田中 修

中国経済レポート

人民銀行第3四半期貨幣政策執行報告

新領域研究センター 田中 修

2021年12月14日


はじめに

本稿では、11月19日に人民銀行が公表した「中国2021年第3四半期(7-9月期)貨幣政策執行報告」の概要を紹介する。なお、前報告から変化したポイントは太字で示している。

1.マクロ経済の展望
1.1 経済の概況

わが国は強い強靭性を備えた超大型経済体であり、経済が長期に好い方へ向かうファンダメンタルズに変わりはなく、発展の潜在力が大きく、挽回の余地が広大であるという特徴が顕著であり、市場主体の活力が充足している1

2021年に入り、わが国は疫病防御と経済社会発展を科学的に統一し、経済はかなり良好な発展態勢を維持し、主要なマクロ指標は総体として合理的区間にある。

7-9月期GDP成長率は9.8%、2年平均で5.2%である。

7-9月期のわが国経済は回復の態勢を維持し、発展の強靭性は引き続き顕著であり、GDPは前年同期比4.9%、2年平均は4.9%の成長である2

7-9月期の農業生産情勢はかなり好く、工業生産は伸びを維持し、収益の伸びはかなり速い。

経済構造は調整・最適化されており、製造業の付加価値のウエイトが高まり、経済成長に対する最終消費の寄与率が高まり、GDP単位当たりエネルギー消費は低下している。

輸出はかなり速い伸びを維持しており、貿易構造は引き続き改善されている。

雇用情勢は総体として安定し、民生保障は有力・有効であり、年間の経済社会発展目標の実現のために良好な基礎を打ち立てている。

穏健な金融政策は、連続性・安定性・持続可能性を維持し、市場の予想を科学的に管理し、実体経済のサポートに力を入れ、金融リスクを有効に防止・コントロールし、マクロレバレッジ率は基本的安定を維持している。

人民元レートの予想は平穏であり、双方向への変動の弾力性が増強され、マクロ経済と国際収支を調節する自動安定器としての役割を発揮している。

1.2 リスク・試練

世界の百年未曾有の大変局と新型コロナ感染症の大流行が交錯して影響しており、外部環境は更に峻厳・複雑となり、国内経済の回復・発展はいくらかの段階的・構造的・周期的要因の制約に直面しており、経済の平穏な運営を維持する難度が増大していることをも見て取らねばならない3

(1)国際環境

世界の疫病の変化はなお不確定性が存在しており、多くの国で既にワクチン接種者が変異ウイルスに感染する事案が出現している。

世界経済の回復の動力エネルギーは鈍化しており、IMF・OECDは最近、2021年の世界経済成長予測をそれぞれ0.1ポイント引き下げ5.9%・5.7%とした。

主要先進経済体のインフレ率が高まっており、FRBは既に債券購入の縮減プロセスを開始し、グローバルなクロスボーダー資本流動と為替レートの変動が増大し、金融市場の相場見通しの調整リスクが上昇している。

(2)国内経済

国内経済の運営は疫病の多くの地での散発、大口取引商品価格の高止まり等の試練に直面している。

現在、不動産市場のリスクが総体としてコントロール可能であり、不動産市場が健全に発展しているという総体としての態勢に変わりはない。

総じて見れば、自信を確固とするとともに、困難をも正視しなければならず、改革とコントロール、短期と長期、内部均衡と外部均衡を結びつけ、精力を集中して自身の事柄にしっかり取り組み、質の高い発展の実現に努力しなければならない。

(3)物価

インフレ圧力はコントロール可能である4

2021年7-9月期、消費市場の需給は基本的に平穏であり、豚肉価格は引き続き下落し、CPI上昇幅を1%下方に牽引し、10月のCPIは前年同期比1.5%上昇であり、10-12月期のCPIはおだやかに上昇し、総体として合理的区間内での平穏な運営を維持している。

これと同時に、大口取引商品価格の上昇、一部エネルギー多消費業種製品の価格引上げと低い前年ベース等の要因の影響を受けて、PPIの上昇幅が引き続き拡大し、短期内は高いレベルを維持する可能性がある5

未来を展望すると、国際疫病にはなお不確定性が存在するが、わが国が世界の主要生産国であり、経済の自給能力がかなり強いことを考慮すると、国際大口取引商品価格の上昇と海外インフレの上昇の影響への対応に有利である。

