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研究者のご紹介

田中 修

中国経済レポート

「中国の全面小康」白書

 

新領域研究センター 田中 修

2021年10月7日


はじめに

国家統計局の寧吉喆局長は9月29日、「中国の全面小康」白書について記者会見を行った。本稿はこの概要を紹介する。

1.貧富の格差

わが国の小康社会全面実現のプロセスは、貧困現象が不断に減少するプロセスであり、人民が日増しに富裕になるプロセスでもある。第18回党大会以降、わが国の経済実力は持続的に飛躍し、人民の生活水準が全面的に高まり、個人所得の分配構造は徐々に改善された。

貧富の格差は存在しているが、都市・農村、地域、異なる層の個人所得格差は総体として縮小傾向にある。

(1)都市・農村間の所得格差は継続的に縮小している

国家の脱貧困堅塁攻略と農業・農村の改革・発展が深く推進され、農村住民の所得の伸びは、都市住民より顕著に速く、都市・農村住民の相対的所得格差は継続的に縮小している。

所得の伸びから見ると、2011-20年、農村住民1人当たり可処分所得の名目の伸びは年平均10.6%であり、都市住民より1.8ポイント高かった。

都市・農村の個人所得比で見ると、都市・農村住民1人当たり可処分所得比は毎年低下しており、2010年の2.99から20年の2.56に低下し、累計0.43低下した。2020年、都市・農村住民1人当たり可処分所得比は19年より0.08低下し、第18回党大会以降低下が最も速い1年であった。

(2)地域間の個人所得格差は毎年低下している

地域の協調発展戦略と地域重大戦略の実施の作用の下、地域の所得格差は地域の発展格差の縮小に伴い縮小した。2011-20年、所得最高省と最低省間の個人可処分所得の相対格差は毎年低下し、所得比は2011年の4.62(上海とチベットの個人所得の比)から2020年の3.55(上海と甘粛の個人所得の比)に低下し、新世紀に入って以降最低水準となった。

2020年、東部と中部の格差は1.62(2013年より0.08低下)、中部と西部の格差は1.07(同0.03低下)、東北と西部の格差は1.11(同0.18低下)であった。

(3)異なる層の間の個人所得格差は総体として縮小している

ジニ係数は個人所得格差を測る常用指標である。ジニ係数は通常個人所得を用いて計算し、消費支出を用いても計算し、世界銀行はこの2種類の指標について計算を進めている。個人所得の計算によれば、ここ十数年わが国のジニ係数は総体として変動・低下の態勢を示している。全国住民1人当たり可処分所得ジニ係数は2008年に最高点0.491に達した後、2009年から今まで変動・低下の態勢が現れ、2020年には0.468に下がり、累計0.023低下した。

同時に個人所得分配調節が増大した。第13次5カ年計画期間、全国住民1人当たり移転所得は10.1%増え、個人所得総体の伸びより速かった。

更に見るべきは、世界銀行のデータベースのうち、2016年の中国消費ジニ係数は0.385であり、同年の所得ジニ係数0.465より0.080低かったが、消費のデータは庶民の実際生活水準をより直接に反映している。

(4)基本公共サービスの均等化が急速に推進されている

個人所得を見るときは、家庭の可処分所得を見るだけでなく、政府が民生改善のために提供する公共サービスをも見なければならない。

小康社会全面実現のプロセスにおいて、各地方・各部門は基本公共サービスの均等化を積極的に推進した。多層レベルの社会保障システム整備の成果は顕著である。現在、わが国は既に世界最大の社会保障ネットワークを実現し、基本医療保険は13.5億人超をカバーし、基本年金保険は10億人超をカバーしている。

住宅保障と供給システムの建設が着実に推進され、全国で既に各種保障性住宅建設とバラック地区改造により累計8 000万戸余りの住宅を提供し、2億余りの困窮層の住宅条件の改善を支援した。

教育の公平と質は不断に向上し、2020年9年義務教育の達成率は95.2%であった。

基本医療と公共衛生サービスは改善され、2020年一般公共予算衛生健康支出は1.92兆元で、人民大衆が自身の労働を通じて得た所得、経営で得た所得、移転支出で得た所得は増加した。

同時に、いくらかの所得は家庭に入っていないが、公共サービスを通じて広範な大衆に提供されており、この方面で、わが国のような中国の特色ある社会主義国家においては、各部門・各地方が行う政策はとりわけ多い。

第14次5カ年計画期間、貧富の格差を一層コントロール・縮小するには、パイを大きくするだけでなく、パイをうまく切り分けなければならない。発展の堅持は、第一の重要任務であり、経済発展・勤勉な労働・雇用拡大を通じて、個人所得を増やす。

