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研究者のご紹介

田中 修

中国経済レポート

2022年政府活動報告のポイント(3)

 

新領域研究センター 田中 修

2022年3月25日


4.2022年の政府活動任務
4.3 改革を断固深化させ、市場の活力と発展の内生的動力を更に大きく奮い立たせる

「政府と市場の関係をうまく処理し、資源配分における市場の決定的役割を発揮させ、政府の役割を更にしっかり発揮させ、ハイレベルの社会主義市場経済体制を構築する」。

資源配分における市場の決定的役割を再確認している

(1)政府機能の転換を加速する

ハイレベルの市場システムの建設を強化し、要素市場化配分総合改革テストにしっかり取り組み、全国統一の大市場の建設を加速する。市場化・法治化・国際化したビジネス環境を作り上げることを軸に、『行政の簡素化・権限の委譲、規制緩和と管理の結合、サービスの最適化』改革を引き続き推進し、審査・許認可事項の廃止・下方委譲については監督管理責任・措置徹底と同歩調で実施しなければならない。市場参入を引き続き拡大する。行政許可事項のリスト管理を全面実行する。

デジタル政府の建設を強化し、行政データのシェアを推進し、各種証明事項を一層圧縮し、『省を跨ぐ事務処理』の範囲を拡大し、電子証明の相互承認を基本的に実現し、企業の地域を跨ぐ経営の利便を図り、大衆が関心をもつ事項を異なる土地で処理する問題を早急に解決する。行政サービス事項の一括化処理を推進し、不動産登記・車検等の庶民に便宜を図る措置の最適化を推進する。

政府の監督管理責任を強化し、業種主管部門・関係部門の監督管理責任と地方政府の管轄地監督管理責任を厳格に履行し、監督管理の欠落を防止する。全方位・多層レベル・立体的で健全な監督管理システムを早急に確立し、事業前・事業中・事業終了後の全段階・全分野の監督管理を実現し、監督管理機能を高める。重点分野・新興分野・対外分野の監督管理ルールの整備に早急に取り組み、監督管理方式を刷新し、監督管理の精確性・有効性を高める。公平競争政策の実施を深く推進し、反独占・反不当競争を強化し、公平で秩序立った市場環境を擁護する」。

反独占・反不当競争は、21年報告は所有制経済の項にあったが、今回は政府の役割としてさらりと述べられている。李克強総理は会見において、「独占・不当競争に反対するのは、資本の無秩序な拡張を防止するもので、目的はやはり法に基づいて経営している企業を後押しし、各種所有制企業、内資・外資企業の一律平等な発展・公平な競争を確保するものである。当然、企業が発展において皆規範的・健全であることを希望してもいる」と述べている

また李克強総理は会見において、「『行政の簡素化・権限の委譲、規制緩和と管理の結合、サービスの最適化』改革の推進は、1000項目余りの行政許可を下方委譲あるいは廃止し、非行政許可は歴史の舞台から去った。過去企業の許可証取得には数十日を要し、多いときは100日を超えたが、現在全国平均で4日であり、最も少ないものは1日である。現在、約9割の行政サービスは、オンライン処理・スマホ処理・他地域処理・非対面処理となっている」と成果を強調している

(2)多様な所有制経済の共同発展を促進する

「社会主義の基本経済制度を堅持・整備し、「2つのいささかも揺るぐことなく」1を堅持する。

資本の特性と行動法則を正確に認識・把握し、資本の規範的で健全な発展を支援・誘導する。企業の財産権・自主経営権と企業家の合法権益を法に基づき平等に保護し、各種所有制企業が互いに競争し発展する良好な環境を作り上げる

国有企業改革3年行動任務を完成し、国有経済の配置の最適化と構造調整を加速し、混合所有制改革を深化させ、国有資産の監督管理を強化し、国有企業が主たる責任・本業に焦点を絞ることを促進し、産業チェーン・サプライチェーンをサポート・牽引する能力を高める。

民営経済の発展を支援する政策措置を実施し、民営企業の改革・イノベーションを奨励・誘導し、政府と民間の親しく清廉な関係を構築する。企業家精神を発揚させ、企業に係る政策の制定は市場主体の意見を多く聴取しなければならず、市場ルールを尊重し、企業家が起業・イノベーション・安心経営・発展に専念することを支援する」。

21年報告にあった「資本の無秩序な拡張の防止」、中央経済工作会議にあった「資本の野蛮な生長の防止」「資本のネガティブな作用を有効にコントロール」といった、民営企業に否定的な表現がすべて削除された。習近平指導部が民営プラットフォーム企業やディベロッパーに厳しく、「共同富裕」推進をきっかけに「民営企業叩き」を開始したと内外で受け止められていることを否定しようとしている。企業に係る政策の制定は事前に企業の意見を聴取するなど、民営企業家を安心させる政策を盛り込んだ

