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田中 修

中国経済レポート

第14次5カ年雇用促進計画

 

新領域研究センター 田中 修

2021年9月17日


はじめに

国務院は8月27日「第14次5カ年雇用促進計画」(以下「計画」)を公表した(文書の日付は8月23日)。本稿では、「計画」に関する当局の記者会見の概要を紹介する。

1.「計画」の概要(国家発展・改革委員会)

雇用は最大の民生であり、経済発展の最も基本的な支えでもある。第14次5カ年計画期間に更に充分で更に質の高い雇用を実現することは、質の高い発展を推進し社会主義現代化国家を全面建設するための内在要求であり、人民を中心とする発展思想を実践し、共同富裕を着実に推進するための重要な基礎である。

党中央・国務院は常に雇用政策を高度に重視している。習近平総書記は、「党と国家は積極的な雇用政策を実施し、更に多くの就労ポストを創造し、雇用環境を改善し、雇用の質を高めなければならない」と何度も指摘している。李克強総理は、「雇用があってこそ富は増え、社会は安定・発展するのであり、雇用志向の経済発展を堅持し、雇用優先政策を強化しなければならない」と何度も強調している。

党19期5中全会と国家第14次5カ年計画要綱は、第14次5カ年計画期間の雇用促進計画を編成するために、明確な方向を指示した。党中央・国務院の政策決定・手配に基づき、昨年から我々は人力資源社会保障部・関係方面と共に、「計画」の編成を推進する活動を開始した。その中には、第13次5カ年雇用計画の総括評価を深く展開すること、一連の事前重大課題研究を組織的に展開することが含まれる。

「計画」の編成プロセスにおいて、第14次5カ年計画要綱とのリンクを強化し、雇用分野の専門家、地方、関係部門・単位の意見を広範に聴取し、衆知を集め、大衆のパワーを集め、十分諮問し、深く論証して、各方面の意見をみな「計画」の中に吸収した。

「計画」は、習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとすることを堅持し、更に充分で更に質の高い雇用の実現を主要目標とし、第14次5カ年計画期間の雇用促進の重点任務を実体化・数量化し、第14次5カ年計画期間の雇用促進について全面的手配を行っており、今後一時期の雇用の質の高い発展を推進するための系統的ガイドラインである。

「計画」は、10章・28項目であり、3大部分から成る。第1部分は、発展環境・指導思想・基本原則と主要目標を詳しく説明している。第2部分は、7方面の重点任務を手配している。第3部分は、いくらかの保障措置である。

総体として見ると、「計画」は4つを重視している。

(1)構造的雇用矛盾の緩和を重視する

この「計画」は、第14次5カ年計画期間の雇用情勢を深く検討・判断した基礎の上に、構造的雇用矛盾がわが国雇用分野の主要な矛盾となり、技術・技能人材の育成・訓練を更に際立たせて位置づけ、雇用志向の人材育成を強化し、職業技能訓練を大規模・多層レベルで展開し、労働力生産要素の質の改善に力を入れることを提起している。

(2)政策の協同による力の発揮を重視する

「計画」は、雇用保障をマクロ政策の首位として、雇用の安定・拡大をマクロ・コントロールの優先目標と経済運営の合理的区間の下限とし、その他各方面のマクロ政策と雇用を支援する方向性を強化し、雇用政策との協同・連動を実現する。

(3)社会大衆が関心をもつ重点分野を重視する

「計画」は就業・起業環境の最適化、重点層の雇用の安定、労働報酬の引上げ、就業サービスの改善、労働権益の保障等の社会大衆が普遍的に関心をもつ重点分野を軸に、具体的・実行可能な政策措置を提起している。

(4)長期的・趨勢的問題の解決を重視する

「計画」は、人口高齢化、AI技術の応用等、将来一時期の労働力需給にかなり大きな影響を及ぼす長期的・趨勢的問題に焦点を絞っている。高齢労働者の雇用支援、AIの雇用に及ぼす影響のフォローアップ・検討・判断と協同対応を強化し、労働者の技術のスマート化・一般技能の向上等の方面で、いくらかの的確なさらにはブレークスルー的な措置を提起している。

