Société Africaine de Représentations Industrielles (SARI)

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

設立年

1949年(ヤマハ販売代理店1994年)

資本金および資本構成

13億5,548万CFAフラン(FCFA)
フランス資本90%、その他10%

財務情報

売上高170億3,764万FCFA(2008年)、収益11億787万FCFA(2008年)

製品・サービス

自動車・二輪車販売特約店(プジョー、シトロエン、いすゞ、ヤマハ)

従業員数

118人(うちヤマハ14人)

会社概要と沿革

SARI社(以下、サリ社)は、アフリカ諸国を中心に33カ国で事業を展開するCFAOグループ傘下の企業で、プジョー、シトロエン、いすゞ、ヤマハの自動車・自動二輪車を扱う大手販売特約店。CFAOグループはコートジボワールで、サリ社のほかCIDP社(トヨタ販売代理店)、CENTRAL MOTORS社(三菱自動車販売代理店)など多数の企業を傘下に抱える。サリ社の売上高は2008年170億FCFA、2009年上半期84億FCFAとそれぞれ前年比5.3%減、前年同期比4.8%減となった。この減収は主に、プジョー車の販売不振が響いた自動車部門が不調だったためで、二輪車部門の販売は順調だった。ヤマハ事業部門は売上高の5%を占めている。

ヤマハ二輪車の販売台数は2008年1,010台となった。このうち業務向け販売が94%を占め圧倒的に多い。個人消費者向けは6%とわずかだ。ヤマハは、現地の市場風土に根づいたカテゴリーをラインアップしており、主力の製品としてYBR125(125CC)を投入した。YBR125は多機能、耐久性に優れ、アフリカの環境に適した仕様になっているため丈夫で長持ちするという。価格は125万FCFAと中国製やインド製の安価な製品と比べて2~3倍高い。中国製SANILI(125CC)は50万~60万FCFAで販売されており、市場にはさらに廉価な製品も出回っている。サリ社のオデェウッド営業部長は、「高品質、耐久性に優れるヤマハ製品は、故障が少なく丈夫で長持ちするので、中期的には割安になる」と強調する。一方、「中国製品は6ヶ月もしないうちに故障が起き、部品の交換や修理でコストがかかり、安く買っても維持費が高くつく。結果的に割高になるケースが多い」という。ヤマハ二輪車の顧客は、電力会社、給水会社、警備会社、クーリエ会社、ゴム農園経営など大手企業が多い。

当地では、ヤマハ二輪車は高品質、高性能、耐久性をコンセプトとした製品というブランドイメージが確立している。あえて低価格商品は扱わず品質やサービスを維持しブランドイメージを守る。中国の低価格製品とは差別化を図り、「高級車」として異なるセグメントで需要を取り込んでいく戦略だ。二輪車市場では低価格を武器に中国の躍進が目立つ。だが、中国製は現地仕様に改良されておらず、安全性、耐久性、技術で劣るという。インド製は品質対価格で割安感があり、販売台数が年々伸びている。ヤマハ、ホンダ、スズキなど日本製は、品質、性能、耐久性で優れ定評がある、コートジボワールの二輪車市場は、低価格製品の投入で低中所得層の需要を取り込み拡大傾向にあり、そうした中でヤマハが優勢だ。

同社は人材、技術を投入してアフターサービスに注力している。メーカーへ技術者を派遣し技術進歩に対応できる有能な技術者の養成に力を入れている。また全国的により良いアフターサービスを提供していくため整備工の養成を行っている。「整備技術力」はもとより「接客対応」など、顧客に安心してヤマハ製品を購入してもらうための講習会を行い、受講した整備工には「ヤマハ二輪車整備士認定資格」を発行し、ヤマハ製品のアフターサービス認定店に指定するとともに、純正パーツを迅速に提供できる体制を整備し、顧客へより良いサービスを保証する。一方、顧客に対し製品の技術知識、取扱い、点検整備を説明する講習会を開くなど、顧客サポートを充実させている。ヤマハの顧客は大企業が多く、特に充実したアフターサービスや顧客サポートが求められており、顧客獲得の決め手となる。また、修理整備工場の設備拡充・更新には積極的な投資を行っている。高い技術力と充実した修理整備、そして親切丁寧な対応で顧客を総合的にサポートする。さらに製品保証(6ヶ月~1年)、スペアパーツのストック、メンテナンス契約などサービスを充実させている。部品交換は必要な場合に迅速に供給できるアフターサービス体制を整備し、顧客満足度の向上に努めている。現在、40店のサブディーラーが部品を供給している。サリ社はヤマハ製品の販売・サービスの責任を担っており、製品の魅力を伝える店頭演出や販売促進策の提案、実施、より良いアフターサービスの提供に向けた取り組みを行なっている。また市場トレンドや消費者の声などを収集、分析し、ヤマハの新たな商品開発にフィードバックすることも大切な役割の一つだ。さらに、需要喚起や製品使用の安全啓発を目的とした講習会を企画することも顧客サービスの一環として取り組んでいる。これまでの豊富な経験の中で蓄積した“知識とノウハウ”のもとで、消費者のニーズに応えていく。

