田中 修

中国経済レポート

中央経済工作会議のポイント

新領域研究センター 田中 修

2021年12月23日


はじめに

12月8~10日、中央経済工作会議が開催され、2022年の経済政策の方針が決定された。本稿では、会議の概要と留意点を紹介する。なお、読みやすくするため、見出しを適宜つけ、重要な部分は下線で示している。

1.2021年の回顧
(1)成果

今年は党・国家の歴史上、一里塚の意義を有する1年であった。

我々は、中国共産党創立百周年を厳かに慶祝し、第1の百年奮闘目標を実現し、第2の百年奮闘目標に向けて進軍する新たな征途を開き、百年の変局と世紀の疫病に落ち着いて対応し、新たな発展の枠組の構築は新たな歩みを踏み出し、質の高い発展は新たな成果を収め、第14次5カ年計画の良好なスタートを実現した。

わが国の経済発展と疫病防御は世界のリード役の地位を維持し、国家の戦略的科学技術パワーが急速に壮大となり、産業チェーンの強靭性が高まり、改革開放が深く推進され、民生保障は有力・有効で、生態文明建設が引き続き推進された。

これらの成績を得たのは、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の結果であり、全党・全国各民族人民が一致協力し、刻苦奮闘した結果である。

(2)困難・試練

十分成績を肯定すると同時に、わが国の経済発展が需要の収縮・供給のダメージ・予想の弱気化の三重の圧力に直面していることを見て取らねばならない。世紀の疫病の衝撃の下、百年の変局が急速に変化し、外部環境は更に複雑・峻厳・不確定傾向にある。

我々は、困難を正視するのみならず、自信を確固としなければならない。わが国経済の強靭性は強く、長期に好い方へ向かうファンダメンタルズに変わりはない。世界の風雲がいかに変幻しようとも、我々は自身の事柄に断固しっかり取り組み、経済の基礎を不断に強化し、科学技術イノベーション能力を増強し、多国間主義を堅持し、ハイレベルの国際経済貿易ルールを主動的にベンチマーク化し、ハイレベルの開放により深層レベルの改革を促進し、質の高い発展を推進しなければならない。

(留意点)

中国経済が、災害・コロナの再拡大による需要の収縮、原材料価格高騰・電力不足による供給へのダメージ、経済の減速・不動産市場の動揺による将来予測の弱気化という三重苦に直面していることを率直に認めている。

(3)法則性の認識

リスク・試練に対応する実践の中で、我々は経済政策をしっかり行うための法則性の認識を一層累積した。

①党中央の集中・統一的な指導を堅持しなければならない

重大な試練に落ち着いて対応し、歩調を一致させて前進しなければならない。

②質の高い発展を堅持しなければならない

経済建設を中心とすることは、党の基本路線の要求であり、全党は精神を集中して貫徹執行し、経済の質の着実な向上と量の合理的な成長の実現を推進しなければならない。

③安定の中で前進を求めることを堅持しなければならない

政策の調整と改革の推進は、タイミング・程度・効果をしっかり把握し、先に新たなモデルを確立してから伝統的なモデルを打破することを堅持し、ゆっくりと着実に物事を進めなければならない。

④統一・協調を強化し、システムの概念を堅持しなければならない

(留意点)

21年会議では、「5つの根本」として、①党中央の権威、②人民至上、③制度の優位性、④科学的政策決定と創造的な対応、⑤科学技術の自立・自強が掲げられていた。

今回は、「経済建設を中心とする」ことが改めて強調されている。これは、共同富裕の推進をめぐり、左派が「経済建設を中心としたことにより、貧富の格差が拡大した」と主張し、鄧小平理論を否定しようとしていることへの反論だとの指摘がある。

また、「先に新たなモデルを確立してから伝統的なモデルを打破することを堅持し、ゆっくりと着実に物事を進めなければならない」としているのは、地方が炭素排出削減を急ぐあまりに石炭・電力不足を招いたことへの反省であろう。

2.2022年の経済政策
(1)基本方針

2022年は第20回党大会が開催される。これは、党・国家の政治生活の一大事であり、平穏・健全な経済環境、国を安泰させ民を安んじる社会環境、気風が清く正しい政治環境を維持しなければならない

