田中 修

中国経済レポート

財政部記者会見(1)

新領域研究センター 田中 修

2022年4月25日


はじめに

財政部は4月12日・20日に記者会見を開き、財政の現状を説明した。本稿では、その内容を整理して紹介する。なお、重要部分は太字で示している。

1.1-3月期の特別債発行・使用情況(4月20日会見)

党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、財政部は関係部門と「穏」(安定・穏健)の字を第一とし、安定の中で前進することを堅持し、特別債の発行・使用方面では、政策の力発揮を適切に前倒すことを堅持した。

昨年12月、財政部2022年新規特別債金額1.46兆元を前倒しで地方に下達し、前倒し下達のタイミングは昨年より3カ月前後早まった

前倒し下達後、各地方は今年1-3月期の発行計画を真剣に編成し、積極・組織的に発行した。2022年3月末までに既に1.25兆元発行し、前倒し下達額の86%を占め、昨年より1.23兆元増えた。その中で、内モンゴル、遼寧、黒竜江、上海、浙江、福建、山東、広東、広西、四川、甘粛の11省は、既に全部前倒し下達額の発行作業を完成している。

既に発行した特別債のうち、都市公共施設・産業パークインフラは4157億元、交通インフラは2316億元、社会事業は2251億元、社会保障的性格をもつ安住プロジェクトは2016億元、農林・水利は1004億元、生態環境保護は468億元、エネルギー、都市・農村コールドチェーン等の物流インフラは251億元であり、マクロ経済の安定に重要な役割を発揮している。

今後、財政部は引き続き政策指導を強化して、各地方が特別債の発行・交付・使用作業に統一的にしっかり取り組み、とりわけ主管部門とプロジェクト単位の主体責任を徹底させ、できるだけ速やかに実物成果量を形成し、地方債の推進作用をしっかり発揮させるよう要求する。

2.減税・費用引下げ政策(4月20日会見)

現在、わが国の経済発展は、需要の収縮・供給へのダメージ・予想の弱気化の三重の圧力に直面し、外部環境は更に複雑・峻厳・不確定化傾向にある。

中央経済工作会議は、2022年、積極財政政策は効果を高め、精確性・持続可能性を更に重視しなければならないと提起した。今年の「政府活動報告」は、積極的財政政策について具体的手配を行い、新しいパッケージ式の税・費用支援政策を実施しなければならないと提起し、年間の税還付・減税は約2.5兆元と見込まれる

財政部門は党中央・国務院の政策決定・手配を真剣に貫徹実施し、税還付・減税政策を組織的にしっかり実施し、政策の力発揮を適切に前倒しして、年初以降20項目余りの税・費用支援政策を既に打ち出している。主要なものは以下のものが含まれる。

(1)製造業、小型・零細企業、個人工商事業者を支援する減税・費用引下げ政策を引き続き実施する。

一部の税制優遇政策の執行期限を延長し、政策の連続性・安定性を維持した。

中小・零細企業が新たに購入する単位価値が500万元以上の設備・器具については、単位価値の一定割合を自らの選択により企業所得税から控除する。

課税所得額が100万元を超え、300万元を超えない小型・零細企業については、25%の課税所得額を減じ、20%の税率で企業所得税を課す。

科学技術型中小企業のR&D費用の割増控除比率を75%から100%に引き上げる。

3%の税率が適用されている増値税小規模納税者の課税売上収入については、増値税を免除する。

省・自治区・直轄市の人民政府は、管轄地域の実際の情況及びマクロ・コントロールの必要性に基づき確定し、増値税小規模納税者、小型・零細企業、個人工商事業者について、50%の税額内で「6税・2費用」を減額することができる。

(2)大規模な控除留保分の税還付を実施する。

企業のためにキャッシュフロー支援を提供し、雇用・消費・投資を促進し、増値税の税制設計で「先に納付・後で還付」式の控除留保分の税還付制度の改善に力を入れることを総合的に考慮し、控除留保分について大規模な税還付を前倒しで実行する。

先進製造業の月ごとに新規分増値税の控除留保分を全額還付する政策の範囲を、条件の合致した小型・零細企業、製造業等の業種の企業に拡大し、小型・零細企業、製造業等の業種の企業の既存控除留保税額を一括還付し、製造業等の業種の控除留保分の税還付問題を全面解決する。

