田中 修

中国経済レポート

経済諸会議の動向(1)

新領域研究センター 田中 修

2022年1月4日


はじめに

中央経済工作会議終了後、各官庁は全国会議を開催し、政策各論を議論している。本稿では、12月11日に開催された全国発展・改革工作会議の概要を紹介したい。

1.2021年の総括

過去の一年は極めて尋常ではなかった。習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、各地方・各部門が共同で努力し、全国各民族人民が団結奮闘し、わが国経済はかなり好い発展態勢を維持し、新たな発展の枠組の構築で新たな歩みを踏み出し、質の高い発展で新たな成果を収め、第14次5カ年計画は良好なスタートを実現した。

このプロセスにおいて、我々は党の全面指導を堅持し、党百年の奮闘の歴史経験を大いに伝承し、パワーを集中して大事・難事・急事に取り組む制度の優位性を十分発揮して、部門がすべて揃い、独立完全な産業システムに十分依拠して、わが国の経済発展は引き続き世界の前列にあり、中国の特色ある社会主義制度の巨大な優越性とわが国経済発展の堅実な物質的基礎、及び全国上下が責任を担って結果を出し、事業・起業を行う精気・精神を示した。

各レベルの発展改革幹部は、大胆に闘争し、巧みに闘争し、問題に向き合って、堅塁を攻略・難関を克服し、経済社会発展のために新たな積極的貢献を行った。

2.2022年の経済政策の総体要求・主要目標・政策の方向性

中央経済工作会議は、既に2022年の経済政策の総体要求・主要目標・政策の方向性を明確にした。発展改革政策の観点からすると、6方面を重点的に把握しなければならない。

①発展が第一の重要任務であることを堅持する

「穏」(安定・穏健)の字を第一とし、安定の中で前進を求め、経済の合理的区間での平穏な運営を維持する。

②サプライサイド構造改革の深化と内需拡大を更に有機的に結びつける

供給システムの質を高め、経済循環を円滑にすることに力を入れ更に工夫をこらし、イノベーション駆動による発展戦略を深く実施し、ハイレベルでの科学技術の自立・自強を推進し、各種の難点・目詰まりを断固打開し、強大な国内市場の形成を促進する。

③実体経済の発展を更に強力に支援する

企業とりわけ製造業企業、中小・零細企業、個人工商事業者等への精確な支援を増やし、企業の急速な技術改造、転換・グレードアップの実現を推進する。

④更に改革開放に依拠することを重視し、動力・活力を増強する

質の高い発展を制約する体制メカニズムの障碍を深く打破し、全国統一した大市場の建設を推進し、市場化・法治化・国際化した一流のビジネス環境を作り上げ、「一帯一路」共同建設の質の高い発展を推進し、更にハイレベルの開放型経済新体制を建設する。

⑤発展と安全を統一する

重大リスクを有効に防止・解消し、各種の複雑な局面に対応する政策を事前にしっかり準備する。

⑥人民を中心とする発展思想を堅持する

発展の中で人民生活を引き続き改善し、共同富裕を着実に推進する。

3.2022年の経済政策

2022年の経済政策について、中央経済工作会議は既に全面系統的な手配を行っており、発展改革系統組織は割り引くことなく学習・貫徹にしっかり取り組み、時代と共に前進してしっかりきめ細かく実施しなければならない。

①既定の手配を堅持し、自身の事柄に断固しっかり取り組む

発展環境の「変化」と経済のファンダメンタルズの「不変」を深刻に理解し、いささかも揺るぐことなく党中央の各既定手配を実施し、新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹し、新たな発展の枠組を速やかに構築し、質の高い発展の推進に力を入れ、サプライサイド構造改革を深化させ、疫病防御と経済社会発展を統一し、発展と安全を統一しなければならない。

②「穏」(安定・穏健)を第一とし、経済の大基盤をしっかり安定させることに力を入れる

全局と局部の関係を把握しなければならない。

経済の総量がかなり大きく、発展の基礎がかなり良好な地域は、主動的に牽引し、全国経済の「バラスト」としての役割をしっかり発揮して、全国経済の発展のために多く貢献するよう努力しなければならない。

経済の総量が相対的にかなり小さく、民生の保障圧力がかなり大きい地域は、民生の最低ラインをしっかり保障し、安全・安定を確保しなければならない。

③問題志向を堅持し、主要な矛盾と、矛盾の主要方面を確実に解決する

2022年の経済運営は少なからぬ問題・試練に直面しており、問題を直視し速やかに協調して解決しなければならない。ちょっと油断すると容易に過ぎ去ってしまう可能性のあるチャンスを重点的にうまくしっかり掴み、パワーを集中して際立った問題を解決し、「精確」「速やかに」実施しなければならない。