総じて見れば、わが国の総供給・総需要が基本的に安定しており、中央銀行が正常な金融政策を実施していることは、物価動向が中長期に安定を維持することに有利となる6

2.今後の主要な政策の考え方

今後、人民銀行は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとすることを堅持し、党19期5中全会・6中全会・中央経済工作会議精神を貫徹し、「政府活動報告」の要求を実施し、党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、安定の中で前進を求めるという政策の総基調を堅持し、完全・正確・全面的に新発展理念を貫徹し、サプライサイド構造改革を深化させ、新たな発展の枠組を早急に構築し、現代中央銀行制度を建設し、健全な現代金融政策の枠組を整備し、質の高い発展を推進する7

内外情勢の限界的変化への検討・判断・分析を強化し、今年と来年2年のマクロ政策を統一的にリンクさせ、実体経済へのサポートを更に際立てて位置づけることを堅持し、金融政策の安定性を維持し、市場の予想を安定させ、今年の経済発展の主要目標・任務の達成に努力する。

穏健な金融政策は柔軟・適度、合理的で適度でなければならず、我を主とし8、「穏」(穏健・安定)の字を筆頭において、政策の程度・テンポをしっかり把握し、経済発展とリスク防止の関係をうまく処理し、周期を跨ぐ調節をしっかり行い9、経済の大局の総体としての平穏を擁護し、経済発展の強靭性を強めなければならない10

マネーサプライのコントロールメカニズムを整備し、流動性の合理的充足を維持し、貸出総量の伸びの安定性を増強し11、マネーサプライと社会資金調達規模の伸びを名目成長率と基本的に釣り合わせ、マクロレバレッジ率の基本的安定を維持する。

物価動向を密接にフォロー・検討・判断し、社会の予想を安定させ、物価水準の総体としての安定維持に努力する。

構造的金融政策手段の役割を発揮させ、新たに増やした3000億元の小型・零細企業支援の再貸出額をうまく用いて、小型・零細企業と個人工商事業者向け貸出の増加を支援し12、2つの実体経済に直接到達する金融政策手段13の期限延長をしっかり実施し、2000億元の再貸出額をうまく用いて地域協調発展を支援し、炭素排出削減支援手段をしっかり実施し、2000億元の石炭クリーン・高効率使用特別再貸出を設け14、金融機関が中小・零細企業、グリーン発展等の重点分野と脆弱部分への支援を強化するよう誘導する。

市場化した金利形成と伝達の健全なメカニズムを整備し、貸出プライムレート改革の効能を引き続き発揮させ、預金金利の監督管理を最適化し、小型・零細企業の総合資金調達コストの安定の中での引下げを推進する。

為替レートの市場化改革を深化させ、人民元レートの弾力性を増強し、予想の管理を強化し15、クロスボーダー融資へのマクロプルーデンス管理を整備し、企業と金融機関が「リスク中立性」の理念を堅持するよう誘導し、人民元レートの合理的均衡水準での基本的安定を維持する。

(最悪事態を想定して)最低ラインを保障する考え方を堅持し、システムの概念を増強し、市場化・法治化の原則を遵守し、重大金融リスクの防止・解消政策を統一的にしっかり実施する。

(1)マネー・貸出と社会資金調達規模の合理的な伸びを維持する。

内外部市場環境と多様な不確定要因へのモニタリング・分析を強化し、市場流動性の需給情勢を深く検討・判断し、流動性の周期を跨ぐ調節をしっかり行い、中期貸借ファシリティー、公開市場操作、再貸出・再割引等の多様な金融政策手段を総合運用し、金融政策オペレーションの展望性・柔軟性・有効性を一層高め、流動性の合理的充足を維持し、市場金利が政策金利の中枢を軸として上下に変動するよう誘導する。

マネーサプライのコントロールメカニズムを整備し、中央銀行が銀行の貨幣創造を調節するための流動性・資本・金利を制約する健全で長期有効なメカニズムを形成し、貸出の総量の伸びの安定性を増強し16、マネーサプライと社会資金調達規模が名目成長率と基本的に釣り合うことを維持する。