我々は、「計画」の打出し・実施が、雇用促進のための政策体系を一層整備し、各種ポジティブ要因を十分動員し、雇用政策の新たな局面を不断に切り開き、更に充分で更に質の高い雇用の実現を推進するものと信じている。

2.第14次5カ年計画期間の雇用の困難・試練(国家発展・改革委員会)

第14次5カ年計画期間を展望すると、わが国の経済社会は新たな段階に入る。総体として分析すると、将来一時期雇用促進方面は少なからぬ困難・試練、大量の不確定要因に直面するが、総体として、我々は雇用の安定態勢を維持できる自信があり、更に十分で更に質の高い雇用の実現のために堅実・牢固な基礎を提供する。

(1)ポジティブ要因の方面

①わが国経済が長期に好い方へ向かうことは、雇用促進のために重要な支えを提供する。

今後一時期、わが国は既に質の高い発展の段階に入り、国内大循環を主体に、国内・国際2つの循環が相互に促進する新たな発展の枠組の構築が加速され、新しいタイプの都市化・農村振興が深く推進され、労働者の資質も不断に向上するため、更に十分で更に質の高い雇用の実現は、多くの方面の優位性・条件がある。

②わが国のサービス業と民営経済は不断に壮大に発展しており、雇用拡大のために広範な余地を提供する。

第14次5カ年計画期間、国家は積極的に有力な措置を採用し、現代サービス業・先進製造業・現代農業の深い融合を促進し、生産関連サービス業・生活関連サービス業の多様化したイノベーション・発展を支援し、雇用容量を不断に拡大する。

同時に、ビジネス環境が引き続き改善されるに伴い、民営経済が安定して成長し、産業構造が更に最適化されることも、雇用の範囲拡張・質向上の助けとなる。

③わが国はここ数年、起業・イノベーション・デジタル経済が急速に発展し、雇用拡大のために引き続き有力な新動力エネルギーを提供している。

ここ数年、我々がイノベーション駆動の発展戦略の実施を通じて、「行政の簡素化・権限の委譲、開放と管理の結合、サービスの最適化」改革を深く推進し、イノベーション・起業・創造に資する良好な発展環境を不断に作り上げ、市場の活力・社会の創造力を有効に奮い立たせていることも、起業の雇用牽引能力を増強している。

新たな科学技術革命と産業の変革は徐々に深化しており、デジタル経済が急速に発展し、更に多くの新産業・新業態・新ビジネスモデルを一層生み出し、就業・起業の新分野を不断に開拓し、広範な労働者のために更に多様化し豊富な職業選択を提供している。

(2)雇用のリスク・試練

構造的雇用矛盾が更に際立ち、雇用分野の主要な矛盾となる。「就業難」と「労働者採用難」が併存し、甚だしきはこれが強まる可能性がある。

「就業難」は、主として一部労働者の知識・技能が現代産業発展の変化に適応できず、求職・就業の難度が増していることに体現されている。たとえば、高等教育層の規模が不断に拡大しているが、教育の訓練方式・専門の設置が市場需要と余り合致していない可能性があるという問題があり、高学歴・低技能という構造的矛盾が出現する可能性がある。他方で人口高齢化傾向が加速し、高齢労働者の数が増大し、産業の転換・グレードアップに伴い、彼らの就業の難度も増大する。

同時に、我々には「労働者採用難」も存在し、とりわけ最近一時期、東部沿海地域の一部輸出入サービス業で、一般労働者・技能労働者とりわけ技術・技能人材不足の情況が比較的際立っている。実際、わが国の技能人材の求人倍率は長期に1.5倍以上を維持し、高級技能人材に至っては2倍以上である。現在全国の技能人材の総量に占めるウエイトは不断に高まっているが、膨大な労働力人口の構造から見ると、彼らのウエイトはなおかなり低く、現在まだ30%に達していない。ドイツ・日本等の製造業強国の技能人材のウエイトは70~80%であり、わが国との差はなお比較的大きい。