4.2022年の発展・改革の重点任務

中央経済工作会議が手配した2022年の各重点任務について、発展改革系統組織は自身の職能を十分履行し、発展改革系統組織の具体的政策に係る組織化・協調・実施を断固貫徹し、かつ主動的・積極的に推進し、消費を有効に拡大し、投資を促進し、産業構造の調整・最適化を早急に推進し、地域重大戦略と地域協調発展戦略を深く実施し、農村振興を全面的に推進し、都市化建設の質を高め、市場化改革を深化させ、ハイレベルの開放を拡大し、基本民生をしっかり保障しなければならない。

同時に、エネルギー、食糧、産業チェーン・サプライチェーンの安全・安定対策をしっかり実施する。

(1)エネルギーの生産・供給・備蓄・販売システムの建設を強化する

石炭・電力・石油・ガス・輸送の保障について各部の間の協調メカニズムの役割を十分発揮し、石炭・電力・天然ガス等の供給保障にしっかり取り組む。

きめ細かなエネルギー使用管理を強化し、民生・公共用エネルギー需要を確保し、エネルギー効率が基準レベルより低い重点業種企業の改造・グレードアップの秩序立った実施を推進し、全社会の電力・エネルギー使用節約強化を推進する。

先に新たなモデルを構築してから伝統モデルを打破し、エネルギー構造の調整・最適化を秩序立てて推進し、砂漠・ゴビ砂漠・荒地を重点とした大型風力発電・太陽光発電基地の建設を積極的に推進し、伝統エネルギーとりわけ石炭・石炭火力発電のピーク調整・最低ライン保障・供給保障の役割を引き続き発揮させる。

(2)食糧生産・購入・備蓄・加工・販売の健全な協同保障メカニズムを整備する

最も厳格な耕地保護制度を実施し、国家黒土地保護プロジェクトを深く推進し、ハイレベルの農地の建設・管理に引き続きしっかり取り組む。種業の振興を引き続き推進する。

コメ・小麦の最低購入価格政策を堅持し、しっかり実施し、農民の作付け収益を合理的に保障し、質の優れた食糧プロジェクトを深く推進する。

食糧の全チェーン節約・損耗削減と反食品浪費キャンペーンを展開する。潜在的な食糧分野リスクの隠れた弊害にしっかり対応する。

(3)産業チェーン・サプライチェーンの安全・安定を保障する

産業チェーンの際立ったボトルネック制約の打破に力を入れ、産業チェーン・サプライチェーンの自主的なコントロール可能能力を高め、内需の潜在力を十分発掘し、ブランド建設により消費のグレードアップをリードし、医療・ヘルスケア、高齢者介護・託児保育、文化・観光・スポーツ等の生活関連サービス業の質向上・拡大を推進し、第14次5カ年計画102項目の重大プロジェクトの建設を着実に推進し、インフラ投資を適度に前倒しで展開し、政府の投資牽引作用を発揮し、交通・物流・生態環境・社会事業等の不足部分を補強するプロジェクト建設への民間資本参加を奨励・誘導する。

4.発展改革系統組織の心構え

発展改革系統組織は初心を忘れず、使命を胸に刻み、党の百年奮闘の歴史経験を深刻に把握し、偉大な建党精神を大いに発揚し、党中央の号令に断固呼応し、発展改革の各政策を着実にしっかり実施し、党中央・国務院と各レベルの党委員会・政府の参謀・助手を確実にしっかり務めなければならない。

①割り引くことなく、党19期6中全会と中央経済工作会議精神をしっかり実施する

②政治判断力・政治理解力・政治執行力を不断に高める

③党風の廉潔政治建設を一層強化する1

(参考)国家発展・改革委員会副主任兼国家統計局長 寧吉喆の中央電視台インタビュー(2021年12月23日)

(1)主要な政策

2022年は「穏」(安定・穏健)の字を第一に、安定の中で前進を求めるという要求を断固貫徹し、一連の経済安定に資する政策を積極的に推進する。

政策は主として4方面が含まれる。

①マクロ政策方面

引き続き積極的財政政策と穏健な金融政策を実施し、投資政策・消費政策手段をうまく用いて、内需拡大戦略要綱をしっかり実施し、経済発展に対する個人消費の基礎的作用を更にしっかり発揮させ、資金等の要素を動員し、供給構造の最適化に対する投資のカギとなる作用を確実に増強し、発展の内生的動力を増強する。