(3)特殊困難業種の困難緩和・発展を支援する租税政策を打ち出す。

生産・生活関連サービス業の割増控除政策の執行期限を2022年12月31日まで延長する。

2022年、航空・鉄道輸送企業の出先機関について、増値税の予定納税を暫時停止する。

2022年、納税者が提供する交通輸送サービスで取得した収入について、増値税を免除する。

(4)3歳以下の乳幼児養育個人所得税特別付加控除を設ける。

納税者が3歳以下の乳幼児子女を養育するための関連支出は、乳幼児1人当たり毎月1000元の基準で定額控除を行う。

以上の政策を公布して以降、財政部は関係部門と組織的な実施に早急に取り組み、政策実施を着実に推進し、各政策をしっかりきめ細かく実施し、多様な形式で政策の宣伝・説明を展開し、輿論のプラス誘導を確実に強化し、社会の関心に積極的に応え、各政策の認知度を高め、企業が政策をすべてうまく用いるよう支援してきた。

今後、財政部は各税・費用支援政策を一層しっかりきめ細かく実施し、政策の効果を確実にしっかり発揮させ、党中央・国務院の手配の実施・定着を確保する。

3.特別債の金額分配の原則(4月12日会見、以下同じ)

今年、中央経済工作会議の手配と「政府活動報告」の要求に基づき、新規地方政府債務規模は3.65兆元であり、これは党中央・国務院が経済情勢とマクロ・コントロールの必要性に基づき行った計上額である。

うち、プロジェクト建設に用いる金額は、既にすべて地方に下達した。中央財政が省に下達し、省が市・県に分配する際、主として以下の原則を遵守しなければならない。

(1)各地方の財政力と債務リスク水準を十分考慮する

財政の実力が強く、債務リスクが低い省に傾斜させ、ハイリスク地域の新規限度額の規模を抑制し、ハイリスク地域のリスク累積を回避する。

実際上、中央から各省への分配では、主として財政力とリスク指標に基づいて分配を行う。同時に、地方に債務リスクが比較的低い市・県に傾斜させるよう要求する。つまり、省が下に分配する際も、実際に同様な原則を遵守させ、リスク防止措置を厳格に実施する前提の下、ハイリスク地域の債務リスク等の情況を総合的に考慮して、金額を合理的に計上し、ハイリスク地域がリスク水準を着実に引き下げるよう督促している。

(2)「資金はプロジェクト次第」を堅持する

成熟・重点プロジェクトの多い地域に傾斜して与え、一定の収益があるインフラと公共サービス等の重大プロジェクト及び国家重大戦略プロジェクトを重点支援する。

地方に特別債資金使用の集中度を適切に高めるよう要求し、金額は中央と省レベルの重点プロジェクトが多い省・市レベルに傾斜させ、断じてバラマキを行ってはならず、即ち小さすぎず、拡散しすぎず、資金の集中度を高めなければならない。

(3)「奨罰をそれぞれ明らかにする」ことを十分体現する

財政経済紀律と資金使用進度に違反した地域に対しては金額を削減し、しっかり管理し、使用が速い地域に対しては、適切な奨励を与える

昨年、国務院はいくらかの地方に対し、特別債等の財政資金が、債務リスク水準の比較的高い省・市の庁舎ビル・公会堂・記念館・招待所建設等に用いられていると通告し、通告した地方に対しては、特別債の金額を相応に削減した。

(4)特別債のネガティブリスト管理を厳格に実施する

特別債資金は、庁舎ビル・公会堂・記念館・招待所、イメージ作りプロジェクト・政治業績プロジェクト、非公益的資本プロジェクト支出を支援してはならない旨を明確にした。

現在、既に全国・ハイリスク地域の2種類のネガティブリストを制定・下達し、ネガティブリストに入っている投資先分野のプロジェクトに用いてはならない旨を明確にした。

今後、財政部は、省レベル財政部門が、省レベル人民代表大会常務委員会の関係政策機関と早急に意思疎通を図り、できるだけ早く予算調整等の法定手続を履行し、できるだけ速やかに限度額を分解して市・県に下達し、早い発行・早い使用に努力し、特別債資金の使用効率を高めるよう督促する。

我々は、地方政府ができるだけ早く実施するよう要求し、実際多くの省が既にこの政策を実施し、推進プロセスを加速している。(つづく)