第14次5カ年計画期間、技術進歩と産業の転換・グレードアップの歩みは一層加速するものと予想され、これは労働者の技能・資質に更に高い要求を提起することになり、とりわけ質の高い労働力の不足という構造的矛盾は更に先鋭化する可能性がある。

総量から見れば、都市雇用圧力も依然存在している。将来一時期、毎年都市で就業する必要のある大学卒業生等の新成長労働力は、毎年1千万人を超えると予想される。同時に、工業化・都市化プロセスにおいて、依然として相当数の農村余剰労働力が移転就業を必要としている。大学卒業生・出稼ぎ農民等の重点層の雇用任務はなお非常に困難である。

国際面から見れば、世界経済の回復の歩みは困難であり、新型コロナの影響はなお持続する。

国内から見れば、わが国の経済回復の均衡性・協調性はなお一層増強が必要である。サービス業、消費分野、中小・零細企業への疫病の影響はなお比較的大きい。内需を持続的に回復・発展させる動力は、なお一層の増強が必要である。一部の業種の経営へのプレッシャーは短期内ではなお比較的大きく、これが労働力市場にいくらかの変動を誘発する可能性がある。

このほか、具体的に労働・雇用分野の深層レベルに至る問題から見れば、労働分野の政策・制度が、更に充分で更に質の高い雇用を実現することとマッチしていないという問題が存在する。労働力・人材の社会的流動ルートは依然として十分円滑ではなく、雇用政策・就業サービスは地域間、都市・農村間でなお差別が存在する。フレキシブルな就労者、高齢・女性労働者等の労働権益の保障はなお一層の強化が必要である。

このため、我々は「第14次5カ年雇用促進計画」において、これらの際立った矛盾・問題に対して、的確な措置建議を提起し、いくらかの特別行動を設けてこれらの問題を解決し、第14次5カ年計画期間に更に充分で更に質の高い雇用の実現を確保する。

3.主管部門としての政策措置(人力資源社会保障部)

第14次5カ年計画期間は、社会主義現代化国家全面建設の新たな征途を開く最初の5年であり、わが国が質の高い発展の段階に入るに伴い、経済は安定の中で好転し、長期に好い方へ向かい、雇用情勢は長期に安定を維持するというのが、我々の基本判断である。

これと同時に、わが国の人口構造と経済構造は深く調整され、労働力需給は両サイドともかなり大きな変化が出現し、雇用総量圧力は依然かなり大きく、構造的雇用矛盾が更に際立ち、雇用分野の主要な矛盾となる。

同時に、経済発展の不確定性も試練をもたらし、雇用任務は依然として非常に困難である。

第14次5カ年計画期間の新たなチャンス・新たな試練に対し、「計画」は更に充分で更に質の高い雇用の実現を目標とし、雇用優先戦略を深く実施することを主線とし、「市場が主導し、政府がコントロールし、政策・サービス・訓練・権益保障の協同を重視する」ことを堅持し、雇用事業の質の高い発展推進に努力し、経済社会の発展の大局をサポートする。

総体目標は、都市新規就業5500万人以上を実現し、都市調査失業率を5.5%以内に抑制し、雇用情勢を総体として平穏にし、雇用の質を着実に高め、構造的雇用矛盾を有効に緩和し、起業により雇用を牽引する動力エネルギーを引き続き発揮させ、リスク対応能力を顕著に増強することである。

主要な注力点は、3つに概括される。①容量の拡大と質の向上の双方向に力を発揮し、②訓練・サービスの2輪駆動とし、③重点保障とリスク防止の両サイドで協同する。具体的に説明すると、

