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研究者のご紹介

田中 修

中国経済レポート

新型肺炎とマクロ政策(69)

 

新領域研究センター 田中 修

2021年6月25日


はじめに

本稿では、6月18・22日の国務院常務会議、21日の国務院西部地域開発領導小組会議の概要を紹介する。

6月18日 国務院常務会議1
(1)農民への支援

農業は民心を安定させ、天下を安定させる産業である。党中央・国務院は食糧生産・食糧安全を高度に重視している。

今年に入り、大口取引商品価格の上昇の影響を受けて、化学肥料・ディーゼル油などの農業資材価格が顕著に上昇していることを考慮すれば、今はまさに夏の収穫・作付のカギとなる時期である。農民の耕作の積極性を保護するため、農業資材市場の調節を強化し、企業が国内市場での供給を増やすよう指導すると同時に、わが国が発展途上国であるという現実に立脚し、主要な食糧・作物・農業資材などの価格の上昇の情況に応じ、中央財政は200億元前後の資金を計上し、実際に耕作を行う農民に対し、一回限りの補助金を支給し、農民の所得を安定させる。補助金は至急全額支給に取り組まなければならず、農期に遅れないようにしなくてはならない。

農民が災害等のリスクを制御し、耕作収益を安定させることを援助するために、2021年は全国13の食糧主生産省の500の大食糧生産県に対し、コメ・小麦作付コスト完全保険を実施する。これは種子・農薬・化学肥料などの直接関係するモノのコストと土地・人件費をカバーし、自然災害・病虫害などがもたらす損失を補填する。トウモロコシの作付収入保険を実施し、価格・生産量の変動がもたらす損失を補填する。

この2種類の保険の保障水準は、最高で対象品種の作付収入の80%相当に達することを認め、保険料率は元本保証・薄利の原則で確定する。2022年に主生産省のすべての大食糧生産県に普及し、保険料への財政補助を増やし、うち省レベルの財政補助は25%を下回ってはならず、中央財政は中西部と東北地方に対して45%補助する。

(2)金融機関の手数料削減

2020年、金融機関は手数料を減らし利潤を移譲して、市場主体の困難緩和・発展を有効に支援した。2021年は、引き続き金融機関の役割を発揮させ、6方面の手数料削減措置を採用し、小型・零細企業、個人工商事業者のコスト引下げを支援し、川上の大口取引商品価格上昇の伝播圧力を軽減する。

その中には、小型・零細企業、個人工商事業者決済口座の現金引き出し手数料免除、ネット決済の個人工商事業者利用手数料の10%引下げ、銀行カード決済手数料引下げの奨励、小型・零細企業の銀行間振替手数料減免の推進、ATMの現金引き出し手数料引下げの推進などが含まれる。これらの措置で毎年企業・大衆の負担が240億元減るものと予想される。

(3)住宅対策

都市化プロセスにおいて都市に入って労働する人員、新就職の大学生等の新市民・青年の基本住宅需要を保障するため、

①都市政府の主体責任を履行し、市場のパワーの参加を奨励し、金融支援を強化して、家賃が市場水準より低い、社会保障的性格をもつ小型賃貸住宅の供給を増やす。

②人口が純流入している大都市等が、集団経営の建設用地、企業・事業単位が自ら保有する土地を利用して、社会保障的性格をもつ賃貸住宅を建設することを認め、放置・低効率利用の商業・オフィスビル、工場建物等を、社会保障的性格をもつ賃貸住宅に改築することを認める。

③10月1日から、住宅賃貸企業が個人に住宅を貸し出した場合、簡易な税計算方法を適用し、増値税の税率を5%から1.5%に引き下げる。企業・事業単位等が個人、専門化し規模の大きい住宅賃貸企業に対し住宅を貸し出した場合、不動産税の税率を4%に引き下げる。

6月21日 国務院西部地域開発領導小組会議

会議は、西部大開発の2021年の重点政策を検討し、西部大開発第14次5カ年計画実施方案を決定した。会議における領導小組組長李克強総理の発言の概要は以下のとおりである。

