Norilsk Nickel ノリリスク・ニッケル
アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。
会社概要と沿革
ロシア連邦の法律下で設立されたロシア最大の金属採鉱会社ノリリスク・ニッケルは、ニッケル、パラジウム、プラチナおよび銅における世界最大の生産業者の1つである。これに加えて、ノリリスク・ニッケルは、コバルト、ロジウム、銀、テルリウム、セレニウム、イリジウム、ルセニウムなどの生産も行っている。
ノリリスク・ニッケルの海外における採掘はフィンランド、オーストラリア、ボツワナ、南アフリカで行われ、硫化ニッケルとラテライトの加工・精製も行っている。
ノリリスク・ニッケルは1930年代にロシアで操業を開始し、1953年にはグループ全体で、旧ソ連におけるニッケル総産出量の35%、銅の12%、コバルトの30%、プラチナ類金属の90%を生産していた。一方、コーラ半島には銅とニッケルを生産する2つの企業があった。ペチェンガ・ニッケルとセヴェロ・ニッケルである。1989年にロシアの採鉱産業が再編された際、ノリリスク・グループ、ペチェンガ・ニッケルとセヴェロ・ニッケル・グループ、オレネゴルスク機械工場、クラスノヤルスク非鉄金属加工工場、ジプロ・ニッケル研究所 (セントペテルスブルグ) を統合し、ノリリスク・ニッケルが創立された。
大統領命令により1993年に「非鉄および貴金属生産のためのロシア国家事業ノリリスク・ニッケル」が「ロシア株式会社 (RAO) ノリリスク・ニッケル」に改変され、非鉄と貴金属を生産するようになった。2001年になると、金属採鉱会社ノリリスク・ニッケル (MMC ノリリスク・ニッケル) と再度改名された。
1994年の民営化により株式の38% (議決権株式の51%) を保有するノリリスク・ニッケルとなった。1997年、Uneximbank 傘下の投資会社スイフトにより株式の38%が取得された。同社は2000年、ノリリスク・ニッケル・グループの業績と投資的魅力の向上を目指し、さらに再編された。2006年7月1日現在、MMCノリリスク・ニッケルは RAOノリリスク・ニッケル総株式の95%以上を取得した。
ノリリスク・ニッケルは2007年6月28日、LionOre Mining International Limited を買収した結果、ボツワナの Tati Nickel の株式85%を取得した。残り15%の株式はボツワナ政府が保有している。Tati Nickel は、フェニックスの露天ニッケル鉱床と Selkirk 地下ニッケル鉱床を所有したが、これらは活動休止状態で、整備に回されていた。LionOre Mining International Limited の取引高68億ドルはノリリスク・ニッケルとしては最大の国際的買収となった。
フェニックスにあるニッケル鉱床では1985年に創業が開始された。採鉱された鉱石は旧来の浮遊選鉱技術で処理され、その処理能力は年間500万トンだった。Selkirk 鉱山とその地下での採掘は1989年に開始されたが、地下の鉱床では2002年に銅・ニッケル鉱石が枯渇したため補修整備に回された。
ノリリスク・ニッケルは LionOre Mining International Limited 買収後、旧来の高温冶金方法により現在処理されている精製物からニッケルの回収率を改善するため、Activox® Refinery Project を立ち上げた。しかしプロジェクトの費用が大幅に拡大した結果、その後2008年にプロジェクトは中止された。費用拡大の大きな要因は、世界的な建設、設備、プロジェクト管理費用の増大だった。ノリリスク・ニッケルは硫化ニッケルの効率的な工程として、Activox® 湿式冶金技術を改良し続け、ボツワナの Activox® デモプラントは LME グレードのニッケルと銅の陰極を生産する大規模試験場として操業を続けた。
国内の所在地
フェニックス鉱山はフランシスタウン (ボツワナの2番目に大きい都市で国の北東部に位置する) の東35㎞に位置する。Selkirk 鉱山はフェニックス鉱山から15㎞に位置する。
製品・サービス
グループは鉱物の試掘、調査、採掘、精製、冶金プロセスと、卑金属と貴金属の生産、マーケティング、販売に携わっている。ノリリスクはニッケル、銅、パラジウム、プラチナという主生産物のほか、コバルト、ロジウム、銀、金、テラリウム、セレニウム、インジウム、ルテニウムなどを生産している。
従業員数
ボツワナの従業員1,183名
財務情報
2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | 2003 | |
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Metal,sales revenue | 11,799 | 15,909 | 11,550 | 7,169 | 6,591 | 5,196 |