(1)容量の拡大と質の向上の双方向に力を発揮する

①容量の拡大

経済発展・雇用志向を堅持し、財政・金融等のマクロ政策の力を集めて雇用を支援し、あらゆる手を尽くして雇用容量を拡大する。

起業による雇用牽引を堅持・奨励し、多くのルートのフレキシブルな就労と新たな就労形態の発展を支援し、持続的で有力な雇用の新動力エネルギーを育成し接続する。

②質の向上

労働報酬の引上げと労働生産性の向上推進を基本的に同歩調とし、都市・農村労働者をカバーする健全な社会保障システムを整備し、雇用差別の解消に努力し、就業・起業等の方面における女性の合法権益を確実に保障し、平等な雇用を促進する。

(2)訓練・サービスの2輪駆動とする

構造的雇用矛盾の緩和を更に重視する。カギは職業訓練にあり、職業訓練の牽引作用を更に発揮させ、労働者の技能・資質向上に焦点を絞り、大規模に多層レベルで職業訓練を展開しなければならない。

我々は第13次5カ年計画期間、職業技能向上3年行動を展開し、効果は非常に好かった。第14次5カ年計画期間、我々は引き続き大規模に多層レベルで職業訓練を展開し、労働力生産要素の質改善に力を入れ、質の高い発展の要求に合致し、現代化した経済システムに適応した労働者群を建設しなければならない。

同時に、摩擦的失業問題の解決を更に重視しなければならない。摩擦的失業問題は、長期に常態化して存在し、摩擦的失業を解決するには主としてサービスに依拠しなければならない。就業サービスの促進作用を発揮させ、公共就業サービスの最低保障機能を強化し、営利の人材資源サービス機関の機能を発揮させなければならない。

この方面でいくらかの措置も採用している。我々は重慶で、「第1回人材資源サービス業大会」を開催し、雇用促進・人材配分等の方面全体における人材資源の役割を発揮させようと考えている。民間組織が公益的就業サービスを提供することを支援し、労働力市場の需給マッチングの効率を高める。

(3)重点保障とリスク防止の両サイドで協同する

①重点の保障

大学卒業生、退役軍人、農村からの移転労働力、就業困難者等の重点層の雇用を際立たせてしっかり取り組むと同時に、青年の雇用圧力の増大・人口高齢化等の趨勢に適応し、青年・高齢労働者の雇用にしっかり取り組む。青年の雇用は「計画」のライトスポットである。

②リスクの防止

発展と安全を統一し、就業・失業統計のモニタリング・調査体系を整備し、ビッグデータ等の技術の応用を強化し、リスク事前警告・処理能力を増強し、大規模な失業リスクを確実に防止・解消し、民生の最低ラインを保障する。

具体的な掴みどころとして、我々は10の特別行動を実施する。この10の特別行動のうち3つは第13次5カ年雇用計画中の行動であり、①帰郷・入村起業パークの建設、②大学卒業生の就業・起業促進、③人材資源サービス業の質の高い発展である。

同時に、新たな情勢変化に適応して、7つの行動計画を新たに提起した。

④フレキシブルな就労者と新たな就労形態の労働者への支援保障計画により、フレキシブルな就労と新たな就労形態の発展を奨励する。

⑤地域の雇用受容能力を高めるという重点任務により、各地域の雇用の協調発展を推進する。

⑥労務ブランド雇用促進計画により、地域の特色・業種の特色・技能の特色を有するいくらかの労務ブランドを育成する。

これも、今回の「計画」中の際立ったライトスポットであり。労務ブランドの建設を国家の雇用促進の中で重要と位置づけ推進し、農村労働力の移転・就業を推進する。

⑦貧困支援のため居住地を移転させられた大衆の雇用支援を強固にし向上させる行動により、大衆が移転でき、住居が安定し、徐々に富裕に至れるようにする。

⑧国家農村振興重点支援地域の職業技能向上プランにより、これらの地域の労働者の技能向上を促進し、就業による増収を実現する。

⑨就業サービスの質向上プランにより、労働力市場・人材市場・臨時雇い市場の建設を支援する。

⑩就業・失業統計のモニタリング・調査能力向上計画により、主としてリスク事前警告・事前判断能力を強化する。