健全で持続可能な銀行の資本補充のメカニズムを整備し、多くのルートで商業銀行の資本を補充し、中小銀行の永久債の発行等の資本補充手段への支援を強化し、銀行の実体経済へのサービス、金融リスク防止・解消能力を高める。

(2)構造的金融政策手段の牽引・帯同作用を、引き続きしっかり実施・発揮させる。

再貸出・再割引政策の安定性を維持し、引き続き「三農」関連、小型・零細企業、民営企業に包摂的・持続的な資金支援を提供する。

2つの実体経済に直接到達する金融政策手段の期間延長を引き続き実施する。

小型・零細企業のへの金融支援の程度を減じないことを維持し、企業を安定させて雇用を保障するうえでの小型・零細企業の役割を更にしっかり発揮させる。

炭素排出削減支援手段をしっかり実施し、顕著な炭素排出削減効果のある重点プロジェクトのために、金融機関が優遇金利融資を提供するよう誘導し、政策の模範効果を発揮し、社会(民間)資金を更に多くグリーン・低炭素分野に投下するよう奨励し、炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラル目標の実現に助力する。

石炭のクリーン・高効率利用支援特別再貸出の役割をしっかり発揮させ、石炭のクリーン・高効率利用水準向上に力を入れ、国家のエネルギー安全を保障する17

(3)実体経済を金融が有効に支援する体制メカニズムを構築する。

小型・零細企業向け無担保インクルーシブファイナンス政策の実施を強化し、ローリング貸出モデルの普及に力を入れ、中小・零細企業への金融サービス能力建設を強化し、「大胆に貸し、貸したいと思い、貸すことができ、貸す」長期有効なメカニズムの形成を推進する。

脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大し、農村振興を全面推進することへの金融支援政策措置をしっかり実施し、考課・奨励を強化し、種業の発展、新しいタイプの農業経営主体等の農村振興の重点分野と国家農村振興重点支援県等の重点地域への支援を強化する。

関係部門と協調して、炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラル政策を統一的に秩序立ててしっかり実施し、法に基づきルールに合致し、リスクがコントロール可能な基礎の上に、金融機関が石炭火力発電企業の緊急発電供給保障のための資金調達需要を合理的に満足させるよう奨励する18

持続可能な発展リンク債券、カーボンニュートラル債券等の商品の運用を刷新し、エネルギー安全供給保障とグリーン低炭素転換への金融支援の役割を発揮させる。

「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という位置づけをしっかり堅持し、「不動産を短期的経済刺激の手段としない」ことを堅持し、地価・住宅価格・予想の安定を堅持し、不動産金融政策の連続性・一致性・安定性を維持し、不動産金融のプルーデンス管理制度をしっかり実施し、住宅賃貸への金融支援を強化し、関係部門・地方政府と協調して不動産市場の平穏で健全な発展を共同で擁護し、住宅消費者の合法権益を擁護する19

(4)金利・為替レートの市場化改革を深化させ、金融政策の伝達ルートを円滑にする。

市場化された金利の形成・伝達の健全なメカニズムを整備し、中央銀行の政策金利体系を整備し、市場金利が政策金利を軸に変動するよう誘導する。

引き続きLPR(貸出プライムレート)改革の潜在力を発揮させ、資源配分最適化におけるLPR改革の役割を十分発揮させ、市場化方式により金融機関が更に多くの金融資源を小型・零細企業にもたらすことを促進し、小型・零細企業の市場競争性を増強し、小型・零細企業の総合資金調達コストの安定の中での引下げを推進する。

預金金利の監督管理措置の実施・最適化を督促し、銀行の負債コストの基本的安定を維持し、預金市場の競争秩序を擁護し、金融系統組織が利潤を実体経済に移譲することを引き続き推進する。

為替レートの市場化改革を着実に深化させ、市場需給を基礎とし、通貨バスケットを参考として調節を進め、管理された変動為替レート制度を整備し、人民元レートの弾力性を増強し、マクロ経済と国際収支の調節における為替レートの自動安定器としての機能を発揮させる。予想の管理を強化し、人民元レートの合理的な均衡水準での基本的安定を維持する。

