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研究者のご紹介

田中 修

中国経済レポート

不動産税の法制化

 

新領域研究センター 田中 修

2021年11月04日


はじめに

全人代常務委員会は10月23日、国務院に授権して一部地域で不動産税の改革テストを展開することを決定した。本稿では、決定と人民日報の解説記事(2021年10月25日)の概要を紹介する。

1.全人代常務委員会決定(10月23日)

不動産税の立法・改革を積極かつ穏当に推進し、住宅の合理的消費と土地資源の節約・集約利用を誘導し、不動産市場の平穏で健全な発展を促進するため、第13期全人代常務委員会第31回会議は、国務院に授権し一部地域で不動産税改革テストを展開することを決定した。

(1)テスト地域の不動産税課税対象は、居住用・非居住用等の各種不動産とし、法に基づき保有する農村住宅用地とその上の住宅を含めない。

土地使用権者・家屋所有権者は、不動産税の納税者となる。

非居住用不動産は、引き続き「中国不動産税暫行条例」「中国都市土地使用税暫行条例」に基づき、執行する。

(2)国務院は不動産税テストの具体弁法を制定し、テスト地域人民政府は具体的実施細則を制定する。
国務院及びその関係部門、テスト地域人民政府は、科学的で実行可能な徴収管理モデルと手続を構築しなければならない。

(3)国務院は、積極かつ穏当の原則に基づき、テストの深化と立法の統一、不動産市場の平穏で健全な発展促進等の情況を統一的に考慮して、テスト地域を確定し、全人代常務委員会に案を報告する。

本決定のテスト期間は5年であり、国務院テスト弁法を公布した日から起算する。
テストのプロセスにおいて、国務院はテスト経験を速やかに総括し、授権期間満期の6カ月前に、全人代常務委員会に対してテスト情況を報告しなければならない。

引き続き授権が必要なものは、関係意見の提起を認め、全人代常務委員会が決定する。

条件が成熟したとき、速やかに法律を制定する。

本決定は公布の日から施行し、テスト実施始動の日は国務院が確定する。

2.人民日報解説記事「不動産税改革がやって来た!関心問題はこれだ」(2021年10月23日)

10月23日、第13期全人代常務委員会第31回会議は、国務院に授権し一部地域で不動産税改革テストを展開することを決定した。

(1)課税の理由
今年に入り、国家レベルは不動産税について既に何回も表明してきた。

3月から、「不動産税の立法を推進し、健全な地方税体系を整備する」を第14次5カ年計画要綱に書き入れ、5月には、財政部劉昆部長が「質の高い発展に資する健全な現代財政制度・税制を確立する」を著し、「不動産税の立法・改革を推進する」と提起した。

さらに10月16日、『求是』誌が発表した、習近平総書記の「共同富裕を着実に推進する」の中では、「積極かつ穏当に不動産税の立法・改革を推進し、テストをしっかり行わなければならない」と提起されており、不動産税改革の矢は既に放たれようとしている。

中国財政科学研究院の賈康研究員の分析によれば、住宅の保有段階での税負担を形成した後は、不動産市場の需給双方に影響を生み出し、不動産市場の運営の中間に一種の「バラストにより安定を促す」メカニズムを総合的に形成し、恣に憚ることのない投機に歯止めをかけ、その他改革措置との組合せにより「健全な発展のための長期有効なメカニズム」を作り上げることになる。

賈康は、「これは、多重のプラス効果のある改革であり、この決定の意義は重大であり、各方面が注意を払うに値する」とする。彼によれば、不動産の長期有効なメカニズムから共同富裕に至り、さらには地方政府の機能転換の推進に至るまで、不動産税は大きな期待を寄せられている。

一面では、不動産税改革は、歴史的高みに立って、新時代の歴史責任を担い、共同富裕推進と、3次分配体系の実現のために必要な機能の最適化プロセスにおいて、重要な役割を演ずるものであり、更に好く所得分配を調節し、社会の公平を実現するものである。