同時に、「労働に基づく分配を主体とし、多様な分配方式が共存」することを堅持し、一次分配における労働報酬のウエイトを高め、賃金が合理的に伸びる健全なメカニズムを整備し、低所得層の所得向上に力を入れ、中等所得層を拡大する。生産要素分配の政策・制度を整備し、中低所得層の生産要素所得を増やす。再分配メカニズム整備し、税制・社会保障・移転支出等の調節の程度・精確性を高める。三次分配の役割を発揮させ、慈善事業を発展させる。

一次分配・再分配・三次分配の協調・組合せの基礎的な制度手配を構築し、社会の公平・正義を促進し、人の全面発展を促進して、人民全体を共同富裕の目標に向けて着実に邁進させる。

税制は、所得分配において既に重要な役割を発揮しており、今後一次分配はもちろん、再分配・三次分配においても、税制のテコとしての役割を好く発揮させなければならない。

2.一線都市の問題点

改革開放以降、北京・上海・深圳・広州等の一線都市及びその他の巨大・特大都市は、経済が大幅に成長し、人口が顕著に増加し、開放が不断に拡大し、社会事業が勢い盛んに発展し、既に中国の経済成長の重要なエンジン、対外開放の需要な枢軸、国家ガバナンスの重要な支えとなっており、人民の日増しに「居所が安定し仕事を楽しく行い、素晴らしい生活を享受する」ための重要な空間・キャリヤーとなっている。

同時に、これらの都市も、交通渋滞、住宅価格の高止まり、発展の制限等世界各国に普遍的に存在する「都市病」が存在してもいる。これらはいずれも発展中の問題であり、前進中の困難であり、成長中の悩みである。

高齢者の介護・社会保障の方面では、一線都市は総体として決して悪くはなく、いくつかの一線都市の1人当たり予想寿命はいずれも80歳以上であり、各種都市の中で優秀な成績をおさめている。改善が必要なものは、コストの抑制・サービスの改善である。

第14次5カ年計画要綱は、都市化空間・配置の整備、巨大・特大都市の中心区域の機能の最適化等について、計画手配を進めている。

(1)巨大・特大都市の質の高く、持続可能な発展を促進する

経済・生活・生態・安全等の多元的な需要を統一的に併せ考慮し、巨大・特大都市の開発建設方式の転換を推進し、都市ガバナンスにおけるリスクの防止・コントロールを強化しなければならない。

「人民の都市は人民が建設し、人民の都市は人民のためにある」を堅持し、都市発展ルールを深く把握し、発展と安全を統一的に企画し、都市発展方式の規模の拡張から内容の向上・転換への転換を確実に推進し、民生を更に重視し、社会保障の水準を着実に高め、都市ガバナンスの現代化水準を高めて、都市を更に健康で、更に安全で、更に住みやすくする。

同時に、巨大・特大都市の中心の照射作用を一層強化し、経済発展の空間構造を不断に最適化し、地域の協調発展を実現し、農村の振興を更に好く牽引し、都市・農村の融合発展を促進する。

(2)巨大・特大都市の開発強度と人口密度を合理的に引き下げる

都市の生産・生態・生活空間を科学的に計画し、中心区域の一般的製造業・地域的物流基地・専門市場等の機能・施設及び過度に集中した公共資源を秩序立てて移転し、都市ガバナンスにおけるリスクの防止・コントロールを強化しなければならない。

例えば、北京は、全国の政治の中心、文化の中心、国際交流の中心、科学技術イノベーションの中心機能としての位置づけに立脚し、調和がとれ、住みやすく、美しい大国の首都を建設する。同時に、非首都機能の移転を注力点として、北京・天津・河北協同発展推進を更にハイレベルに向けて邁進し、北京・天津・河北及び周辺地域の大気の質のモニタリングと防止・コントロールの連帯を強化し、北京の科学技術の優位性を発揮することにより天津・河北の伝統産業の改造・グレードアップを牽引し、周辺地域への照射・牽引作用を高める。

(3)巨大・特大都市のコアコンピタンスを最適化・向上する

グローバルな資源配分、科学技術イノベーションの策源地、ハイテク産業のリード役の機能を増強し、現代サービス業を主体とし、先進製造業を支えとする産業構造を率先して形成し、総合的な能力レベル・国際競争力を高める。