2022年の経済政策をしっかり行うには、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、第19回党大会と党19期各全会精神を全面的に貫徹実施し、偉大な建党精神を発揚し、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、新発展理念を完全・正確・全面的に貫徹し、新たな発展の枠組を早急に構築し、改革開放を全面深化させ、イノベーション駆動による発展を堅持し、質の高い発展を推進し、サプライサイド構造改革を主線とすることを堅持し、疫病防御と経済社会の発展を統一し、発展と安全を統一し、「6つの安定」(雇用・金融・対外貿易・外資・投資・予想を安定させる)、「6つの保障」(庶民の雇用、基本民生、市場主体、食糧・エネルギーの安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の運営を保障)政策を引き続きしっかり実施し、引き続き民生を改善し、マクロ経済の大きな基盤の安定に力を入れ、経済運営を合理的区間に維持し、社会の大局の安定を維持し、第20回党大会の勝利の開催を迎えなければならない。

(留意点)

中国では、しばしば「発展・改革・安定の関係をうまく処理しなければならない」と言われるが、大きな政治イベントのある年は「安定」が最優先される。22年は第20回党大会が開催されるため、マクロ経済の基盤と社会の大局の安定が重視されているのである。

(2)具体的政策

2022年の経済政策は「穏」(安定・穏健)の字を第一とし、安定の中で前進を求め、各地方・各部門はマクロ経済安定の責任を担い、各方面は経済安定に資する政策を積極的に推進し、政策の力発揮を適宜前倒ししなければならない

(留意点)

例年に比べ、政策各論の記述が著しく簡略化されている。これは、後述の「新たな発展段階の新たな重大理論・実践問題」が、今回の会議の重点であったためであろう。

「政策の力発揮の前倒し」とは、後述のインフラ投資の前倒しを念頭に置いたものであろう。予算は3月の全人代で審議されるため、1-3月はインフラ投資の新規着工が行われず、経済が減速する傾向がある。22年は、1-3月期の成長率の更なる落込みが懸念されるため、全人代常務委員会の承認により、地方政府特別債を前倒し発行し、インフラ投資の新規着工加速を図ろうとしているのであろう。

①マクロ政策

マクロ政策は穏健・有効でなければならず、引き続き積極的財政政策と穏健な金融政策を実施しなければならない

積極的財政政策は効果を高め、「精確・持続可能」を更に重視しなければならない。財政支出の強度を保証し、支出の進度を加速しなければならない。新たな減税・費用引下げ政策を実施し、中小・零細企業、個人工商事業者、製造業、リスク解消等への支援の程度を強化し、インフラ投資を適度に前倒しで展開する。党・政府機関は倹約を堅持しなければならない。財経紀律を厳格にする。地方政府の隠れ債務の新たな増加に断固歯止めをかける

穏健な金融政策は柔軟・適度で、流動性の合理的充足を維持しなければならない。金融機関が実体経済とりわけ小型・零細企業、科学技術イノベーション、グリーン発展への支援を増やすよう誘導する。

財政政策と金融政策は協調・連動しなければならず、クロスシクリカル(周期を跨ぐ)・カウンターシクリカルなマクロ・コントロール政策を有機的に結びつけなければならない

内需拡大戦略をしっかり実施し、発展の内生的動力を増強する。

(留意点)

21年会議では、マクロ政策は「連続性・安定性・持続可能性を維持」とし、20年の景気対策の継続が強調されていたが、今回は「穏健・有効」と、トーンが弱くなっている。

財政政策は、21年は「質・効率を高め、更に持続可能にする」とされていたが、今回は「効果を高め、精確・持続可能性を更に重視」と、財政規律をより重視するトーンとなっている。支出の拡大よりも、支出進度の加速、減税・費用引下げ、インフラ投資の前倒しが重視されているのである。

金融政策は、21年は「柔軟・精確、合理的・適度」であったが、今回は「柔軟・適度」に簡素化された。「流動性の合理的充足」を言っておけば充分だからであろう。今回は「マクロレバレッジ率の安定維持」への言及がない。借入の元本償還・利払い猶予の期限が切れること、不動産市場が動揺していることで、若干の債務比率の増加を予想しているのかもしれない。

