田中 修

中国経済レポート

中央人材工作会議

新領域研究センター 田中 修

2021年10月14日


はじめに

9月27~28日、李克強総理の主催により中央人材工作会議が開催された。会議には政治局常務委員全員が出席し、王滬寧が総括講話を行った。本稿では、会議における習近平総書記の重要講話の概要を紹介する。

百年奮闘の歴史過程において、わが党は常に人材の育成・人材の団結・人材によるリード・人材の成就を重視し、各方面の人材を団結させ支援して、党と人民の事業のために功業を立ててきた。

第18回党大会以降、党中央は「人材は、民族の振興を実現し、国際競争に勝利するための戦略資源である」という重大判断を行い、全方位で人材の育成・導入・使用のための重大手配を行い、新時代の人材政策推進で歴史的成果を収め、歴史的変革を発生させた。

党は人材政策への指導を全面強化し、人材の陣容を急速に壮大にし、人材の効能を引き続き増強し、人材の比較優位性を着実に増強しており、わが国は既に、「規模が広大で、素質が優良で、構造が不断に最適化され、役割が日増しに際立ってきている」人材の陣容を有しており、わが国の人材政策は新たな歴史的起点に立っている。

現在、わが国は社会主義現代化国家を全面建設し、第2の百年奮闘目標に向け進軍する新たな征途に入っており、我々は歴史上のいかなる時期と比べても、中華民族の偉大な復興という壮大な目標の実現に更に接近しており、歴史上のいかなる時期と比べても、更に人材を渇望してもいる。

我々の奮闘目標を実現するには、ハイレベルの科学技術の自立自強がカギとなる。総合国力の競争は、とどのつまり人材競争である。人材は、一国の総合国力を量る重要指標である。国家の発展は人材に依拠し、民族の振興は人材に依拠する。我々は憂患意識を増強し、人材の自主育成を更に重視し、人材資源の競争優位性を早急に確立しなければならない。

第18回党大会以降、党中央は、「何故人材強国を建設するのか、何が人材強国なのか、どのように人材強国を建設するのか」という重大理論と実践問題に深刻に回答し、一連の新理念・新戦略・新措置を提起した。

①人材政策への党の全面指導を堅持する。

②人材により発展をリードするという戦略的位置づけを堅持する。

③世界の科学技術の先端に向かい、経済の主戦場に向かい、国家の重大需要に向かい、人民の生命・健康に向かうことを堅持する。

④全力で人材を育成し、うまく用いることを堅持する。

⑤人材発展の体制メカニズムの改革を深化させることを堅持する。

⑥天下の英才を集めて用いることを堅持する。

⑦才能を識別し、才能を愛し、才能を敬い、才能を用いる環境を作り上げることを堅持する。

⑧科学家者精神の発揚を堅持する。

以上の8項目は、我々がわが国の人材事業の規律性についての認識を深化させたものであり、常に堅持して、不断に豊かに発展させなければならない。

世界の重要人材センターとイノベーションの高地の建設を加速するには、戦略を主動的に把握し、トップダウン設計と戦略・計画にしっかり取り組まなければならない。

我々の目標は、

(1)2025年まで

全社会のR&D経費の投入を大幅に伸ばし、科学技術イノベーションの主力軍の陣容建設で重要な進展を得て、トップレベルの科学者の凝集水準を顕著に高め、人材の自主育成能力を不断に増強し、カギ・コアとなる技術分野で一大戦略科学技術人材・一流科学技術の先端を歩む人材とイノベーション団体を擁する。

(2)2030年まで

質の高い発展に適応した人材制度体系を基本的に形成し、イノベーション人材の自主育成能力を顕著に高め、世界の優秀な人材に対する吸引力を顕著に増強し、主要科学技術分野においてトップランナーを擁し、新興先端学際分野で開拓者を擁する。

(3)2035年まで

わが国は多くの分野で人材競争の比較優位性を形成し、国家戦略科学技術パワーとハイレベル人材の陣容が世界の前列にいる。

世界重要人材センターとイノベーションの高地の建設を加速し、戦略的配置を進める必要がある。

総合的に考慮し、北京、上海、広東・香港・マカオ大ベイエリアにおいて、ハイレベル人材高地の建設を認め、ハイレベル人材が集中する中心都市も人材を吸引・凝集するプラットフォームの建設に力を入れなければならず、人材発展の体制メカニズム総合改革テストを展開し、国家の質の優れた資源を集中し、国家実験室と新しいタイプの研究開発機関の建設を重点支援し、国際大科学計画を発動し、人材のために国際一流のイノベーションプラットフォームを提供し、戦略支点と雁行形態構造の形成を加速する。

人材発展の体制メカニズム改革を深化させなければならない。

需要と実際に基づき、雇用主体に十分授権し、人材の育成・導入・使用における雇用主体の積極的役割を発揮させなければならない。

雇用主体は主観的能動性を発揮し、サービス意識と保障能力を増強し、有効な自己抑制と外部の監督メカニズムを確立し、下方委譲した権限をしっかり引き継ぎ、うまく用いなければならない。

雇用単位は主体責任を確実にしっかり履行し、授権をうまく用いることができず、職責履行が不十分な場合は問責しなければならない。

積極的に人材のために規制緩和し、人材管理制度を整備し、人材を根本として、人材を信任し、人材を尊重し、人材を善く待遇し、人材を包容しなければならない。

科学者に更に大きな技術路線決定権、更に大きな経費支配権、更に大きな資源調節権を賦与し、同時に健全な責任制と、任務を果たせない場合ペナルティを受けてよい旨の誓約制度を確立し、科学技術プロジェクトが成果を収めることを確保しなければならない。