外為市場を発展させ、企業と金融機関が「リスク中立性」の理念を樹立するよう誘導し、実需原則とリスク中立性原則に基づき、中小・零細企業に為替レートリスク回避サービスを積極的に提供するよう金融機関を指導し、中小・零細企業の為替レートリスク回避コストを引き下げ、自身の外為業務リスクの管理を強化し、外為市場の平穏で健全な発展を擁護する。

人民元の国際化を引き続き穏当・慎重に推進し、対外通貨協力を深化させ、オフショア人民元市場を発展させる。クロスボーダー貿易・投資のハイレベルの開放テストを展開し、クロスボーダーの貿易・投資における人民元使用の利便化の程度を高め、人民元の資本項目の兌換化を着実に推進する。

(5)リスク防止と発展促進を共に重視することを堅持し、債券市場の質の高い発展を引き続き推進する20

債券市場の法制を一層整備し、情報開示要求を強化し、仲介機関の監督管理を強化する。

効率の高い連結した多層レベルの健全な市場システムを整備し、多元化した適格投資家の陣容を育成する。

国家重大戦略・産業、地域に対する支援を強化し、債券市場が実体経済にサービスする質・効率を高める。

債券市場の更にハイレベルな対外開放を着実に推進する。

債券市場のリスクを速やかに防止・解消し、市場化・法治化の原則に基づき、各方面の責任を徹底させ、デフォルト処理メカニズム建設の各成果を引き続き実施し、法執行メカニズムを最適化・統一し、債券市場の法律・ルールに違反した行為を厳しく取り締まる。

(6)中国の特色ある現代金融企業制度を確立し21、金融企業のコーポレートガバナンスを不断に整備する。

コーポレートガバナンスの強化を核心とすることを堅持し、大型商業銀行改革を深化させ、中国の特色ある現代金融企業制度を確立する。

大型銀行がサービスの重心を下に移すよう誘導し、中小銀行の主たる責任・本業への集中を推進し、金融市場の活力と強靭性を増強し、高度な適応性・競争力・包摂性を備えた健全な現代金融システムを整備する。

開発性・政策性金融機関改革を引き続き推進し、機関の主体責任を徹底させ、一行につき一政策を実施し、漸進的・段階的に既存の業務の改革を推進し、業務の分類管理・勘定の分類計算を実現し、透明度を順序立てて高め、資本制約を強化し、リスク管理を強化し、健全なインセンティブメカニズムを整備し、実体経済へのサポート・国家戦略へのサポート方面における、開発性・政策性金融機関の重要な役割を更にしっかり発揮させる。

(7)(最悪事態を想定し)最低ラインを保障する考え方を堅持し、システムの概念を増強し、市場化・法治化の原則を遵守し、重大金融リスクの防止・解消を統一的にしっかり行う22

金融安定の基礎を打ち固め、経済の質の高い発展により金融リスクを解消する23

既存のリスクの解消を全力でしっかり行い、各種リスクのリバウンド・復活に断固歯止めをかけ、その他分野のリスク処理プロセスで二次金融リスクを誘発することを防ぐ24

預金保険の市場化された処理プラットフォームの役割を一層発揮させ、多様な市場化・法治化方式を模索し、中小銀行のリスク解消・資本補充を支援する。

健全な金融リスク問責メカニズムを整備し、重大金融リスクについて厳格に責任追及・問責する。

地方の党・政府の同じ責任制を実施し、各方面の責任を徹底させ、メカニズムを円滑化し、職責を明確にし、分業・協調し、合成力を形成して、モラルハザードを有効に防止する。

システム上重要な銀行への監督管理を強化し、銀行が期限どおり付加監督管理指標を満足させることを推進し、回復計画と処理計画の建議を制定し、情報移送等へのプルーデンス監督管理の要求を実施し、リスク開示を速やかに進める25

成長の安定とリスク防止の関係をうまく処理し、システミック金融リスクを発生させない最低ラインをしっかり守る。

3.不動産融資の状況

9月末、主要金融機関(外資を含む)の不動産融資残高は51.4兆元、前年同期比7.6%増であり、伸びは6月末より1.9ポイント鈍化した。

うち、個人住宅ローン残高は37.4兆元、同11.3%増であり、伸びは6月末より1.7ポイント鈍化した。住宅開発融資残高は9.3兆元、同0.1%増であり、伸びは6月末より3.3ポイント鈍化した。