例えば、上海は、都市の能力レベルとコアコンピタンスを高め、長江デルタ地域のリーダーとしての牽引作用を発揮し、グローバル資源の配分・科学技術イノベーションの策源地・ハイテク産業のリード役・開放の枢軸的門戸という「4大機能」によりリードして、国際経済・金融・貿易・運航・科学技術イノベーションの「5つの中心」としての能力レベルを飛躍させ、長江デルタの質の高い発展と国際競争参加のためにサポートを提供する。

例えば、深圳は、中国の特色ある社会主義の先行モデル地域の建設をリード役とし、総合的な国家科学センターを建設し、前海・河套等の広東・香港重大協力プラットフォームを早急に推進し、広東・香港・マカオ大ベイエリア計画とのリンク、メカニズムのリンクの方面で先行テストを行い、大ベイエリア建設における深圳のコアエンジンの役割を十分発揮させ、周辺地域の急速な発展を照射・牽引する。

広州も、広深港、広州・珠海・マカオ科学技術イノベーション回廊等の整備を含む、大ベイエリア建設における重要な役割を発揮させる。

3.少子高齢化での全面小康社会の持続可能性

新世紀に入って以降、中国の人口の総量・構造は、いくらかの新たな変化が発生した。2020年に展開した第7回人口センサスは全国人口の数量・構造・分布等の方面の情況を全面的に調査し、この成果は既に公表された。わが国の人口総量の伸びはある程度鈍化し、合計特殊出生率が低下し、高齢化の程度が加速しているものの、総体として見れば、人口ボーナスは依然として存在し、人材ボーナスの優位性は後発であり、人口の健康水準は不断に向上している。

人口政策が徐々に整備されるに伴い、わが国の経済発展は長期に好い方へ向かい、小康社会の全面実現の基礎の上に、社会主義現代化国家を全面建設することには、依然としてかなり良好な人材資源の保障を備えている。

(1)労働力資源は依然豊富であり、人口ボーナスが引き続き存在する

わが国は、依然として世界の人口第一の大国であり、人口総量は依然として伸びを維持しており、労働年齢人口総量は依然として膨大である。

わが国の16-59歳労働年齢人口は8.8億人に達し、なお3億人余りの出産適齢期の女性がおり、毎年1000万人余りの出生人口規模を維持できている。

2020年、わが国の出稼ぎ農民の総量はなお2.86億人に達し、人口数量の伸びが生み出すボーナスは依然存在し、労働力資源は依然としてかなり充実しており、経済の持続的発展のために人口ボーナスのサポートを提供している。

(2)人口の素質が顕著に向上し、人材ボーナスの優位性が徐々に現れている

過去10年、わが国人口の就学レベルは顕著に高まっている。

2020年、わが国の16-59歳労働年齢人口の平均就学年数は10.75年に達し、2010年の9.67年より1.08年高まった。

教育事業は過去10年、大発展し、そのうち、大学以上の就学レベル人口は2.08億人で、労働年齢人口に占めるウエイトは23.61%に達し、2010年に比べ11.27ポイント大幅に高まった。人材規模のウエイトは10ポイント超上昇し、2倍近くになった。

これは、わが国の経済発展方式の急速な転換の促進、産業構造の最適化・グレードアップ、全要素生産性の不断の向上に資するものであり、経済の質の高い発展のために新たな人材ボーナスのサポートを提供するものである。

(3)庶民の健康水準が大幅に改善し、労働力資源の条件が最適化されている

健康は福祉であり、生産力でもある。医療・衛生事業の改革・発展に伴い、わが国人口の身体素質は顕著に向上した。

2019年、わが国人口の予期寿命は77.3歳に達し、2019年に比べ2.47歳高まり、この上昇幅は大きい。

中高年の身体状況は総体として改善し、現在多くの人が既に老年に達しているが、身体の素質はなお相当良好である。2020年、わが国の嬰児死亡率は0.54%に下がり、妊産婦死亡率は16.9人/10万人に下がり、両端の年齢人口の身体の素質はいずれも改善した。

わが国の庶民の健康水準は総体として中高所得国家の平均水準より優れており、衛生・ヘルスケア事業が得た成績も、経済の持続的発展のために有効な労働力投入支援を提供している。同様に、労働力・身体の健康程度が改善していることは、労働力資源が役割を発揮するのに有益である。

(4)少年・児童人口の数量とウエイトが上昇し、新世代の労働力資源が成長している

「夫婦の一方が一人っ子であれば2人目の子どもを認める」「全面的に2人目の子どもを認める」政策を実施して以降、わが国の出生人口数は顕著に反転上昇した。

第7次人口センサスのデータによれば、0-14歳の少年・児童人口数は2010年に比べ3092万人増加し、ウエイトは1.35ポイント高まった。「2人目の子ども」出産率は顕著に上昇し、出生人口のうち「2人目の子ども」のウエイトは2013年の30%前後から2017年の50%前後に上昇した。