科学研究経費の管理改革を深化させ、人材計画を最適化・整理合理化し、人材が心静かに学問を行い、研究を行い、多く成果を出し、好い成果を出すようにしなければならない。

人材評価体系を整備し、イノベーションの価値・能力・貢献を基準とする人材評価体系を早急に確立し、科学技術人材が研究・イノベーションに専念することに有益な評価体系を形成・実施しなければならない。

戦略的科学者の育成に力を入れ、実践基準を堅持し、国家重大科学技術任務の綱領を担う者の中から、科学的素養が深く、科学研究の第一線で長く奮闘し、視野が広く、先行きの判断力・学際的な理解能力を備え、大兵団の作戦を組織・指導する能力が強い科学者を発見しなければならない。

長期の目線を堅持し、更に多く戦略的科学者の潜在能力を備えたハイレベルの複合型人材を意識的に発見し、戦略的科学者の各世代に及ぶ成長構造を形成しなければならない。

大掛かりな一流科学技術の先端を歩む人材とイノベーション団体を作り上げ、国家実験室・国家科学研究機関・ハイレベルの研究型大学・科学技術先端企業の国家隊列としての役割を発揮させ、国家重点分野・重点産業を軸に、産・学・研究所を組織して協同で難関を攻略しなければならない。

先端を歩む人材を発見するメカニズムとプロジェクト・団体を選定するメカニズムを最適化し、先端を歩む人材に対して各世代の人材・科学研究条件・管理メカニズムを手配する特殊政策を実行しなければならない。

規模が壮大な青年科学技術人材の陣容を育成し、国家戦略人材パワーの政策重心を青年科学技術人材に置き、青年人材が重要な役割に挑み、主役となることを支援しなければならない。

多くの卓越したエンジニアを育成し、党を愛し国に報い、仕事を敬い貢献し、際立った技術革新能力を備え、複雑な工業技術問題をうまく解決するエンジニアの陣容の建設に努力しなければならない。

大学・企業の2つの積極性を動員し、産・学・研究所の深い融合を実現しなければならない。

全方位の人材の培養・導入と上手な使用に更に力を入れなければならない。

わが国は世界で規模が最大な高等教育体系を擁しており、各事業の発展の広範な舞台があり、完全に源泉を絶やすことなく多くの優秀な人材を育成でき、完全に大家を育成できる。我々は、このような決意・自信がなければならない。

人材自主育成の道をしっかり歩み、大学とりわけ「一流大学・一流学科」に指定された大学は、基礎研究人材の育成の主力軍としての役割を発揮し、全方位で基礎学科の人材育成を計画し、いくらかの基礎学科の育成基地を建設し、ハイレベルの複合型人材を育成しなければならない。

基礎研究人材特別プロジェクトを制定・実施し、自然科学分野で際立った成績を収め、顕著なイノベーション潜在力を備えた青年人材を長期安定的に支援しなければならない。多くの哲学者・社会科学者・文学者・芸術家等の各方面の人材を育成・養成しなければならない。人材の国際交流を強化しなければならない。

各種人材をうまく活かして用い、緊急に必要な不足する特殊人材については、特殊政策を実施し、完全無欠を要求してはならず、職歴の長さによって待遇を決めてはならず、全員を一律の尺度で量ってはならず、真に才能・学識のある人材英雄に腕を振るわせなければならない。

信任を基礎とした人材使用メカニズムを確立し、失敗を許容し、心配に寛容であり、科学技術の先端を歩む人材を指導的地位に立たせることを奨励しなければならない。

各種人材のために事業・起業するプラットフォームを立ち上げ、知識・技術等を十分体現したイノベーション要素価値の収益分配メカニズムを構築し、事業により人材を奨励し、人材に事業を成就させなければならない。

人材政策をしっかり行うには、正確な政治方向を堅持し、不断に知識分子政策を強化・改善し、人材が愛国の心を深く胸に抱き、報国の志を鍛え磨き、主動的に時代が与えた使命・責任を担うよう奨励しなければならない。

広範な人材は、年輩科学者達の祖国を胸に抱き、人民に奉仕する優秀な資質を継承し、心に「国の大事」を思い、国のために憂いを分かち、困難を解決し、責務を尽くさなければならない。

人材表彰・奨励制度を最適化し、先進模範の宣伝を強化し、全社会において人材を尊重する気風の形成を推進しなければならない。

各レベルの党委員会(党組)は、党委員会が統一的に指導し、組織部門が牽引して総括的に取り組み、職能部門がその職務を司り、密接に協調して、社会のパワーが広範に参加する人材政策の枠組を整備しなければならない。

各地方・各部門は、実際に立脚し、重点を際立たせて、人材の不満が強烈な実際の問題を解決しなければならない。人材発展への投入を増やし、人材投入の効率を高めなければならない。

各レベル党委員会宣伝部門、各レベル政府の教育、科学技術、工業・情報化、安全、人事・社会保障、文化・観光、国有資産、金融、対外事務等の部門は、職能の役割を十分発揮して、共同で人材政策の各任務の実施にしっかり取り組まなければならない。

(留意点)

これは、党の人材政策の会議という名目になっているが、出席者を見ると、全政治局常務委員・政治局委員、中央書記処書記、全人代指導部、国務委員、最高人民法院院長、最高人民検察院検察長、全国政協指導部、各省(自治区・直轄市)、中央・国家機関の各部門、各人民団体、中央軍事委員会関係部門、中央所管金融企業、一部の国有重要基幹企業、中央所管大学等の主要責任者が一堂に会しており、中央委員会に準ずる会議であったことが分かる。

この会議は、11月に党6中全会を控え、何らかの重要な意思統一を図ることが、もう1つの目的であったのではないかと思われる。