逆に、国有企業について21年報告は、「強大化」の表現を復活させていたが、今回は国有企業の本業専念といった「スリム化・健全化」の表現が盛り込まれている。もともと「資本の無秩序な拡張」は民営資本のみならず、国有資本でもあり得ることであり、2014年には国有企業が子会社・孫会社を多数設け、様々な業種に進出していることが問題になっていたのである。国有企業の「スリム化・健全化」は李克強総理の持論でもある

(3)財政・税制・金融体制改革を推進する

「予算実績管理改革を深化させ、予算の拘束力と透明度を増強する。省以下の財政体制改革を推進する。

税の徴収管理制度を整備し、法に基づき脱税・税騙取を取り締まる。

金融監督管理を強化・改善する。中小銀行の株主構造とコーポレートガバナンス改革を深化させ、不良債権の処理を加速する。民営企業の債券による資金調達支援メカニズムを整備し、株式発行の登録制を全面実行し、資本市場の平穏で健全な発展を促進する」。

財政改革では、省以下の財政制度の整備が重視されている。中央からの財政移転の市・県への直接交付など、末端政府の財政強化が課題になっているのである

「中小銀行の株主構造・コーポレートガバナンス改革」とは、中小銀行と主たる貸出先企業の実質オーナーが同一人物で、企業が銀行を自社の金庫化する現象(日本では「機関銀行化」と呼ばれ、昭和の金融恐慌・バブル期にみられた)が問題となっているからである。
不良債権の処理を加速しなければならないのは、コロナ以来の元本償還・利払い猶予政策が終了し、中小・零細企業の倒産・不良債権の増大が予想されるためであろう

4.4 イノベーション駆動による発展戦略を深く実施し、実体経済の根底基盤強固・壮大にする2

「科学技術イノベーションを推進し、産業の最適化・グレードアップを促進し、供給の制約・目詰まりのブレークスルーを図り、イノベーションに依拠して発展の質を高める」。

経済社会発展の任務の重さ・試練の多さがここでも強調されている

(1)科学技術イノベーション能力を高める

基礎研究10年計画を実施し、長期安定的な支援を強化し、基礎研究経費の全社会研究開発経費に占めるウエイトを高める3

科学技術体制改革3年堅塁攻略プランを実施し、国家戦略科学技術パワーを強化し、国家実験室・全国重点実験室の建設を強化する。

(2)企業のイノベーションへのインセンティブを強化する

企業のイノベーションの主体としての地域を強化し、カギ・コアとなる技術の難関攻略を引き続き推進し、科学技術の成果の移転・実用化を促進する4

知的財産権の保護・運用を強化する。ベンチャー投資の発展を促進し、フィンテック商品・サービスを刷新する。

R&D費用の割増控除政策の実施を強化し、中小企業割増控除の割合を75%から100%に高め、企業の基礎研究投入に対して税制優遇を実行する。各設備器具の加速度償却・ハイテク企業の所得税優遇等の政策を整備する。

(3)製造業のコアコンピタンスを増強する

工業経済の平穏な運営を促進し、原材料・カギとなる部品等の供給の保障を強化し、リーディングカンパニーのチェーン保障・安定プロジェクトを実施し、産業チェーン・サプライチェーンの安全・安定を擁護する。

金融機関が製造業向け中長期貸出を増やすよう誘導する。

いくらかの産業基盤再構築プロジェクトを始動し、伝統産業のグレードアップを促進し、スマート製造を大いに推進し 、先進製造業集積群の発展を加速し、国家戦略的振興産業集積群プロジェクトを実施する。

「専門的、精密な、特色ある、革新的な」企業の育成に力を入れ、資金・人材・インキュベータープラットフォームの構築等の方面で支援に力を入れる。

品質強国の建設を推進し、産業のミドル・ハイエンドに向けた邁進を推進する。

21年報告は「産業チェーン・サプライチェーンの安定」が重視されたが、今回は製造業の強化に焦点があてられている

「専門的、精密な、特色ある、革新的な」企業の育成が強調された。特にそれが中小・零細企業の場合は「小巨人」とも呼ばれ、支援の重点とされている

(4)デジタル経済の発展を促進する

デジタル中国建設の全体的配置を強化する。デジタル情報インフラを建設し、全国一体化したビッグデータセンターシステムを段階的に構築し、5Gの大規模応用を推進し、産業のデジタル化転換を促進し、スマートシティ・スマート農村を発展させる。