マクロ・コントロールについては、最近「周期を跨ぐ(クロスシクリカル)調節」が強調される傾向にあったが、今回は「カウンターシクリカル」も併記された。これは、現在経済が経済サイクルのどの段階にあるか、直ちに判断がつかないからかもしれない。

②ミクロ政策

ミクロ政策は、市場主体の活力を奮い立たせなければならない

市場主体の自信を奮い立たせ、公平な競争政策の実施を深く推進し、反独占・反不当競争を強化し、公正な監督管理により公平な競争を保障しなければならない。知的財産権の保護を強化し、各種所有制企業が互いに競い合って発展する良好な環境を作り上げなければならない。契約精神を強化し、悪意の代金未払いと債務逃れ・債務踏倒し行為について有効な対策を講じる。

(留意点)

「市場主体の活力」が重視されている。これは雇用の確保にもつながるからであろう。

また、最近の左派による民営企業批判を意識し、「各種所有制企業が互いに競い合って発展」を強調している。

③構造政策

構造政策は、国民経済循環の円滑化に力を入れなければならない

サプライサイド構造改革を深化させ、国内大循環の円滑化に重点を置き、供給の制約・目詰まりを打破することに重点を置き、生産・分配・流通・消費の各段階の貫通に重点を置かなければならない。製造業のコアコンピタンスを高め、いくらかの産業基盤再生プロジェクトを始動し、多くの「専門・精密・特色ある・革新的」な企業が奮い立ち、湧き起るようにしなければならない。内外が連結し、安全で効率の高い物流ネットワークの形成を加速する。デジタル化改造を加速し、伝統産業のグレードアップを促進する。

「住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない」という位置づけを堅持し、予想の誘導を強化し、新たな発展モデルを模索し、賃貸・分譲の並立を堅持し、長期賃貸市場の発展を加速し、社会保障的性格をもつ住宅の建設を推進し、分譲住宅市場を支援し住宅購入者の合理的な住宅ニーズを更に好く満足させ、都市の事情に応じて施策を講じて不動産業の良性の循環と健全な発展を促進しなければならない

(留意点)

ミクロ政策では、「新たな発展の枠組の構築」の内容が強調されている。

住宅政策については、恒大グループ等の経営危機による不動産市場の動揺を反映して、「予想の誘導強化」が強調されている。また21年は、「不動産市場の平穏で健全な発展」であったが、今回は「不動産業の良性の循環と健全な発展」と、市場よりも業界の健全な発展に重点が置かれている。「良性の循環」は、建設・販売・購入者への引き渡し、不動産融資の円滑化を意識しているのであろう。

④科学技術政策

科学技術政策は、着実に実施しなければならない

科学技術体制改革3年アクションプランを実施し、基礎研究10年計画を制定・実施しなければならない。国家の戦略的科学技術パワーを強化し、国家実験室の役割をしっかり発揮させ、全国重点実験室を再編し、科学研究所(院)の改革を推進する。企業のイノベーション主体としての地位を強化し、産・学・研の結合を深化させ、科学技術イノベーションの環境を整備し、着実な科学研究の作風を形成し、国際科学技術協力を引き続き展開しなければならない。

⑤改革開放政策

改革開放政策は、発展動力を奮い立たせなければならない

(生産)要素市場化配分総合改革テストにしっかり取り組み、株式発行・登録制を全国的に実行し、国有企業改革3年行動任務を達成し、電力網・鉄道等の自然独占業種の改革を着実に推進しなければならない。地方の改革の積極性を動員し、各地方が土地の事情に応じて施策を講じ、主動的に改革を行うよう奨励する。

ハイレベル対外開放を拡大し、制度型開放を推進し、外資企業への国民待遇をしっかり実施し、更に多くの多国籍会社の投資を吸収し、重大外資プロジェクトの早急な実施を推進する。「一帯一路」共同建設の質の高い発展を推進する。

(留意点)

改革について、地方政府の役割が強調されている。開放では「一帯一路」が復活した。

⑥地域政策

地域政策は、発展のバランス性・協調性を増強しなければならない

地域重大戦略と地域協調発展戦略を深く実施し、東部・中部・西部と東北地方の協調発展を促進しなければならない。農村振興を全面推進し、新しいタイプの都市化建設の質を高める。