西部大開発は、わが国の改革開放と現代化建設の全局に関わるものである。

近年、習近平同志を核心とする党中央の堅固な指導の下、各方面の共同努力とりわけ西部地域の広範な幹部・大衆の奮闘を経て、西部大開発は重大な歴史的成果を収めたが、西部の発展がアンバランス・不十分という問題はなお比較的際立っている。

西部発展の格差を見て取るだけでなく、その中に含まれる巨大な潜在力をも見て取らねばならない。習近平「新時代の中国の特色ある社会主義」思想を導きとし、党中央・国務院の政策決定・手配を実施し、「新たな発展段階に立脚し、新発展理念を貫徹し、新たな発展の枠組を構築し、質の高い発展を推進する」という要求に基づいて、改革開放を更に強く推進し、発展の内生動力を増強し、生態環境を有効に保護し、民生福祉を不断に増進し、西部大開発の新局面を開き、国家の持続的で健全な発展の新たな空間を開拓しなければならない。

西部大開発を深く推進するには、改革開放の大方策に引き続きしっかり取り組まなければならない。

市場主体は市場経済のミクロの基礎であり、国家の減税・費用引下げ等の政策も、市場主体の需要に向き合っており、西部地域は壮大な市場主体の育成・経済活力の向上について緊迫感を強めなければならない。

「行政の簡素化・権限の移譲、緩和と管理の結合、サービスの最適化」改革を深く推進し、更に優れたビジネス環境を作り上げ、起業を円滑にし、公平な競争を擁護し、政務サービスを最適化することを更に工夫し、取引・運営・流通コストを引き下げる。大衆による起業・万人によるイノベーションを深く推進し、社会の創造力を奮い立たせ、企業が市場に飛び込む意欲を増強し、中小・零細企業が天地を覆い、大企業の一本立ちを支える発展の態勢を形成する。

国家開放戦略とリンクさせ、対内・対外開放を拡大し、資本・知恵・技術を更に有効に引き入れ、発展の能力・水準を高める。

科学技術イノベーションのリード・牽引作用を発揮させ、特色ある産業と新興産業を育成・発展させなければならない。伝統産業がミドル・ハイエンドにグレードアップすることを支援する。

西部地域の風力・太陽光・水力発電と鉱産資源の優位性を発揮させ、探査開発技術の水準と実用化効率を高め、大型クリーンエネルギー基地を建設し、国家のエネルギー・重要資源保障能力を増強し、産業チェーン・サプライチェーンの安定・安全を擁護する。

西部の農業・牧畜業の現代化水準を高め、観光・文化産業を積極的に発展させる。

骨幹ルート・重要ハブ・重点水利の建設を早急に推進し、情報など新しいタイプのインフラの水準を高める。

生態の保護・修復と環境対策を強化し、グリーン発展の推進に力を入れる。

発展の中で民生を保障・改善しなければならない。

脱貧困堅塁攻略の成果を強固にして拡大し、主要な支援政策の総体としての安定を維持し、農村振興を推進する。多くのルートで、出稼ぎ労働と現地での就労を促進する。

力を尽くして実行し、実力を慮って実行することを堅持し、投入を強化し、基本公共サービスの段階的均等化を推進し、とりわけ義務教育・基本医療・基本住宅等の保障能力を高め、大学が西部地域から学生を募集する規模を引き続き拡大する。

西部開発への財政・税制・金融等の政策支援を増やし、一対一支援の役割をうまく発揮させ、社会のパワー・積極性を動員し、西部大開発の更に大きな合成力を凝集しなければならない。

6月22日 国務院常務会議
(1)大衆による起業、万人によるイノベーション

党中央・国務院の手配に基づき、近年各地方・各部門はイノベーション駆動の発展戦略を深く実施し、起業・イノベーションを大いに推進し、大量の市場主体を生み出し、雇用とりわけ大学卒業生の雇用を有力にサポートし、新たな動力エネルギーの急速な成長を促進し、経済発展の内生動力を増強してきた。