4.金融機関預金準備率の引下げ

人民銀行は、2021年7月15日から、金融機関人民元預金準備率を0.5ポイント引き下げ(既に5%の預金準備率を執行している機関を除く)、長期資金約1兆元を解放し、この引下げ後の金融機関の加重平均預金準備率は8.9%となった。

今回の預金準備率引下げは、金融政策の程度が常態に回帰した後の通常オペレーションであり、目的は金融機関の資金構造の最適化、金融機関の資金配分能力の増強である。

①流動性の合理的充足を維持し、質の高い発展とサプライサイド構造改革のために、適切なマネー・金融環境を作り上げる。

②金融機関の融資構造を最適化し、実体経済を金融機関が支援する長期に安定した資金源を有効に増やし、金融機関が預金準備率引下げで得た資金を積極的に運用して、小型・零細企業への支援を強化するよう誘導する。

③金融機関の資金コストを毎年約130億元減らし、金融機関の伝達を通じて、社会の総合資金調達コストの引下げを促進することができる。

5.構造的金融政策手段の役割を積極的に発揮させた
(1)「三農」支援、小型・零細企業支援の再貸出・再割引等の手段を積極的に運用し、金融機関が小型・零細企業、民営企業、「三農」、貧困支援等の国民経済の重点分野・脆弱部分と地域の協調発展に対して、支援を強化するよう誘導する

再貸出の精確な点滴灌漑・プラスのインセンティブ作用を引き続き発揮させ、脱貧困堅塁攻略の成果を強固にすることと農村振興の有効なリンクを支援した。

「三農」支援、小型・零細企業支援再貸出を運用して、地方法人金融機関が農村振興向け貸出を拡大するよう誘導し、現行規定に基づき貧困支援再貸出の期間延長を進め、脱貧困堅塁攻略の成果を強固なものにすることを支援した。

地域の協調発展を促進し、実体経済への支援を強化し、10省の地方法人金融機関が、2000億元の再貸出額をうまく用いて、地域内の「三農」関連、小型・零細企業、民営企業等の経済発展の脆弱部分への支援を強化するよう誘導した。

市場主体とりわけ中小・零細企業の困難緩和支援の強化に関する国務院の政策決定・手配を貫徹実施し、新たに3000億元の小型・零細企業支援再貸出額を増やし、地方法人金融機関が大口取引商品価格の上昇・疫病の影響がかなり大きい小型・零細企業と個人工商事業者に貸出を行うことを支援し、資金調達コストを引き下げた。

9月末、全国「三農」支援再貸出残高は4747億元、小型・零細企業支援再貸出残高は9937億元、貧困支援再貸出残高は1904億元、再割引残高は5842億元である。1-9月、人民銀行は政策性銀行と開発性銀行から担保補充貸出3506億元を純回収し、うち7-9月期は2082億元を純回収して、9月末の残高は2兆8844億元であった。

(2)直接到達・精確という特徴を際立たせ、引き続き2つの実態経済に直接到達する金融政策手段を推進して、中小・零細企業の発展を支援した

2020年6月に政策を打ち出して以降、2021年9月末までに、小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの期限延長支援手段は月ごとに操作され、累計で地方法人銀行に奨励資金178億元を提供し、地方法人銀行の小型・零細企業向けインクルーシブファイナンス元本期限猶予1兆7833億元を支援し、小型・零細企業の段階的な元本償還・利払い圧力を軽減した。

小型・零細企業向け無担保インクルーシブファイナンス支援計画は季節ごとに操作され、累計で地方法人銀行に優遇資金2744億元を提供し、地方法人銀行の小型・零細企業向け無担保貸出7651億元を支援し、小型・零細企業の資金調達難問題を有効に緩和した。

2020年から2021年9月まで、全国銀行業金融機関は、13.5兆元の貸出元本・利息について猶予を実施し、累計で小型・零細企業向け無担保インクルーシブファイナンスを8.6兆元実施した。

(3)党中央・国務院の炭素排出ピークアウト・カーボンニュートラルに関する重要政策決定・手配を実施し、炭素排出削減支援手段を創設した

炭素排出削減支援手段は、実体経済に直接到達する構造的金融政策手段であり、着実に順序立てて、精確な直接到達方式により、クリーンエネルギー、省エネ・環境保護、炭素排出削減技術等の重点分野の発展を支援し、更に多くの社会(民間)資金をテコ入れして動かし炭素排出削減を促進した。

