Société de Distribution Automobile en Côte d’Ivoire (SDACI) 旧Peyrissac Ci

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

設立

1963年(2008年、自動車・タイヤ販売を除く事業部門の売却に伴い改組、社名変更)

資本金および資本構成

12億8,000万CFAフラン(FCFA)
フランス、モロッコ、コートジボワール資本

財務情報

売上高239億FCFA(2008年)、収益26億500万FCFA(2008年)

製品・サービス

自動車販売特約店(BMW、現代自動車、起亜自動車、マツダ)

従業員数

130人

会社概要と沿革

SDACI(Société de Distribution Automobile en Côte d’Ivoire)は自動車・タイヤの大手販売特約店で、AFRICAUTO(現代自動車、起亜自動車、マツダ)、ALLIANCE AUTOMOBILE(BMW)、AFRICAUTO PNEUMATIQUE(ミシュラン)、EUROPCAR(車両レンタル)の事業部門から成る。1963年、アビジャンに設立された自動車、事務機器、電気機器、コンピューター、光学器機、家庭用品等を輸入販売するPEYRISSAC CIが前身。2008年1月に自動車輸入販売、タイヤ輸入販売、自動車レンタル事業部門を除くPEYRISSACの営業権がYESHIグループに売却されたことに伴い改組され、社名がSDACIに変更された。資本金は12億8,000万FCFAで、フランス、モロッコ、コートジボワール資本で構成される。2008年の売上高は239億FCFA。2009年上半期の売上高は前年同期比18.6%減、収益は同80.4%減と大幅減益となったが、これは2008年上半期に営業権の売却益が計上されたことによる。なお、コートジボワールには自動車販売特約店が10社あり、約1,000人が雇用されている。同分野全体の売上高は2008年1,300億FCFAにのぼり、国庫に流入する同分野の諸税は500億FCFAとなった。

SDACIの自動車販売部門をみると、2008年の売上高は225億FCFA(前年比6%増)、自動車販売台数は1214台(同7%増)となり、20%のマーケットシェアを占めた。国内自動車販売業界第2位の大手であるSDACIは今後さらに取り扱う自動車のタイプ・モデルを多種多様化し、またその他のメーカーとも取り引きを広げると同時に、支店網を拡大して国内シェアを25%まで高めることを目指している。

SDACIのEric MOUGENOT営業部長によると、同社はフランス語圏中部アフリカ諸国とフランス語圏西部アフリカの一部諸国およびモロッコに子会社を持つ。これらフランス語圏中・西部アフリカ地域の新車市場ではコートジボワールが最大規模。会社の業績は政情不安の影響を受けたものの、ここ数年は安定して推移しており、選挙が無事実施されれば復興需要で売上増が見込める。自動車販売、タイヤ販売、車両レンタルの事業を手掛けることで顧客層が広がり、市場参入機会が拡大するなど相乗効果を上げている。現在アビジャンのほかサンペドロとブアケ(反乱軍支配地となったため休業)に支店を展開する。今後北部地方へも支店網を広げていく計画。

ここ数年、韓国・現代車の売れ行きが好調だという。現代車は、品質対価格で割安感があり優良製品と評価している。2009年に新型車としてi30、i10を投入した。低燃費、デザインなどが評価され、特に女性の間で人気がある。消費者には800万FCFA台の低価格も魅力で、セカンドカーとして購入する人も増えている。コートジボワールでは新車市場の伸長に加え、低価格車投入が成長を加速させるとみられている。

一方、BMWは高級車のイメージが定着し、コートジボワールでは社会的ステータスをあらわす製品として知名度が高い。同じく高級車のイメージが定着するメルセデス・ベンツと競合するが、近年BMWの販売台数の伸びが上回っており、メルセデス・ベンツに迫っている。主な販売先は富裕層、企業幹部、官公庁高級官吏などで、政府調達が売上の30%を占めている。政府調達はこれまで、プジョー車が圧倒的に多かったが、近年、価格差が200万FCFA程度しかないことに加えて、耐久性、性能、アフターサービスの優良性が評価され、BMW車の納入が増えている。2009年末に新型7シリーズとBMW X1、2010年初めに新型5シリーズを投入する予定。BMWの強さの源泉は高品質に裏付けられたブランド力。品質やサービスを維持しブランドイメージを守る。

新車市場では低価格を武器に中国車の躍進が目立つ。一方、中国車は欧州規格に適合しておらず、安全性、耐久性、技術で劣る。

日本車は多様な車種、モデルが投入されていることに加え、耐久性、燃費に定評があり、人気が高い。BMWと同じ価格帯ではベンツSシリーズ、ボルボ、レクサス、アウディと競合している。新車市場は拡大傾向にあるが、各社の販売競争は激しさを増している。

