Unacoopec-Ci

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

設立年

1976年

資本金

24億CFAフラン(FCFA)

営業収入

780億FCFA(2008年)

業種

マイクロファイナンス

従業員数

900人

会社概要と沿革

UNACOOPEC-CIは、低所得者向けに原則無担保で小口融資を提供するマイクロファイナンス機関だ。1976年に設立された当初は政府の支援を受け、農村や地方開発を目的とした農業生産者向けマイクロクレジットに特化したサービスを行っていたが、その後対象を低所得者層から中所得者層、零細・中小企業までと間口を広げ、またサービスも預金や送金、保険などにも拡大させている。

同機関は、マイクロファイナンス市場の90%を占める国内最大手で、西アフリカ地域でも有数の規模を誇る。2009年9月末の貸付高は270億FCFA、預金高は740億FCFAに上り、前年同期比それぞれ大幅増が見込まれる。貸付件数は46,700件で、主な融資対象分野は、農業495件、家畜飼育612件、家内工業510件、商業1,317件、輸送139件、住宅19件、その他43,608件(主に消費)となっている。ここ数年、商業、農業、家内工業、家畜飼育等の事業のほか、消費にあてる資金需要が高い傾向に変わりはない。貸付案件に占める女性と若年層の割合は9割に達し、特に起業家や起業したばかりの個人事業者の資金ニーズが高い。

国内全土に160店舗(5都市に6支所)を展開し、預金者は850,000人に上る。このうち男性が560,000人、女性が260,000人、法人が28,616社。また年金受給者が47,000人、給与所得者が30,000人(公務員5,000人、民間企業25,000人)となっている。預金者は過去数年10%の割合で増加しており、2009年9月末現在171,000人が新たに口座を開設した。貯蓄預金、定期預金、積立預金、定期積金などの商品を取り扱っており、それぞれに有利な条件の融資プランが用意されている。主力商品は積立預金で、顧客のニーズに応じて多様な融資プランを提供している。融資プランには消費、住宅、教育、投資・運用、起業など用途別プランが用意されている。

またUNACOOPECは、コートジボワールのマイクロファイナンス機関で唯一、給与や年金の受け取りに指定できる振込口座を取り扱っており、これら給与所得者や年金受給者へ前貸しサービスも行っている。ディアミディア融資担当部長によると、「これにより同業他社に比べて、給与所得者や年金受給者の顧客を取り込みやすい上、ローン返済を給与から天引きすることができるので、返済不履行のリスクを回避する上でも有効だ」という。

マイクロファイナンスは従来、銀行などの金融機関からは相手にされなかった低所得者層に対し、貯蓄や無担保の貸付等の金融サービスを提供し、生活の糧を稼ぐ手伝いをする事業として、貧困削減の方法の一つとして広く認識されている。しかしディアミディア融資担当部長は、「マイクロファイナンスは貧困削減の有効な手段という特徴を有しつつ、零細事業者向け金融サービスを通じて地域経済にとって重要な役割を果たしている。低所得者へもアクセス可能な金融サービスを提供しながら、貧困削減と事業収益の両方を追求していく。社会的に意義のある活動を商業ベースで行うことで事業の持続可能性にもつながる」とあくまで事業としてマイクロファイナンスのあり方に言及している。

また、急成長するマイクロファイナンス市場の開拓の余地は大きいと見ており、経営戦略として、「顧客層の拡大、顧客のニーズを取り込んだ多様なサービス提供を通じた市場開拓」を揚げている。「低所得者層にも預金のニーズがあり、預金を積極的に受け入れている。貧困層でも融資の機会があれば事業を拡大し収入も増える。対象を貧困層から中所得者層にまで広げ、預金や送金、保険も含んだ金融サービスを提供することで経済活動の底上げを図り、低所得者層へのアプローチを促進していく。今後とも多様な融資プラン、金融商品を提供し顧客の取り込みに注力する」としている。

同機関の強みは、34年にわたる豊富な経験と強固な経営基盤を通じ信用を確立したことで、「COOPEC」のブランドが国内全土に浸透している。特に農民向けマイクロクレジットの先駆者として、早い時期から低所得者層の預金のニーズに応えたことで、社会的信用が高まり、「お金を安心して預けられる金融機関」としての地位が確立した。地方では、主要農産品であるコーヒー・カカオの生産地帯にも多くの店舗を展開し、農村部の顧客のアクセスを促すとともに、低所得者への資金アクセス拡大にも努めてきたことから、「庶民の銀行」として評判が高い。「これにより多くの預金を取り込み、これを原資に融資ニーズに応える。これはまた組織強化の手段ともなっている」と述べている。

コートジボワールでは1996年にマイクロファイナンス・クレジット分野が法・制度化されて以降、多くの組織が参入し、現在90に達するマイクロファイナンス機関が存在する。その中にあってUNACOOPECは、法・制度が整備されていない当時から競合他社に先駆け進出したことで、多くの顧客を取り込むことに成功した。当時、低所得者を顧客にした事業として注目を浴び、認知度が広まった。

顧客の返済率は77%にとどまっているが、これは国土分断により北部地方の顧客の債務不履行が増えたためという。ディアミディア融資担当部長は今後、資金調達の多様化、取引費用の削減やリスクの軽減につながりうる新たな技術の導入など、マイクロファイナンスの革新と活動の持続性にもつながる試みを通じ、さらなる事業の発展に期待をかける。

現在、南アやタンザニアなどで機能している農業生産者向け融資システムの導入を検討しているところだ。これは農産品を担保として農民に融資を行う「WAREHOUSE SYSTEM」と言われるもので、農産品を保管倉庫に預け入れ、農民とバイヤー間の取引を金融機関が保証する仕組みで、支払いのリスクが回避される効果がある。保管倉庫の管理と取引を保証する原資の調達について調査中だという。このほか投資ファンドの運用、カードシステムの導入、ISO 9001の取得にも取り組んでおり、サービスの品質向上を通じて顧客や市場のニーズに応え、顧客満足度を高めていくとともに、組織の価値向上に努めていく構えだ。またこれと平行して、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの要素のひとつである業務効率の改善や組織体制の強化を図っていく方針だ。

一方、経営の阻害要因としては、

  1.  融資および預金保証システムの欠如
  2.  マイクロファイナンス奨励策の欠如
  3.  管理機能の不全
  4.  法・制度の不適合
  5.  リスク調整機能の欠如を揚げる


また急成長するマイクロファイナンス市場に、その資金供給が追いつかないという新たな問題が生じており、資金調達も課題となっているという。

世銀によると、コートジボワールの総人口に占める貧困層の割合は、85年の10%から現在48%にまで拡大している。特に農村部では50%を超えている。政府はこれらの情勢を前に2015年までに貧困層を16%まで削減させることを目標とし、雇用の創出、民間分野の促進、地方開発を政策の柱に据え、貧困削減プランに取り組んでいる。政府は同プランの中で、マイクロファイナンスの果たす役割を重点施策に位置付け、活動の促進を奨励している。これに基づき2007年末、マイクロファイナンス政策の柱として「戦略・行動プラン2007-2015」が導入された。同プランは、マイクロファイナンス分野のプロフェッショナル化、活性化、技術の革新、サービスの多様化とアクセス拡大、貧困削減への寄与、低所得者の資金アクセス拡大、フォーマルセクターへの組入れなどを目指している。