田中 修

中国経済レポート

1月の主要経済指標

新領域研究センター 田中 修

2022年3月1日


(1)物価

①消費者物価

1月の消費者物価は前年同月比0.9%上昇し、12月から0.6ポイント低下した。都市は1.1%上昇、農村は0.4%上昇である。食品価格は3.8%下落し(12月は-1.2%)、非食品価格は2.0%上昇(12月は2.1%)した。衣類は0.4%上昇、居住価格は1.4%上昇した1

(参考)(2017年1.6%)→(2018年2.1%)→(2019年2.9%)→(2020年2.5%)→21年6月1.1%→7月1.0%→8月0.8%→9月0.7%→10月1.5%→11月2.3%→12月1.5%(2021年0.9%)→22年1月0.9%

前月比では、0.4%上昇(12月は-0.3%)した。食品価格は1.4%上昇(12月は-0.6%)した。食品・タバコ・酒価格は12月より1.1%上昇し、物価への影響は約0.30ポイント、うち生鮮野菜は3.1%上昇(12月は-8.3%)し、物価への影響は約0.07ポイント、卵価格は1.1%下落、物価への影響は約-0.01ポイント、食糧は0.1%下落であった。畜肉類価格は0.8%下落し、物価への影響は約-0.03ポイント(豚肉価格は-2.5%、物価への影響は約-0.04ポイント)であった。水産品価格は4.1%上昇、物価への影響は約0.08ポイント、果物価格は7.2%上昇、物価への影響は約0.14ポイントであった。非食品価格は0.2%上昇(12月は-0.2%)し、衣類は0.5%下落(12月は0.1%)、居住価格は0.0%(12月は-0.1%)であった。

食品・エネルギーを除いた消費者物価(コア消費者物価)は、1月が前年同月比1.2%上昇(12月は1.2%)、前月比では0.1%上昇(12月は0.0%)である2

なお、1月の前年同月比0.9%上昇のうち食品・タバコ・酒価格は1.8%下落し、物価への影響は約-0.52ポイントとなり、このうち畜肉類価格は25.6%下落、物価への影響は約-1.11ポイント(豚肉価格は-41.6%、物価への影響は約-0.96ポイント)である。このほか、生鮮野菜価格は4.1%下落し、物価への影響は約-0.10ポイント、卵価格は1.9%上昇、物価への影響は約0.01ポイント、水産品価格は8.8%上昇、物価への影響は約0.16ポイント、食糧価格は1.6%上昇、物価への影響は約0.03ポイント、果物価格は9.9%上昇、物価への影響は約0.19ポイントであった。

また1月の0.9%上昇のうち、前年の価格上昇の本年への影響は約0.5ポイント、新たなインフレ要因は約0.4ポイントである。

なお、国家統計局都市司の董莉娟高級統計師は、「CPIの前月比上昇幅が12月の下落から上昇に転じた背景として、1)冬季の塩漬け・燻製が基本的に終了し、加えて春節前の出荷が加速したため、豚肉の供給が充足し、価格が下落した、2)国際エネルギー価格の上昇の影響を受け、ガソリン価格が2.2%上昇、ディーゼル油価格が2.4%上昇、液化石油ガス価格が1.5%上昇した、3)春節前の旅行がある程度増加し、航空券、交通手段レンタル、長距離列車の価格が上昇した、4)一部都市の労働者帰郷とサービス需要の増加の影響を受け、家事サービス、ベビーシッター、美容・理髪等の価格がある程度上昇し、上昇幅は2.6%~9.1%の間であった。

また、前年同期比で上昇幅が12月より0.6ポイント縮小した背景として、1)前年同期のベースがかなり高かった影響を受け、豚肉価格の下落幅が拡大した、2)生鮮野菜価格が上昇から下落に転じた、3)果物と水産品価格の上昇幅が拡大した、4)ガソリン価格が20.7%上昇、ディーゼル油価格が22.7%上昇し、上昇幅がある程度縮小した、5)サービス価格の上昇幅が拡大し、航空券、家庭サービス、教育サービス、医療サービス価格が上昇した」としている。

