田中 修

中国経済レポート

人口動態と計画出産の見直し

新領域研究センター 田中 修

2021年6月8日


はじめに

5月11日、国務院第7回全国人口センサスの結果が公表され、これを受けて習近平総書記は5月31日、党中央政治局会議を開催し、計画出産の見直しを決定した。本稿では、人口センサスと会議の概要を紹介する。

1.第7回全国人口センサス

2020年11月1日0時を基準時点とする。

(1)人口総量

全国人口は14億1178万人であり、2010年(第6回全国人口センサスデータ、以下同じ)の13億3972万人と比べ、7206万人、5.38%増えた。年平均増加率は0.53%であり、2000~2010年の年平均増加率0.57%と比べ、0.04ポイント低下した。

データは、わが国の人口が10年間、引き続き低成長の態勢を維持していることを示している。

(2)世帯人口

世帯数は4億9416万件で、世帯人口は12億9281万人である。1世帯当たり人口は2.62人で、2010年の3.10人と比べ0.48人減少した。

世帯の規模が引き続き縮小しているのは、主としてわが国の人口流動が頻繁になっていることと、住宅条件が改善され、若者が結婚後独立して居住する等の要因の影響による。

(3)人口の地域分布

東部地域の人口のウエイトは39.93%、中部地域は25.83%、西部地域は27.12%、東北地域は6.98%である。2010年と比べると、東部地域のウエイトは2.15ポイント上昇し、中部地域は0.79ポイント低下し、西部地域は0.22ポイント上昇し、東北地域は1.20ポイント低下した。

人口は経済が発達した地域に向かい、メガロポリス(都市群)が一層集積している。

(4)性別構成

男性人口は7億2334万人で、51.24%を占め、女性人口は6億8844万人で、48.76%を占める。総人口の性別比は105.07:100であり、2010年と基本的に同水準であるが、やや低下した。出生人口の性別比は111.3:100であり、2010年より6.8低下した。

わが国人口の性別構造は引き続き改善している。

(5)年齢構成

0~14歳人口 2億5338万人(ウエイトは17.95%、2010年より1.35ポイント上昇)

15~59歳人口 8億9438万人(同63.35%、6.79ポイント低下)

60歳以上人口 2億6402万人(同18.70%、5.44ポイント上昇)

65歳以上人口 1億9064万人(同13.50%、4.63ポイント上昇)

わが国の少年・児童人口のウエイトは上昇しており、計画出産政策の調整は積極的成果を収めた。同時に、人口の高齢化の程度が一層加速し、将来一時期人口の長期にバランスのとれた発展へのプレッシャーに引き続き直面することになる。

なお、記者会見で寧吉喆国家統計局長は、2020年の出生人口は約1200万人であり、1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数(合計特殊出生率)は、1.3であるとしている。

(6)教育程度

大学の教養程度の人口は2億1836万人で、2010年と比べ、10万人当たり大学の教養程度の者は8930人から1万5467人に上昇した。15歳以上の人口の平均就学年数は9.08年から9.91年に高まり、文盲率は4.08%から2.67%に低下した。

教育状況が引き続き改善されていることは、10年間わが国が 高等教育を大いに発展させ、青壮年の文盲を削減する等の措置が積極的成果を収めたことを反映するものであり、人口の素質は不断に向上している。

(7)都市・農村人口

都市に居住する人口は9億199万人で、63.89%を占める。農村に居住する人口は5億979万人で、36.11%を占める。2010年と比べ、都市人口は2億3642万人増え、農村人口は1億6436万人減り、都市人口のウエイトは14.21ポイント上昇した。

わが国の新しいタイプの工業化・情報化・農業現代化が深く進展し、農業からの移転人口の市民化政策が実施に移されるに伴い、10年間わが国の新しいタイプの都市化プロセスが着実に推進され、都市化建設は歴史的成果を収めた。

(8)流動人口

戸籍地から離れている人口は4億9276万人であり、うち市の管轄区域内で戸籍地から離れている人口は1億1694万人、流動人口は3億7582万人(うち省を跨った流動人口は1億2484万人)である。2010年と比べ、戸籍地から離れている人口は88.52%増え、市の管轄区域内で戸籍地から離れている人口は192.66%増え、流動人口は69.73%増えた。