②改革開放政策方面

全国統一の大市場の建設を加速し、ハイレベルの市場システムの建設を推進し、(生産)要素市場の市場化配分総合改革テストにしっかり取り組む。

国有企業改革を引き続き深化させ、民営経済の発展環境を最適化し、民営経済の発展環境を最適化し、大企業と中小・零細企業が共生・共栄する発展環境を作り上げる。

外資の直接投資奨励の範囲を引き続き拡大する。

③構造政策方面

国内大循環の円滑化を軸に、サプライサイド構造改革を引き続き深化させ、供給の制約・目詰まりを打破し、製造業のコアコンピタンスを高め、いくらかの産業基盤再構築プロジェクトを始動し、大衆による起業・万人によるイノベーションを深く推進し、いくらかの「専門・精密・特色ある・革新的な」小巨人企業を育成する。

④地域政策方面

地域協調発展の新たなメカニズムと政策体系を整備し、地域重大戦略と協調発展戦略政策を強化し、発展のバランス性・協調性を増強する。

国家の新しいタイプの都市化計画をしっかり実施し、メガロポリス(都市群)と都市圏建設を着実に秩序立てて推進し、県域を重要なキャリヤーとする新しいタイプの都市化を早急に推進する。

(2)政策の前倒し

中央経済工作会議は、「政策の力発揮を適切に前倒しする」と提起している。国家発展・改革委員会の政策の力発揮の適切な前倒しは、主として現在3方面である。

①インフラを前倒しで強化する

インフラ投資を適度に前倒しで展開し、水利、交通、生態環境保護、農業・農村、都市インフラと新しいタイプのインフラの建設を支援する。

②資金の下達を前倒しする

中央予算内投資の下達の進度を加速し、地方政府特別債の発行のテンポを加速する。

③プロジェクトを前倒しで手配する

建設中のプロジェクトを早急に推進し、いくらかの機の熟したプロジェクトを早急に新規着工し、有効な投資を牽引する。

同時に、政策実施にしっかり取り組んで実効を上げ、できるだけ速やかにマクロ経済政策の実施をミクロ市場主体に届かせる。

(3)政策の直接到達メカニズム

政策の効果を更に速く更にしっかりと末端・企業・プロジェクト・雇用に届かせる。

これは、常態化した財政資金直接交付メカニズムを引き続きしっかり用い、一層範囲を拡大することを要求しており、金融直接到達メカニズムを円滑化し、投資の直接到達メカニズムを円滑化し、資金・政策・要素の下方移転の推進に力を入れる。

(4)マクロ・コントロール

中央経済工作会議は、マクロ・コントロールの展望性・的確性・有効性を高め、クロスシクリカル(周期を跨ぐ)・カウンターシクリカルなマクロ・コントロール政策を有機的に結びつけなければならない、と強調している。

クロスシクリカルの「跨ぐ」は、政策の年度を跨ぐ手配の上に体現されており、カウンターシクリカルの「逆」は、経済サイクルの変動への反作用の上に体現されている。具体的には、経済の下振れ圧力への対応と経済の乱高下防止を結びつけ、今年の政策措置と来年度の政策措置を結びつけ、財政金融政策とその他の政策を結びつけるものである。

今年10-12月期に発行した新規地方政府特別債の相当大きな部分は、今年末・来年初に使用される。これは、来年度発行する特別債と相乗効果を形成し、工業経済運営の活性化、減税・費用引下げ、中小・零細企業への金融支援等の政策も既に続々と打ち出され実施されており、今年から来年にかけて作用を発揮する。これらはいずれも、クロスシクリカルな調節の要求を体現している。

財政・金融・雇用政策と産業・投資・消費・社会・環境保護・地域等の政策のシステムインテグレーション効果を形成しなければならない。同時に、政策を打ち出す前に経済発展に対する影響評価をしっかり行い、経済運営の安定に資する政策、活力を奮い立たせ動力を増すことに資する改革措置を速やかに打ち出し、収縮効果を備えた政策を慎重に打ち出して、市場の予想を安定させることにより、発展への自信を奮い立たせなければならない。

(5)需要の収縮・供給のダメージ・予想の弱気化の三重圧力への対応

これらの圧力は、多くの方面の要因が共同作用した結果であり、世界の疫病が不断に蔓延していることと、世界経済の回復がアンバランスであること、先進経済体の流動性が氾濫していること、国際エネルギー・資源等の大口取引商品価格が大幅上昇していることが積み重なった影響によるものである。

国内の疫病の散発・多発、一部地域の洪水・冠水災害のダメージが攪乱を与えており、わが国経済に長期に存在するいくらかの深層レベルの矛盾が際立ち、経済成長の動力エネルギーが減退していることが制限を科しており、いくらかの収縮効果を備えた政策打出しが制約を与えてもいる。この背景の下、予想の安定の重要性が更に際立っている。

