機と銅価格の下落により Dikulushi は2008年12月に待機状態に置かれ、Mutoshi HMSプラントは2008年11月に生産を停止した。Anvil社はMutoshiの探査に深い関心を持っており、Mutoshi ステージ2での溶媒抽出-電解採取 (SX-EX) プラント開発の妥当性を証明するため、掘削プログラムを2008年中に完了させた。(Mutoshi鉱山の一部である) 有名な Kolwez Klippe は、アフリカ・コッパーベルトの中でも生産性の高い地域の一つである。Anvil社 (80%) とGecamines社 (20%) の合弁企業は、従来からDRC銅鉱産物の70%以上を生産してきたKlippeの29%を保有している。

国内の所在地

Anvil Mining Congo SARL, No. 7409, Avenue de la Revolution Lubumbashi, DRC:
Telephone: +61 (8) 6465 2310

Kinsevere:

DRCの北西、カタンガ州の州都ルブンバシの北西30km に位置している。

Dikulushi:

Katanga州の州都ルブンバシの北北東400km、カタンガ州内のLake Mweruの西25km に位置している。

Mutoshi:

DRC、カタンガ州のコルウェッジの東10km に位置している。

製品・サービス

高品位のDikulushi鉱山から銅精鋼と銀精鋼を、そして Mutoshi の選鉱くずの再処理によって銅精鉱を生産している。また Kinsevere の新鉱山からも銅を生産する。Kinsevereでは、2008年8月に初めて電気アーク炉 (EAF) から粗銅の塊が生産された。

従業員数

営業費用及び管理費削減により、従業員数は2008年11月の2,200人から現在は360人にまで削減された。

財務情報

2008年度、Anvil社はDRC内の3つの鉱山から41,354トンの銅と100万オンスの銀を生産した。純売上高は1億9,100万ドルであり、取引高減と銅価格引下げにより連結純売上高は83%減の1,390万ドルであった。

The geographic distribution of the Group’s external revenues

Consolidated Statements of Income and Comprehensive Income

市場シェア

Anvil社はDRCでは大手銅生産会社である。2007年の銅生産高は47,633トンであった。2007年度DRC国内全体の生産量は148,000トンであったため、Anvi社の2007年度の市場シェアは32.1%となった。

事業目的

Anvil社の中期事業目標は、陰極銅の生産を中心とした中堅の銅生産会社に成長することである。また、核となる銅ビジネスを確実に収益性のある事業として発展させ、株主利益の向上に努めることだ。

ビジネスモデル

Anvil社は、金融市場の悪化、世界経済の成長鈍化の影響に直面しているのみならず、DikulushiやMutoshi鉱山の生産量の低迷や、2007年DRC政府から提案された鉱業契約の再検討が長引くという問題にも直面している。これらの状況への対応策の一つとして、草分け的存在であったベースメタル生産会社を2008年第4半期に設立するという戦略を実施した。その結果、KinsevereステージIIとして溶媒抽出・電解採取 (SE‐EW) 工場を運営していくことが可能となった。

この戦略の重要なイニシャティブとして、必要な資金調達が完了する (2009年) まで、KinsevereステージII溶媒抽出・電解採取 (SE‐EW) 工場開発に関わる組立・建設工事を延期する。また、Dikulushi 及び Mutoshi鉱山を中止し、営業及び管理コストの大幅削減、重要な投資以外のすべての設備投資削減、すべての探査活動を中止した。

Anvil社は、引き続きコスト最小化とキャッシュ保存に注力するために、追加のイニシャティブを実施した。その内容は以下のようになる。

  • 2009年5月4日に公募を終了した、当時30,015,000の普通株式を、一株1.15カナダ・ドルで発行した。合計発行額は34,517,250カナダ・ドルであった。
  • 2008年第4半期には従業員数を2,200人から360人に削減したが、さらに150人までにする予定である。
  • 2009年3月には売却可能投資物件の精算手続きに入った。Kinsevereの既存の16700トンの銅精鉱の貯鉱は当初生産処理用であったが、売却することになった。

Anvil社がDRCで成功できた要因は5つある。1つ目は高品質の埋蔵資源である。カタンガ州は世界の銅埋蔵量の10%以上を占めている。Anvil社の全ての銅プロジェクトとその事業の基盤にある資源は銅品位平均3.5%以上である。2つ目は品質の高い探査保有資産である。Anvil社は当初から一貫してDRCの鉱業の再開発に貢献してきたため、先発者として高品質の探査地域を利用できる権利を獲得した。3つ目は段階的開発である。Anvil社の事業、開発、生産はどれも比較的低リスクの実行可能なプロジェクトになっている。結果として的を絞った設備投資によりプロジェクトの拡張、高度化につながっている。4つ目は資力と能力である。Anvil社の事業は、世界中の経験と才能豊かな鉱業の専門家の監督のもと進められてきた。5つ目は持続可能性である。コミュニティーとの関係構築によって、地元NGOを巻き込む何百万ドル相当の地域開発や環境保護、社会責任における持続可能なパートナーシップの形成につながった。