インダストリアルインターネットの発展を加速し、集積回路・AI等のデジタル産業を壮大に育成し、カギとなるソフト・ハード技術のイノベーション・供給能力を高める。

デジタル経済のガバナンスを整備し、デジタル要素市場を育成し6/a>、デジタル要素の潜在力を発揮させ、応用能力を高める7

第14次5カ年計画の目玉の1つである「デジタル経済の発展」が追加された

4.5  内需拡大戦略を断固実施し、地域協調発展と新しいタイプの都市化を推進する8

国民経済の循環を円滑にし、生産・分配・流通・消費の各段階を貫通させ、経済成長への内需の牽引力を増強する」。

(1)消費の持続的回復を推進する

多くのルートで個人所得の増加を促進し、所得分配制度を整備し、消費能力を高める。

オンライン・オフライン消費の深い融合を推進し、生活関連サービスの消費回復を促進し、消費の新業態・新モデルを発展させる。

新エネルギー自動車の消費を引き続き支援し、地方がグリーン・スマート家電の農村普及と買い替えを展開することを奨励する。

コミュニティによる高齢者介護・託児保育等の付帯施設の建設を強化し、計画・土地使用・家屋使用等の方面で更に多くの支援を与える。

家事代行サービス業の質向上と規模拡大を促進する。

県域商業体系の建設を強化し、農村Eコマースと宅配物流配送を発展させる。

製品・サービスの質を高め、消費者権益の保護を強化し、大衆のニーズに適応し、消費意欲を増強することに力を入れる」。

「共同富裕」推進の内容である所得分配制度の問題は、消費回復の節に目立たないよう盛り込まれた

消費振興のかなめとしては、額が大きい新エネルギー自動車、家電・Eコマースの農村普及に期待がかけられている

(2)有効な投資を積極的に拡大する

「国家重大戦略手配と第14次5カ年計画を軸に、インフラ投資を適度に前倒しで展開する。

重点水利プロジェクト、総合立体交通網、重要エネルギー基地・施設を建設し、都市天然ガスパイプライン・上下水道等のパイプライン網の更新・改造を加速し、洪水防止・排水施設を整備し、共同溝の建設を引き続き推進する。

中央予算内投資を6400億元(21年は6100億元)計上する。政府投資は更に多く民生プロジェクトに傾斜させ、社会民生分野の脆弱部分補強を強化する。

投資の審査認可制度改革を深化させ、土地使用・エネルギー使用等の要素保障をしっかり行い、国家重大プロジェクトについてはエネルギー使用特別枠を実行する。投資構造を最適化し、投資の難題を解決し、投資のカギとなる役割を確実に発揮させる」。

インフラ投資の前倒しは、マクロ政策の目玉である

何立峰国家発展・改革委員会主任は、3月5日の会見において、投資の重点は、

①第14次5カ年計画で確定した102の重大プロジェクト(現在、2600余りの個別プロジェクトに分解)

②インフラの脆弱部分の補強、「炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラル」分野のプロジェクトの推進、新興産業の発展、老朽化設備の更新の推進等

③新しいタイプの都市化の実施(重点は、県都を重要な受け皿とする新しいタイプの都市化、特大都市のスリム化・健全化、大中都市の脆弱部分の補強)

④公共サービス施設の建設(高齢者介護、託児保育、教育、医療・衛生等の分野)

また、資金源としては、①中央予算内投資6400億元、②地方政府特別債3.65兆元、③21年の地方政府特別債の1.2兆元前後が10-12月期に発行され、実物成果量は大部分22年に体現される、としている

(3)地域発展のバランス性・協調性を増強する

地域重大戦略と地域協調発展戦略を深く実施する。

北京・天津・河北共同発展、長江経済ベルト発展、広東・香港・マカオ大ベイエリア建設、長江デルタ一体化発展、黄河流域生態保護と質の高い発展を推進し、レベル・質の高い雄安新区を建設し、北京副都心建設を支援する。海洋経済を発展させ、海洋強国を建設する。

産業の段階的移転と地域協力を支援する。経済大省は優位性を十分発揮し、全国発展への牽引作用を増強しなければならない。経済困難地域は国家の支援政策をうまく用いて、自身の潜在力を発掘し、経済の回復・発展に努力しなければならない。

(4)新しいタイプの都市化の質を高める

都市更新を秩序立てて推進し、公共施設と防災・減災能力の建設を強化し、老朽化した建築・施設の潜在安全リスクを洗い出して対策を展開し、新たにいくらかの都市老朽化住宅団地の改造に着工し、エレベーター等の施設の設置を支援し、バリアフリー環境建設と公共施設の高齢者対応改造を推進する。