⑦社会政策

社会政策は、民生の最低ラインをしっかり保障しなければならない

経済発展と民生保障を統一的に推進し、常住地が基本公共サービスを提供する健全な制度を整備しなければならない。

大学卒業生等の青年の雇用問題をしっかり解決し、フレキシブルな労働の雇用と社会保障の健全な政策を整備する。

基本年金保険の全国統一を推進し、新しい出産政策の実施を推進して実効を上げ、人口高齢化に積極的に対応する。

(留意点)

雇用では、従来、大学卒業生・出稼ぎ農民・退役軍人が重点層とされてきたが、特に大学卒業生の雇用が重視されている。また、コロナによって増大した「フレキシブルな就労者」への対応も言及されている。

出産政策については、「3人目の子どもの出産」が認められたため、これが出生人口減少に一定の歯止めをかけられるかが焦点となる。

3.新たな発展段階の新たな重大理論・実践問題
(1)共同富裕実現の戦略目標と実践経路を正確に認識・把握しなければならない

わが国の社会主義制度の下、社会の生産力を不断に解放・発展させ、社会の富を不断に創造・累積するだけでなく、両極分化を防止しなければならない

共同富裕を実現するには、まず全国人民の共同奮闘を通じてパイを大きく好いものとし、その後合理的制度手配を通じてパイをうまく切り分けなければならない。これは長期の歴史過程であり、この目標に向け着実に邁進しなければならない

質の高い発展を推進する中で、雇用優先の方向性を強化し、経済成長の雇用牽引力を高めなければならない。分配の機能・役割を発揮させ、労働分配を主体とすることを堅持し、要素に応じた分配政策を整備し、税制・社会保障・移転支出等の調節を強化しなければならない。意欲・能力のある企業・社会層が公益慈善事業に積極的に参加することを支援する。

力を尽くして実行し、力量を慮って実行することを堅持し、公共サービスの政策制度体系を整備し、教育・医療・高齢者介護・住宅等の人民大衆が最も関心をもつ分野において、基本公共サービスを精確に提供しなければならない。

(留意点)

ここでも、まず発展(パイの拡大)が重視され、次に「両極分化の防止」(パイの切り分け)が述べられている。そして、共同富裕の実現は長期の歴史過程であるとし、性急な再分配政策には慎重な姿勢を示している。

(2)資本の特性と行動法則を正確に認識・把握しなければならない

社会主義市場経済は偉大な創造であり、社会主義市場経済においては必然的に各種形態の資本があり、資本の生産要素としてのポジティブな作用を発揮させると同時に、そのネガティブな作用を有効にコントロールしなければならない

資本のために「信号灯」を設置し、法に基づき資本への有効な監督管理を強化し、資本の野蛮な生長を防止しなければならない

資本の規範的・健全な発展を支援し、社会主義の基本経済制度を堅持・整備し、いささかも揺るぐことなく公有制経済を強固にして発展させ、いささかも揺るぐことなく非公有制経済の発展を奨励・支援・誘導しなければならない

(留意点)

21年会議では、「反独占と資本の無秩序な拡張の防止」であったが、今回は「資本の野蛮な生長防止」となった。また、資本にはポジティブな作用とネガティブな作用の両面があることを明記し、資本への事前警告のための「信号灯」を設置するとしている。

左派の民営企業批判に対しては、「2つのいささかも揺るがない」を再強調し、「総括」部分でも、引き続き民営企業の発展を支援するとしている。21年8月以降、指導部はこの種の発言を繰り返している。

(3)一次産品の供給保障を正確に認識・把握しなければならない

節約優先を堅持し、全面節約戦略を実施しなければならない。生産分野において資源の全面的な節約・集約・循環利用を推進する。消費分野において全国民の節約意識を増強し、簡素・適度、グリーン・低炭素の生活方式を唱導する。