予想を安定させるには、まず経済・産業を安定させなければならない。有効な政策措置を採用して、投資・工業を振興し、マクロ経済の大基盤を確実にしっかり安定させなければならない。

有効な投資を積極的に拡大しなければならない。第14次5カ年計画の102項目の重大プロジェクトの建設を着実に推進する。四川・チベット鉄道、西部陸海新ルート、沿江高速鉄道等の重大プロジェクトの建設を質高く推進する。天然ガスパイプライン、防災・減災等の分野の不足を早急に補強し、都市内の冠水へのシステミックな対策を実施し、排水・冠水防止施設の建設を統一して推進する。政府投資の誘導作用を更にしっかり発揮させ、同時に都市インフラ・交通・物流・生態環境・社会事業等の不足を補強するプロジェクトの建設に民間資本が参加するよう積極的に奨励・誘導する。

工業経済の運営を推進し奮い立たせなければならない。最近打ち出した工業経済運営を奮い立たせ、工業の質の高い発展を推進する実施プランをしっかり実施し、実体経済の発展を更に強力に支援し、企業とりわけ製造業企業、中小・零細企業、個人工商事業者への精確な支援を増やし、企業の設備更新・技術改造加速を推進し、実体経済の発展の根本基盤の打ち固めに力を入れる。

(6)供給・価格の安定、内需拡大、企業の優遇・困難緩和

市場主体と人民大衆の切実なニーズについて、重点を掴み難題を解決し、政策措置を打ち出して、マクロ経済の予想を安定させなければならない。

食糧・食用油・肉・卵・野菜とその他生活必需品の生産・供給・販売のリンクに特別注意し、石炭・電力・石油・ガス・輸送の調節をしっかり行い、市場の安定供給と価格の基本的安定を確保し、困窮大衆への補助が物価と連動するメカニズムを適時始動しなければならない。

これと同時に、内需拡大に力を入れる。打ち出した内需拡大実施プラン・政策措置をしっかり実施し、有効な投資を積極的に拡大し、インフラネットワークの空白を補充し、いくらかの新しいタイプのインフラを配置する。引き続き消費のホットスポットを育成し、新エネルギー自動車の消費を促進し、グリーン・スマート家電の農村普及を展開し、医療・ヘルスケア、高齢者介護・託児保育、文化・観光・スポーツ等の生活関連サービス業の質の向上・拡大を推進する。

2022年、国家はさらに企業優遇・困難緩和の推進に力を入れ、既に打ち出した各減税・費用引下げ政策をしっかりきめ細かく実施し、新たな減税・費用引下げ政策を早急に実施し、金融支援を強化し、小型・零細企業、個人工商事業者のために困難を緩和し、製造業等の重点業種の発展に助力する。

(7)不足部分の補強、食糧・エネルギー・産業チェーンの安全・安定

マクロ経済の予想安定方面で不足部分の補強に力を入れ、食糧安全・エネルギー安全・産業チェーン・サプライチェーンの安定政策に重点的にしっかり取り組まなければならない。

①食糧安全方面

最も厳格な耕地保護制度を実施し、国家黒土地保護プロジェクトを深く推進し、ハイレベルの農地の建設・管理に引き続きしっかり取り組む。種業振興キャンペーンを深く実施する。コメ・小麦最低購入価格政策を堅持・実施し、質の優れた食糧プロジェクトを深く推進し、食糧の生産・購入・備蓄・加工・販売の健全な協同保障メカニズムを整備する。

②エネルギー安全方面

石炭・電力・石油・ガス・輸送の保障政策の各部間の協調メカニズムの役割を十分発揮させ、石炭・電力・天然ガス等の供給保障を強化する。エネルギー使用の管理を強化・精緻化し、エネルギー消費が高水準の企業のエネルギー使用を重点的にコントロールし、エネルギー効率の模範水準をベンチマークとし、重点業種企業の改造・グレードアップの秩序立った実施を推進し、全社会電力・エネルギー使用節約強化を推進し、先に新たなモデルを構築して後、伝統モデルを打破し、エネルギー構造の調整・最適化を秩序立てて推進する。

③産業チェーン・サプライチェーンの安定方面

産業チェーンの際立ったボトルネック制約の打破に力を入れ、パワーを集中して自動車等の分野の半導体不足問題を解決し、国内大口取引商品市場の監督管理を強化し、現代国際物流サプライチェーン体系の構築を加速する。産業チェーン・サプライチェーンの自主コントロール可能能力を高め、企業を主体とした技術革新体系の構築を加速し、引き続き国家戦略的新興産業集積群発展プロジェクトを実施し、現代サービス業と先進製造業・現代農業との深い融合を推進し、伝統産業の改造・グレードアップを加速する。

  1. 心構えの部分は、要点のみ紹介する。