田中 修

中国経済レポート

財政部記者会見

新領域研究センター 田中 修

2022年2月18日


はじめに

財政部の許宏才副部長は1月25日、記者会見を行い、2021年度の財政収支状況と22年度の財政政策について説明した。本稿では、22年度の財政政策を中心に概要を紹介する。

1.2022年の予算手配

財政部からすれば、中央経済工作会議精神を貫徹実施することは、「『穏』(安定・穏健)の字を第一とし、安定の中で前進を求める」という要求を正確に把握し、積極的財政政策をしっかり実施し、マクロ経済の大基盤を安定させ、経済の安定に資する政策を積極的に打ち出し、政策の力の発揮を適切に前倒しすることに他ならない。

①総量と構造を併せ重んじることを堅持し、財政政策の効果を高める。

財政支出のかなり高い水準を維持し、財政資源の統一を強化し、支出構造の最適化に力を入れ、ストック・フローの資金をうまく用いて、国家重大戦略任務と重大プロジェクトへの支援を強化し、基本民生を保障・改善する。

②新しい減税・費用引下げを実施し、市場主体の活力を増強する。

既に打ち出した各減税・費用引下げ及び納税猶予政策をしっかりきめ細かく実施し、減税・費用引下げ政策の成果を強固にして拡大する。

新しい組合せ式の減税・費用引下げ政策を検討して打ち出し、製造業の質の高い発展に精確に焦点を絞り、中小・零細企業と個人工商事業者の困難緩和・解決に精確に焦点を絞って支援する。

③地方債をうまく用いて、重点プロジェクトの建設を保障する。

発展と安全を統一し、新規地方債の金額を合理的に確定し、債務リスクを有効に防止する。

特別債の使用方向を最適化し、バラマキを行わず、建設中のプロジェクトの後続資金調達を重点支援し、重点分野のプロジェクトの建設ニーズを保障する。

特別債プロジェクトの備蓄を深くきめ細かく実施し、使用進度を合理的に加速し、債券資金ができるだけ速やかに実物成果量を形成することを確保し、有効な投資の牽引作用を更にしっかり発揮させる。

④移転支出を増やし、地方とりわけ末端政府の財政能力を保障する。

中央財政移転支出を困難な地域と未発達地域に傾斜させ、財政力の脆弱な地域の資金保障強化に力を入れる。

資金の直接交付と省以下の財政体制の健全化等の方式を通じて、財政力の下方移転を推進し、末端政府の基本公共サービス提供能力を増強する。

⑤政府支出を厳しくコントロールし、財政資金の業績効果を高める。

刻苦奮闘・勤倹節約を堅持し、各レベル政府は倹約して、一般性支出を厳しく抑制し、更に多くの支金を捻出して経済発展と民生改善を支援しなければならない。

各種予算支出の編成・査定・管理を強化し、財政資金の業績効果の評価を全プロセスで実施し、評価の結果と予算計上のリンクを推進する。

⑥政策の程度を合理的に把握し、持続可能性を増強する。

力を尽くして実施し、力量を慮って実行することを堅持し、財政収支政策を科学的に評価・把握し、決して高望みしてはならない。

赤字と債務の規模を合理的に計上し、リスクを有効に防止する。

財政政策と金融・雇用・産業・投資・消費・地域等の政策を緊密に組み合わせる。

2.市場主体の活力の強化

現在、わが国の経済発展は需要の収縮・供給へのダメージ・予想の弱気化の三重の圧力に直面しており、外部環境は更に複雑・峻厳・不確定化の傾向にある。

1億余りの市場主体は、わが国経済発展の底力・強靭性の所在であり、経済の基盤安定の重要な基礎である。

中央経済工作会議の手配に基づき、「積極的財政政策は、更に効果を高め、更に精確・持続可能を重視しなければならない」という要求に基づき、2022年は市場主体のニーズに対して、新しい更に強力な組合せ式の減税・費用引下げを実施する。主として、4方面から力を発揮する。