人民銀行は「先に貸し出し、後で借りる」直接到達メカニズムを通じて、金融機関が炭素排出削減重点分野内の関係企業に向けた条件に合致する炭素排出削減貸出について、貸出元本の60%の資金支援を提供し、金利を1.75%として、金融機関が自主的に政策決定し、リスクを自己負担する前提の下、炭素排出削減重点分野内の各種企業を同一視して、これに炭素排出削減貸出を提供するよう誘導し、貸出金利は同期限・ランクの貸出プライムレートと概ね一致させた。

炭素排出削減支援手段は「加法」とし、新規フロー資金を用いてクリーンエネルギー等の重点分野の投資と建設を支援し、エネルギー総体の供給能力を増やした。

炭素排出削減支援手段設立の基礎の上に、さらに2000億元の炭素クリーン・高効率利用特別再貸出を設立し、政策の一定規模を形成し、グリーン・低炭素発展を推進した。

6.システム上重要な金融機関の監督管理の枠組を整備した

 10月15日、人民銀行・銀行保険監督管理委員会は、「システム上重要な銀行の付加監督管理規定(試行)」を正式に公布し、システム上重要な銀行の監督管理実施のためにガイドライン・根拠を提供した。

 主要な内容は、以下のものが含まれる。

①資本の付加・レバレッジ率の付加等を含む、監督管理指標の付加要求を明確にした。

②回復・処理計画の要求を明確にした。

システム上重要な銀行は、グループレベルでの回復計画・処理計画建議を制定し、規定に基づき人民銀行を主管とする危機管理小組に提出し、審査を進めなければならない。

③情報報告・開示、リスクデータ総和、リスク報告、コーポレートガバナンスの要求等を含む、プルーデンス監督管理の要求を明確にした。

人民銀行・銀行保険監督管理委員会は、モニタリング・分析とストレステストの結果に基づき、適時システム上重要な銀行に対しリスクを提示し、システミック金融リスクを引き下げるよう督促することができる。

同日、人民銀行・銀行保険監督管理委員会は、わが国のシステム上重要な銀行のリストを発表し、2020年のデータ評価に基づいて認定した国内のシステム上重要な銀行は19行であり、これには6行の国家商業銀行、9行の株式制商業銀行、4行の都市商業銀行が含まれる。

システム上重要な銀行は、システム上の重要性の低い方から高い方まで5グループに分かれる。

①第1グループ:8行

平安銀行、中国光大銀行、華夏銀行、広発銀行、寧波銀行、上海銀行、江蘇銀行、北京銀行

②第2グループ:4行

浦発銀行、中信銀行、中国民生銀行、中国郵政貯蓄銀行

③第3グループ:3行

交通銀行、招商銀行、興業銀行

④第4グループ:4行

中国工商銀行、中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行

⑤第5グループ:暫定的に該当なし

7.預金金利の自律的上限の最適化の成果は顕著である(コラム)

2021年6月21日、人民銀行が市場金利を指導して金利を定める自律メカニズム(金利自律メカニズム)は、預金金利の自律的上限を、預金基準金利に倍数をかけて変動することから、ポイントを加えて確定することに改めた。

一定期間実施して以降、預金金利の自律的上限の最適化の成果は顕著であり、預金の市場競争は更に秩序立ち、長期預金金利は顕著に低下し、定期預金の期間構造がある程度最適化され、銀行間の預金の分布が基本的に安定していることは、銀行の負債コストの安定に資するものである。

長期ににわたり、わが国の預金の市場競争はかなり激烈であり、とりわけ個別銀行はハイリスク経営・盲目的な規模追求により高金利で預金を引き寄せ、正常な経営の銀行も追随して金利を決定せざるを得ず、「囚人のジレンマ」に陥り、「不良銀行が金利を決める」問題が出現していた。これは、市場金利が預金金利に伝わることを阻害し、貸出プライムレート改革が預金金利の市場化を推進する効果に一定程度影響を与えていた。