Gross profit on metal sales | 6,354 | 11,237 | 8,420 | 4,175 | 3,653 | 2,326 |
Minerals resources and ore reserves of Norilsk Nickel international as of December 31, 2007: Botswan
Group ore production (‘000 tonnes)
Group saleable metal production (tonnes or as noted)
Sales of metal produced
市場シェア
MMCノリリスク・ニッケルは世界最大のニッケル生産者である (21.4%)。ボツワナのニッケル生産は世界生産の約2%を占める。2008年におけるノリリスク・ニッケルの販売可能な金属生産量は300,585トンで、うち20,769トンがボツワナ産だった。2008年のボツワナのニッケル総生産量は28,940トンである。MMCノリリスク・ニッケルの市場占有率は2008年で71.7%だった。
事業目的
ノリリスク・ニッケルは、世界の金属採鉱業界における指導的地位、およびベースメタルと貴金属の信頼される生産者と供給業者の役割を強化することを目指している。
ビジネスモデル
グループのモデルは、以下の8つの戦略目標に基づいている。
- 資産の再編と管理工程の最適化によるコーポレートガバナンスの改善。
- 独自の鉱物資源の有効利用と操業費用の安定化。
- 世界的な鉱物資源の試掘、探索、開発の成長。
- 会社が操業する地域における持続可能な発展の支援。
- グループの採掘加工施設の利用能力向上。
- 採掘した鉱石の最適な加工と金属回収率向上を確実にする選鉱と冶金の生産施設の近代化。
- 効果的技法の操作、開発、実装における継続的向上の実現できる能力に基づく、安定したコストレベルの維持。
- エネルギー供給、輸送、流通を含む低コストサービスと資源の安定した供給の点での独立性の強化。
株主・所有権益
ノリリスク・ニッケル・アフリカはボツワナにおいて、Tati Nickel Mining CompanyとBotswana Metal Refinery 両社の85%を所有する。残り15%はボツワナ共和国政府が所有。
政府との関係・社会貢献
1999 年7月、ボツワナ議会は独立以来施行されていた鉱山鉱物法を改定した。新しい法律の概要は以下のとおりである。
- 最大 1000km 2 までの試掘ライセンスを最初に 3 年分発行し、さらに更新する場合は 1 期間 2 年を 2 回とする。
- 更新毎に、ライセンス規模の 50% 低減が必要である。
- 7 年の試掘ライセンス終了後、保有ライセンスを申請することができる。
- 保有ライセンスは最初の 3 年間保証され、 3 年を超えない期間で更新できる。
- 試掘ライセンスまたは保有ライセンスの保持者は、試掘ライセンスまたは保有ライセンスの範囲で、埋蔵鉱物を採掘するため採掘ライセンスを申請することができる。
- 採掘ライセンスを発出する際にボツワナ政府は、商業ベースで 15% までの権益を取得するオプションを持つ。
- 採掘ライセンスは 25 年間で、更新を申請することができる。
ボツワナに拠点をおく採掘会社は、所得税、源泉徴収税、採掘ロイヤリティの支払い義務がある。ボツワナの法人税率は25%である。ボツワナでは、非ボツワナ居住者に支払われる配当、利子、商業ロイヤリティの支払いから、総合源泉徴収税15%が控除される(非常駐企業も含む)。別途の法人税を源泉徴収税の支払い相殺に使うことができる。
粗市場価値の3%ロイヤリティは、ニッケルやベースメタル鉱山の生産時、政府に支払う。「粗市場価値」は、値引き、手数料、控除を除く、鉱山出荷時の販売価値と定義される。大臣は、大臣が決める期間でロイヤリティの支払いを遅らせることができる。ボツワナの為替管理規制は著しく緩和されており、実質上ボツワナからは資金を自由に送金できる。
製品開発
Activox 精製工程の延期にも関わらずノリリスクは、Tatiニッケルに年間1,200万トンの Dense Media Separation (DMS) プラントを立ち上げた。年間1,200万トンの DMSプラントは鉱山資源の鉱脈のグレードを選択的に上げ、タチの年間生産量を濃縮含有ニッケルで14,500トンから22,000トンへ増やし、操業総費用を減らし鉱山の寿命を2019年まで7年延長する。
2008年、採掘操業に3,600万米ドルを費やしたが、そのうち3,400万米ドルはフェニックス露天掘りの
準備である。また Selkirk 鉱山で鉱柱を復元し精製作業を行い、露天掘りの利益実現性貯差を行うこと
に200万米ドルを費やした。2008年末、Selkirk プロジェクトは保留になった。
精錬作業には7,900万米ドルを投資した。これは DMS 第2段階精錬装置に6,000万米ドル、現場に電気を供給する能力増強に1,600万米ドル、フェニックス現場で追加のろ過精錬設備を近代化し設置するために300万米ドルの支出からなる。