Mtn-Ci

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

設立年

1996年(前身のロテニー・テレコムの設立年)

資本金

28億6,500万CFAフラン(FCFA)

売上高

1,809億FCFA(2008年)

業種

携帯電話事業

従業員数

726人

会社概要と沿革

MTN-CIは、コートジボワールにおいて「MTN」のブランド名で事業を展開する携帯電話会社で、1996年設立のロテニー・テレコム(テレセル)を前身に持つ。南アフリカ大手のMTNインターナショナルが2005年7月にロテニー・テレコムの株式51%を1,780億FCFAで買収し、経営権を取得したことに伴いMTN-CIに社名が変更された。同社は通信市場の拡大を背景に急成長しており、2008年の売上高は前年比13%増の1,809億FCFAにのぼった。MTNインターナショナルは2005年に入ってサブサハラ地域の携帯電話会社を相次いで買収しており、潜在成長性の高い市場で積極的な事業展開を図っている。アフリカ諸国を中心に21カ国で携帯電話事業を展開する。

MTN-CIの契約者は2008年末360万人で、前年比20%増加した。過去3年、契約者の純増数は年間平均で90万人に達する。これと並行して売上高もここ数年2ケタ台の高い成長が続いており、業績は好調に推移している。契約者数と売上高では、コートジボワールの携帯電話事業者5社のうち仏オレンジに次ぐ業界第2位のリーディング企業だ。電気通信分野の自由化を契機に競合他社に先行して携帯電話事業に進出したロテニー・テレコムを前身とするMTN-CIは、寡占市場で顧客の取り込みに成功し、独占的利益を得てきた。しかし、2006年以降携帯電話市場では、新規事業者の参入が相次ぎ、厳しい競争が繰り広げられている。各社は、料金引き下げ、サービス拡充でしのぎを削っている。こうした中、MTN-CIは、新規契約者獲得に向け料金の値下げ、コンテンツの充実、通信インフラの強化に力を入れている。例えば、通話料金の引き下げはもとより、低所得者向けの格安な端末キット販売、多様な機種の投入、料金徴収手段の多様化などで販売促進を図っている。通話料金は現在、1分当たり100FCFA。1秒毎に区切った料金徴収で割安感がある。また最新の技術と設備の投入、通信エリアやサービス拠点の拡大に多額の投資を行っており、同社の投資額は2005から2008年の4年間 に1,000億FCFAを超えた。GPRS/EDGE(General Packet Radio Service/Enhanced Data for GSM Evolution)方式の導入により、ブロードバンド、ビデオ、音声、データ伝送などで、顧客に対しより効果的で充実したサービスを提供し、競合他社に攻勢をかける。全国200ヵ所に支所、60,000ヵ所にサービス拠点を展開し、より顧客に接近するかたちでサービスを提供し、顧客の満足度向上に努めている。

同社の契約者の9割強がプリペイド課金システムを利用しており、料金徴収をより安全、効率的に行うためこれまでのプリペイドカードに代えて、代金補填をオンラインで行えるプリペイド・オンライン・リチャージ(e-リチャージ)のサービスを導入した。カードレスによりコスト削減、安全強化が図られるという。また最近、電子マネー業務「MTNモバイル・マネー」、「モバイルTV」、「モバイルインターネット」などの新規サービスを相次いで開始している。MTN-CIのマーケッティング・マネージャーは、「率先して高付加価値、革新的なサービスの導入に努めている」と業界リーダーとしての立場を強調する。

同社は官公庁、企業、個人と幅広い層に顧客を持つ。通話エリアの拡大と安価な端末機の投入で近年は、都市部だけでなく固定電話のインフラ整備が遅れた農村部で普及が加速しているという。今のところ大半のユーザーが短時間の通話とショートメッセージサービス(SMS)の簡易メールしか使っていないので、従来のサービスでもなお市場開拓の余地があるとみる。ただ、激しい競争や農村部の利用拡大で、契約者一人当たりの収入は減少している。料金競争が加速しており、今後は情報配信サービスなど利用料の底上げ策が課題だという。市場成熟化を視野に通信料の高い高付加価値のサービスへ徐々に軸足を移していく方針だ。

MTN-CIは、宣伝、広告を効果的に活用し顧客の取り込みを図っている。新聞、雑誌、テレビを通じた大々的なメディア広告、宣伝のほか、時季的な販売プロモーション活動にも力を入れている。例えばクリスマスやバレンタイン、母の日にイベントを実施するなどして集客活動を行っている。また、サッカー国際大会やミスコンテストなど社会文化活動の後援などにより知名度を上げている。MTNは、2010年サッカーワールドカップの公式スポンサーで、大会出場が決まったコートジボワールですでに大々的な宣伝を繰り広げている。CSR活動にも積極的で、マラリアやエイズ対策、識字率の向上など保健衛生、教育分野で支援を行っている。なおMTN-CIは2007年、西アフリカの携帯電話部門でATP最優秀賞を受賞している。

コートジボワールの携帯電話事業は、電気通信分野が自由化された96年に始まった。現在、仏オレンジ、南ア系MTN、アラブ首長国連邦系ACELL-CI(ムーヴ)、レバノン系コミヨム(コーズ)、リビア系オリセル(グリーン)の5社が人口2,000万の市場に競合する。国内の携帯電話契約者は08年末、オレンジが420万人、MTNが360万人、ムーヴが185万人、コーズが90万人の計1,055万人。人口に対する普及率は51%にのぼる。これら事業者の投資累計額は3,780億FCFA、売上高累計額は2兆5,060億FCFAに達している。

携帯電話事業は、低価格の端末とキットを組み合わせたパッケージ商品の投入と、プリペイド方式による課金システムの導入で急成長した。各社は料金の支払いについて、ポストペイド方式に加えてプリペイド方式を導入している。プリペイド方式は、企業にとって前金で確実に料金を徴収することができる有効な手段だ。e-リチャージは最低200FCFAから利用可能で、低所得者層への普及につながっている。プリペイド方式の利用者は、携帯電話加入者の97%を占める。

新情報通信技術相は、「通信市場の自由化で競争が進み、通信インフラ整備の進展、カバーエリアの拡大とともに、より安くより良いサービスが期待できる」と歓迎している。コートジボワールでは、電気通信分野の自由化と外資による新技術の導入により、通信インフラの整備が進み、通信市場を取り巻く環境が大きく変わりつつある。