2013年、人民銀行は金利自律メカニズムの確立を指導し、金融機関の金利決定行為に対して自律的管理を進めた。

2015年、預金金利の規制を廃止して後、金利の自律メカニズムは業界の自律協議を通じて預金金利上限を約定し、個別銀行が高金利により預金を呼び寄せる行為を規制し、預金市場の非理性的な競争を抑制し、預金市場の競争秩序を有効に擁護した。

しかし、過去預金基準金利に基づき倍数をかけ変動させて確定した自律上限にはレバレッジ効果が存在し、中長期預金金利を高めにし、個別銀行はなお定期預金の期限前引出により個別金利計算できるようにする等のいわゆる金利「イノベーション」を通じて、高金利により預金を呼び寄せ、預金金利の自律的効果を弱化させていた。

今回の預金金利の自律上限の最適化後、当座預金と1年物とそれ以下の短期・中期定期預金金利の自律上限は基本的に平穏になり、2年物とそれ以上の長期定期預金金利の自律上限はある程度低下し、銀行が自主的に金利を決定する余地を保障しただけでなく、個別銀行の非理性的な競争行為を有効に規制できるようになった。

一定期間実施いて以降、預金金利の自律的上限の最適化の成果は顕著である。

①預金金利は顕著な成果が発生した

短期・中期預金金利は基本的に平穏で、長期預金金利は顕著に低下し、預金の市場競争は更に秩序立っている。

9月、新たに発生した定期預金の加重平均金利は2.21%であり、前年同期比0.17ポイント低下し、預金金利自律上限最適化前の5月に比べ、0.28ポイント低下した。

うち、2年物の定期預金金利は5月に比べ0.25ポイント、1年物は0.43ポイント、5年物は0.45ポイント低下した。

②定期預金の期間構造が最適化された

定期預金のうち、長期預金は額のウエイトのある程度の低下が発生した。

9月、新たに発生した定期預金は5.6兆元であり、うち2年物とそれ以上の長期定期預金のウエイトは26.4%で、前年同期比5.9ポイント低下し、5月に比べ10.6ポイント低下した。

③銀行間の預金の分布が基本的安定を維持している

9月、全国性銀行の定期預金の発生額は3.7兆元であり、ウエイトは約66%、前年同期比0.7ポイント上昇し、5月に比べ3.2ポイント上昇した。

うち、金利の低下幅が顕著な2年以上の長期定期預金は、9月の全国性銀行の発生額が7842億元、ウエイトが53.3%で、前年同期比1.4ポイント低下し、5月に比べ0.9ポイント低下した。

今後、人民銀行は引き続き金利の市場化改革を深化させ、LPR改革の潜在力を引き続き発揮させ、貸出金利の伝達ルートを円滑化し、金融資源の配分構造を最適化し、これまでの貸出金利引下げの成果を強固にする。同時に、預金金利の監督管理を最適化し、金融機関の負債サイドのコストの基本的安定を維持し、金融機関の実体経済への政策ボーナスの伝達を推進し、貸出金利の安定の中での引下げを促進する。

  1. これは、報告自身が太字にしている。以下、ことわりのない太字は筆者。
  2. これは、報告自身が太字にしている。
  3. これは、報告自身が太字にしている。
  4. これは、報告自身が太字にしている。
  5. 前回より、PPIの動向に悲観的なトーンとなっている。
  6. 「長期にインフレあるいはデフレの基礎は存在しない」という強気の表現は消滅した。
  7. 「新たな発展段階に立脚する」という表現が引き続き削除されている。
  8. 金融政策の自主性が強調されている。
  9. 「政策設計」から「調節」に変化した。
  10. 「正常な金融政策の実施を堅持」の表現が削除された。
  11. 新たに盛り込まれた。
  12. 新たに盛り込まれた。
  13. 小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの元本償還・利払い猶予と、小型・零細企業向け無担保インクルーシブファイナンス支援計画。
  14. 新たに盛り込まれた。
  15. 前回の「市場の予想を安定」から表現が強まった。
  16. 新たに盛り込まれた。
  17. 新たに盛り込まれた。
  18. 新たに盛り込まれた。
  19. 新たに盛り込まれた。
  20. 前回本文にあった内容が見出しとなった。
  21. 前回本文にあった内容が見出しとなった。
  22. 見出しが書き換えられた。
  23. 新たに盛り込まれた。
  24. 中央財経委員会の表現が新たに盛り込まれた。
  25. 新たに盛り込まれた。