国内資源の生産保障能力を増強し、石油・ガス等の資源先進採掘技術の開発応用を加速し、廃棄物循環利用システムの構築を加速しなければならない。

農業総合生産能力の向上を更に際立てて位置づけ、ハイレベルの農地建設を引き続き推進し、種業振興キャンペーンを深く実施し、農機具の装備水準を高め、食糧を生産する農民の合理的な収益を保障し、中国人の食糧をどんな時にもしっかり自己の手中に収めなければならない。

(留意点)

2020年以降、経済安全保障が重視されているが、ここでは資源安全保障と食糧安全保障に重点が置かれている。国際一次産品価格の高騰が背景にあろう。

(4)重大リスクの防止・解消を正確に認識・把握しなければならない

引き続き、「大局の安定、統一・協調、施策の分類、精確な爆弾処理」の方針に基づき、リスク処理活動にしっかり取り組み、金融の法治建設を強化し、地方、金融監督管理部門、業種の主管部門の各方面の責任を徹底させ、企業の自力救済の主体責任を徹底させなければならない

能力建設を強化し、金融監督管理の幹部陣容の建設を強化しなければならない。

リスク解消は充分な資源があることが必要で、リスク解消の政策を検討・制定し、広範に協調して、金融リスクの処理メカニズムを整備しなければならない。

(留意点)

危機に際しては、まず企業の自助努力、次に地方・金融監督管理部門・業種主管部門の責任が語られている。金融監督管理の幹部陣容の強化に言及があるが、最近金融監督管理部門の反腐敗調査が強化されており、紀律面で問題があるのであろう。

(5)炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラルを正確に認識・把握しなければならない

炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラルの実現は、質の高い発展を推進するための内在的要求であり、断固推進しなければならないが、一挙にすべてを解決することは不可能である。

「全国統一・節約優先・両輪駆動・内外の円滑化・リスク防止」の原則を堅持しなければならない。伝統的エネルギーの段階的退出は、安全で信頼できる新エネルギーとの代替の基礎の上に確立しなければならない

石炭を主とする基本国情に立脚し、石炭のクリーン・高効率利用にしっかり取り組み、新エネルギーの消化吸収能力を高め、石炭と新エネルギーの最適な組合せを推進しなければならない。グリーン・低炭素技術の難関攻略にしっかり取り組まなければならない。

科学的に審査し、新たに増えた再生可能エネルギーと原料用エネルギーは、エネルギー消費総量コントロールに組み入れず、条件を創造してできるだけ早く、エネルギー消費の「2つ(総量・強度1)のコントロール」から、炭素排出の総量・強度の「2つのコントロール」への転換を実現し、汚染物質排出削減・炭素排出削減のインセンティブ・規制メカニズムの形成を加速し、単純な段階的分散を防止しなければならない。

エネルギー供給を確保し、大企業とりわけ国有企業は供給保障・価格安定を牽引しなければならない。エネルギー革命を深く推進し、エネルギー強国を早急に建設しなければならない。

(留意点)

21年会議では、「条件の整った地方が率先して炭素排出をピークに到達させることを支援しなければならない」と、地方をけしかけていたが、結果として石炭・電力不足が発生したため、今回は「一挙にすべてを解決することは不可能」「安全で信頼できる再生エネルギーをまず確立」「石炭を主とする基本国情に立脚し、まず石炭のクリーン・高効率利用に取り組む」と大きくトーン・ダウンした。また、総量・強度のコントロール対象を、エネルギー消費から炭素排出に転換する旨を明らかにしている。

4.総括2

①「6つの安定」「6つの保障」政策とりわけ雇用・民生・市場主体の保障に引き続きしっかり取り組み、経済運営を合理的区間に維持することを軸に、マクロ・コントロールを強化・改善し、膜と政策のクロスシクリカル(周期を跨ぐ)調節を強化し、マクロ・コントロールの展望性・的確性を高めなければならない。

②市場主体は数億人の就業・起業を担っている。引き続き市場主体に向けて新たな減税・費用引下げを実施し、彼らとりわけ中小・零細企業、個人工商事業者の負担軽減・困難緩和、回復・発展を支援しなければならない。