今年、国家が3人目の子どもの出産政策及び関連支援措置を実施することは、出生人口の増加促進・人口年齢構造の改善・人口の長期にバランスのとれた発展の実現に有益である。

4.世界経済に対する意味合い

中国が小康社会を全面実現したことは、世界で人口が最も多い国家と世界で最大の発展途上国の経済が繁栄し、民生が改善されたことを意味し、これは本来世界の平和発展にとって巨大な貢献である。

同時に、中国が方向社会を全面実現したことは、世界経済の回復のために動力を提供し、チャンスを創造することにもなり、人類運命共同体の構築のために、中国の知恵・中国のパワーを貢献するものである。中国は世界と離れることはできず、世界も中国と離れることはできない。

(1)中国が小康社会を全面実現したことは、世界の貧困削減事業に際立った貢献を行った

改革開放以降、中国は7.7億の農村貧困人口を貧困から脱却させたが、これは同時期の世界の貧困削減人口の70%以上を占め、2020年は、さらに絶対貧困現象を解消し、10年前倒しで「国連持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中の貧困削減目標を実現し、14億余りの中国人民は、社会主義現代化国家全面建設の新たな征途を踏み出した。これは、人類史上未曾有の大変革・大事件である。

近年、世界では貧困人口が減るどころか増えており、世界の貧困削減事業がボトルネックに遭遇している背景の下、中国が貧困削減を成就したことは、世界の貧困人口の版図を縮小し、世界の貧困削減事業のために自信とパワーを注入した。

(2)中国が小康社会を全面実現したことは、世界経済の成長・回復に牽引力を提供した

2006年から、わが国は既に連続15年、世界経済の成長の最大の貢献国であり、連続で長年世界経済の成長への平均寄与率は30%を超え、世界経済の成長の主要なエンジンとなっている。

2020年、わが国のGDPは100兆元を超え、新型コロナ感染症の影響を克服し、世界で唯一のプラス成長を実現した主要経済体となった。今年1-6月期、中国経済は前年同期比12.7%成長し、世界の経済・貿易の回復を牽引する重要なパワーとなっただけでなく、グローバル供給システムの安定擁護のために積極的な役割を発揮した。一年余りで、中国は既に世界にマスク数千億枚、ワクチン十数億回分を供給し、各国の感染症対策の発展を有力に支援した。

(3)中国が小康社会を全面実現したことは、世界経済の繁栄・発展のために巨大なチャンスをもたらした

現在、中国は既に世界第2の大消費市場、第1の貨物貿易大国となっており、外資利用と対外投資は世界の前列で安定している。

我々が国内大循環を主体とし、国内・国際2つの循環が相互促進する新たな発展の枠組の構築を加速するに伴い、中国市場の潜在力は日増しに前進し、中国開放の大きな門戸はますます大きく開かれ、世界各国のために更に広範な市場・更に有力な協力の契機・更に広大な発展の余地を提供する。

試算によれば、今後5年、中国が世界のその他の国家・地域から輸入する貨物は10兆ドルを超え、世界のその他の国家・地域への直接投資は5500億ドルを超える。これは必ず、世界経済の安定・回復・持続的発展のために強大な動力を提供する。

(4)中国が小康社会を全面実現したことは、発展途上国が現代化するために新たな道を開拓した

新中国70年余り、とりわけ改革開放40年余りの建設・発展を経て、中国経済の容貌は「経済的な立遅れと文化的な空白」から総量が世界第2となり、中国人民の生活は衣食の不足から全面小康となり、「立ち上がり、豊かになる」から「強くなる」という偉大な飛躍を迎えた。

小康社会を全面実現するプロセスにいて、我々は経済の急速な発展と社会の長期安定という2大奇跡を創造した。これは、中国人民に実際の利益をもたらしただけでなく、人類社会の発展水準を大々的に高めた。

2019年から、わが国1人当たりGDPは1万ドルを超えた。これにより、世界で1人当たりGDPが1万ドルを超える経済体の人口総量がさらに14億人増え、30億人に接近し、2倍近くとなった。これは疑いなく人類社会発展の巨大な福音である。中国が小康社会を全面実現した生き生きとした実践は、世界において急速な発展を考え、自身の独立性の維持を希望する国家・民族に全く新しい選択肢を提供した。