②工業生産者出荷価格

1月の工業生産者出荷価格は前年同月より9.1%上昇した。前月比では12月より0.2%下落(12月は-1.2%)した。

(参考)(2017年6.3%)→(2018年3.5%)→(2019年-0.3%)→(2020年-1.8%)→21年6月8.8%→7月9.0%→8月9.5%→9月10.7%→10月13.5%→11月12.9%→12月10.3%(2021年8.1%)→22年1月9.1%

1月の工業生産者購入価格は、前年同月比12.1%上昇(12月は14.2%)であった。前月比では12月より0.4%下落(12月は-1.3%)した。

また1月の9.1%上昇のうち、前年の価格上昇の本年への影響は約9.3ポイント、新たなインフレ要因は約-0.2ポイントである。

なお、国家統計局都市司の董莉娟高級統計師は、「前月比で下落幅が12月から1.0ポイント縮小した背景として、1)供給保障・価格安定政策が有力に推進され、石炭・鋼材価格が引き続き下落し、石炭採掘・洗浄業、鉄金属精錬・圧延加工業価格が下落した、2)国際原油の上昇の影響を受け、国内石油関連業種の価格が回復し、石油・天然ガス採掘業価格が下落から上昇に転じ、化学原料・化学製品製造業、化学繊維製造業価格の下落幅が縮小した、3)国際非鉄金属価格が上昇し、非鉄金属精錬・圧延加工業価格が上昇した、4)非金属鉱物製品業価格が下落した、5)電力・熱力生産・供給業価格が上昇した、6)食品製造業価格が上昇した。

また、前年同月比の上昇幅が12月から1.2ポイント縮小した背景として、1)石炭採掘・洗浄業、石油・天然ガス採掘業、石油・石炭その他燃料加工業、非鉄金属精錬・圧延加工業、鉄金属精錬・圧延加工業価格の上昇幅が縮小した、2)電力・熱力生産・供給業、食品製造業、紡績・服装・服飾業価格の上昇幅が拡大した」としている。

③住宅価格

1月の全国70大中都市の新築分譲住宅販売価格は前月比39都市が低下(12月は50)し、同水準は3(12月は5)であった。上昇は28である(12月は15)。

前年同月比では、価格が下落したのは20都市(12月は17)であった。同水準は0(12月は0)、上昇は50(12月は53)である。

国家統計局都市司の縄国慶首席統計師は、「70大中都市の新築分譲住宅価格の前月比は下落の態勢が減弱し、前年同月比上昇幅は総体として縮小している。

前月比では、70大中都市のうち、4の一線都市の新築分譲住宅価格は12月の0.1%下落から0.6%上昇に転じた。うち北京は1.0%上昇、上海は0.6%上昇、広州は0.5%上昇、深圳は0.5%上昇であった。31の二線都市の新築価格は0.3%下落から0.1%上昇に転じた。35の三線都市の新築価格は0.2%下落し、下落幅は12より0.1ポイント縮小した。

前年同月比では、70大中都市のうち、一線都市の新築価格は4.4%上昇し、上昇幅は12月と同じであった。二線都市の新築価格は2.5%上昇し、上昇幅は12月より0.3ポイント縮小した。三線都市の新築価格は0.5%上昇し、上昇幅は12月より0.4ポイント縮小した」と指摘している。

(2)対外経済

①外資利用

1月の外資利用実行額は1022.8億元(ドル換算158.4億ドル)、前年同月比11.6%増(ドル換算17.6%増)であった3

(参考)(2017年7.9%)→(2018年0.9%)→(2019年5.8%)→(2020年6.2%)→21年1-6月28.7%→1-7月25.5%→1-8月22.3%→1-9月19.6%→1-10月17.8%→1-12月15.9%→2021年14.9%→22年1月11.6%4

1月のサービス業の外資利用は823億元、前年同期比12.2%増であった。ハイテク産業は26.1%増、うちハイテク製造業は32%増、ハイテクサービス業は24.6%増である。