①製造業の質の高い発展に焦点を絞り、企業の科学技術イノベーションと更新・創造を促進する。

増値税の留保分の還付を強化し、R&D費用の割増控除政策を整備し、製造業企業の設備更新と技術改造投資を促進し、産業の転換・グレードアップを推進する。

②小型・零細企業と個人工商事業者に焦点を絞り、市場主体の発展加速・活力増加を促進する。

2021年末に期限が到来する小型・零細企業と個人工商事業者を支援する減税・費用引下げ措置を継続実施し、小型・零細企業の経営活力を一層緩和する。

③地方の財政力増強に焦点を絞り、減税・費用引下げのために保障を提供する。

中央財政は引き続き地方への移転支出を強化し、財政力の市・県末端への下方移転を推進し、地方の財政力不足によって減税・費用引下げが割り引かれることを回避する。

④脱税・課税漏れ・税の騙取を断固取り締まり、恣意的な費用徴収を断固止めさせる。

総じて見ると、2022年の減税・費用引下げは、市場主体の自信を奮い立たせ、市場の予想を安定させ、有効な投資を拡大し、最終段階の消費を牽引し、経済の平穏で健全な発展を推進することにとって、重要な役割を発揮する。

具体的政策に関しては、国務院が手配・打出しを行う。

3. 2021年の減税・費用引下げ

①小型・零細企業の税制優遇を際立てて強化した

小規模納税者の増値税課税最低限を月売上額10万元から15万元に引き上げた。

小型・零細企業、個人工商事業者の年課税所得額が100万元に至らない部分につき、現行の課税半減の基礎の上に、更に課税を半減した。

②製造業・科学技術イノベーションへの支援を強化した

企業のR&D費用割増控除75%政策を継続し、製造業企業のR&D費用割増控除の割合を100%に高めた。

③疫病期間に打ち出した段階的政策を分類して調整した

疫病期間に打ち出した小規模納税者の増値税軽減等の政策執行期限を延長した。

失業保険・労災保険の保険料を段階的に引き下げる政策を引き続き実施した。

港湾建設手数料を廃止し、航空会社民間航空発展基金への納付基準を引き下げた。

④制度的減税政策を引き続き執行した

増値税の税率引下げ、増値税の留保分の還付、個人所得税特別付加控除、企業所得税環境保護・省エネ節水優遇等の制度的優遇政策を引き続き実施した。

⑤執行を強化した

企業が2021年1-9月のR&D費用割増控除政策を前倒しで享受することを認めた。

これらの政策で、年間新たに1兆元を超える減税・費用引下げを行った。

4.財政資金直接交付メカニズム

2021年、中央は我々に常態化した財政資金直接交付メカニズムを確立するよう要求し、財政部は党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、関係部門と共に常態化した財政資金直接交付メカニズムを確立し、範囲を改めて選定した。

2021年、我々はいくらかの主要な民生分野で実施し、資金規模は2.8兆元に達し、中央財政民生補助金の100%カバーを基本的に実現した。

総じて見れば、直接交付メカニズムの運営は順調であり、「速く、精確で、厳格」という特徴を引き続き維持し、企業を優遇し民を利する政策実施のために更にしっかりとした制度的サポートを提供した。

年末の統計では、直接交付資金2.8兆元は省レベルに1兆元、市・県に1.8兆元分配し、新規資金を末端に傾斜させるという要求を体現した。当時、我々のこの資金は、主として既存の資金で、一部が新規であり、我々は既存資金の大きな調整を行ったとは言えないが、新規資金は末端に傾斜させ、最終分配の結果は政策の要求を体現させた。

直接交付監視コントロールシステムから見ると、すべての資金は資金使用単位に分配され、滞留はなく、計上した項目は43万件余りで、12月31日までに2.67兆元を支出し、一部は完全に清算が終了せず、一部少量が繰延べになる可能性があるが、金額は小さい。年間の直接交付資金を非直接交付資金と比較すると、直接交付資金の進度は一般予算資金より顕著に高いといえる。

国家重大政策措置実施フォロー会計検査から見ると、審計署のフォロー会計検査では、直接交付資金の規定違反問題は相対的にかなり少なく、規定に違反した金額の割合はかなり低く、資金使用はかなり規範化されている。