同社は人材、技術を投入してアフターサービスに注力している。メーカーへ技術者を派遣し技術研修、養成を行っている。消費者の利益を常に念頭に置きサービス向上に努めている。コートジボワールでは消費者の意識や商品知識が高まりアフターサービスや顧客サポートの要求が強まっている。特に高額商品である自動車は充実したアフターサービスが求められており、顧客獲得の決め手となる。多くの消費者は自動車を購入する際、製品説明など顧客サポートを期待しており、これらに重点を置くことが、消費者の信頼を得ることにつながる。このため技術進歩に対応できる有能な技術者の養成に力を入れている。また製品保証、スペアパーツのストック、メンテナンス契約などサービスを充実させている。部品交換は必要な場合に迅速に供給できるアフターサービス体制を整備し、顧客満足度の向上に努めている。

新車市場は品質、性能を重視する高級志向と、価格を重視する低価格志向に分かれる。大手企業や富裕層は、技術、品質、性能に基づいて購入を決定しているが、中間所得層にとっては価格が重要な決定要因となっている。コートジボワールの自動車保有台数は80万台と未だ少ないが、同社は、新車市場における中間所得者層の潜在性に注目しており、これら所得者層を取り込むため取り扱いモデルを増やし低価格車を投入するなど消費者に対し選択肢を広げている。同営業部長は、中間所得者層向けの融資アクセス拡大が今後の市場発展のカギを握るとみている。

また同社は、マスメディアを通じた広告、宣伝、自治体のイベント参加、ミスコンテストのスポンサーなどを通じて知名度を上げ、販売プロモーションを行っている。

一方、自動車市場の成長を阻害する要因として、自動車部品の模擬品、不正規の輸入業者、並行輸入など不規則な自動車輸入 などの問題を指摘している。これにより正規の自動車販売会社は、不当競争を強いられるだけでなく、信用低下につながることを懸念している。最近とみに不正規の業者がドバイ経由で自動車を輸入販売するケースが目立つ。これらの製品は、価格が安いとしても、現地の環境に見合った仕様に改良されていないため故障しやすく、またコートジボワールで投入されていないモデルもあるため部品の調達が難しい。専門の自動車修理工場がないため修理も困難で、消費者は大きな損害を受けることになる。販売特約店ではこれらのケースに対応できないことが多く、消費者からの苦情が増えている。密輸の問題も深刻で、ブルキナファソ、ガーナから旧反乱軍支配地の北部地方に密輸された自動車がアビジャンに流入し、価格破壊的な安値で売られている。

また中古車の輸入についても問題提起している。同国ではこれまで、車齢7年を超える中古車の輸入は原則禁止されていたが、最近になって超過年数に応じて罰金を払えば輸入が可能となったことから、国内では廃車寸前の安価な中古車が溢れかえっている。中古車輸入台数は2008年30,401台にのぼったが、このうち車齢が20年を超える車が55%、車齢10年を超える車は実に80%に達する。これら中古車の多くはフランス、ベルギーから輸入されているが、年式が古いだけでなく、現地仕様でないため故障しやすいことや部品の補給が困難であるため、安全性、環境汚染の問題が指摘されており、厳格な法の適用が求められている。

またコートジボワールでは自動車の輸入にかかる関税が45.55%と、隣国のガーナ35%と比べても高く、販売価格に転嫁されるため自動車価格が割高になっており、業界関係者は政府に対し関税の引き下げを要請している。このような問題が解決されれば、コートジボワールの新車市場のポテンシャルは高いとみている。

中古車輸入が禁止されていた80年代の新車販売台数は年間25,000台前後だったが、96年に中古車の輸入が解禁されて以降、新車販売台数は下降の一途をたどり、2005年には3,342台まで減った。しかしここ数年は増加傾向にある。

当地の自動車業界団体の統計によれば、08年の新車販売台数は前年比5.5%増の6,326台(ホンダ車と中国車は同統計に含まれていない)となった。メーカー別の販売台数はトヨタが1,240台とトップで、次いで三菱899台、現代776台、プジョー673台、日産584台、ダチア375台、マツダ229台、メルセデス216台、フォルクスワーゲン180台、ルノー157台、いすゞ154台、シトロエン141台、BMW111台、フィアット108台、スズキ107台等と続く。国別では日本車がトップで3,213台と全体の50.8%を占めた。2006年以降、欧州車を抜き日本車の優勢が続いている。以下、2位フランス車、3位韓国車、4位ドイツ車となっている。

車種別では、乗用自動車2,418台、4輪駆動車1,390台、ピックアップ・トラック1,345台、トラック(3.5トン以下)508台、バン452台、バス(22座席以上)98台、ミニバス(22座席未満)73台などとなっている。経済活動の回復を反映し、公共輸送や貨物輸送、商用車の需要が増え、バスやミニバス、トラック、バンの販売台数が大幅に増加した。4輪駆動車は行政機関の調達があり増えた。このうち4輪駆動車とトラック、ピックアップ・トラックでは日本車が圧倒的なシェアを占めている。

主要経済誌がアビジャン市内で実施した調査によると、消費者は自動車の購入にあたり、車の価格、燃費、維持費など経済的要因を重視しており、車のモデルやマーク、乗り心地などを決定要因とする順位は低かった。同国で売れる車の条件は、まず手頃な価格。そして環境にも配慮した低燃費という結果が出た。これらを両立した小型車が今後の売れ筋になる見通しだという。なお、人気の高いメーカーのトップ5はトヨタ、BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、日産だった。