株主・所有権益

Anvil社グループは、DRC内のカタンガ州にあるKinsevere事業の95%の権益と、Dikulushi鉱山の90%の権益、Kolwezi地域にあるMutoshi鉱山の80%の権益を有している。Kolwezi地区にあるAnvil社所有資産は、Anvil社 (80%) とGecamines (20%) の合弁企業Societe Miniere de Kolwezi (SMK) が所有している。

政府との関係・社会貢献

2009年1月、Anvil社はGecamines社 (La Generale des Carrieres et des Mines:銅採掘の国営会社) 及び DRC政府と、Kinsevereのリース契約と Dikulushiの採掘協定に関し合意に至った。またAnvil社とGecamines社は、Kinsevereのリース契約の修正に署名した。Anvil社は、Dikulushi採掘協定の取引条件に関して、変更のない旨の正式な連絡を受けた。

Kinsevere契約修正の一部としてAnvil社は、Gecamines社に第一回目の払い込み分1,000万ドルを支払った。以前Gecaminesが銅精鉱をAnvil社から購入していたため、Anvilへの支払分220万ドルを差引いた金額となった。2回目の払込み500万ドルは2010年1月支払の予定となっている。

Kinsevereプロジェクトは、合わせて29.6km 2 の PE528 と PE 539 という2つの鉱業ライセンスによって成り立っている。これらライセンスの所有者はGecamines社であり、PE528 に関する3つの鉱床のフィージビリティー調査を既に終えている。また、Amck (Anvil社とMining Company Katanga (MCK) との合弁会社) は、Gecamines 及び DRC政府と2009年第1四半期に修正リース契約書に署名した。その契約書には、ロイヤリティの支払計画が記載されており総売上高の2.5%をロイヤリティとしてGecamines に支払うと決められている。Kinsevereのリース契約に記されているAnvil社の持つ95%の権益に関して変更はない。

さらに、Anvil社はGecamines 及び DRC政府とMutoshi合弁会社をつくる契約に署名した。Anvilの持つMutoshiの権益は特定目的合弁会社 (Societe Miniere de Kolwezi SPRL) に属している。契約の重要な項目は以下の5点である。1点目に、Anvil社がMutoshiプロジェクトに持つ権益は80%から70%に減少した。2点目に、Gecaminesの権益は非希薄化ベースで20%から30%に増えた。3点目に、Anvil社は追加で1,440万ドルの参入割増金を支払う。4点目に、Anvil 社はGecaminesに総売上高の2.5%をロイヤルティとして払う。5点目に、753,000トン超えた分の銅は、35ドル/トンのレートに従い現金で支払う。

DRC内で操業するAnvilの子会社は、コンゴ中央銀行の規則に順じて売上金を本国に送金することが求められる。具体的には、子会社は実際に受け取った売上高の40%以上を一定期間本国に送金することが求められる。その売上高は、DRC内の銀行口座にドル建てで入金を行うことになっている。送金された後、これらの資金はAnvil社がDRC内外で責務を履行するために使われる。2009年6月30日時点で、資金の本国送金は義務付けられていない。

製品開発

2009年8月10日、Anvil社はTrafigura Beheer B.V. (Trafiguraは、非鉄金属市場で2番目に大きい取引業者で、年間売上高は2008年9月現在で700億ドルを超えている) と、連結負債と新規株発行で資本提携することに合意した。その資本は、KinsevereステージIIの開発に必要な資金調達の総額2億ドルである。

新株発行の資金調達の条件に基づき、Trafigura はAnvil社の株を私募という形で応募することとする。これによりAnvil社は1億ドルの資金を得る。新株発行の資金調達は2回に分割されて実施され、一回目の分割により。Trafiguraの持株分はAnvil社の普通株発行高の19.9%に、そして、2回目の分割で持株分はその約36.6%になる。もし普通株購入のワラント債を行使すれば、希薄後ベースで約39%に持ち株が増える可能性もある。

さらに、Trafigura は、Anvil社に対し合計1億ドルの融資をすることになっている。融資斡旋の条件は最初の融資実行手続きから5年間である。融資斡旋の残額にはLIBOR (ロンドン銀行間取引金利) に4%加えた金利と、政治リスク補償分に相当する年間金利が発生する。Trafiguraが参画することでAnvil社はKinsevereステージIIの生産開始を2010年後半に、商業生産を2011年に開始することができると予測された。