資金使用の方向では、直接交付資金は主として以下の方面に用いられている。

①庶民の雇用支援

直接雇用方面に用いられた資金支出は510億元を超え、雇用優先政策を促進した。

②基本民生の保障支援

高齢者介護、義務教育、基本医療、基本住宅等の基本民生方面への資金支出は1.92兆元を超え、総支出の約72%を占め、民生の最低ライン保障の役割を積極的に発揮した。

③市場主体の保障支援

関係する直接企業優遇支出は累計で6000億元を超え、各種市場主体166万社(件)余りに恩恵を与え、合計では延べ200万社(件)を超えた。

④末端の運営保障支援

直接交付資金のうち、県レベル基本財政力保障補助金支出は3300億元を超え、末端の賃金・運営・基本民生保障等の重点支出を保障した。

⑤重点分野プロジェクトの建設支援

1億元以上のプロジェクト計上は3000件に接近しており、規模は1.3兆元を超え、農地・水利、交通インフラ、社会保障的性格をもつ安住プロジェクト等の重大プロジェクトの秩序立った展開を保障し、有効に投資を促し、不足を補った。

当然、上記5方面は、異なる角度から統計を進めているので、項目の間にはいくらか交錯・重複がある。

2年の実践から見て、移転支出資金につい直接交付メカニズムを採用したことは、マクロ・コントロール政策の道具箱を豊富にし、管理機能と資金効率の2つの向上を実現した。今後、財政部は中央経済工作会議精神を真剣に貫徹実施し、目標志向・問題志向を堅持して、直接交付資金のメカニズムを整備し、うまく用いて、直接交付資金をしっかり管理し、うまく用いて、積極財政政策の役割を更にしっかり発揮して、経済社会発展の大局をサポートする。

5.地方政府特別債

2021年、全人代が承認した新規地方政府特別債の金額は3.65兆元であり、このうちプロジェクト建設に用いる新規特別債の金額は3.5兆元である。

特別債の有効投資を牽引し、経済成長を安定させる積極的役割を更にしっかり発揮させるため、財政部は関係部門と特別債管理を引き続き強化する。

①新規限度額を合理的に確定する

成長の安定とリスク防止の関係をうまくバランスさせ、各地方の財政力と債務リスク水準等の要因を十分考慮し、地域を分けて特別債の金額を科学的に分配する。

ハイリスク地方の新規地方政府債務の限度額の規模を抑制し、ハイリスク地方のリスクの継続的な累積を回避する。

我々は地域を分けて限度額を確定する際は、プロジェクトの準備情況・関係リスク指標の情況の合理的試算、及び債務償還能力に基づいて、限度額を分配すべき地方に分配する。

②資金支援の方向を厳しく把握する

国家発展・改革委員会と共に、地方がプロジェクトをしっかり備蓄するよう指導し、特別債を投下する分野のネガティブリスト管理を強化し、特別債を各種事務棟・公会堂・記念館・招待所、イメージ作りプロジェクト、政治業績プロジェクト及び各種非公益的資本支出プロジェクトに用いることを厳禁する。

地方が「資金がプロジェクトを後追いする」という原則に基づき、国家重大地域発展戦略と第14次5カ年計画要綱の重点プロジェクトへの支援を強化するよう指導し、断固バラマキは行わない。

これらの事は、我々は国家発展・改革委員会と両者で専門会議を開いて手配したものであり、両部門は政策レベルでずっと連携しており、資金支援の方向の完全実施を確保する。

③日常の監督管理を強化する

特別債プロジェクトにスキャン式のモニタリングを実行し、できるだけ速やかな実物成果量の形成を推進する。

ライフサイクル業績効果管理を展開し、主管部門とプロジェクト単位の管理責任を徹底させる。

財政部各地方監督管理局を常態的に組織化し、特別債使用管理情況の調査を展開し、すべての新規特別債プロジェクトをカバーする。

規定に違反した特別債資金使用の処罰メカニズムを確立し、規定に違反する行為へのハードな規制を強化する。日常の監督管理もずっと引き続き不断に実施する。

財政部は、引き続き特別債の管理を強化し、地方が債券の発行・使用をしっかり行うよう指導し、有効な投資拡大を牽引する特別債の積極的役割を引き続き発揮させ、経済運営が合理的区間にあることを推進する。