常住地が基本公共サービスを提供する健全な制度を整備する。

メガロポリス(都市群)・都市圏の建設を着実に推進し、大中小都市と町の協調発展を促進する。成都・重慶2大都市経済圏建設を推進する。

都市更新が大きなテーマとなった。老朽化した住宅・施設の改造と高齢社会対応の改造が中心となっている

「常住地が基本公共サービスを提供」とは、都市に流入した出稼ぎ農民とその家族に対し、現地の政府が都市戸籍住民と同様の基本公共サービスを提供することを意味する。これは、末端地方財政の負担を増やすため、その強化が重視されているのである

4.6 農業生産に力を入れてしっかり取り組み、農村の全面振興を促進する9

農業支援政策を整備・強化し、脱貧困地域の発展を引き続き推進し、農業の豊作・農民の所得増加を促進する。

(1)食糧等の重要農産品の生産安定・供給保障を強化する

食糧の作付面積を安定させ、大豆・食用油原料の増産を促進する。籾米・小麦の最低買付価格を適切に引き上げる。化学肥料等の農業資材の供給と価格を安定させ、食糧生産農家に再度農業資材補助を与え、食糧主産地への支援を強化し、農民の食糧生産に合理的な収益を与え、食糧主産地に生産への内在的動力を与える

18億ムー(1億2000万ha)の耕地レッドラインを断固しっかり守り、恒久基本農地を十分しっかりと画定し、耕地の「非農業化」に確実に歯止めをかけ、「非食糧化(穀物以外の栽培)」を防止する。中・低収穫農地の改造を強化し、1億ムー(約667万ha)のハイレベル農地を新たに整備する。

種業の振興を早急に推進し、農業科学技術(アグリテック)の難関攻略と普及・応用を強化し、農機の普及レベルを高める。畜産・水産・野菜等の生産・供給にしっかり取り組む。

国家の食糧安全保障は、各地方すべてに責任があり、食糧輸入地域は更に食糧生産を安定させなければならない。各方面は共同で努力して、主食の供給を満たし、副食品を充実させ、14億余りの中国人の食料を自身の手中に収めなければならない。

食糧安全保障が重視されており、耕地の保護とアグリテックの発展による生産性向上の2本柱となっている

(2)脱貧困堅塁攻略の成果を全面的に強固にして拡大する

貧困逆戻りを防止するモニタリング・支援メカニズムを整備・実施し、大規模な貧困逆戻りが発生しないことを確保する

脱貧困地域での特色ある産業の発展を支援し、労務の協同・職業技能訓練を強化し、脱貧困人口の持続的な所得増加を促進する。

国家農村振興重点支援県への支援措置を強化し、脱貧困のため他の土地に移住・転居した後の継続支援をしっかり行い、東部・西部の協同、地域指定型支援、社会(民間)パワーによる支援を深化させ、「1万の企業が1万の村を振興する」行動の実施に力を入れ10、脱貧困地域の自己発展能力を増強する」。

21年報告では、脱貧困達成の翌年ということもあり、筆頭に挙げられていたが、今回は食糧安全保障が重視されたため、2番目に後退した

(3)農村の改革・発展を着実・穏当に推進する

第2次土地請負の期限到来後30年再延長する政策の県単位のテストをしっかり展開する。

新しいタイプの農村集団経済を積極的に発展させ、農村向け金融サービスを強化し、農村での産業発展を加速する。県域経済を壮大にする。

農村建設キャンペーンを始動し、計画による牽引を強化し、水道・電気・道路・ガス・通信・郵便等のインフラ建設を強化し、土地の事情に応じて農村トイレ改造と汚水・ゴミ処理を推進する。

出稼ぎ農民への賃金未払いへの対策を強化し、出稼ぎ農民の就業・起業を支援し、必ず広範な農民に更に多くの仕事・所得増加のルートを与えなければならない

21年報告に比べ、インフラ建設が重視されている。農村でインフラ建設を行うことにより、脱貧困者の雇用・所得を確保しようという狙いもあるのであろう。(つづく)

  1. ①いささかも揺るぐことなく公有制経済を強固にして発展させ、②いささかも揺るぐことなく非公有制経済の発展を奨励・支援・誘導しなければならない。
  2. ここは、主要な項目を紹介する。
  3. 全人代の修正で盛り込まれた。
  4. 全人代の修正で盛り込まれた。
  5. 全人代の修正で盛り込まれた。
  6. 全人代の修正で盛り込まれた。
  7. 全人代の修正で盛り込まれた。
  8. ここは、重要なものを紹介する。
  9. ここは、重要なものを紹介する。
  10. 全人代の修正で盛り込まれた。