同営業部長によると、コートジボワールの二輪車販売台数は、統計がないため明らかではないが、約27,500台と推定している。このうち25,000台がいわゆる「グレーゾーン」の流通ルートで取引されており、中国製の廉価な製品に加えて、模擬品が多く含まれるという。多くが分解部品の状態でコンテナに積まれ輸入されている。現地で輸入業者が組み立て販売している。低価格で販売されるこれらの製品は、公共輸送機関が発達していない地方都市や農村部の住民が日常的な移動手段として購入するケースが多く、全体の9割強を占める。このような二輪車は価格が安くても、品質や性能が劣るので企業向けや業務用途は少ない。一方、正規の販売代理店を通じて取引される二輪車は2,500台。販売先は業務用・企業向けが7割強を占め、個人消費者向けは約2割にとどまる。レジャーやスポーツのパートナーとして購入する消費者は未だ少ない。正規の流通ルートで取引されるこれらの製品は、高い関税が小売価格に転嫁され価格が割高となる。しかし、品質、アフターサービスが保証されていることから企業や業務用の需要が高い。

二輪車市場も自動車市場と同じように品質、性能を重視する高級志向と、価格を重視する低価格志向に分かれる。企業は、価格のほかに技術、品質、性能も重視するが、日常的な移動の手段として二輪車を購入する農村地帯や地方都市の住民にとっては価格がより重要な決定要因となっている。中国から流入する廉価な二輪車は、日本や欧米の製品に比べ品質面での評価は劣るものの、依然として低所得層が多いコートジボワールでは魅力となっていることも事実だ。

二輪車の輸入はここ数年、重量、金額ベースともに大幅に増加している。一方、重量の伸びが金額を上回っており、二輪車市場では低価格化志向が進んでいることがわかる。国別では、中国からの輸入が75%を占め、2位の日本12%を大きく引き離す。次いでアラブ首長国連邦、トルコ、フランス、米国と続く。排気量別では50~250CCが52%と最も多く、次いで50CC以下が33%となっている。コートジボワールでは排気量125cc以下の車種では運転免許証が不要なこと、また50CC以下の車種ではナンバー登録が必要ないことなど、面倒な行政手続きが要らないことが売れ行きを左右している。

同営業部長は事業の阻害要因として、北部国境から密輸品が流入し、不正競争を強いられていることを挙げている。政府に対し、国境検問を厳格化し密輸対策を強化するよう要請している。また部品の模擬品が大量に流入していることにも懸念を示している。これは経済的損害の問題だけでなく、故障や事故の原因にもなりかねず危険であることから、サリ社は模擬品対策に取り組んでいる。政府に対しても対策を求めている。このほかコートジボワールでは二輪車にかかる関税 が40.5%と高いため小売価格に転嫁され価格が割高となっている。隣国ガーナではコートジボワールと比べて関税率が低く小売価格が割安であることから、ガーナに行って二輪車を購入するケースが増えているという。この傾向が拡大すれば国内の二輪車市場は打撃を受けると懸念する。

今後の見通しについては、円高になるとマージンが縮小しコスト競争が厳しい。2009年は農産品国際市況の低迷、農業収入の減少などの要因で二輪車の販売は低迷する見通しだ。一方、選挙が無事実施されれば内政安定化を背景に復興需要や経済活動の活性化が期待され、二輪車の需要が拡大するとみる。また中間層の潜在性に注目しており、需要を取り込んでいくには中間所得層向け融資アクセスの拡大がカギを握るとみている。現在アビジャンとブアケ(反乱軍支配地となったため休業)に支店を展開する。今後北部地方へも支店網を広げていく計画だ。

コートジボワールではこれまでバスや乗合タクシーが市民の足となってきたが、最近新たな動きがみられる。国土分断により旧反乱軍支配地では車の通行が困難となった上、治安悪化を恐れて公共輸送機関が運行をストップしたことから、これに代わってバイクタクシーが市民の移動手段として出現した。安い中国製二輪車がバイクタクシーの間で広まっているという。なお、西アフリカではナイジェリア、トーゴ、ベナンなどで早くからバイクタクシーが発達している。