田中 修

中国経済レポート

国家発展改革委インタビュー

新領域研究センター 田中 修

2022年2月15日


はじめに

国家発展・改革委員会の責任者は、新華社のインタビューに答え、当面の経済情勢について語った(新華社北京電2022年2月5日)。本稿では、この概要を紹介する。

1.発展をサポートする有利な要因は、依然少なくない

現在、外部環境は更に複雑・峻厳・不確定化傾向にあり、国内発展は長年見たことのない需要の収縮・供給へのダメージ・予想の弱気化の三重の圧力に直面しているが、発展をサポートする有利な要因と条件は依然少なくなく、わが国経済発展の強靭性は強く、潜在力は大きく、前途は広大で、長期に好い方へ向かうという特徴に変わりはなく、経済の平穏・健全で持続可能な発展を維持する完全な基礎・条件、自信・能力がある。

発展の基礎から見ると、総合国力は引き続き顕著に向上し、2021年の経済総量は114兆元を超え、産業システムが完備されているという優位性が引き続き示され、人民の生活は引き続き改善され、社会は調和・安定を維持し、リスク・衝撃への抵抗能力が一層高まっている。

要素条件から見ると、供給分野の要素不足問題の解決に力を入れ、エネルギー・原材料供給の保障が顕著に増強されている。

石炭の質の優れた生産能力が発揮され、価格は顕著に下落し、電力供給は平穏で秩序立っている。

2021年の集積回路生産量は、前年比33.3%増で、自動車用チップの供給は徐々に増大している。

内生的動力から見ると、強大な国内市場の形成を早急に促進し、新たな発展の枠組の構築は新たな歩みを踏み出している。

消費の伸びの潜在力は巨大である。伝統産業は、デジタル化・ネットワーク化・スマート化の方向への延伸・拡大を加速し、新興産業は勢い盛んに発展し、地域重大戦略と新しいタイプの都市化建設が積極的に推進され、投資ニーズが不断に奮い立っている。

重点分野の改革が深く推進され、対外開放が引き続き拡大されている。

政策サポートから見ると、クロスシクリカル・カウンターシクリカルなコントロールの有機的な結びつきが強化され、マクロ・ミクロ・構造・科学技術・改革開放・地域・社会の「7大政策」の組合せ効果が引き続き発揮されている。

マクロ政策はなおかなり大きな余地があり、政策の備蓄手段はかなり多く、経済の平穏な運営を維持する能力がある。

2.安定した経済運営態勢により、各種の試練に対応する

当面のマクロ・コントロールは、次の3方面で重点的に力を発揮する。

(1)「穏」(安定・穏健)を第一とすることを際立たせ、マクロ政策は穏健・有効でなければならない

マクロ政策の連続性・安定性・持続可能性を維持し、展望性・的確性・有効性を高め、政策のテンポ・程度・重点をしっかり把握し、マクロ経済の大基盤の安定に力を入れる。

積極的財政政策は効果を高めなければならず、中小・零細企業、個人工商事業者及び製造業等重点業種を軸に、更に強力な組合せ式の減税・費用引下げ政策を精確に実施しなければならない。

穏健な金融政策は柔軟・適度でなければならず、流動性の合理的充足を維持し、金融機関が実体経済への支援を強化するよう誘導しなければならない。

雇用優先政策をしっかり実施し、重点層の雇用を確実に保障する。

(2)政策の統一・協調を強化し、成長安定の合成力を形成する

21年と22年の政策の統一・協調を強化し、21年に打ち出して実施している周期を跨いだ調節の政策効果を引き続き顕在化させ、22年も一連の新たな政策措置を打ち出し、しっかり有効にリンクさせなければならない。

部門間の政策の統一・協調を強化し、経済政策と非経済政策をしっかり有効にリンクさせる。

各政策を打ち出す前には、しっかり評価・分析を行い、経済の安定に資する政策を積極的に推進し、収縮効果のある政策は慎重に打ち出さなければならない。

(3)経済の平穏なスタートを軸に、政策の力発揮を適切に前倒ししなければならない

22年1-3月期が直面する不確定要因はかなり多く、政策の力を発揮するポイントを適切に前倒しし、早く手配し、早く実施し、早く効果を上げ、安定した経済運営態勢により各種試練に対応する。

内需拡大戦略の一連の政策措置を早急に打ち出して実施する。

工業振興のための的確な措置を速やかに検討・提起する。

インフラ投資を適度に前倒しで展開し、1-3月期に更に多くの実物成果量を形成するよう努力する。

3.内需拡大戦略を断固実施する

現在、疫病の散発が消費の回復に引き続き制約を形成しており、内需の成長の持続力はなお顕著に不足している。

サプライサイド構造改革を引き続き深化させ、内需拡大戦略を断固実施し、経済発展の内生的動力を不断に増強しなければならない。

(1)消費ニーズの発揮に力を入れる

企業が更に多くのカスタマイズ化・スマート化・グリーン化した製品を打ち出すよう誘導する。

自動車・家電等の大口消費を奮い立たせる政策措置をしっかり実施する。

農村観光、ヘルスケア・高齢者介護、特色ある民宿等のサービスの質を高め、周辺観光・近郊観光・氷雪観光の商品供給を豊富にする。

商品消費とサービス消費の結合を促進し、情報消費・グリーン消費等の新しいタイプの消費を拡大する。

県・郷・村の電子サービスシステムと宅配物流配送システムを早急に貫通させる。

(2)投資の合理的伸びを促進する

インフラ投資を適度に前倒し展開し、第14次5カ年計画の102件の重大工事・プロジェクトの実施を着実に推進する。

新しいタイプのインフラ建設を推進し、伝統産業のハイエンド化・スマート化・グリーン化・最適化・グレードアップへの支援を強化する。

重大プロジェクトの土地・海・エネルギー利用等の要素保障を強化し、中央予算内投資・地方政府特別債をうまく十分用いる。

民営経済の発展環境を最適化し、社会(民間)資本の活力を積極的に動員し、法に基づき資本への有効な監督管理を強化する。

(3)民生の保障・改善を強化する

共同富裕を着実に推進し、中等所得層を拡大し、個人所得水準を高める。

新たな就労形態の労働者の合理的な労働報酬の獲得を保障し、健全で柔軟な就労に適応した公共サービスと保障体系を確立する。

基本年金保険の全国統一を推進する。基本公共サービスの均等化水準を高める。

賃貸・分譲の並立を堅持し、長期住宅賃貸市場の発展を加速し、社会保障的性格をもつ住宅の建設を推進する。

(4)都市・農村、地域の協調発展を推進し、内需の潜在力を発揮させる

地域重大戦略と地域協調発展戦略を深く実施する。

農村振興を全面推進し、脱貧困地域の発展を引き続き推進する。

メガロポリス(都市群)と都市圏の建設を着実に推進し、新しいタイプの都市化建設の質を高める。