地域別では、アセアン29.1%増である。

国内の地域別では、東部8.7%増、中部46.2%増、西部42.2%増であった。

②外貨準備

1月末、外貨準備は3兆2216億ドルであった。12月末に比べ285億ドルの減少(12月は278億ドル増)で。4カ月ぶりに減少した。国家外貨管理局は、新型コロナウイルスの感染状況や各国の金融政策、地政学的な影響を受け、米ドルが上昇。世界的な金融資産価格が総体的に下落したことが影響したとしている。

③米国債保有

12月末の米国債保有高は、前月比122億ドル減の1兆687億ドルで、2位。31カ月連続1位の日本は、230億ドル減の1兆3040億ドルである。

(3)金融

1月末のM2の残高は243.1兆元、伸びは前年同期比9.8%増と、12月末より0.8ポイント加速、前年同期より0.4ポイント加速した。M1は1.9%減であるが、春節がずれた影響を除くと、前年同期より約2%増である。1月の現金純放出は1.54兆元であった。

人民元貸出残高は196.65兆元で前年同期比11.5%増であり、伸び率は12月末より0.1ポイント減速、前年同期より1.2ポイント減速した。1月の人民元貸出増は3.98兆元(12月は1.13兆元)で、単月では統計史上最高であり、前年同期より伸びが3944億元増加している。うち個人向け貸出は8430億元増、企業等への中長期貸出は2.1兆元増であった。

人民元預金残高は236.07兆元で、前年同期比9.2%増であった。1月の人民元預金は3.83兆元増(12月は1.16兆元増)で、前年同期より伸びが2627億元増加している。うち個人預金は5.41兆元増、企業預金は1.4兆元減であった。

(参考)M2 :2017年12月8.1%→18年12月8.1%→19年12月8.7%→20年12月10.1%→21年6月8.6%→7月8.3%→8月8.2%→9月8.3%→10月8.7%→11月8.5%→12月9%→22年1月9.8%

1月末の社会資金調達規模残高は320.05兆元であり、前年同期比10.5%増となった。うち、実体経済への人民元貸出残高5は195.71兆元、11.6%増、委託貸付残高は10.93兆元、-1.1%、信託貸付残高は4.28兆元、-31.9%、企業債券残高は30.45兆元、9.4%増、政府債券残高53.67兆元、15.9%増6、株式残高は9.63兆元、15.3%増である。

構成比では、実体経済への人民元貸出残高は61.1%(前年同期比0.6ポイント増)、委託貸付残高は3.4%(同-0.4ポイント)、信託貸付残高は1.3%(同-0.9ポイント)、企業債券残高は9.5%(同-0.1ポイント)、政府債券残高は16.8%(同0.8ポイント増)、株式残高は3%(同0.1ポイント増)である。

1月の社会資金調達規模のフローは6.17兆元で、前年同期より9842億元増加した。うち、実体経済への人民元貸出は4.2兆元増(伸びが前年同期比3806億元増)で単月では統計史上最高、委託貸付は428億元増(伸びが337億元増)、信託貸付は680億元減(減少が162億元減)、企業債券純資金調達5799億元(1882億元増)、政府債券純資金調達6026億元(3589億元増)、株式による資金調達は1439億元(448億元増)である。

  1. 国家統計局によれば、2011年のウエイト付け改定で、居住価格のウエイトは20%前後になったとしている。
  2. コア消費者物価は2013年から公表が開始された。
  3. 伸びは人民元ベースである。
  4. ドルベースでは、(2017年4%)→(2018年3%)→(2019年2.4%)→(2020年4.5%)→21年1-6月33.9%→1-7月30.9%→1-8月27.8%→1-9月25.2%→1-10月23.4%→1-12月21.4%→2021年20.2%→22年1月17.6%である。
  5. 一定期間内に実体経済(非金融企業と世帯)が金融システムから得た人民元貸出であり、銀行からノンバンクへの資金移し替えは含まない。
  6. 2019年1月から、国債と地方政府一般債券を統計に組み入れ、これまでの地方政府特別債券と併合し「政府債券」とした。