他方で、不動産税の課税は、一定期間を経るごとに課税ベースを1回再評価することを意味しており、これも地方政府が機能転換し、心と力を尽くして公共サービスをしっかり実施し、管轄地の投資環境を最適化するために、その財源建設と更に有効な「内部調整メカニズム」をもたらすものである。

西南財経大学財税学院の李建軍副院長は、「テスト方式で穏当に秩序立てて推進することは、わが国の多くの改革が成功するための重要な経験である。不動産税の授権テストは、国家が改革深化により地方ガバナンスの現代化を推進し、不動産市場の健全で持続可能な発展を促進し、共同富裕の推進で重要な歩みを踏み出すことを表明したものである」としている。

(2)課税対象
中国人民銀行の公開データによれば、2020年、わが国の都市住民家庭の平均総資産に占める住宅のウエイトは7割近くであり、不動産は既にわが国民の家庭の主要資産となっている。このため、不動産税の改革は、勢い人民大衆の心を引き付けることになる。

今回のテスト地域での不動産税課税体対象は、居住用・非居住用等の各種不動産であり、法に基づき保有する農村住宅用地とその上の住宅を含まない。土地使用権者・家屋所有権者が不動産税の納税者となる。

李建軍は、「わが国の土地所有権は国家あるいは集団所有に帰属しており、土地所有権を除き、家屋財産権は主として土地使用権と家屋所有権がある。

未だ開発・建設していない居住用・非居住用途の不動産・土地使用権者と家屋所有権者の不一致の情況が存在するため、不動産税の課税対象は、『家屋所有権者』から『土地使用権者と家屋所有権者』までであり、このような設計は更に科学的で完備されており、不動産税の徴収管理を更に好く保障することができる」と指摘する。

賈康は、「これは、農村住宅を除き、各種不動産がすべて課税範囲に組み込まれたことを意味するが、不動産によって課税方式は異なる」としている。

2011年、上海・重慶領地は既に個人の住宅に対して「不動産税」の課税をテストしている。異なるところは、上海は現地住民の2番目の住宅に対してのみ、重慶は別荘・高級住宅に対してのみ課税していることである。

これについて、賈康は、「上海・重慶のテスト経験を総括すると、長期的な角度から見て、将来の不動産税の課税対象は『フローのみに及び、ストックには及ばない』ということはあり得ない。同時に、積極かつ慎重な態度を堅持し、柔軟に切り込み、開始した時から方案に対する社会の受容可能性をしっかり考慮しなければならない」と分析する。

(3)対象都市
どの地方が最初に先鞭をつける都市となるのか?これも大衆が十分関心のある問題である。

賈康は、「イノベーションの先端のモデル区は、先行してテストに加わり、その他の地方と全局の改革手配のために、更に好い事例・経験を提供することができる」とする。

彼は、「確かなことは、将来範囲を拡大するテスト地域については、すべて弾力化の余地を与え、すべてのテスト地域に完全一致した方案を採用するよう要求はしないだろう、ということである。このほか、立法プロセスにおいて、一旦通過しても、全国一律にせず、地方が異なる情況に応じて、前後して、あるいは差別的に具体的実施細則を制定することを認めるだろうということである」と強調している。

不動産税は新しい税目として、テスト地域ではどのように具体的オペレーションを行うのか? 住宅を保有する個人・家庭に対してどのような影響があるのか?

李建軍は、「テスト期間は、不動産税は、テスト地域内で多くの住宅を保有する個人あるいは家庭に対して、直接影響を及ぼす。予想できるのは、不動産税の課税は減免の設計があるべきだということである。例えば、最初の住宅への税の減免、不動産税の一定面積課税免除等である。これにより実際上、最初の住宅需要を満足するため不動産を購入する家庭にとっては、実質的影響がなくなることになる。不動産税のテストが予見できる形で徐々に全国で推進されるに伴い、不動産投資家の予想収益と住宅への投資・投機需要は低下するだろう」とする。

賈康は、財政部・税務総局等の管理部門は、全人代常務委員会の授権に基づき、不動産税テスト弁法(草案)の起草に急ぎ取り組み、手続に従ってテストの各準備活動をしっかり行うだろうと予想している。