Société de Limonaderies et de Brasseries d’Afrique (SOLIBRA)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

設立年

1956年

資本金/資本構成

41億8,000万 FCFA
仏BGI社90%、コートジボワール民間10%

売上高

1,049億CFAフラン(FCFA)(2008年)

業種

ビール醸造、炭酸飲料製造

従業員数

600人

会社概要と沿革

SOLIBRAは、西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)地域最大のビール醸造企業で、1956年設立の炭酸飲料製造会社SOCIGLACE(Société de Limonaderies et Glaces d’Abidjan/フランス資本)を前身に持つ。SOCIGLACEは1958年、ベルギーのビール醸造大手BRASSERIE ARTOISの資本参加を通じビール醸造事業に進出したことに伴いSOLIBRAに社名を変更した。1994年に仏Castelグループが子会社BGI(Brasseries et Gracières Internationales)を通じSOLIBRAを買収し、経営権を取得した。以来、同社は着実に事業を拡大させ、1998年にはアビジャンを本拠とするUEMOA地域証券取引所(BRVM)に上場した。Castelグループはワイン、ビール、ソフトドリンクを手掛ける総合飲料事業の世界大手で、ビール醸造世界2位のSABMiller社をはじめ数十社のビール醸造企業と提携を組み、フランス語圏アフリカ諸国を中心に進出し、今日、アフリカの飲料市場でトップの一角を形成する。

SOLIBRA社は国内唯一のビール醸造企業で、経済首都アビジャンと中西部地方ボアフレにビール醸造設備を持つ。アビジャンとボアフレ工場の生産能力はそれぞれ、5,000hl/日、550,000hl/年で、Bock、Flag、Castel、Tuborg、Guinness、Maltaの6ブランドのビールを醸造する。これらビールはそれぞれ330ml、600ml入りの瓶詰で販売されている。同社の看板ブランドであるFlagは1973年に市場に投入されて以来、国内だけでなく、ブルキナファソ、セネガル、マリ、ベナン、トーゴなどUEMOA地域一帯で販売され、地域住民に長らく親しまれてきた人気の高いビールだ。しかし、最近はドイツ、オランダなどから輸入される安い缶ビールとの競合により、同社のビール部門は売上が伸び悩んでいる。ここ数年来の一次産品価格高騰により原料が値上がりし、ビールも値上げを余儀なくされ、現在、Flagの小売価格は600ml入りが650FCFAとなっている。この1年で10%近く値上がりしたことになる。一方、輸入缶ビールは330ml入り250FCFA前後で販売されており、低所得層を中心に割安感がある輸入缶ビールが売れている。

同社はこのほか、コカコーラ、ファンタ、スプライトのライセンス製造、独自ブランドの炭酸飲料水およびミネラルウォーターの製造、ワインのボトリングを行っている。飲料事業で多彩なノウハウを持つ同社は、ブランドと商品の種類を顧客のニーズに合わせ多様化しながら、コストパフォーマンスに優れた製品を提供し、顧客の取り込みに努めている。

同社は飲料事業の先駆者として、潜在性の高い新興市場で独占的利益を得ることで急成長した。特に中核事業であるビール部門は国内唯一のビール醸造企業として、消費の拡大を背景に市場シェアを拡大し急成長を遂げた。現在、コートジボワールの飲料市場で6割のシェアを占める。SOLIBRAのコナテ販売部長によると、飲料水の消費は人口増加、特に若年層と都市部の人口増により拡大するとみている。熱帯性気候で一年中暑いコートジボワールにおいて、飲料の需要は高く、同社の製品は大人から子供まで幅広い層に親しまれているという。

UEMOA地域では共通通貨を基盤とする経済統合が進展しており、関税同盟の発足とともに地域共通市場を視野に入れたビジネス拡大が期待できる。同社はコートジボワールを足場として、経済統合が進展するフランス語圏アフリカ諸国で事業拡大に攻勢をかけ、これら諸国へも進出を果たした。同販売部長は、「1世紀にわたりBGI社で受け継がれてきたビール醸造の高い技術と豊富な経験に裏打ちされた優越性により販売シェアを拡大してきた。今後もリーディング企業として成長を牽引していく」と述べる。同社の強みは高品質に裏打ちされたブランド力。そして人材だという。同社は技術者の養成に力を入れ、高い資格を持つ優秀な人材を多数抱える。現在、安価な輸入品や密輸品との競合で売上が伸び悩むが、今後もコストパフォーマンスに優れた製品で対抗していくとしている。また一貫した流通体制を整備し、商品の安全と品質を保証する。販売会社へは最適なマージンを設定してモチベーションを与えるなど、経営管理の改善も怠らない。飲料市場で厳しい競争が繰り広げられる中、宣伝、広告を効果的に活用し顧客の取り込みを図っている。新聞、雑誌、テレビを通じたメディア広告や、様々なイベント開催で集客活動に力を入れている。定期的に営業部隊が宣伝カーを使って各地で販売プロモーションを展開しており、新規顧客開拓にも余念がない。

SOLIBRAは国際品質基準であるISOの認証を受けており、品質の保証、物流、コストの管理に至るまで徹底して効率化を図っている。品質向上を通じて顧客や市場のニーズに応え、顧客満足度を高めていくとともに、業務効率の改善や組織の価値向上を図っていく方針だ。

コナテ販売部長は事業の阻害要因として、市場に出回る密輸品との不当競争を挙げる。不法製造、密輸の横行により、中毒死の事故や健康を害するケースも報告されている。法・制度の未整備、品質管理の不在、奨励策の欠如、税制の不適応など企業活動を支援する環境が整備されていないことを指摘する。政府に対し、健全な商活動を保証していくため厳格な密輸対策を求めている。このほか、価格体系を無視した小売業者の行動に懸念を示している。一部の業者は20%を超えるマージンを設定するなど、製品の価格競争力を損なう結果を招いているという。

同社の売上高は2009年上半期522億FCFA(前年同期比5.6%増)となり、ここ数年来業績は好調に推移している。ミネラルウォーター部門が11%増となったのに対し、主力のビール部門は0.34%増、炭酸飲料部門は0.33%増と横這いだった。ビール部門が伸び悩んだのは、輸入缶ビールとの競合が影響したため。また炭酸飲料部門の収益悪化は、マージンの大きい瓶詰に代えてペットボトル製品を増やしたことが要因。

同国の飲料生産は内政不安の影響で一時不調となったが、2003年以降回復し、ここ5年間で3%増加している。飲料の輸出は、国内生産の3%にすぎず、金額にして年間20億FCFA程度である。一方、飲料の輸入は年間280億FCFAにのぼり、過去5年間2桁台の伸びが続いている。品目別ではワイン(シェア46%)、ビール(同15%)、ミネラルウォーター(同11%)、スピリッツ(同10.5%)、フルーツジュース(同6%)、炭酸飲料水(同6%)などとなっており、輸入先はスペインをトップにフランス、オランダと続く。最近の傾向として、飲料の輸入は、数量ベースで大幅な増加を続ける一方、金額ベースでは横這いで推移している。これは主にワイン、ビール、スピリッツなどアルコール飲料の需要が高まっている反面、消費者の低価格志向が進んでいるためとみられる。