わが国経済社会の持続的発展が、人口の移転・流動のために条件を創造し、人口の流動傾向は更に顕著となり、流動人口の規模は一層拡大している。

(9)民族人口

漢族人口は12億8631万人で、91.11%を占める。各少数民族人口は1億2547万人で、8.89%を占める。2010年と比べ、漢族人口は4.93%増え、各少数民族人口は10.26%増え、少数民族のウエイトは0.40ポイント上昇した。

民族人口の着実な伸びは、中国共産党の指導の下、わが国各民族が全面的に発展・進歩した様相を十分体現している。

2.党中央政治局会議(5月31日)

第14次5カ年計画期間の人口高齢化に積極対応する重大政策措置を聴取し、「出産政策を最適化し、人口の長期のバランスのとれた発展を促進することに関する決定」を審議した。

人口高齢化に積極対応することは、国家の発展と民生福祉に関わることであり、経済の質の高い発展を実現し、国家の安全と社会の安定を擁護する重要措置である。

18回党大会以降、各地方・各部門は、人口高齢化への積極対応に関する党中央の政策決定・手配を真剣に貫徹実施し、健全な社会保障システムと高齢者介護サービスシステムの整備を加速し、各政策は顕著な成果を収めている。

人口高齢化に積極対応する国家戦略を貫徹実施し、健全な関連政策体系と制度枠組を早急に確立しなければならない。

漸進式の法定退職年齢延長を適切に実施し、従業員基本年金保険の全国統一を積極的に推進し、多層レベルの高齢者介護保障システムを整備し、長期介護保険制度の枠組の確立を模索し、家庭とコミュニティ機関が協調し、医療・ヘルスケアが結びついた高齢者介護サービスシステムと健康サポートシステムを早急に建設し、高齢者産業を発展させ、各分野・各業種の高齢化に適応した転換・グレードアップを推進し、中華民族の親に孝行し老人を敬う伝統・美徳を大いに発揚し、高齢者の合法権益を確実に擁護しなければならない。

各レベル党委員会・政府は、健全な高齢者対策の体系を整備し、財政投入を強化し、高齢者事業を発展させる財政投入政策と多くのルートによる資金調達メカニズムを整備し、人口高齢化に積極対応するために必要な保障を提供しなければならない。

18回党大会以降、党中央はわが国人口の発展・変化の情勢に基づき、前後して単独「二人っ子」(一方が一人っ子の夫婦については2人までの出産を認める)・全面「二人っ子」(夫婦について制限なしに2人までの出産を認める)政策等の重大政策決定・手配を行い、積極的成果を収めてきた。

同時に、わが国の人口総量は膨大であり、近年人口の高齢化程度が加速している。出産政策を一層最適化し、一組の夫婦について3人までの出産を認める政策と関連支援措置を実施することは、わが国の人口構造を改善し、人口高齢化に積極対応する国家戦略を実施し、わが国人材資源の資質・優位性を維持することに資するものである。

各レベル党委員会・政府は、統一的計画・政策協調・施策の実施を強化し、法に基づき3人までの出産政策を組織的に実施し、出産政策と関係する経済社会政策との組合せ・リンクを促進し、重大な経済社会政策の人口への影響の健全な評価メカニズムを整備しなければならない。

結婚・出産・養育・教育を一体的に考慮し、結婚適齢期の青年の結婚・恋愛観、家庭観の教育誘導を強化し、結婚の悪しき風習やぜいたくな婚礼など良くない社会風習を改め、優れた子どもを産み育てるためのサービス水準を高め、包摂的な幼児保育サービスシステムを発展させ、教育の公平と質の優れた教育資源の供給を推進し、家庭の教育支出を引き下げなければならない。

出産休暇・出産保険制度を整備し、税制・住宅等の支援政策を強化し、女性の雇用の合法権益を保障しなければならない。

全面「二人っ子政策」への調整前の一人っ子家庭と農村計画出産の女子二人家庭に対しては、引き続き現行の各奨励・援助制度と優遇政策を実行しなければならない。計画出産特殊家庭への健全・全方位の援助保障制度を確立し、政府が主導し、社会が組織・参加する援助・配慮のメカニズムを整備し、計画出産家庭の合法権益を擁護しなければならない。

国家人口中長期発展戦略・地域人口発展計画の検討を深化させ、人口の長期にバランスのとれた発展を促進しなければならない。