③実体経済に対する融資支援を強化し、中小・零細企業の資金調達の量増加・範囲拡大・金利引下げを促進する。

④重点層の雇用にしっかり取り組み、雇用措置をしっかりきめ細かく実施する。

⑤財政力の下方移転を推進し、末端政府の企業困難緩和支援政策の実施と基本民生・賃金・運営の保障を更にしっかり支援する。

⑥石炭・電力・石油・ガス・輸送等の調節を強化し、電力の充分な供給を促進する。

⑦重点分野の改革を深化させ、市場の活力と発展の内生的動力を更に大きく奮い立たせ、市場化メカニズムを運用して企業のイノベーション投入を奨励する。多様な所有制経済の共同発展を促進し、民営経済の発展環境を最適化し、各種市場主体の財産権・合法権益を法に基づき保護し、政策は(各種市場主体を)同一視し、平等に対応しなければならない

⑧ハイレベルの開放を拡大し、多くの措置を併せ打ち出して対外貿易を安定させ、産業チェーン・サプライチェーンの安定を保障し、外資吸収を強化する。

5.その他
(1)党委員会・政府の責務

各レベル党委員会・政府は、党中央との高度な一致を自覚的に維持し、政治判断力・政治理解力・政治執行力を高め、さらに歴史知識を学習し、文化の蓄積を厚くし、エコ観念を強化し、行動面では、党の路線・方針・政策を貫徹実施する実際行動上に体現し、質の高い発展を推進する実際行動上に体現し、党のために憂いを分かち、国のために責務を尽くし、人民のために貢献する実際行動上に体現しなければならない。

(2)経済政策の心構え

経済政策は客観的実情と大衆のニーズを尊重し、システム的思考をもち、科学的に計画しなければならない

指導幹部は経済政策を指導する専門能力を高めなければならない。経済社会の発展は1つのシステム工学であり、政治と経済、現実と歴史、物質と文化、発展と民生、資源と生態、国内と国際等の多方面の要因を総合的に考慮しなければならない

指導幹部は経済学の知識・科学技術の知識の学習を更に強化し、特に人民を中心とする発展思想をよく理解し、正確な政治業績観を堅持し、歴史・文化・生態を畏れ敬い、慎重に政策決定し、慎重に権力を用いなければならない。

調査研究を強化し、「三厳三実」3を堅持し、単純化・勝手な振舞いを断固防止し、無責任・不作為に断固反対しなければならない。

(留意点)

経済社会の発展をシステム工学と位置づけ、指導幹部はシステム的思考をもち、多方面の要因の総合的に考慮することが必要であるとしている。このため、経済学のみならず、科学技術の知識の習得も要求されるのであろう。

(3)国民生活の安定の保障

「外では疫病の輸入を防ぎ、内では疫病のリバウンドを防ぐ」ことを堅持し、疫病防御対策を科学的・精確にしっかり実施しなければならない。石炭・電気・石油・ガス・輸送の供給保障を統一的にしっかり手配しなければならない。食糧・食用油・肉・卵・牛乳・果物・野菜等についてしっかり供給を保障し価格を安定させる。出稼ぎ農民の賃金支払を保障し、安全生産・公共安全を強化する。

(4)結び

北京冬季オリンピック・冬季パラリンピックのサービス保障に全力でしっかり取り組み、簡略・安全・精彩を放つオリンピック大会の達成を確保しなければならない。

全党同志は習近平同志を核心とする党中央の周囲に緊密に団結し、「四つの意識」4を増強し、「四つの自信」5を確固とし、「二つの擁護」6を成し遂げ、党史学習教育の成果をうまく運用して、実際の行動により党中央の政策決定・手配を完全実施し、第20回党大会の勝利の開催を迎えなければならない。

  1. GDP単位当たりの排出量を指す。
  2. この部分は、李克強総理の総括講話の概要と思われ、「政府活動報告」の構成の柱になるものと考えられる。
  3. 厳しく身を修め、厳しく権力を用い、厳しく自らを律することと、計画は現実的に立て、事業は着実に進め、人として誠実であること。
  4. 政治意識・大局意識・核心意識・一致意識。
  5. 中国の特色ある社会主義の道・理論・制度・文化への自信。
  6. 習近平総書記の党中央・全党の核心としての地位を擁護し、党中央の権威と集中・統一的指導を擁護する。