第14次5カ年計画期間は、起業・イノベーションを深く推進し、新発展理念の要求を更に好く貫徹しなければならない。

①起業による雇用牽引を維持する

労働力需給関係が深く調整され、就労方式が更に多元化し、市場の柔軟性が増強される等の新情勢に適応して、起業・イノベーションを一層推進し、更に多くの活力が充満し、経営が持続的に安定している市場主体を育成する。とりわけ大学卒業生、出稼ぎ農民などの重点層の多ルートでの起業・イノベーションを促進し、中小・零細企業の雇用吸収能力を増強する。

②更に優れた起業・イノベーションの発展環境を作り上げる

「行政の簡素化・権限の委譲、緩和と管理の結合、サービスの最適化」改革を深化させ、不合理な障碍を打破し、大中小企業が一体となったイノベーションを促進し、産業チェーンにおいて主導的地位を占める「チェーンホスト」企業がリード・サポートの役割を発揮するよう奨励する。市場・イノベーション・資金等の要素資源を開放し、研究開発・インキュベーション・投資等が一体となった起業・イノベーション育成センターを建設し、更に多くの「専門性があり、精緻で、特殊で、斬新」「小さな巨人」「製造業の種目別チャンピオン」などの中小企業の壮大な成長を促進する。

公正な監督管理を強化し、不当競争に反対し、中小・零細企業、個人工商事業者の合法権益を保護する。

③起業・イノベーションへの政策インセンティブを強化する

税の減免、R&D費用の割増控除、増値税の新規控除留保分の還付等の政策をしっかり実施する。

起業・イノベーションの資金調達ルートを開拓し、インクルーシブファイナンスを強化し、社会(民間)資本が市場による方式でベンチャーキャピタル誘導ファンドを設立することを奨励する。柔軟な就労者が住宅公的積立金制度に加入するテストを推進する。

更に多くの海外人材を吸収して中国で起業させ、条件の整った起業・イノベーションモデル基地の国際的発展を支援する。

(2)対外貿易の新業態・新モデルの発展

新業態・新モデルは、わが国の対外貿易発展の「実兵力」であり、国際貿易の発展の重要な趨勢でもある。

近年、わが国の対外貿易の新業態・新モデルは急速に発展し、うち越境Eコマースの規模は5年で11倍近くになり、対外貿易の転換・グレードアップを促進し、とりわけ疫病の衝撃下で対外貿易等の安定のために重要な役割を発揮した。これからは、

①越境Eコマースの発展支援政策を整備しなければならない

越境Eコマースの総合試験区のテスト範囲を拡大する。越境Eコマース小売輸入商品リストを最適化する。越境Eコマース輸出入品の返品・交換管理を円滑化する。越境Eコマースの知的財産権保護ガイドラインを制定し、偽物・粗悪商品の製造販売を防止する。

②海外倉庫の発展を積極的に推進しなければならない

伝統的な対外貿易企業、越境Eコマース・物流企業等が海外倉庫の建設に参加することを奨励し、海外倉庫のデジタル化・スマート化水準を高め、中小・零細企業が「船を借りて海に出る」2ことを促進し、国内ブランド、起業・イノベーション製品の国際市場の空間開拓を牽引する。

③市場調達による貿易方式3を積極的に発展させなければならない

対外貿易総合サービス企業を誘導して税還付の集中代行の効率とリスク管理・コントロール水準を高め、総合保税区・自由貿易試験区内の企業が保税メンテナンスを展開することを支援し、条件の整った地方がオフショア貿易を発展させることを支援する。

④国際交流・協力を一層推進しなければならない

対外貿易の新業態・新モデルの国際ルール・基準制定に積極的に参加する。

知的財産権保護、越境物流等の分野の国際協力を強化する。

  1. なお、この会議で「中華人民共和国人口・計画生育法」改正案が決定され、全人代常務委員会の審議にかけられることになった。
  2. 他人と協力し、他人の資源を借りて自分の仕事を終えること(中国通信)。
  3. 条件の整った事業者が認定を受けた市場集積地で15万ドルを超えない商品を調達し、指定の通関港で輸出手続を取る貿易方式(中国通信)。